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知らん間に攻略していた

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この世界は、魔法、ダンジョン、モンスター、多様な文化、色んな種族が存在する。

魔法はーーー便利なものもあれば、簡単に命が奪えるものもある。

ダンジョンはーーーまだ見ぬ財宝が眠っているかも知れないが、何が起きるかわからない。

文化の交流はーーー生活を豊かにするが、必ずしも良い方にいくとは限らない。

色んな種族がいる事はーーー助け合いができるかも知れないが、敵対しないとは限らない。

そんな問題を少しでも改善するために、国は『魔法省』と『冒険者ギルド』を大昔に設立した。

冒険者ギルドでは死亡者を減らすため、上からS、A、B、C、D、Eと実力ランクを定めた。

魔法のマニュアル化や管理、未知の場所への調査、謎の解明、害なすモンスターの討伐、他国や危険な地帯への護衛……などに尽くしたらしい。



そして今は、かなり過ごしやすい環境になったと聞いた。

喜ばしい事だけど……昔より過ごしやすくなっただけで、怖くて危険なのは変わらない。

冒険者ギルドで、冒険者の荷物係として働く私は、戦いはしないものの、危険と隣り合わせだ。



ビビりで、チビで、パッとしない地味な十六歳。

私…ココは、八歳の時に賊に襲われ、両親を亡くし、自分だけ生き残ってしまった。

生き残った理由は…魔法スキル『頑丈』があったから。

別に筋肉が発達している訳でも、固い体でもないけど…おもいっきり殴られても無傷なんだよね。

だから賊の攻撃を受けても無傷で、駆けつけてくれた冒険者に保護された。

そして、行くあてもない私は、ギルドの荷物係として働く事になった。

私のもう一つの魔法スキルが、大量の荷物を異空間に収納し、自由に取り出せる『アイテムボックス』だったから荷物を持つのは苦ではない。

だけど、ダンジョンは危険だし、モンスターはとっても怖いし、無傷でも攻撃を受ければ痛い……それに、いつ『頑丈』を破る攻撃をされるかとビクビクしている。

それでも…私みたいな孤児にできる、安定した仕事はきっとほとんどない。
誰も助けてくれない……だから、生活のために続けるしか選択肢はなかった。

どんなに危険で、怖い目にあっても。



ーーーそう、絶体絶命な場面に遭遇しても。



「ココちゃん!逃げてっ…!」

魔法使いのお姉さんがボロボロになりながら叫ぶ。
目の前には……地に転がる冒険者たちと、強さS級のドラゴン。

B級ダンジョンに、何でこんな強いドラゴンが…。

私はぶるぶると震える事しか出来なかった。
足が…足が動かない…。

魔法使いのお姉さんも倒れ…立っているのは私と……男性の冒険者だけだった。

長くも短くもない濃い茶髪を綺麗に切り添えていて、赤いキリッとした瞳の、穏やかそうだけど、何処か冷めた印象がある人。

体格はゴツくも細くもないけど、背は高く、顔が良い…見た目からでもわかる勝ち組さんだ…。

確か彼は、中央本部から私のいる地方ギルドに派遣されてきたS級冒険者さん。

何かの調査に来てて、今日は暇つぶしで、一緒に派遣されてきたA級冒険者さんと共に、ミッションに参加してくれたんだよね…。

彼は双剣を構えて、ドラゴンの様子を窺っている。

「…………………」

そして、目では追えない速さで、ドラゴンに向かっていった。
この人なら大丈夫だと思うけど、私は何だか嫌な予感がした。

彼がドラゴンの目を潰し、両腕を斬り落とした。
ドラゴンが痛そうな声を出して苦しんでいる。

紛れもなく、彼が優勢だ。

だけど、だけど…嫌な予感はどんどん膨れ上がり、それは、数秒後に現実になった。

何と…倒れていた彼の仲間…A級冒険者さんが立ち上がり、彼に斬りかかろうとしていた!?

何で…?仲間じゃないの…?

(ーーー!)

S級冒険者さん…気づいてないっ!?

だ、だめ…!
彼が倒れたらっ、私も、ここにいる人も、全員死んじゃう…!

頑丈な私なら、盾くらいにはなれる………だけど、A級冒険者の一撃は重い……当然死ぬほど痛いだろうし、もし、私の魔法スキル『頑丈』が通用しなかったら……本当に死ぬかもしれない。

だけど…ここでじっとしていても、待っているのは死だ。

「ーーーーーーー!!」

私は気づいたら駆け出していて、まさに斬りかかる瞬間に、彼らの間に入った。

「い"あ"あ"あ"ーーーーーっ!!」

「な、なにっ!?」

「っ!」

「あ"あ"あ"っ…!!」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

斬られたところが、焼けるみたい熱を持って、だめ、痛さで、意識がっ…!

そこから、私の意識は途切れた。



***



ーーーーーーーあれ…?ここは…?

目覚めると、お布団の中にいた……この消毒液の匂い…ギルドの医務室…?

