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ドM令嬢は意地悪されたい
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『着飾っても不細工は不細工なんだよ。こんなものつけるな』
十歳の時に参加した、王室主催のお茶会。
同じ年頃の…貴族の令嬢たちに綺麗、素敵と褒められていた髪飾りを、知り合いの令息に奪われて壊された。
乱暴に髪飾りを取られ、巻き込まれた髪の毛が数本、ブチッという音を出して抜けた。
メイドさんたちが綺麗にセットしてくれた髪型ももれなくボサボサになる。
そして、トドメとして知り合いの令息は、その髪飾りを足で思い切り踏み潰し破壊した。
私はその衝撃的な出来事を前に、何も言えないまま立ち尽くす事しかできなかった。
沸き上がる感情…乱れる呼吸……そう、これが…。
『はぁ…なにこれぇ…しゅごいよぉ…♡』
ーーー私が『マゾヒスト』に覚醒したきっかけである…!!!
私、レティ・ベルファストは、あれから立派なドMに成長して十六歳になりました…!
あのぞくぞくと身体中を駆け巡る未知の快感……ああ…今思い出しても思考が蕩けてしまう…♡
マゾに目覚めた私は、あの時の快感が薄れない様に、常に地味なドレスを身に着けている…!
髪型も三つ編みか、一つ縛り。
もちろん…髪飾りやアクセサリー、リボン、レース、宝石などの装飾品は一切身に付けない。
私には、そんなものもったいないもんね…♡
えへへ…♡
地味な装いをしていると、周りから馬鹿にした様な、蔑む様な視線を感じて最高にぞくぞくして気持ちいいの…!
ただ…私、侯爵家の令嬢。
高位貴族のため、おおっぴらに馬鹿にされたり、いじめられる事がないので、それがとても残念だ。
もっといじめて欲しいなぁ…。
だけどっ、いいの…!
私は、このまま、馬鹿にされながら地味でパッとしない人生を送るの…!
それが、私にとっての幸せ…♡
ーーーよしっ!今日も私にお似合いな惨めで地味な一日を送ろう…!
「レティお嬢様…今日こそは、こちらを…」
今日も充実したドMライフを過ごすため、朝から拳を握って気合いを入れていると、私の専属侍女のリリーが清楚なドレスを差し出してきた。
「ありがとう。でも、いつものにしますね」
「っ…はい…」
リリーの可愛い顔が、しょぼん…という沈んだ表情になる。
ごめんね、いつも断ってしまって。
そうだよね…侍女としては、ちゃんと『侯爵令嬢』としてふさわしい格好をさせたいよね…。
申し訳なさを感じつつ、クローゼットから渋い紺のシンプルなドレスを出してもらい、そちらに着替えた。
「あの…こちらのブルーのリボンだけでも……レティお嬢様の瞳の色と同じですし、アッシュゴールドのお髪に映えると思います」
「わあ、綺麗なリボンですね。せっかくリリーが用意してくれたのにつけるなんてもったいない…!このうさちゃんにつけて飾っておきましょう」
「お、お嬢様…」
私はリリーからリボンを受け取ると、白うさぎのぬいぐるみの首にリボンをつけた。
うん、私がつけるよりうんと可愛い。
侯爵家の侍女としてプロ意識が高い彼女は、私をどうにかして着飾ろうと毎日チャレンジしてくる。
こんな地味な格好している高位貴族なんて、普通いないからね。
毎日罪悪感に感じつつ、しっかり仕事をこなそうとする熱心さに、私は尊敬の念を抱いていた。
「いつもありがとう、リリー」
「っ…!」
そう言うと、何故かリリーは口元を抑え、私に一礼すると急いで部屋から去っていった。
朝の仕事が立て込んでいるのかもしれない…忙しそうなリリーに心の中でエールを送った。
さ、私もゆっくりしていられない。
午前中にお勉強を終わらせて、今日は『あの方』のお家にお呼ばれしている。
ーーーそう!
お茶会で髪飾りを破壊し、素晴らしい罵倒で私をドMに覚醒させて下さった方だ!
