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313.石打の刑 ※残酷な描写あり
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馬車には既にアンジェロが乗り込んでおり、優しい笑顔で二人を迎えてくれた。
移動中は三人とも特に会話は無かったが、険悪な雰囲気ではなく、寧ろ穏やかな空気が漂っていた。
しかし処刑場となる街の広場が近づいてくると、心做しか場の空気もピリピリとしてきた気がした。
「………何も、心配ない」
馬車が速度を落とし始めると、ルドヴィクが囁いたのが、はっきりと聞こえた。
アリーチェがはっと顔を上げ、目を瞠ると、アリーチェの正面に座っていたアンジェロも、不安気な妹を励ますように、微笑んだまま深く頷いた。
※※※※※
馬車を降りると、少し先に人だかりが出来ているのが目に入る。
その場所は、まさにこれからティルゲルの処刑が行われる場所だった。
人々は犇めき合い、まるでこれから行われる処刑を心待ちにしているかのような雰囲気すら見てとれた。
ーーー石打の刑。
下半身を地面に埋め、動けなくなった状態の罪人に向けて、観衆が用意された握り拳大の石を投げつけ、死に至らしめるという処刑方法だ。
斬首刑など他の死刑に比べると最も苦痛が多いとされる。
刑を下したアリーチェ自身も、この処刑方法での死刑が実行されるのを目にしたことはなかった。
それは、この刑が重大な罪を犯した者二のみ適用される形だ。
それでも残虐と言われても仕方のないこの刑を選んだのは、ティルゲルの欲の為に命を落とした沢山の人々の苦しみ、そしてその者達に連なる数多の人々の悲しみを味わい、反省して欲しいと心から願ったからだった。
ざわめく広場には、ティルゲルの下半身を埋めるための窪みが作られ、そこから少し離れた場所には成人男性の握り拳程の大きさの角張った石が、山のように積まれていた。
よく見るとその中には、クズ石同然の魔石も含まれているようだった。
「あれは、魔石ですの?」
アリーチェが戸惑いながら声を上げると、ルドヴィクが頷いた。
「魔石、とは名ばかりの、ほぼ魔力は宿っていないクズ石だが、今回の処刑には丁度いいだろう」
ルドヴィクはアリーチェから離れると、たった今『クズ石』と称した物体をそっと手に取る。
それは、うっすらと赤味を帯びたものだった。
そんなルドヴィクに向かって、アリーチェとアンジェロがほぼ同時に頷いた。
移動中は三人とも特に会話は無かったが、険悪な雰囲気ではなく、寧ろ穏やかな空気が漂っていた。
しかし処刑場となる街の広場が近づいてくると、心做しか場の空気もピリピリとしてきた気がした。
「………何も、心配ない」
馬車が速度を落とし始めると、ルドヴィクが囁いたのが、はっきりと聞こえた。
アリーチェがはっと顔を上げ、目を瞠ると、アリーチェの正面に座っていたアンジェロも、不安気な妹を励ますように、微笑んだまま深く頷いた。
※※※※※
馬車を降りると、少し先に人だかりが出来ているのが目に入る。
その場所は、まさにこれからティルゲルの処刑が行われる場所だった。
人々は犇めき合い、まるでこれから行われる処刑を心待ちにしているかのような雰囲気すら見てとれた。
ーーー石打の刑。
下半身を地面に埋め、動けなくなった状態の罪人に向けて、観衆が用意された握り拳大の石を投げつけ、死に至らしめるという処刑方法だ。
斬首刑など他の死刑に比べると最も苦痛が多いとされる。
刑を下したアリーチェ自身も、この処刑方法での死刑が実行されるのを目にしたことはなかった。
それは、この刑が重大な罪を犯した者二のみ適用される形だ。
それでも残虐と言われても仕方のないこの刑を選んだのは、ティルゲルの欲の為に命を落とした沢山の人々の苦しみ、そしてその者達に連なる数多の人々の悲しみを味わい、反省して欲しいと心から願ったからだった。
ざわめく広場には、ティルゲルの下半身を埋めるための窪みが作られ、そこから少し離れた場所には成人男性の握り拳程の大きさの角張った石が、山のように積まれていた。
よく見るとその中には、クズ石同然の魔石も含まれているようだった。
「あれは、魔石ですの?」
アリーチェが戸惑いながら声を上げると、ルドヴィクが頷いた。
「魔石、とは名ばかりの、ほぼ魔力は宿っていないクズ石だが、今回の処刑には丁度いいだろう」
ルドヴィクはアリーチェから離れると、たった今『クズ石』と称した物体をそっと手に取る。
それは、うっすらと赤味を帯びたものだった。
そんなルドヴィクに向かって、アリーチェとアンジェロがほぼ同時に頷いた。
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