え、生きてる…?

怪我はしてないみたいだし……私、痛さで気絶したんだ…。

「!………起きた?」

「……………?」

え…??すぐ横から、聞いた事のある声が……。

「外傷はないみたいだけど…大丈夫?」

「…………………っ!?っ!?」

「何?どうしたの?」

ど、どどどどどうしてっ…!?

「…何処か痛いの?」

何で……S級冒険者さんがいるのっ!?

えっ?えっ?
もしかして、彼がここに運んでくれたの…?
じゃあ、無事にドラゴンを倒して帰ってきたんだ…。

でも、何でまだここに…?
ただの荷物係が起きるのを待っててくれたの…?

驚いて彼をまじまじと見てしまう。

うん…?
淡々と喋っていたけど、顔色が悪い…?
え…少し不安そうな表情に見える…どうしたの…?

ーーーあっ…!

そ、そういえば…彼、仲間の人に斬られそうだったんだ…。
あれって、裏切られたって事…だよね…。

……だから、元気ないのかな…?
そうだよね…仲間だと思っていた人に殺意を向けられたらショックだよね…。

「だ…だいじょ、ぶ…ですか…?」

心配になって、思わずギュッと手を握ってしまった。

「!……は?」

「斬られそう、だったので…」

「斬られそう……ああ…」

彼はため息を吐くと、良く見るポーカーフェイスで、私が気絶をしていた間に何があったか、教えてくれた。

あの後、私の登場に動揺したA級さんを無力化し、ドラゴンを瞬殺したらしい。
それから、周りの冒険者たちを起こして、私を自らおんぶしてくれて…夕方には帰ってきたんだって。

で、何故か…私が起きるのをずっと待っていたらしい。
私が起きたのは、深夜二時……ひぇ…そんな遅くまでそばにいてくれたの…?

私は衝撃にぷるぷる震えながら、話を聞き続けた。

「ごめんね…実は、あいつが化けの皮を剥がすのを待っていたんだ」

何でも、この派遣の仕事自体が、裏切り者をハメる作戦だった様だ。
敵の手のひらで踊るフリをして、実際に踊らされていたのはあのA級冒険者さんだった。

A級さんは、S級冒険者さんことレツさんに、物凄く劣等感を抱え嫉妬していて、悪いギルドの仕事を受けて、レツさんを殺そうとしていたらしい。

あのB級ダンジョンにS級ドラゴンが出現したのも、A級さんの罠だったらしい。
実はB級のダンジョンから、こっそりS級のダンジョンにパーティーを誘導していたと。

レツさんはそれがわかっていて、わざと罠に飛び込んだらしい。
A級さんが自分に斬りかかるのも想定していたみたい。

ちなみに…ボロボロに見えたギルドメンバーたちは幻覚で、実は安全な場所で眠らされていて無傷だった。
レツさんのスキルで戦ってるように見えたんだって。

え、じゃあ…私は余計な事を…邪魔をしてしまっていた…?

「…だけど、君の悲鳴が聞こえた時は驚いたよ。ドラゴンとあいつに意識を向けていたせいか…君が近づいてくる気配が全くしなかったからね」

「あっ…邪魔して…ごめんなさい…」

勝手に一人でパニクって、余計な仕事を増やしてしまった……いたたまれない…。
気配が全くしないか…ステルス系の魔法スキルは持ってないはずだけど……私、そんなに存在薄いのかな…。

だから私一人だけ眠らせ忘れたのかな?

「は?…邪魔なんて思ってないよ。久しぶりに誰かに守られて、少し嬉しかったし」 

「……え?」

抑揚なくサラッと言われた言葉に耳を疑った。
感情が読み取れない感じで言われたけど……彼の器の広さに感動した。
明らかに邪魔でしかなかったのに……これが、S級冒険者の度量……や、優しいよぉ…。

でも、何でこんな小者に守られて嬉しいの…?

「ま、君が無事で良かったけどさ…スキルのおかげで無傷でも、痛みは感じるんでしょ?ある程度緩和されるにしても痛いし、怖かったよな。巻き込んで本当にごめんね」 

「……あの…?」

え…?え…?何でレツさんが謝るの…?
間に飛び込んだのはパニクった私が悪いし…一人で勝手に自滅しただけなんだけど…?
微かに冷めた印象のキリッとした瞳を緩め、寄り添う様に言ってくれた。

あ、あれ……まだパニクってるのかな…?

私を見るレツさんの視線に包容力を感じてドクンッとする…。
そんなに感情を出してる訳じゃないのに……あっ、面倒見の良いタイプだからかな…。
レツさんは、ミッション中、他の冒険者たちにさりげなくフォローをしていたから。

「責任は取るよ。何でも言って」

でも、面倒見が良いにしても、何でここまでしてくれるんだろ…。
冒険者ならまだしも、私、荷物係だよ…?

それに、作戦のために利用されていたのだとしても、レツさんが私たちを助けてくれた事は変わらない。

むしろ、こんなに良くしてもらう立場じゃないよね…?