公爵令息のフラン・マーティン様だ。
この間たまたま舞踏会で再会して、なんと公爵邸に招待してくれたのだ。
マーティン公爵令息様は、ライトゴールドの髪に、綺麗な赤茶色の瞳、スマートな体型だが男らしく成長していた。
あの時と違って罵られる事もなく、丁寧な挨拶と社交辞令を受けたけど、鋭い瞳が私を冷たく突き刺している様に感じて、背中にぞくぞくした甘い痺れが走った。
ポーカーフェイスの裏で、どんな風に私を罵っているか…想像しただけで気持ちよくなってしまう。
ご招待頂いた理由はわからないけど…昔、社交の場で罵ったくらいだ…いじめてくれるのかもしれない…♡
私はわくわくドキドキしながら、机の引き出しを開けて、小さな箱を取り出した。
こっそり自腹でオーダーメイドした髪飾り。
わざと髪飾りをつけて行ったら、また『不細工が…』って罵りながら乱暴にしてくれるかも…と用意したものだ。
自分の好みに合わせて作った高級品を、私には分不相応だと否定して欲しい。
考えられる罵りパターンを全て想像し、にやにやして心を踊らせながら、その日のお勉強を終わらせた。
***
マーティン公爵邸に到着すると、たくさんの執事さんやメイドさんに丁重に迎えられた。
重要人物をお出迎えする様な……まるで偉人になった気分だった。さすが公爵家…普通のレベルが違う。
豪華な応接間に案内されて、香りでわかるくらい高級なお茶と、宝石の様に美しいスイーツが出された。
心地が良すぎるふかふかのソファーにちょこんと座り、ポカン…としながらマーティン公爵令息様を待っていた。
あれ…誰か別な方と勘違いしてないよね…?
婚約者でもないただの令嬢にここまでするかな…?
頭にたくさん疑問符を浮かべていると、扉をノックする音が聞こえ、マーティン公爵令息様が現れた。
「ごきげんよう。マーティン公爵令息様、本日はお招き頂き、ありがとうございます」
「こちらこそ、お越し頂きありがとうございます。お待たせしてごめんね。あ、俺の事はフランって呼んでね」
「フラン、様…?」
「っ!うん」
名前を呼ぶと、フラン様は嬉しそうに笑った。
す、すごい…!細やかな演技だ…!
この前もそうだったけど、過去の記憶とはかなりギャップがある。
昔は私の顔を見るだけでも、ムスッとして顔を背けていたのに。
すっかり大人な雰囲気で、ポーカーフェイスの笑顔が板についている。
ぶっきらぼうだった彼に、こんな穏やかな対応をされるなんて……そんなっ……そんな事されたらっ…!
暴言を吐かれる楽しみが倍になっちゃうよぉ…♡
この穏やかな様子から、どんな風に豹変して、どんな罵詈雑言が飛び出すのか楽しみで仕方ない。
期待がどんどん膨らむ。
「俺もレティと呼んでいいかな?」
「もちろんです。フラン様のお好きな様にお呼び下さい」
「……良かった」
ホッとした様に呟いたフラン様。
わあああ…本当に演技が細かい…!
演技しながら、心の中では私を馬鹿にしてくれてるのかな…♡
さあ、さあさあ…!
私に意地悪して下さいな…!
「……レティは、昔から本当に綺麗だね」
「………………………………………………………………はい?」
「手紙を書いても、会いに行っても君に会う事が出来ず…もう機会はないと思っていた」
「…え?」
フラン様から予想もしなかった衝撃的なお言葉を頂いて、私は今、とても混乱していた。
綺麗って……私が…?
昔から…?
手紙…?
会いに来た…?
え、どういう事…?
「あの、そ、それは…?」
「ん?……ああ、君は知らなかったのか」
「知らなかった…?」
「…幼い頃、君が…俺の心無い行動で、地味なドレスしか着なくなったと聞いた」
「………………?…?」
「俺は、綺麗な君を周りに取られたくなくて、嫉妬心であんな行動に出てしまった…本当に後悔して、君に謝罪したかった」
え……何の…?
フラン様は自嘲気味に沈んだ様子で話すけど…心当たりが一つもない。
「だけどそうか…俺からの手紙も訪問も、周りは君に伝えずブロックしていたんだな」
えええ、フラン様から手紙が来ていたのっ…!?
しかも会いに来てくれていたのに、私が知らないってどういう事っ…!?
知っていたら、ぜひお迎えして意地悪してもらったのに…。
「…子供だったとはいえ、許されない事をしてしまった。ごめんね、レティ」
状況が良くわからないのに、知らない情報がどんどん出て来て、フラン様の話は進んで、ついには謝られてしまった…。
「…あ、あの」
「今は素直に言えるよ……レティ、その髪飾り、凄く似合っている。綺麗だね」
「え…」
髪飾りが…似合っている…?綺麗…?
