白毛のわんこの番なんて聞いてません!

みとなす

文字の大きさ
9 / 11
歩き出した日々

しおりを挟む
「そんで、皇牙とそのお連れさんは今からどっか行くの?」

馴れ馴れしく話してくる黒楼という男だけど、こういう砕けた雰囲気、俺は結構好きなんだ。
でも、皇牙はそうでもないみたいで…

「どこに行くかとか、黒楼には関係のないことだろ」
「俺たちは、今から耕太って奴のお好み焼きの店に食いに行くところなんだ」
「ちょ、あきらぁ!」

俺が答えてしまうのを、皇牙が止めにかかってきた。

「あ、別にいいだろ?皇牙の友達なんだろ?」
「そうなんだけど、でもあいつはさ…ちょっと…」

皇牙はもごもご、ひそひそと答え、それを見ていた黒楼はイヤーカフに触れながらニィッと笑った。

「じゃぁさあ、俺も一緒に行っちゃダメ?俺も昼がまだでさあ、腹ペコペコなんだよね」

そう聞いてくる黒楼に、皇牙は自分の額に手を当てて天を仰いだ。

「あぁ、えぇと…どうする?皇牙」

まさか黒楼が着いて行きたいと言うとは思わなかったので、一瞬きょとんとしてしまい、皇牙に判断を仰いだ。

「…今日の外出はあきらの為の時間なんだし、あきらが決めていいよ」

そう答えた皇牙に俺は、「いやだ、ふたりきりがいい」なんて言うだろうと心のどこかで期待していたのか、残念に思った。
でも、変に言い合ったりすることで黒楼に誤解されるのも癪だからと何も言い返さずに頷いた。

「んん、じゃあ3人で一緒に行くか!皇牙と黒楼の関係がどんなんか知りたいしさ!」
「おう!俺とコイツのふたりのあまぁい思い出、アンタにもたっぷり聞かせてやるよ」

そんな冗談を言って笑う黒楼と俺は、妙に意気投合してしまった。
「はぁ」…先に進む俺と黒楼の後ろで足を止めた皇牙がため息を落とす。

「お~い、皇牙、ボーっとしてると置いてくぞ!」
「あ、ちょっと待てって」

晴れない表情のままの皇牙と楽しく話す俺と黒楼の三人でお好み焼き屋に向かうと、運の良いことに並ばずに入店することができた。

……

「へい!いらっしゃい!お、あきらじゃねえか!今日はコンビニ休みなのか?」

威勢のいい声で出迎えてくれたのは俺の親友でもあり店主でもある、ブタ族の日野耕太だ。

「ああ、コンビニはやってるけど俺は休み。今日はゆきさんに店やってもらってるんだ。3人だけど、席空いてるか?」
「おお、あきらにしては珍しいな、お連れ様がいんのか。こっちのテーブル席が空いてるぞ。三名様ご来店!」

テーブル席に案内されて、俺と皇牙は並んで座り、向かいに黒楼が腰掛けた。

「あきら、この店のオススメってなんだ?」
「全部美味いんだけど一番人気も俺のオススメも海鮮!具がすげえごろごろと入っててさ」

俺と皇牙でメニューを見せ合いながら、どれが美味いのかと話していると、黒楼は肘をついて手に顎を乗せて、じろじろとこちらを見ていた。

「ふたりってさぁ、随分と距離近いんだな?もしかして、そーゆー関係なの?」

唐突に言われたその言葉に皇牙はおろおろしてしまったけれど、俺はメニューを見たまま淡々と答えた。

「そう?考えすぎじゃね?皇牙とはダチなだけだし。…お、新メニューも美味そうじゃん」

この態度はわざととったものだ。
俺と皇牙の関係を黒楼が疑ってくることは予想できていたし、皇牙は態度から見て黒楼に下手にしか出られていない。
だったら俺が取り乱さないことが大事だし、皇牙とダチだということは事実だし。
すると黒楼がとんでもないことを言い始めた。

