俺とクロのカタストロフィー

munetaka

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14.山奥の別荘は水道を引いたり電気を引いたり建てるのは結構大変

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【SIDE:颯】
上野村の住宅街から少し外れると、街灯はほとんどなく、すでに夜闇に包まれた山道を車のヘッドライトだけで進むのは、東京の明るい道路に慣れた俺には相当に怖かった。
GPSを頼りにゆっくり運転して、ようやく湊に教えてもらった別荘の前にたどり着いた。建物は煌々と明かりがついていて、開け放しのガレージには出発前に見た湊のBMWバイクが停めてある。間違いない。
「もし人んちだったら……」
念のため車内のままスマホを取り出そうとしたその瞬間、別荘の玄関から湊が現れた。
エンジンを切り、俺はそっとドアを開けた。
「おう、お待たせ」
「涼風先輩! 無事に着けて良かったです。とりあえず、車をガレージに入れちゃってください」
「ああ、わかった。まずクロとリンを降ろしてから、車をガレージに入れるよ。あのさ、もし犬アレルギーとかなければ、クロを家に上げてもいいかな? 室内でずっと飼ってるからキレイだし、トイレも家じゃしないんだけど……」
「もちろん、クロ君も入れて大丈夫ですよ。渋滞で疲れたでしょ? 車を入れたら、家の中でゆっくり休んでください」
「ありがとう。じゃあ、ちょっと休んでから荷物降ろすよ」
そのとき、リンが後部座席のドアを開けて降りてきた。俺の隣に並んで、手を小さく振る。
「リンちゃんもお疲れさま。お風呂はもう沸かしておいたから、ゆっくり休んでくださいね」
どうやら湊は先に別荘に着いて、迎える準備をしてくれていたらしい。
「お風呂、嬉しい! ありがとう!」
俺はまずクロを車から降ろし、リードをリンに預けた。そのまま運転席に戻り、車をガレージへ押し込む。俺がエンジンを止めると、シャッターが自動でゆっくり降りてきた。さすが金持ちの家のガレージだ。

別荘は平屋の鉄筋コンクリート造で、建物正面の右側に玄関、左側には車二台が収まる広いガレージがある。ガレージの壁には外国製の赤くピカピカした車用工具がずらりと掛かっていて、見ただけでテンションが上がる。
ガレージ内から直接家に入れるドアもあったが、いきなり勝手に上がるのも何か違う気がした。そこで俺はガレージ横の扉を開け、一度外に出てから玄関へ向かった。リンとクロを連れて、三人で玄関から家に上がる。
玄関に上がる前、ポケットからウェットティッシュを取り出し、クロの足を丁寧に拭く。ハーネスからリードを外し、クロを抱えて家に入ると、初めての家にクロは興味津々で鼻をヒクヒクさせながら周囲をキョロキョロ見渡している。
廊下を進んでリビングへ出ると、一気に目が覚める。
「うわっ、すげ……まるで悪党が秘密裏にパーティーしてるみたいな家じゃん」
家の正面からはわからなかったが、リビングのある裏側は全面ガラス張りで、上野村の夜景が一望できる。窓の向こうにはテラスがあり、そこにはバーベキューセットやレンガのピザ窯まで備え付けられている。完全にセレブ仕様の別荘だ。ここでバーベキューをすれば、間違いなくフォトジェニックな写真が撮れるだろう。
リンは早速一番大きなソファに飛び込んで、クッションに顔をうずめていた。
俺も渋滞で少し疲れていたので、リビングにあった一人掛けのソファに腰を下ろした。座った瞬間、お尻がふかふかのクッションに沈んでいく感触。金持ちの家のソファはすごい……これなら一日中座っていてもお尻が痛くならなさそうだ。
ソファの心地よさに浸っていると、湊が冷えたペットボトルのお茶を持ってきてくれた。
「お待たせしました。冷たいお茶です」
「おお、ありがとう。いただくよ」
ペットボトルを受け取ってひと口飲むと、足元に座っていたクロが顔をあげ、首元を撫でろとせがんでくる。俺はクロの首筋をゆっくり撫でながら、やっと落ち着いた気分になった。
スマホを見ると、父さんや北海道の友人から心配のメッセージがたくさん届いていた。爽からは大量のメッセージと画像が送られてきて、読むのが大変だったが、『浅野さんと二人で無事に到着した』ことをリンと湊に知らせると、みんなひとまず安堵したようだった。俺たちが避難を完了したことと現在地を、メッセージをくれた全員に送っておいた。