良くわからない…良くわからないけど…。

ーーー嬉しい…。

こんなそばで心配してもらえた事…両親が生きていた頃と、ギルドに保護された頃くらいだ…。

ギルドでは常に負傷者が出るし、忙しいし、みんな優しいけど自分の事で精一杯の人が多い…それ故、人間関係も業務的で効率重視になってしまい…正直、いつも一人で寂しかった…。

「…えっと…大丈夫、です」

「大丈夫…?何、遠慮してるの?…もしかして、素直に受け入れると角が立つと思ったの?そういうまどろっこしいパフォーマンスなら別にいらないーーー」

「や、あ、あの……もうっ、もうやって欲しい事、してもらったので…!」

「は?…してもらったって…何を?」

「え……ええと…」

「うん」

「……あの、どんな理由でも…心配して、起きるまで…そばにいてくれたから…」

「………………は?」

「あっ、えっと、だから…それが、一番、して欲しい事だったの……う、嬉しかったの…」

レツさんのポーカーフェイスが崩れて、呆気に取られた様にフリーズしてしまった…。

わ、私…そんなに馬鹿な事言っちゃったのかな…?
そうだよね…。
S級冒険者の『義務』で心配してくれただけだもんね…『何言ってんだこのチビ…勘違い乙』って感じだよね。

うう…ごめんなさい…。
あ、だめ…目がうるうるしてきたっ…や、泣いたら余計イタイ奴になっちゃう…。

私は布団を両手で、引き寄せて顔を半分隠した。

「…S級冒険者に恩を売ったこんな美味しい状況で、何も求めないなんて…気絶する程痛い思いをしたんだぞ?助ける魅力ってそれ以外なくない?それなのに『起きるまでそばにいるのが、一番して欲しい事』だって?は…?何この子…俺をS級冒険者じゃなくて、ただの青年として見てくれてるって事?え…じゃ、何?この子は純粋な思いで俺を助けてくれたって事?は?何それ…嬉しい」

ひゃ…レツさんは何か小声でぶつぶつ呟いている…!
何言ってるかわかんないけど、これは引かれてる…?

「レ、レツさん…?」

「!あ、ごめん。そういえば、お腹は空いてない?深夜でもう食堂しまってるから、俺が作るよ」

「へ…?えっ!?」

えっ?あ、えっ?
絶対呆れられて引かれたと思ったのに…?
何事もなかった様に、普通に戻った…?

「何か食べたいものある?人並みには作れるよ」

「や、あの……」

そこまでしてもらうのは申し訳ないって思ったけど…お店とかじゃない手料理って、久しく食べてないな…。

ここは謙虚に遠慮しなくちゃいけないのに…作って欲しくなっちゃっう…。
体調不良の時、母が良くお粥を作ってくれたなぁ…。

そう思ったせいか…無意識に呟いていた。

「お粥……」

「お粥ね、わかった」

ーーー『しまった!』と思ってレツさんを見たら…ポーカーフェイスを剥がして、優しく微笑んでいた。

「…………!」

私は思わず、その表情に見てフリーズしてしまって、レツさんが医務室から出ていっても固まっていた。

レツさんの表情が…幼い頃、熱を出して『お粥、すぐ作ってくるからね』って優しく微笑んでくれた亡くなった母と重なったからだ。

全然顔違うのに…性別も違うのに…。

え…気分が高揚して、胸がドキドキと高鳴って、頬が熱くなっている…?
ええ…もしかして、私…優しくされて、レツさんを好きになっちゃったの…?

だけど、この謎の安心感と心地好さは何だろう…?
良く…わからない…。





謎の感情に振り回されていると、バタンッという音が耳に入った。

あっ…レツさんが、戻って…。
ドアの方へ視線を向けると、彼が、湯気の上がるお皿と小さい小鉢を乗せたおぼんを片手で持っていた。

「お待たせ、ココちゃん」

「ーーー!」

ま、まただ…。
記憶の母と、また重なる、優しい表情…。

「…?どうしたの?」

あっ…レツさんが私の異変に気づいて、おぼんをサイドテーブルに置くと、すぐ横の椅子に座って顔をのぞきこんできた。

まずいっ…またボーッとしたら変に思われちゃう…!
ま、まずは、お礼…!お礼を言わないと…!

「えっ、あ、あの…」

「うん」

「…あ、ありが、とう、ございます…。誰かに作ってもらうご飯…嬉しい、です…」

「…………………え」

内気でビビりな私は、近くに顔があるとちゃんと見れないタイプ。
だけど、ちゃんと感謝を伝えたくて、両手でお布団をキュッと握りながらも、しっかりと顔を見て伝えた。

レツさんは一瞬呆気に取られたみたいな顔をした後、片手で顔を覆って『はー…だめだ…』と、下を向いてしまった。

えっ…わ、私…何か悪い事しちゃった…?

