白毛のわんこの番なんて聞いてません!

みとなす

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歩き出した日々

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皇牙の交際を断り、友達宣言をしてから6日目。
俺は、皇牙とショッピングモールに来ていた。

「なあ皇牙、本当にこんな所でよかったのか?」
「もちろんだ!あきらと来られるなら、いや、いられるならどこだっていいんだ」

あ~あ、嬉しそうにしちゃって…今日の買い物なんてただのいつもの買い出しなのに。
今日は1日休み、不定…というか、ゆきさんが1日コンビニにいられる日に俺は休みをもらっている。
俺の休日は大抵、部屋と風呂の掃除、洗濯、そして買い出し…たまにレンタルDVDを借りたりするくらいで終わる。
そんな休みの前日の昨夜、急にかかってきた皇牙からの電話で今日が休みだと伝えた。

「マジ!?じゃあどっか遊びに行かないか?実はちょうど俺も明日休みなんだ」
「そうなのか!あぁ…でも、この時間から遊びの手配って難しいな。メシとか映画観るくらいならできるかもしんねえけど」
「う~ん、だったらさ…」

だったらって、何で「普段のあきらの休みの過ごし方につき合わせて」になるんだ?
買い出しとは言っても、自転車でショッピングセンターに行き、商店街より安く買える食材を買ったりするくらいだ。
今日は皇牙と一緒だから、ふたりで徒歩で30分くらいかけてのんびり川沿いを歩いてやって来た。
最近急に気温が下がってきたから、秋物の服でも買おうかと思い、皇牙と一緒にファストファッションのテナントにやって来た。

「なあ、そのプリントロンTよりこっちのワイシャツの方があきらには似合うと思うけどな」

服を選んでいると、皇牙が口を挟んだ。
俺は普段着なんて気安さ重視だから、頭から被れてゆとりのあるシャツの方が好きなんだが…。

「ええ、ボタンあると着るの面倒だし、アイロンだってかけないといけないだろ」
「それはそうだけど、たまにはイメチェンだと思ってトライするのもいいじゃん」
「はぁ、わかったよ、仕方ねえな。そういや皇牙は?自分の服とか買わなくていいのかよ?」

俺の買い物に付き合ってくれると言ってくれているけど、さすがに俺ばっかり1人で買っているのも気が引ける。
そう思って聞いてはみたものの、皇牙は即答した。

「いいんだって!俺があきらの買い物に付き合いたいって言い出したんだし、気にしない気にしない」

皇牙は上機嫌で、俺の持っている買い物袋を手に取った。

「ちょ、さすがに自分で買った荷物くらい持つから、気ぃ遣わなくていいって!」
「いいからいいから、俺がさ、こうしたいっていうか。こうしたいからあきらの買い物についてきたみたいなもんだから、お前は買い物に集中しろって」

皇牙はそんなことを言って、いつも俺が自分で買ってヒィヒィ言いながら、持って帰るビニール袋と紙袋を軽々と片手ずつで持ち、笑っていた。

「(これが本当に皇牙のしたかったことなのか?…変なの。てか、やっぱり力力あんのな)」

俺よりもかなり背が高く、力もあって、優しい。
よくよく思うと視線が集まって来てるのを感じて、周りを見ると俺ではなく皇牙を見ている女性方の多いこと多いこと…。
皇牙って無自覚のモテ体質なのかよ、なんか気に入らねえ。

「もう買い物終わったから、帰ろうぜ!」
「え?もういいのか?」
「ああ、欲しいもん買えたから、さっさと出ようぜ!」

そう言って俺は、皇牙に荷物を持たせてしまっているのに、ずんずんと早足で出口に向かって歩き出して、逃げるようにショッピングモールから出てきた。

「(…、…、…俺、ださくね?いや、情けなくね?…余裕なさすぎんだろ!!)」
「お~い、どうしちゃったんだよあきら~」

後ろから俺を呼ぶ皇牙の声が聞こえて来て俺はハッとした。

「ご、ごめん皇牙、先で出てきちまって…」
「それは構わないんだけど、どうかしたのか?俺、もしかしてあきらになんか悪いことしたかな」

皇牙は荷物を抱えたままオロオロしており、俺はその顔を見た途端にイライラの糸がふっと切れた。

「ふは、はは!」
「な、なんだよ、怒ってるかと思ったら急に笑い出して…」
「いや、本当なんでもねえ。いやあ、ごめんな?皇牙」
「別にいいけどさ…それで、もう帰るのか?」
「ああ。一旦荷物家に置かないといけないだろ。俺も持つから…」

そう言ってもやはり皇牙は俺に荷物を持たせてくれず、最後まで一人で運んでくれた。
帰り際、人通りの少ない川沿いをふたりで喋りながら歩いて帰った。

「なんか、甘い匂いがする」
「ああ、金木犀の花が少しずつ咲き始めてるんだよ。この川沿いの家の人たちは金木犀育ててる人が多いんだよ」
「ああ、去年の秋も商店街に少し甘い匂いが漂ってきてると思ったんだけど、これが金木犀の花の匂いなんだな」
「皇牙は金木犀見たことないのか?」
「植物図鑑で写真を見たことはあるけど、本物はない」
「じゃあ、匂い嗅ぐのも初めてなんだな!」

俺がそう言うと、皇牙は嬉しさを隠せないといった表情で「そうだな」と答えた。

「なんだよ、やけに嬉しそうな顔してさ」
「だってさ、あきらと初めて一緒に遊んだ日に、この匂いが初めて金木犀って知って…ひとりじゃなくてあきらと初めてを知れて、めちゃくちゃ嬉しいんだよ」

買い物袋を持ったまま、俺の顔をにぃっと嬉しそうな笑みをたたえて覗きこんでくる皇牙。

「なっ!」

一瞬にして俺は顔が真っ赤になった。
なんっだよそのセリフ!
そんなの友達に向かって言うセリフじゃねえし!
ああ、でもこいつはまだ…諦めてなかったんだよな、俺をパートナーにすること。
俺だけ友達のつもりでいても、こいつは違うし…俺はやっぱり友達でいようとしてもこいつのこういう所を見ては、ときめかされるのか?
いやいやいやいや!俺がときめいても、こいつはモテるんだし、その内お似合いの女の子だって現れるはずだ!

「な、なあ皇牙!」

俺は川を覗きこんでいる皇牙に後ろから声をかけた。

「ん?どした?」
「お前って、昔からモテたのか?」
「は?なんだよ、藪から棒に」

藪から棒な質問だってのは自分でも分かってる。
それに、友達でいようと言った俺がこんなこと聞くことに意味なんて、いや、これはそう!ただのダチとしての会話だ!
そう自分を納得させようとした。

「いいからいいから、男同士の内緒話的な?早く教えろよ~」
「…、…うん、俺、結構モテてた…」

照れながらそう答える皇牙を見て、俺の心に冷たい風が吹いたような、うら寂しいなんとも言えない気持ちになった。

「へ、へえ…やっぱりな!さっきのスーパーでもみんな見ててたもんな!」
「そうなのか?全然気づかなかった」
「おいおい、自分でモテるとか言ってる奴が気づいてなかったのかよ」

俺は震えそうな声を抑えて、茶化すように笑って言った。
別にいいじゃん、こいつがモテたって。
やっぱり、友達なんて言わずに全部終わらせればよかったのか?
そう思いながら、川のせせらぎと鳥のさえずりだけが聞こえる川沿いを、皇牙と二人歩き続けた。
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