あ――佐藤支店長からも長文のメッセージが来てるな。
『涼風君、お疲れさま。涼宮君の判断は正解でしたね。あれから本社に連絡したけど、指示があるまでは通常どおり仕事せよ、って言われてみんな普通に仕事してたんだ。16時にはみんなでお店のテレビで放送を見たんだけど、そのあと本社から連絡来なくて、こっちから掛けてもずっと話し中で連絡取れなくて、結局17時に店閉めたよ。それから本部長から「しばらく会社は休業だから、連絡が来るまで出社するな」ってメールが来た。だから明日出社するなんてありえないと思うけど、涼風君と一緒にいる浅野さんと湊さんにも伝えておいて。ちなみに俺はまだ渋滞がひどくて杉並区から出られてない。車が動かないから涼風君にもメール送れるんだけど。ははっ。妻からは「なんでバカ正直に会社に残ってたんだ」って怒られて、今は「涼風君と一緒に避難すればよかった」と後悔してる。でもあのタイミングで避難準備を始めてる人って、何が起きるかわかってる人くらいだと思うよ。だから俺の判断は普通で、涼風君がおかしいだけだ。PS.子供が車酔いで吐いて、妻のイライラが最高潮で、俺は車の中が地獄だよ。今頃涼宮君はお茶でも飲みながらくつろいでるのかなぁ
いいなぁ』
うわ……やっぱり後から避難準備を始めた人は、まだ東京から脱出できていないのか。高速も通行止めだし、そうなるよな。俺たちもあと30分遅れていたら、まだ渋滞の真っ只中だったかもしれない。返信しよう……
『佐藤支店長、お疲れさまです。浅野さんは飛行機で無事に北海道に行きました。湊が一緒なので、支店長からの伝言はちゃんと伝えます。渋滞やお子様のこと、大変だと思いますが、どうか気をつけて避難してください。』
こんな感じでいいか。念のため湊にも報告しておこう。
そのとき、リンがソファから立ち上がり、大きなテレビやワインセラーを見てはしゃいでいるのを見た。
「すごいね! 湊さんのお家、お金持ちなんだね!」
リンを見ながら、颯は高校生のとき、お金持ちの友達の家に泊まりに行ったときの興奮を思い出した。「こんな家、実在するんだ!」と心から驚いたことを。
「祖父がたまたま新幹線の駅ができた地域の地主だっただけだから、全然すごくないんです。父は国会議員だけど会社を経営しているわけじゃなく、議員報酬だけだから、こういう別荘があるのはご先祖さまのおかげなんです」
「えっ、国会議員の娘さんだったの? すごい!なんで今まで黙ってたの」
「あっ、いや、別に隠していたわけじゃなくて、言う機会がなかっただけです。会社だと実家の話とかにならなかったじゃないですか」
国会議員なら隕石の情報を先に知っていてもおかしくないが、今は海外にいるらしい。湊自身は全く事情を知らずに俺に付いてきてくれたみたいだし。
「ねぇ、湊さん、この家の中を見せてもらっていい?」
リンは会話の内容をあまり聞いてないらしく、すぐに飽きてしまったようだ。
「それなら私が案内しますよ。お風呂のほかにサウナもあるので、見ていきますか?」
「うん! ぜひ見たい!」
サウナまであるのか……俺もあとで試してみよう。
「あ、そういえば、佐藤支店長から伝言だ。『明日から会社は休業だから、連絡があるまで出社するな』ってさ。ちなみに、支店長はまだ杉並から出られてないって」
「わかりました。支店長も無事に避難できるといいですね」
「ああ。じゃあ、俺はそろそろ車から荷物運んでくるよ」
「私も手伝おうか?」
「リンは手伝わなくていいよ。こういうのは男の俺に任せとけ」
颯は面倒だと思いながらも、女の子の前では少しでもカッコよく見せたい。車一台分の荷物くらい、一人で十分運べる。
クロも車庫までついてきた。知らない家に一人で置いて行かれるのは不安なのだろう。颯がダンボールや袋をせっせと運んでいると、車庫の隅に腰かけてじっと見つめている。
「ふう……思ったより荷物が多いな。やっぱり手伝ってもらえばよかったかも」
荷物をすべて降ろし終えると、助手席のシートを元の位置に戻した。クロは荷物のなくなった後部シートに飛び乗り、遠慮がちに尻尾を振って颯の顔を見上げている。
「なあ、今すぐ散歩に行きたいわけじゃないだろ? ここにいれば十分お出かけ気分だろ?」
まずい。「散歩」という言葉にクロが敏感に反応し、尻尾の振り方が「弱」から「中」に変わった。