「…俺を色目で見ないで、媚びないで、欲がなくて…こんな質素なもので喜んでくれて…」

「レ、レツさん…?あの、私、ダメな事しちゃい、ました…?」

「は?全然。全然してないよ」

「ほ、ほんと…?」

な、何か、ぶつぶつ言ってましたが…?

「うん。ココちゃん、桃好き?」

「え…?は、はい…」

え、何でいきなり桃の話に…?

「良かった。剥いて切ってきたから食べてね」

「!!」

本当だっ…サイドテーブルに置かれたおぼんの小鉢を見ると、一口大に切られた桃が…!

う、嬉しい……これも母がお粥と一緒に用意してくれたな…ああ…懐かしい…。

「嬉しい…!ありがとうございますっ」

母との思い出があたたかく蘇った気がして、心の底から笑みが溢れた。

そういえば…病気の時だけ『あーん』して食べさせてくれたなぁ…。

「っ!…そう、良かった。どうせなら『あーん』してあげようか?」

「えっ…」

「なーんて…」

「ほ、ほんと…!?」

「え」

ちょうど思っていた事を、レツさんが言ってくれて、思わず食い付いてしまった。

ーーーだが、すぐに冷静になった。

「あっ…ちがっ、ご、ごめんなさい…」

ば、ばかぁ!何言って…!
レツさんは他人で、そんなに親しくもないのにっ…!
懐かしい気持ちに、つい、流されてしまった…!

「…………………………………………あーん」

「えっ…」

ええ!?
少し何かを考えた後、レツさんがお粥をすくった匙を口の前に差し出してきた。

「あ、えっと…」

「ほーら」

「っ!あ、あー」

優しい声で言われて、心がほわっと緩み、気づけば素直に匙を口に含んでいた。

…!お、美味しい…!
卵が入った、優しい味付けだ…。

「どう?不味くはないと思うけど…」

「美味しいっ…美味しいですっ!」

「!…そんなに美味しいの?」

「はいっ…ギルドに来てから一番美味しいですっ!」

「ーーーっ!……………………あ、だめ、可愛い」

わかった…。
何故、レツさんに胸が高鳴るのか…安心するのか…。

私……レツさんに『母性』を感じて、懐いたんだ…!

レツさんは、男の人だし…ただ、義務で優しくしてくれてるだけだと思うけど……私、この人、すき。



***



ーーー二週間後、またレツさんがギルドに来た。

何でも、裏切り者の件で巻き込んでしまったお詫びに、大型ミッションの助っ人に来てくれたらしい。

「えっ?また本部からレツ君来てくれたの!?」

「助っ人に来てくれたんだって!」

「やだっ、律儀っ!性格良すぎかっ!」

「ねー!強くて、イケメンで、性格良いとか最強過ぎない!?」

「あれで十八でしょ?しっかりしてるわー」

ギルドのお姉さんたちが、きゃっきゃと盛り上がって、レツさんをベタ褒めしていた。

ふふっ…レツさんが褒められていると何だか嬉しい。
料理もできますよー!って教えてあげたい。
さすが、レツさん。

寂しがり屋の私の本能が、レツさんの優しさを『母性』と『誤認識』してから、レツさんを見ると寂しくなくなる。

もう…私とレツさんは、関わる事はないのに。
そもそも話す機会も接点もないし、話せてもこの間の事を二言三言くらいだろう。

でも、いいの…!
遠くから見てるだけで、何だかポカポカした気持ちになって、安心するから…!

あの時の事があってから『私って、意外と寂しくないんだな』って、レツさんのおかげで思えたし!

さあ、レツさんが仕事をしやすい様に、しっかり準備してサポートしないと…!

えーと…結構長い遠征になるから、テントと寝具と食糧…あっ、綺麗な水もいっぱい『アイテムボックス』に入れておかないと…!

「…………ちゃん…」

倉庫に行って、何があるか確認して、リスト作って…。

「ココちゃん」

「!?」

私を呼ぶ声と共に、トンッ…と、後頭部があたたかくて固い何かにぶつかった。
そして、よろけた体を優しく支えてくれた。

え、こ、この声…。

「何してるの?」

見上げると…レツさんが覗き込むように下を向いていて、か、顔がとても近かった。

び、びっくり…!
でも…彼の温もりに、ほわんっ…と緩んだリラックスした気分になる。安心する…。

「レツ、さん…?」

「うん、俺だよ」

だけど、何で私に構ってくれたんだろ…?
ニコリと優しく笑うレツさんを不思議そうに見詰めてしまった。

「何で…?」

「何?俺がココちゃんに会いに来ちゃダメなの?」

「!?う、ううんっ…!う、嬉しいっ…」

思わず、体を支えてくれた片手をキュッと掴んでしまった。
あれ…レツさん…何か一瞬、体に力が入った…?

「ん"っ……ふーん、そう」

「でも、お仕事、良いんですか…?」

「うん、今日は打ち合わせだけだし」

「そうですか…」

打ち合わせだけかぁ…じゃあ今日は、もう宿屋に帰っちゃうのかな…ちょっと寂しいな…。

でも!プライベートな時間を邪魔しちゃダメだよね!

