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第六話 洗剤を求めて
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ライサに謎の宣戦布告をされてから、妨害はさらにエスカレートした。
今日もあまり掃除は進まず、クタクタになりながらも掃除用具を片付けていると、ふいに良い匂いが漂ってくる。
あっちは確か、キッチンだ。
ついふらふらとそちらに足が向く。
「おや、ミオさん。どうしましたか、疲れた顔をして」
エプロンをつけたリエーフさんがお玉を片手に声を上げる……、
異様にエプロンが似合うなこの人。
なんてことを疲れた頭でボンヤリ考えていると、唐突にリエーフさんがパアッと顔を輝かせ私に詰め寄ってきた。
「指輪! つけて下さったんですね!」
お玉を放り投げて私の両手を握り、リエーフさんが心底嬉しそうな顔をする。
彼はこの屋敷の現状をなんとかしたいだけ、というのはわかっているものの、これじゃなんだかプロポーズでもされてる気分。
「左手の薬指にって申し上げましたのに!」
「サイズが合わなかったんです!」
のけぞりながら答えると、リエーフさんは「ああ」と言って私の手を離した。
「それは、気が回らず失礼を致しました。次に町に出るときにサイズを直してもらいましょう」
「いえ、結構です」
真顔で言うリエーフさんに真顔で返す。そしてこの話を終わらせるべく、私は別のことを口にした。
「リエーフさんて町に行ったりするんですね」
「ええ。この屋敷の中でできることにはどうしても限度がありますから。わたくしが外に行くのも、外のものを持ちこむのも、幽霊たちはよく思ってないのですが……ご主人様にはできるだけ不自由な思いをしてほしくないのです」
胸に手を当てて、リエーフさんが今まで見た中で一番優しい顔をする。
リエーフさんって何考えてるかわからないところはあるんだけど……でも主思いなのは確かなんだろうなって、この顔見てると思う。
でも、どうして幽霊は外が嫌いなんだろう。そういえばライサも外の人間が嫌いだって言っていた。それが掃除を妨害する理由なら、幽霊が外を嫌う理由を知れば何か解決の糸口になるかもしれない。
「リエーフさん、どうして幽霊たちは外が嫌いなんですか?」
聞いてみると、リエーフさんは首を捻った。
「そうですねぇ……単純に、自分たちは外に出られないからでは?」
「そうなんですか? でも今リエーフさん、町に行くって」
「わたくしは……特別ですから」
唇に人差し指を当てて、にっこりとリエーフさんが微笑む。うーん……この人にもこの屋敷にも、まだまだ謎が多すぎる。
いや待って。別に私はこの屋敷に謎解きをしに来たわけではない。住処を求めていたのであって、そのためには掃除さえしていればいい。
幽霊屋敷なのも、それによって人が寄り付かないがために私がここで働けていることを考えれば、むしろありがたい。
考えてみれば、別に構わないのではないか。
幽霊がいても私に危害を加えるわけでなし、不気味と言うなら魔法の力だって私からすれば十分不気味だ、今更だ。
ライサの妨害には辟易するけど、また片付ければいいだけの話。
リエーフさんの様子じゃ、クビにされる心配はなさそうだし。
……だけど、だけどだ。
確かに私は掃除が好きだ。
でも、永遠に綺麗にならない屋敷のお掃除なんてごめんだ。
掃除が好きだからこそ許せないのだ。綺麗にするためにどんな苦労も厭わない、その瞬間のための過程がお掃除なのであって。
だったらそのためには、幽霊と……少なくともライサとは友好関係を築かないといけないし、屋敷の謎を探ることも必要になってくるのかもしれない。
「おっと、料理していたのを忘れていました」
火が爆ぜる音とリエーフさんのその声で、我に返る。すっかり考えこんでしまっていた。
慌ててリエーフさんが鉄鍋を火からおろす。ミトンも何も使わずに、素手で、火にかけている鉄鍋を触っても、熱がらないどころかリエーフさんの白い手にはなんの変化もない。
やっぱり、普通の人間じゃないんだな。
「何かお手伝いしましょうか」
「いえ、ミオさんはお疲れでしょう。部屋でお休み下さい。ミハイル様に食事をお出ししたら、ミオさんのお部屋にも持って行きますから」
「でも……」
改めてキッチンを見回してみる。とっても大きなキッチンだけれど、今リエーフさんが料理をしているこの一角以外は使われている形跡がなく、埃っぽい。
水場の水垢、かまどの焦げ跡を私の目が敏感に捉える。
先にキッチンを掃除すれば良かったな。けどキッチンの掃除は専用の道具がないとなかなか大変だ。塩素系漂白剤とか……そこまで強力じゃなくても、せめて重曹とか。
※
「やっぱり洗剤は欲しいなぁ……」
翌朝、庭でシーツを手洗いしながら、私は独り言を口にしていた。
