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221.告白
「あなたの気持ちなど考えもせず、何も話さぬままに閉じ込め、何と謝罪すればよいのか分かりません。………ただ、私は………あなたに生きてほしかった」
腹の底から絞り出しているかのような声は酷く苦しげだった。
まるで縋り付くように、ルドヴィクがアリーチェの細い肩に顔を寄せると、ルドヴィクの漆黒の絹糸のような長い髪が、さらりとアリーチェの腕を撫でる。
密着した体から彼の体温が伝わってきて、アリーチェはどうして良いのか分からず、ただじっとしていたが、ルドヴィクの言葉を聞いて納得したように微かに微笑むと、彼の広い背中に手を回した。
「………あなたを憎むように、と言ったのは…………ひょっとすると、わたくしが絶望に打ちひしがれて命を絶たないようにするためだったのですか…………?」
ルドヴィクの耳元でゆっくりとそう囁くと、ルドヴィクがはっと息を呑む気配が体越しに伝わってきた。
そしてその後、微かにルドヴィクが頷いた気配がした。
「………そうだ。憎悪は、人間の持つ感情の中でも特別強い。だから、あなたが私を祖国を滅ぼした仇だと信じていることを利用して、その強い憎悪を私に向けさせることで、あなたが生きることを選択するように仕向けた。そうなるように私が望んだのだ」
アリーチェからはルドヴィクがどのような表情をしているかは覗うことは出来ない。
だがアリーチェには、彼が泣くのを必死に我慢しているように思えて仕方がなかった。
意識を取り戻してすぐに顔を合わせた時の違和感、その後ずっとルドヴィクの深いエメラルド色の瞳の奥で見え隠れしていた何かの正体が何なのか、アリーチェは分かった気がした。
「…………アリーチェ姫。私は、あなたを愛している。喜怒哀楽を隠さない素直な所も、絶望に打ちひしがれてもなお挫けない強さも…………。あなたに全てを捧げてしまいたいと思う位に、あなたを愛している。………だからこそ、憎まれても構わないから、あなたに生きて欲しかった…………」
微かに掠れた声が、はっきりと愛を告げる。
アリーチェはこれ以上ないくらいに大きく目を瞠ると、美しい顔をくしゃりと歪めた。
両手が勝手に、小さく震え始める。
どうやら喜びが過ぎると、体は言うことを聞かなくなるらしいという事実を初めて知り、それを隠すようにルドヴィクの背中に回した両手に、強く、強く力を込めた。
腹の底から絞り出しているかのような声は酷く苦しげだった。
まるで縋り付くように、ルドヴィクがアリーチェの細い肩に顔を寄せると、ルドヴィクの漆黒の絹糸のような長い髪が、さらりとアリーチェの腕を撫でる。
密着した体から彼の体温が伝わってきて、アリーチェはどうして良いのか分からず、ただじっとしていたが、ルドヴィクの言葉を聞いて納得したように微かに微笑むと、彼の広い背中に手を回した。
「………あなたを憎むように、と言ったのは…………ひょっとすると、わたくしが絶望に打ちひしがれて命を絶たないようにするためだったのですか…………?」
ルドヴィクの耳元でゆっくりとそう囁くと、ルドヴィクがはっと息を呑む気配が体越しに伝わってきた。
そしてその後、微かにルドヴィクが頷いた気配がした。
「………そうだ。憎悪は、人間の持つ感情の中でも特別強い。だから、あなたが私を祖国を滅ぼした仇だと信じていることを利用して、その強い憎悪を私に向けさせることで、あなたが生きることを選択するように仕向けた。そうなるように私が望んだのだ」
アリーチェからはルドヴィクがどのような表情をしているかは覗うことは出来ない。
だがアリーチェには、彼が泣くのを必死に我慢しているように思えて仕方がなかった。
意識を取り戻してすぐに顔を合わせた時の違和感、その後ずっとルドヴィクの深いエメラルド色の瞳の奥で見え隠れしていた何かの正体が何なのか、アリーチェは分かった気がした。
「…………アリーチェ姫。私は、あなたを愛している。喜怒哀楽を隠さない素直な所も、絶望に打ちひしがれてもなお挫けない強さも…………。あなたに全てを捧げてしまいたいと思う位に、あなたを愛している。………だからこそ、憎まれても構わないから、あなたに生きて欲しかった…………」
微かに掠れた声が、はっきりと愛を告げる。
アリーチェはこれ以上ないくらいに大きく目を瞠ると、美しい顔をくしゃりと歪めた。
両手が勝手に、小さく震え始める。
どうやら喜びが過ぎると、体は言うことを聞かなくなるらしいという事実を初めて知り、それを隠すようにルドヴィクの背中に回した両手に、強く、強く力を込めた。
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