私はキュッと掴んでいた手を離し、ゆっくり体を離すと、丁寧に会釈をしてその場を去ろうとした。

「こらこらこら何処行くの」

「きゃっ!?」

背を向けて一歩踏み出そうとしたら、呆れた声でレツさんに引き留められた。
わあ…後ろから抱き締められちゃった…あったかい。

「あのねぇ…勝手に話終わらせないでくれる?俺、ココちゃんともっと一緒にいたいんだけど」

「え?」

ど、どういう事…?

「そもそも…大型ミッションに参加するのも、ココちゃんに会うための口実だし」

「え………………う、ん?」

私に会うためって…それはレツさんに何のメリットがあるの…?

「…わからない?ココちゃんの事が好きなんだよ」

「え…だ、誰が…?」

「はあぁあ…超鈍感…そんなところも可愛いけど…」

頭の上から、レツさんの深ぁいため息が聞こえた。
何かまずい事でも言っちゃったかな…。

「あ、あの…?」

「俺 は ココちゃんが 恋 愛 対 象 として 好 き なの」

「…………………え、えええええええええ」

「わ、凄いリアクション…」

す、すきっ!?
レツさんが、私をっ!?
れれれれれ恋愛対象と、してっ!?
えっ!?
何でっ!?
天変地異でも起こるのっ!?

「ねぇ、だめ?自分で言うのはどうかと思うけど…俺、超優良物件だよ?」

「だ、だめ、じゃないけどっ…」

「じゃあ、いいの?」

後ろから顔を覗き込まれ、食い付くように言われた。
レツさん、凄く真剣…。
自分の顔がどんどん熱くなるのがわかる。

「や、あ、あの…な、何で…?」

「あの時のやり取りで、可愛すぎて惚れたから」

「ほ、ほれっ!?」

う、うそ…!?
あ、あの時のやり取り…?
だ、だめだ…意味がわからない…!

状況についていけなくて、頭がパンクしそう…!

「……恋人にしてくれたら、毎朝起こしてあげるよ?」

「!」

レツさんの言葉に、思わず気持ちが高ぶる。
え…起きたら、誰かがいてくれる朝…?
いつも寂しい朝に…。

「朝ごはんも作ってあげる」

「!!」

あ、朝ごはん…!
誰かの手作りごはんが、朝から食べられる…!?

「それから…俺の専属荷物係になってもらおうかな」

「!!!」

こんなポカポカする人と、仕事も一緒にいられるのっ…?
しかも、せ、専属…!?

ーーーで、でも…。

「わ、私…弱くて、あんまり役に立たないから…迷惑かけちゃう…」

「うん?確かに戦闘力はないけど、役に立たない事は絶対にないよ?むしろ、立ち過ぎる」

「え…?」

「『アイテムボックス』なんて何処でも役に立つ貴重なスキルを持っているし、『頑丈』を持っているから足も引っ張らない……むしろ、盾になってくれるし……今後は絶対させないけど」

「え?え?」

「それに、君が庇ってくれた時…というか、何で気配に気づかなかったのもわかった。君、スキル『気配遮断』も知らない間に覚えているでしょ?これ、結構凄い事なんだよ?」

「け、気配、遮断…?え…?」

「やっぱり自覚がなかったか…」

レツさん曰く、恐らくS級のダンジョンに入った時には無意識に発動していたらしい。
本能で危険を察知したのかもね、と言われた。

…だから、一人だけ眠らされなかったのか。

「で、こんなに凄い子が、性格もめちゃくちゃ可愛い癒しキャラ…しかもS級の俺を、二心無く純粋な思いで助けてくれたんだよ?惚れるよねぇ」

「かわ…?ほ、ほれるかなぁ…?」

「惚れるね。寂しい思いはさせないよ」

「ーーー!」

だめ…そんな事言われたら…。
他でもないレツさんに言われ、一気にそれまで考えていた事がどうでも良くなった。

「………………一緒に、ごはん食べてくれる?」

「もちろん。…はー、本当に欲ないよねー」

た、食べてくれる…!

「…いっぱい、くっついても、いい…?」

「っ!いいよ…?え、可愛い…」

くっついてもいいんだ…!

「あ、後…一緒に寝てくれる…?」

「もちろん…って、え?むしろ、いいの…?」

寝てくれるんだ…!