今はまだ蜘蛛の巣を払って床を掃くくらいしかできてないし、それすらライサに邪魔されて進んでいないから、そこまで気にしてはいなかったけど。
やはり、ゆくゆくはないと困るだろう。
シーツをギュッと絞りながら、思案する。
石鹸くらいは手作りできるかもしれない。
でも、カビや水垢、錆び、そういうしつこい汚れを落とすには専用の洗剤が欲しいところ。
酸性とアルカリ性の洗剤、もしくはそれに代わるものが欲しいな。今まで見た限りでは、汚れの種類とか私の世界とそんなに変わりないようだし。
……掃除してもどうせライサに邪魔されるんだし。今日は洗剤でも作ってみようかな。
とりあえず柑橘っぽい果物があれば、酸性の可能性が高い。
オレンジの皮でシンクを磨くとピカピカになるというのは割とよく知られているけど、あれは柑橘系の果物にはクエン酸が含まれているからである。
この世界でも通用するかはわからないけど、やってみる価値はある。
それに、洗剤の代わりになる植物は他にもある。
幸い時間はたくさんある。探してみよう。確か、中庭に植物園みたいなところがあったはず。
「うわぁ……」
しかし、来てみてちょっと後悔した。植物園というよりジャングルだ。
家事代行で植木の水やりはしたことあるけれど、これはなんか……、剪定とかが要りそう。
でも果実をつけた茂みもある。色や形は見たことないけれど、草をかき分けて近くで見ると、質感なんかはオレンジに似たものもある。
どれどれ一つ、と手を伸ばしたところで、ぞわりと背中が粟だった。
……さわるな……。
耳元で確かにそう聞こえて、バッと振り返る。でも誰もいない。
指輪はつけているから、居るならその姿は見えるはずなのに。
「誰か居るんですか? この実を頂きたいのですけど」
返事はない。
もう一度果物に手を伸ばしてみると、突然突風が巻き起こった。ばさばさと生い茂る葉っぱが肌を叩く。
「痛……ッ」
その勢いがあまりに激しくて、私は頭を抱えてその場に座り込んだ。
家の中を掃除しようとするのを邪魔していたのはライサだった。
果物を取るのも、嫌がっている誰かが邪魔をしているのだろうか。さっき聞こえた声は、ライサとは違うものみたいだったけど。
ふいに風が止み、私は立ち上がると葉っぱや砂まみれになった全身をパンパンと払った。
「誰かいるなら出てきて。話をしましょう」
諦めずに声をかけてみると、ガサリと茂みが揺れた。
次は一体どんな幽霊が現れるのか――と全身を緊張させて待つ。
しかし現れたのは、予想していたのとは別の……、知らない幽霊ではなく、見覚えのある人だった。
今日もあまり掃除は進まず、クタクタになりながらも掃除用具を片付けていると、ふいに良い匂いが漂ってくる。
あっちは確か、キッチンだ。
ついふらふらとそちらに足が向く。
「おや、ミオさん。どうしましたか、疲れた顔をして」
エプロンをつけたリエーフさんがお玉を片手に声を上げる……、
異様にエプロンが似合うなこの人。
なんてことを疲れた頭でボンヤリ考えていると、唐突にリエーフさんがパアッと顔を輝かせ私に詰め寄ってきた。
「指輪! つけて下さったんですね!」
お玉を放り投げて私の両手を握り、リエーフさんが心底嬉しそうな顔をする。
彼はこの屋敷の現状をなんとかしたいだけ、というのはわかっているものの、これじゃなんだかプロポーズでもされてる気分。
「左手の薬指にって申し上げましたのに!」
「サイズが合わなかったんです!」
のけぞりながら答えると、リエーフさんは「ああ」と言って私の手を離した。
「それは、気が回らず失礼を致しました。次に町に出るときにサイズを直してもらいましょう」
「いえ、結構です」
真顔で言うリエーフさんに真顔で返す。そしてこの話を終わらせるべく、私は別のことを口にした。
「リエーフさんて町に行ったりするんですね」
「ええ。この屋敷の中でできることにはどうしても限度がありますから。わたくしが外に行くのも、外のものを持ちこむのも、幽霊たちはよく思ってないのですが……ご主人様にはできるだけ不自由な思いをしてほしくないのです」
胸に手を当てて、リエーフさんが今まで見た中で一番優しい顔をする。
リエーフさんって何考えてるかわからないところはあるんだけど……でも主思いなのは確かなんだろうなって、この顔見てると思う。
でも、どうして幽霊は外が嫌いなんだろう。そういえばライサも外の人間が嫌いだって言っていた。それが掃除を妨害する理由なら、幽霊が外を嫌う理由を知れば何か解決の糸口になるかもしれない。
「リエーフさん、どうして幽霊たちは外が嫌いなんですか?」
聞いてみると、リエーフさんは首を捻った。
「そうですねぇ……単純に、自分たちは外に出られないからでは?」
「そうなんですか? でも今リエーフさん、町に行くって」
「わたくしは……特別ですから」