儚げに笑うフラン様は、申し訳なさそうなニュアンスで、それでも甘く、私に呟いた。
さっきもそうだけど…何でいきなり綺麗だなんて…。
せっかく罵ってもらえる様につけてきたのに……いや、これはこれで嬉しいけど…急展開過ぎて戸惑ってしまう。
本当に、何の話をしているのかわからない。
「レティ…許してくれなくてもいい。だけど君を二度と傷つけない。どうかっ…俺と婚約、して下さい…」
今度は婚約…!?
話が飛躍し過ぎていてーーーーーーーって、今、聞き捨てならない事を言ってなかった?
「二度と傷つけない…?」
これは…どういう意味…?
「うん、ずっと優しくすると誓うよ」
「っ…!!??」
ず、ずっと…優しく…?
え…じゃあ、もう意地悪してくれないの…?暴言も…?
「…そ、そんな…」
「…っ…やはりそうだよね…俺と婚約なんて…」
「いえ、あの、婚約はいいのですが…」
「…え?」
「もうっ、私に意地悪してくれないのですかっ!?」
「……………………は…?」
私は焦って、フラン様の隣に移動して詰め寄った。
フラン様の片手を両手でギュッと握り、懇願する様に胸元まで寄せた。
「っ!?レ、レティ…!?手が、む、胸に…!」
「私、フラン様から傷つけられた事なんて一度もありませんっ…だから、そんな事言わないでぇ…」
「そ、そんな事…?」
「ずっと優しくするなんてっ…!私の事は、もっと雑に、乱暴に扱って下さい…!」
「雑?ら、乱暴…!?」
「はいっ…♡あ、あの…私に…レティに、何か、命令してくだしゃい…♡」
「ええっ!?そんな事出来ないよ…!」
「っ!?…何で…?レティ、フラン様に何かしちゃいましたか…?だから意地悪してくれないの…?」
「ちょっと待って…!レティ、落ち着いて!」
「だから、命令してくれないの…?」
「ああっ…!泣かないで…!」
どうやら、私は知らない内に粗相をしてしまっていたらしい。
どうしよう…私をドMに覚醒させてくれた、他でもないフラン様から意地悪してもらえないなんて…!
「フ、フランさまぁ…レティ、悪い事しちゃったなら、お仕置きしてください…!」
「お、お仕置きっ!?ーーーって、ええええ!?」
私はフラン様にお尻を差し出した。
「お尻を、レティのお尻をっ…ペンペンしてくだしゃい…」
「レ、レティ…!これは、これは、ダメだって…!」
「え、だめ…?」
お仕置きなのに、何がダメなの…?
あっ…そ、そっか…スカート越しじゃなくて、ちゃんとお尻を見せないとお仕置きにならないよね…!
「わ、わかりましたぁ…!」
「!良かっ………」
「お尻、ちゃんと出します…!」
「良くないっ…!待って…!」
私は両わきからスカートの中に手を入れると、スッと白いおぱんつを下げた。
そして転ばない様に、ゆっくり足をくぐらせて脱いだのだった。
だけど、そこで気づいた。
私っ…すごいことやっちゃってる…♡
「ぬ、脱げましたぁ…♡」
「…う、うそっ…」
「後はっ…♡捲るだけです…♡」
あっ…フラン様のお顔が真っ赤になっちゃった。
これは…私を性的に見てくれているって事…?
う、嬉しいっ……じゃあ、お仕置きをして許してもらえたらっ…こ、今度はっ…性的な意地悪をしてもらえるって事だよね…?
「強く…おもいっきり強く、叩いてくだしゃい…♡」
「ーーーーーーーっ!?」
私は、スカートを捲ると、フラン様の手を自分のお尻に引き寄せた。
十歳の時に参加した、王室主催のお茶会。
同じ年頃の…貴族の令嬢たちに綺麗、素敵と褒められていた髪飾りを、知り合いの令息に奪われて壊された。
乱暴に髪飾りを取られ、巻き込まれた髪の毛が数本、ブチッという音を出して抜けた。
メイドさんたちが綺麗にセットしてくれた髪型ももれなくボサボサになる。
そして、トドメとして知り合いの令息は、その髪飾りを足で思い切り踏み潰し破壊した。
私はその衝撃的な出来事を前に、何も言えないまま立ち尽くす事しかできなかった。
沸き上がる感情…乱れる呼吸……そう、これが…。
『はぁ…なにこれぇ…しゅごいよぉ…♡』
ーーー私が『マゾヒスト』に覚醒したきっかけである…!!!