「お、お風呂も…?」

「はあっ!?い、いいよ………俺、試されてる…?」

は、入ってくれるんだぁ…!
なら…いっか…♡

回された逞しい腕をキュッと両手で握り、私は『よろしくお願いします』と小さな声で答えた。
レツさんは嬉しそうに短く返事をすると…ほっぺにちゅーしてくれた…嬉しくて溶けちゃう。

この包容力…ママだ…ママみたい…。


***


「ココちゃん、美味しい?」

「は、はいっ…あの、でも…レツさん…」

「こら、敬語とさん付けは禁止って言ったよね?」

おでこにちゅーされて、あまぁい低音で優しく注意されてしまった…。
あれ…相変わらずぽかぽかする包容力なのに…何だか、帰ってきてから雰囲気が違う…。
でも嫌じゃないの…何かね、ドキドキするの…。

そう、今、二人で私のお家うちにいたりする。

あの直後、レツさ…レツ君は、すぐに私が借りている狭いボロアパートに泊まりたいと言ってきたのである。
お家でも一緒に過ごしたいとは言ったけど、冷静に考えて、誰かを招けるお家ではなかった件…私は項垂れた。

私が悩んでいると、レツ君に『今日は宿屋とか言わないでね?絶対ココちゃんのアパートが良い』と揺るぎない意志で言われてしまったため、断れなかった。

狭くてボロいアパートに着くと、レツ君は早速手料理を作ってくれた。
とっても美味しい、チキンとお豆のトマトシチューだ。

ママみたい…と感動していると、何故か膝に乗せられて、シチューを雛鳥のように食べさせてもらっていた。

「あ、ごめんなさい…じゃなくて、ごめんね…。そのレツ、く、君…私、一人で食べられるよ…?」

「ん?ココちゃんは『あーん』好きでしょ?」

好きだけど…あれは病気の時だからこそのやつで…!

「うんっ…だけど、レツ君が食べられないし…」

「!…ああ、そういう事。一緒にごはん食べたいって言ってたもんね」

そう言うと、先ほどから私に『あーん』していたスプーンでシチューを掬い、自分の口へと運んだ。

(か、かんせつ、きき、きしゅ…!)

その光景を見て、荒ぶる私の心臓、火照る顔。

あ、あれ…おかしいなぁ…レツ君といられてぽかぽか嬉しいのに…何でこんなに落ち着かないんだろ…。

「ね?大丈夫。俺も一緒に食べるから寂しくないよ…って、あっ…しまった。恋人でも一緒のスプーン使うの嫌なタイプ?」

「う、ううん…レツ君ならいいの…嬉しい…」

嬉しいけど、普通に食べてくれていいのに…。
優しい目で微笑まれ、言い聞かせるように甘やかされて…もう何も言えなくなってしまった。

「…は?なにそれめっちゃ心臓にクる、もっかい言って」

「えっ…?し、しんぞう…?」

レツ君は一瞬ピシリと固まると、すぐにキリッとした顔で良くわからない事を言ってきた。

「キュンときたって事」

「キュン…?そんな事言ったかな…」

「言った。はい、さっきより明瞭にかつ具体的に言ってみて。一人称を私じゃなくて『ココ』にして」

「あ、う、うん?わかった…が、がんばる!えっと…コ、ココは、レツ君の、お口に入ったスプーンなら、う、嬉しいよ!いっぱい、一緒に使おうね…!」

「ん"…はーーーっ……うん、可愛い。合格」

「!わぁい」

良くわからないけど合格したらしい!やったね…!
うーん…私が寂しがり屋だからいろいろ気遣ってくれてるのかも。

「あ、でも…重くない…?」

この抱っこも、私が『いっぱいくっついていい?』と聞いたからだ。
もしかして、初回から全部やってくれる気なのかな…?

「は?むしろ軽すぎだけど…ちゃんと食べてる?」

「た、食べてるよ」

「本当…?まあ、これからは俺がしっかり管理すればいいだけか。美味しいもの、たくさん作ってあげる」

「うん…ありがとう」

「ん、いいこ」

頭を撫でられながら『いいこ』と言われ、また『あーん』をされた。
レツ君…元々面倒見がいいからかな…凄くナチュラルに甘やかしてくれている。
頭がぽやーっとして、全部身を委ねたくなっちゃう。

それから…ゆっくり食事を終えました。



次はお風呂に入ったの。
レツ君が料理の合間に、掃除とお湯張りをしてくれていたらしい。

「…レツ君…何で私たち目を隠してるの…?」

「俺は煩悩を少しでも消すため。ココちゃんのは視覚的保護」

「ぼんのう…?しかく、保護…?」

「大丈夫、ココちゃんは何も気にせずリラックスして」

「うん…?」

私とレツ君は、何故かお互い目隠しをしてお風呂に入っていた。
レツ君が、服を脱ぐ前に『して』って言ったの。
これじゃ転んじゃうかも…と思っていたけど、レツ君が抱っこして移動してくれたので私が歩く事はなかった。

レツ君が泡立てたボディタオルを手渡してくれたので、難なく体を洗う事が出来たし…頭と背中はレツ君が洗ってくれた。

凄い…レツ君も見えてないはずなのに普段と変わらない動きが出来るなんて…。
さすがS級…気配で全てわかるんだね。

バスタブの中では、レツ君のお膝の上に座り、胸板に背中を預け、引き締まった右腕を抱き締め、頬擦りをして甘えていた。
私が小さすぎるのもあるけど、レツ君大きいなぁ…すっぽり包まれちゃった。
お尻に当たる立派な太もも…固いけど、居心地がとても良い。