唇に人差し指を当てて、にっこりとリエーフさんが微笑む。うーん……この人にもこの屋敷にも、まだまだ謎が多すぎる。
いや待って。別に私はこの屋敷に謎解きをしに来たわけではない。住処を求めていたのであって、そのためには掃除さえしていればいい。
幽霊屋敷なのも、それによって人が寄り付かないがために私がここで働けていることを考えれば、むしろありがたい。
考えてみれば、別に構わないのではないか。
幽霊がいても私に危害を加えるわけでなし、不気味と言うなら魔法の力だって私からすれば十分不気味だ、今更だ。
ライサの妨害には辟易するけど、また片付ければいいだけの話。
リエーフさんの様子じゃ、クビにされる心配はなさそうだし。
……だけど、だけどだ。
確かに私は掃除が好きだ。
でも、永遠に綺麗にならない屋敷のお掃除なんてごめんだ。
掃除が好きだからこそ許せないのだ。綺麗にするためにどんな苦労も厭わない、その瞬間のための過程がお掃除なのであって。
だったらそのためには、幽霊と……少なくともライサとは友好関係を築かないといけないし、屋敷の謎を探ることも必要になってくるのかもしれない。
「おっと、料理していたのを忘れていました」
火が爆ぜる音とリエーフさんのその声で、我に返る。すっかり考えこんでしまっていた。
慌ててリエーフさんが鉄鍋を火からおろす。ミトンも何も使わずに、素手で、火にかけている鉄鍋を触っても、熱がらないどころかリエーフさんの白い手にはなんの変化もない。
やっぱり、普通の人間じゃないんだな。
「何かお手伝いしましょうか」
「いえ、ミオさんはお疲れでしょう。部屋でお休み下さい。ミハイル様に食事をお出ししたら、ミオさんのお部屋にも持って行きますから」
「でも……」
改めてキッチンを見回してみる。とっても大きなキッチンだけれど、今リエーフさんが料理をしているこの一角以外は使われている形跡がなく、埃っぽい。
水場の水垢、かまどの焦げ跡を私の目が敏感に捉える。
先にキッチンを掃除すれば良かったな。けどキッチンの掃除は専用の道具がないとなかなか大変だ。塩素系漂白剤とか……そこまで強力じゃなくても、せめて重曹とか。
※
「やっぱり洗剤は欲しいなぁ……」
翌朝、庭でシーツを手洗いしながら、私は独り言を口にしていた。
今はまだ蜘蛛の巣を払って床を掃くくらいしかできてないし、それすらライサに邪魔されて進んでいないから、そこまで気にしてはいなかったけど。
やはり、ゆくゆくはないと困るだろう。
シーツをギュッと絞りながら、思案する。
石鹸くらいは手作りできるかもしれない。
でも、カビや水垢、錆び、そういうしつこい汚れを落とすには専用の洗剤が欲しいところ。
酸性とアルカリ性の洗剤、もしくはそれに代わるものが欲しいな。今まで見た限りでは、汚れの種類とか私の世界とそんなに変わりないようだし。
……掃除してもどうせライサに邪魔されるんだし。今日は洗剤でも作ってみようかな。
とりあえず柑橘っぽい果物があれば、酸性の可能性が高い。
オレンジの皮でシンクを磨くとピカピカになるというのは割とよく知られているけど、あれは柑橘系の果物にはクエン酸が含まれているからである。
この世界でも通用するかはわからないけど、やってみる価値はある。
それに、洗剤の代わりになる植物は他にもある。
幸い時間はたくさんある。探してみよう。確か、中庭に植物園みたいなところがあったはず。
「うわぁ……」
しかし、来てみてちょっと後悔した。植物園というよりジャングルだ。
家事代行で植木の水やりはしたことあるけれど、これはなんか……、剪定とかが要りそう。
でも果実をつけた茂みもある。色や形は見たことないけれど、草をかき分けて近くで見ると、質感なんかはオレンジに似たものもある。
どれどれ一つ、と手を伸ばしたところで、ぞわりと背中が粟だった。
……さわるな……。
耳元で確かにそう聞こえて、バッと振り返る。でも誰もいない。
指輪はつけているから、居るならその姿は見えるはずなのに。
「誰か居るんですか? この実を頂きたいのですけど」
返事はない。
もう一度果物に手を伸ばしてみると、突然突風が巻き起こった。ばさばさと生い茂る葉っぱが肌を叩く。
「痛……ッ」
その勢いがあまりに激しくて、私は頭を抱えてその場に座り込んだ。
家の中を掃除しようとするのを邪魔していたのはライサだった。
果物を取るのも、嫌がっている誰かが邪魔をしているのだろうか。さっき聞こえた声は、ライサとは違うものみたいだったけど。
ふいに風が止み、私は立ち上がると葉っぱや砂まみれになった全身をパンパンと払った。
「誰かいるなら出てきて。話をしましょう」
諦めずに声をかけてみると、ガサリと茂みが揺れた。
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