「しょうがないな……外を歩くのは難しいかもしれないけど、一応つれて行くよ。ただ、荷物を運び終わって夕飯食べてからだけどな」
言葉の意味はわかっていないだろうが、散歩に行ける雰囲気を察したのか、クロの尻尾の振り方が「中」から「強」に変わり、何故か目の前をクルクル回りはじめた。俺を中心に回るわけではなく、目の前でひとり(一匹)でクルクル回っているのが謎だ。尻尾を振るだけでは足りないらしく、身体ごとくるくる揺らしながら喜びを表現している。
クロに絡まれながら、颯は荷物の搬入を再開した。すべての荷物をリビングに運び終えたころには、すでに22時を少し回っていた。無秩序に押し込まれた荷物をある程度仕分けながら運んでいたら、いつの間にか1時間近く経ってしまったようだ。
リビングでは、すでに風呂に入ったリンと湊がソファに腰掛け、テレビを見ながらくつろいでいる。手元にはアイスカフェオレか、あるいはアイスミルクティーらしき飲み物。タピオカが沈んでいるので、きっとタピオカミルクティーを飲んでいるのだろう。
「やっと終わったよ。お昼が遅かったから夜ご飯のことをすっかり忘れてたんだけど、湊、もう夕飯は食べた?」
「まだです。二人ともまだでしたか? 何か用意しましょうか?」
「大丈夫だよ。山勝のおっちゃんが弁当をいっぱいくれたからさ、それを食べようぜ」
「うん、私もお腹空いた。早く唐揚げ食べたーい!」
タピオカミルクティーの横に散乱したヒマワリの種の殻を見つめながら、リンはまだ空腹を満たし切れていないようだ。颯はリビングに運び込んだ荷物の中からお弁当が入った袋を取り出し、湊へ手渡した。
「山勝のお弁当、まだあったんですね! じゃあレンジで温めますね」
湊が弁当を電子レンジで温めてくれている間、颯はクロ用の食器を取り出し、山勝のおっちゃんからもらった鶏のササミとドライフードを皿に盛りつけた。普段は少しずつ食べるクロも、今日は腹ペコらしく、ガツガツと勢いよく食べている。
やがて三人でお弁当を囲み、テレビを見た。画面には世界中の混乱した様子が次々と映し出される。ニューヨークでは銀行が取引停止を発表したため、市民が現金を引き出そうと銀行に殺到し、暴徒化して襲撃する様子が映る。警察官はほとんど自主避難してしまい、残った少数の警察官も暴徒の数に及ばず、何もできずに遠巻きに見ているだけだという。北京では、暴徒化した民衆に対して軍が発砲し、多数の死者が出ているらしい。
海外に比べれば日本はまだマシなほうで、いまのところ民衆が暴徒化するような事態には至っていない。しかし、営業しているスーパーやコンビニには長蛇の列ができ、棚は激辛ラーメン以外すべて空っぽになっている。全国の幹線道路は史上最大級の渋滞に陥り、ほとんど車が動かず、道端には放置車両があふれている。その放置車が車道をさらに狭め、渋滞は悪化の一途をたどっているという。
画面の下部には避難地域の情報がテロップで流れ続け、テレビとラジオは明日の夕方まではキー局で放送を続け、その後は安全な地域のローカル局が役割を引き継ぐらしい。地方局と連携し、可能な限り放送が途切れないよう努力すると、アナウンサーが何度も強調していた。
「テレビを見ていても、実感が湧かないな」
ニュースキャスターが捲し立てるように各地の状況を伝えているが、まるでパニック映画のワンシーンを見ているような気分になる。
「わかるよ。遠くで起きている出来事にしか思えない。今俺らがその真っただ中にいる実感なんて、まったく湧かないし」
さっき爽からのメッセージも「現実感がない」って言っていたが、世界中の人間が今は同じ感覚なのかもしれない。
「颯が真っ先に安全な場所へ避難してくれたからだね。そうでなかったら、今ごろリンたちも駅前で入場規制にハマって行列に並んでたよ」
リンの言うとおり、ニュースが出てからではレンタカーも借りられず、電車か自転車で移動するしかなかっただろう。
「リンちゃんの言うとおりだよ。涼風先輩には本当に感謝してます」
「いやいや、ここは湊の家だろ? 俺たちが避難させてもらったんだから感謝だよ。湊がいなかったら、今ごろキャンプ場か指定の避難所にいたはずだし」
避難所やキャンプ場では、どうしても他の避難者とのトラブルが起きやすい。物資があるうちは、この豪華な別荘に引きこもっている以外の選択肢はないと思う。
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