私、レティ・ベルファストは、あれから立派なドMに成長して十六歳になりました…!
あのぞくぞくと身体中を駆け巡る未知の快感……ああ…今思い出しても思考が蕩けてしまう…♡
マゾに目覚めた私は、あの時の快感が薄れない様に、常に地味なドレスを身に着けている…!
髪型も三つ編みか、一つ縛り。
もちろん…髪飾りやアクセサリー、リボン、レース、宝石などの装飾品は一切身に付けない。
私には、そんなものもったいないもんね…♡
えへへ…♡
地味な装いをしていると、周りから馬鹿にした様な、蔑む様な視線を感じて最高にぞくぞくして気持ちいいの…!
ただ…私、侯爵家の令嬢。
高位貴族のため、おおっぴらに馬鹿にされたり、いじめられる事がないので、それがとても残念だ。
もっといじめて欲しいなぁ…。
だけどっ、いいの…!
私は、このまま、馬鹿にされながら地味でパッとしない人生を送るの…!
それが、私にとっての幸せ…♡
ーーーよしっ!今日も私にお似合いな惨めで地味な一日を送ろう…!
「レティお嬢様…今日こそは、こちらを…」
今日も充実したドMライフを過ごすため、朝から拳を握って気合いを入れていると、私の専属侍女のリリーが清楚なドレスを差し出してきた。
「ありがとう。でも、いつものにしますね」
「っ…はい…」
リリーの可愛い顔が、しょぼん…という沈んだ表情になる。
ごめんね、いつも断ってしまって。
そうだよね…侍女としては、ちゃんと『侯爵令嬢』としてふさわしい格好をさせたいよね…。
申し訳なさを感じつつ、クローゼットから渋い紺のシンプルなドレスを出してもらい、そちらに着替えた。
「あの…こちらのブルーのリボンだけでも……レティお嬢様の瞳の色と同じですし、アッシュゴールドのお髪に映えると思います」
「わあ、綺麗なリボンですね。せっかくリリーが用意してくれたのにつけるなんてもったいない…!このうさちゃんにつけて飾っておきましょう」
「お、お嬢様…」
私はリリーからリボンを受け取ると、白うさぎのぬいぐるみの首にリボンをつけた。
うん、私がつけるよりうんと可愛い。
侯爵家の侍女としてプロ意識が高い彼女は、私をどうにかして着飾ろうと毎日チャレンジしてくる。
こんな地味な格好している高位貴族なんて、普通いないからね。
毎日罪悪感に感じつつ、しっかり仕事をこなそうとする熱心さに、私は尊敬の念を抱いていた。
「いつもありがとう、リリー」
「っ…!」
そう言うと、何故かリリーは口元を抑え、私に一礼すると急いで部屋から去っていった。
朝の仕事が立て込んでいるのかもしれない…忙しそうなリリーに心の中でエールを送った。
さ、私もゆっくりしていられない。
午前中にお勉強を終わらせて、今日は『あの方』のお家にお呼ばれしている。
ーーーそう!
お茶会で髪飾りを破壊し、素晴らしい罵倒で私をドMに覚醒させて下さった方だ!
公爵令息のフラン・マーティン様だ。
この間たまたま舞踏会で再会して、なんと公爵邸に招待してくれたのだ。
マーティン公爵令息様は、ライトゴールドの髪に、綺麗な赤茶色の瞳、スマートな体型だが男らしく成長していた。
あの時と違って罵られる事もなく、丁寧な挨拶と社交辞令を受けたけど、鋭い瞳が私を冷たく突き刺している様に感じて、背中にぞくぞくした甘い痺れが走った。
ポーカーフェイスの裏で、どんな風に私を罵っているか…想像しただけで気持ちよくなってしまう。
ご招待頂いた理由はわからないけど…昔、社交の場で罵ったくらいだ…いじめてくれるのかもしれない…♡
私はわくわくドキドキしながら、机の引き出しを開けて、小さな箱を取り出した。
こっそり自腹でオーダーメイドした髪飾り。
わざと髪飾りをつけて行ったら、また『不細工が…』って罵りながら乱暴にしてくれるかも…と用意したものだ。
自分の好みに合わせて作った高級品を、私には分不相応だと否定して欲しい。
考えられる罵りパターンを全て想像し、にやにやして心を踊らせながら、その日のお勉強を終わらせた。
***
マーティン公爵邸に到着すると、たくさんの執事さんやメイドさんに丁重に迎えられた。
重要人物をお出迎えする様な……まるで偉人になった気分だった。さすが公爵家…普通のレベルが違う。
豪華な応接間に案内されて、香りでわかるくらい高級なお茶と、宝石の様に美しいスイーツが出された。
心地が良すぎるふかふかのソファーにちょこんと座り、ポカン…としながらマーティン公爵令息様を待っていた。
あれ…誰か別な方と勘違いしてないよね…?