思わず好きが溢れて、スリスリしている右腕を夢中で撫でてしまう。

「っ…ココちゃんは、俺の腕が好きなの?」

「え?あっ…嫌だった…?」

「全 然 っ。全然嫌じゃないよ。ココちゃんの好きにしてて。ただ、ずっと触ってるからそうなのかなって」

「そ、そっか!…うん、すき。抱き締めてくれて、あったかいの」

「っ…ありが、とう。ん"…っ…やばっ…」

珍しく、何かに詰まったように言うレツ君。
いつもはっきりものを言うのに、自分はまた変な事を言ってしまったのか…と考えてハッと気づく。

ーーーどうしよう…これじゃあ体目当ての女みたいになっちゃう!!

「レ、レツ君…!」

「ん…?どしたの?」

「あのねっ…腕が好きなのは、レツ君の腕だからだよっ!だから、あの…え、あれ…?レ、レツ君…?」

「っーーーはあっ……ごめん、ちょっと煩悩と戦ってた」

「ぼ、ぼんのう………っ!」

さっきから言ってるぼんのうって煩悩の事だよね。
目隠し…煩悩…って、もしかして…その、えっちなやつ…?  

「ーーー!!」

何で今まで気づかなかったんだろ…私とレツ君が一緒にお風呂って、男女が一緒にお風呂入るって事だよね。

さっきから感じてた違和感はこれだったんだ…!!

レツ君はママみたいだけど、このハリがあってしっかりした固い身体は紛れもなく男の子。

そして…ママっぽい包容力と違うと思ったのは、恋人になったからこその…あ、甘さ…なの?
ギルドのお姉さんたちに借りた小説みたいなやつの…。

え、ええ…じゃあ…レツ君は、チビな私なんかを、えっちな目で見てくれているって事…?

「ええええええええええっ」

「わ……どうしたの…」

後ろから呆れたような声がかけられる。

「め、目隠しって、そ、そそそ、その…!」

「?………!ああ、なるほど。意識してくれたんだ?」

「えっ!?あっ、やっ、うっ…」

ママに甘えるお子ちゃま気分の私を尊重してくれていたんだ…!
目隠しせずに入ったら、お互いの体を見て絶対意識しちゃうから!

どうしよう…急に恥ずかしくなってきた…!

「………無理なら俺が出るよ?」

「!?やだ…!」

気を利かせた提案に、意識せず否定の言葉がすぐ飛び出した。
上がろうとするレツ君を阻止するため、必死に腕にしがみついていた。

「っこら…もお。さっきからずっとおっぱいに抱き込まれて辛かったのに…こんな風にされたら本当に我慢出来なくなるよ?」

「おっぱい……?はっ…!!」

「その“今意識しました”みたいな反応はお約束だね。そして腕は抱き締めたままなんだね…」

恥ずかし過ぎるっ…。
でもって…レツ君に我慢をさせていたなんて…。

だけど、今手を離したらレツ君がお風呂から上がっちゃう…。

「ごめんなさいっ…」

「ん、いいよ。わかってるから」

「……………み、見たい…の?」

「……は?」

ーーー私が今の状況を受け入れるのは速かった。

つい昼間までレツ君の事をそういう風には考えなかったけど…やっぱり私は、レツ君という存在自体が大好きみたい。
だって…ドキドキするだけで、全然嫌じゃないんだもん。

ママっぽい一面ももちろん大好きだけど、それはレツ君自身がぽかぽか暖かいから。

「わ、私も…レツ君の、その……見たいから…目隠し外そ…?」

「はぁ………えっちな事しちゃうかもしれないよ?おっぱい触ってもいいの?」

わ…ホントの本当に、私にえっちな興味があるんだ…♡
恥ずかしいけど嬉しい…♡

「う、うんっ…!!私も…レツ君の、お、おっぱい…その、吸いたいの!」

私もレツ君のおっぱい好き…。
レツ君の胸の中ってぽかぽか幸せな気分になるから、おっぱいちゅうちゅうしたらもっとぽかぽかになると思うの。

「ほら無理でーーーは?そこ肯定するの?というか、別にいいけどさ…俺  の  胸  を  吸  う  の  ?」

「もみもみしながら吸うの……だ、め…?」

お湯の中で体を反転させてレツ君と向き合う。
今度はレツ君の胸板に胸を預け、おっぱい同士がこんにちはする。
レツ君が少しだけ焦ったように息をもらす。

「っ…ココちゃん…」

そして、自分の目隠しを外し…返事を待たずにレツ君の目隠しも外してしまった。

困った笑みを浮かべた優しい顔に、目が奪われる。
かきあげられた前髪、ゆるんだ目元、赤らんだ頬からは水滴が滴り、なんて扇情的なの。

だけど、それ以上に…満たされる心。

「やっぱり…顔が見えていた方がいい…安心、する…」

「っ……はぁあ。仕方ない甘えん坊さんだね。あーあ…えっちな顔しちゃって。可愛い」

「え…?」

レツ君が色っぽいのはわかるとして…まだまだ色々お子ちゃまな私が…?