「へぇ、だったら俺、あきらくんの彼氏に立候補するわ」

俺の手から、メニューがすり落ちた。・・・こいつ、今なんて言った?
俺が何かを言おうとする前に皇牙が先に声を上げた。

「そんなこと、あきらがOKするわけないだろ!」
「は?そんなのあきらくんが決めることじゃん。皇牙はただのダチなんだろ?口出すなよな」

あかん、ぼーっとしとる場合やない。となぜか関西弁で自分を奮い立てた。
このままだと皇牙が暴れだすかもしれん。

「まぁまぁ、落ち着けってふたりとも。あのさぁ黒楼、俺のことからかってる?そういうのは冗談でも止めてほしいんだけど」

念を押すように少し睨むくらいの勢いで黒楼をまっすぐ見た。
さすがに言っていいことと悪いことがあるだろ、皇牙が黒楼を苦手そうにしている理由がよくわかった。
しかし、そう言うと黒楼は笑顔をすっと引っ込めて真剣な表情に変わった。

「冗談なんかじゃねえぞ。結構本気。あきらくんってニンゲンらしさが性格に全面的に出ててさ。喋ってても楽しいし、俺元々ニンゲン好きだし。顔も好みなんだよね」

チャラい見た目で、チャラい喋り方なのにその言葉はなぜか嘘ではなく真剣なものだと思わされる。
これがカラス族の話術なのか?

「だからっていきなり彼氏候補とかないって。ダチからなら、まあわかるけどさ」
「ダチのまんまじゃ知らない間に誰かに取られるかもしれねえじゃん。気に入ったもんは近くに置いておきてえの」

思考がまんまカラスじゃねえか!
カラス族ってもっと狡賢く地位や金を手に入れて行く生き物だと思っていたけれど、こんなストレートに気持ちぶつけてくんのかよ。
てか!皇牙といい、黒楼といい、ニンゲン好きなのは100歩置いて好みとして理解ができても、なんでよりにもよって男の俺なんだよ。

「はは、そっか、でもさ…そこに俺の意思はねえの?」

俺は苦笑いを見せて、真剣になりすぎないように聞いた。

「意思か。そんなのすぐに決まるぜ?だって俺、幸せにしかしねえもん。手元に置いたもんは幸せにして、ぜってー離れねえようにするから」

ぐ、こいつ。すんごい自信だな。

「でも、今日の所はこれくらいにしとくわ。俺がアプローチかけすぎるとあきらのお隣さんに呼び出されそうだし。まあもし俺に興味持ってくれたらここに連絡してよ。じゃあな」

そう言って名刺を置いて帰ろうとする黒楼を俺と皇牙は慌てて呼び止めた。

「おい、お好み焼き食ってくんじゃねえの?」
「そうだよ、せっかくあきらが一緒にって言ってたのに、帰るのか?」

黒楼は俺たちに背中を向けたまま答えた。

「俺が一緒にいるとせっかくのデートが台無しだろ?じゃな」

そう言って、薄いコートを着てさっさと店から出ていってしまった。
俺から耕太には後で謝っておいた。

「なんだよ、せっかくあきらが3人でって言ったのに…」

俺が3人でお好み焼きを食うって言ったのを尊重してくれた皇牙は、黒楼の勝手な態度に腹を立てていた。

「今日はあきらのための時間だから」

と、そういう所で怒るのがなんとも皇牙らしいし、こいつのこういうオヒトヨシなところが俺はす…。
す…好き、なのか?
…俺、こいつのこと…。
全くアイツは、とぶつぶつ言って隣に座っている皇牙をそっと見て俺は顔を赤くしていた。
優しくて、俺に一途で、友達関係ならって言っても諦めが悪くて…好きになれない理由がない。

「へい、海鮮ふたつお待ち!」

鉄板並みに顔が熱くなってるかもしれない俺の目の前に、海鮮玉がふたつ置かれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

処理中です...