隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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240.意思の尊重

「アマデオ。君はあのまま魔石を体内に入れていれば、確実に命を落としていただろうな」
「ですから感謝していますよ、セリエール侯爵。………あの時の私は、ティルゲルの言うことを信じ切っていて、奴の言う通りにすれば姫様を助けられると思い込んでいましたからね」

アマデオは恥ずかしそうに頭を掻いた。

「長きに渡りお父様を欺いていただけあって、他人を騙す技術は人一倍優れていたのでしょう」

二人のやり取りを観察していたアリーチェがぽつりと呟くと、ルドヴィクが忌々しそうに眉を顰めた。

「あの男は、人の良いカヴァニス王に上手く取り入ったのだろう。………醜悪な本質をもっと早く見抜けなかった事が、本当に悔やまれる」

ルドヴィクが亡き父の事を語るのに、過去形にせずに話をしてくれていることに気が付いたアリーチェは、僅かに表情を崩しながら、その優しさを噛みしめるように頷いた。

「………ティルゲルに対する処遇は既に決まっているのだからあれこれ言うつもりはないが、個人的にも一度くらい殺してやりたい気持ちだ」
「………ルドヴィク様………」

普通人間は一度殺せば二度と生き返りはしないと思うが、ルドヴィクがあまりにも真剣な顔で言ってのけるため、アリーチェはどう反応を返せば良いのか分からず、彼の名を口にした。

「………まあとにかく、過ぎたことを色々言っても仕方がない。私から二人に言いたいのは、これから先、カヴァニスの民としてアリーチェ姫を支えてやって欲しいということだ」

先程の発言は失言だった、と思ったらしいルドヴィクは、誤魔化すように小さく咳払いをしてからアマデオとスザンナに向き直った。

少し前まで自分のことを『敵』として見做していた相手に対する言葉とは思えないような台詞に、ルドヴィクの寛大さとアリーチェに寄り添おうという気持ちが窺えて、アリーチェは胸の奥が甘く疼くのを感じた。

「………我々を、赦して下さるのですか?」

少し驚いたようにアマデオが訊ねると、ルドヴィクは蠱惑的な口元を少し緩めた。

「赦すかどうかは私が決めることではない。それを決めるべきひとが赦すというのだから、私はその意志を尊重するだけだ」

ルドヴィクはきっぱりとそう言い放つと、アリーチェの細くて小さな肩に、そっと手を置いた。
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