「むっ!?」

「ん…」

疑問に頭を傾げていると、だんだんレツ君の顔が近づいてきて…ちゅーしていた。
軽く触れるだけの優しいちゅーをした後、甘やかすように唇をはみはみ甘噛みされた。

な、なにこれぇ…しゅごい…♡

力が抜けると、ゆっくり舌が入ってきて、よしよしするみたいに優しく絡めてくれる。
じっくりねっとり、まるでキャンディを溶かすみたいに絡まる。
たまに不意打ちみたいに舌先を吸われて、何故かおまたの奥がキュンとした。

「んむっ…んーっ…ん…♡」

お、おいちぃ…♡

「ちゅっ、じゅっ…はぁ…きもちぃ?」

「んー♡」

お口の中がとろとろになちゃった…♡
ぽーっと惚けていると、両脇に手を入れられて、上半身を持ち上げられて起こされた。

「はぁ…っ…これが、ココちゃんの可愛いおっぱいか…わ、綺麗な白い乳房に薄ピンクの乳首ってホントにあるんだね…えろい」

「あっ!?え…ご、ごめんね…あんまり、おっきく、ないの…」

「そう?手頃なサイズで超俺好み。乳輪が大きくて凄く可愛い」   

「ひゃ…!?あ、あっ…んっ…♡」

先っぽの周りを、筆でなぞるみたいに指でくるくるされちゃった…。
少し撫で撫でされただけなのに、ピリピリとした甘い痺れみたいなものが…またおまたがキュンとなって、体が熱いの。
これが…気持ちいいって事なのかな…?

「ん…ん…♡」

「柔くて最高っ……痛くない?」

「んっ♡きもち…♡」

「…っ、素直ないいこだね」

「あっ♡はぁ…あっ♡」

両手で優しく揉み揉みされて、ゆるい刺激に酔っているとまた不意打ちが。
揉み揉みされながら、人差し指で先っぽをカリカリ軽く引っ掻かれたり、ピンピン何度も弾かれちゃった。

溶けた思考の中、ふと…下を向くと、レツ君の上半身が視界に入る。
これが…レツ君のーーーなるほど、レツ君が言っていた『視覚的保護』の意味がようやくわかった。

肌を見た瞬間、頬が更に熱くなって、ドキドキがどんどん激しくなっていく。

「…れつくん…ここも、ここも、れつくんのおっぱいほしーの…」

「なっ…今のキた。ココちゃん、俺、おっぱい出ないよ?」

「んっ、のむの…!」

「あー…こらこらこら。わかったから」

目の前の引き締まった胸板に手を伸ばそうとしたら、手を握られて抱き寄せられた。

「ほら、どーぞ」

「ん…♡んぐっ…んぐっ…んぐっ」

浴室にちゅっちゅっ…という小さな音が響く。

「おー…ホントに吸ってる。まあ、可愛いからいっか。よしよし」

「んむっ♡」

私は頭をよしよしと撫でられて超ご機嫌だった。
美味しい…何も出ないけど美味しいの。
心がぽかぽかする…幸せ…♡

「あーあ、凄い生殺し…」





レツ君は私が満足するまで止める気配はなく、結局のぼせるまでちゅうちゅうしていた。
意識がぼーっとして、くらくらしてくると、異変に素早く気づいたレツ君に抱っこされてお風呂を上がっていた。

「…えろ」

ふわふわとした意識の中…体を拭いて、髪を魔法スキルで乾かし、下着とパジャマを着せてくれたのがわかった。

すぐにベッドまで運んでくれて、口移しでお水を飲ませてくれたの。
おくち、おいちぃ…♡

「ん…んっ…♡じゅっ、ぢゅっ…♡」

「っ…すっごい舌に吸い付いてくる…やば…」

「れちゅくん…おくち、もっとぉ…♡」

「あーはいはい。…こっちの気も知らないで」

あんまり良く覚えてないけど、お口でいっぱいお水飲ませてくれて嬉しかったなぁ。

今度はだんだん眠くなってきて、うとうとしていると、レツ君が横に寝転んで抱き締めてくれた。

「ん…おやちゅみ…すぅ…すぅ…」

「うん、おやすみ。ココちゃんーーーーーーはぁ…ちんこつらっ」

久しぶりに温もりに包まれながら眠り…とっても良い夢を見た気がする。


***


翌日…レツ君とギルドに行くと、冒険者のお姉さんたちに『どうやって“難攻不落のレツ”を落としたのっ!?』とか『どんな美女や権力者が口説いても塩対応だったのに…!』とか…凄い勢いで驚かれた。

意味がわからず固まっていると、レツ君に手を引かれた。

「ココちゃん、専属契約書にサインしに行こ。あ、ちなみに永久契約だからね」

「え、う、『えええええっ』

私の返事は、周りの驚きの声に潰されたのだった。


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