婚約者でもないただの令嬢にここまでするかな…?
頭にたくさん疑問符を浮かべていると、扉をノックする音が聞こえ、マーティン公爵令息様が現れた。
「ごきげんよう。マーティン公爵令息様、本日はお招き頂き、ありがとうございます」
「こちらこそ、お越し頂きありがとうございます。お待たせしてごめんね。あ、俺の事はフランって呼んでね」
「フラン、様…?」
「っ!うん」
名前を呼ぶと、フラン様は嬉しそうに笑った。
す、すごい…!細やかな演技だ…!
この前もそうだったけど、過去の記憶とはかなりギャップがある。
昔は私の顔を見るだけでも、ムスッとして顔を背けていたのに。
すっかり大人な雰囲気で、ポーカーフェイスの笑顔が板についている。
ぶっきらぼうだった彼に、こんな穏やかな対応をされるなんて……そんなっ……そんな事されたらっ…!
暴言を吐かれる楽しみが倍になっちゃうよぉ…♡
この穏やかな様子から、どんな風に豹変して、どんな罵詈雑言が飛び出すのか楽しみで仕方ない。
期待がどんどん膨らむ。
「俺もレティと呼んでいいかな?」
「もちろんです。フラン様のお好きな様にお呼び下さい」
「……良かった」
ホッとした様に呟いたフラン様。
わあああ…本当に演技が細かい…!
演技しながら、心の中では私を馬鹿にしてくれてるのかな…♡
さあ、さあさあ…!
私に意地悪して下さいな…!
「……レティは、昔から本当に綺麗だね」
「………………………………………………………………はい?」
「手紙を書いても、会いに行っても君に会う事が出来ず…もう機会はないと思っていた」
「…え?」
フラン様から予想もしなかった衝撃的なお言葉を頂いて、私は今、とても混乱していた。
綺麗って……私が…?
昔から…?
手紙…?
会いに来た…?
え、どういう事…?
「あの、そ、それは…?」
「ん?……ああ、君は知らなかったのか」
「知らなかった…?」
「…幼い頃、君が…俺の心無い行動で、地味なドレスしか着なくなったと聞いた」
「………………?…?」
「俺は、綺麗な君を周りに取られたくなくて、嫉妬心であんな行動に出てしまった…本当に後悔して、君に謝罪したかった」
え……何の…?
フラン様は自嘲気味に沈んだ様子で話すけど…心当たりが一つもない。
「だけどそうか…俺からの手紙も訪問も、周りは君に伝えずブロックしていたんだな」
えええ、フラン様から手紙が来ていたのっ…!?
しかも会いに来てくれていたのに、私が知らないってどういう事っ…!?
知っていたら、ぜひお迎えして意地悪してもらったのに…。
「…子供だったとはいえ、許されない事をしてしまった。ごめんね、レティ」
状況が良くわからないのに、知らない情報がどんどん出て来て、フラン様の話は進んで、ついには謝られてしまった…。
「…あ、あの」
「今は素直に言えるよ……レティ、その髪飾り、凄く似合っている。綺麗だね」
「え…」
髪飾りが…似合っている…?綺麗…?
儚げに笑うフラン様は、申し訳なさそうなニュアンスで、それでも甘く、私に呟いた。
さっきもそうだけど…何でいきなり綺麗だなんて…。
せっかく罵ってもらえる様につけてきたのに……いや、これはこれで嬉しいけど…急展開過ぎて戸惑ってしまう。
本当に、何の話をしているのかわからない。
「レティ…許してくれなくてもいい。だけど君を二度と傷つけない。どうかっ…俺と婚約、して下さい…」
今度は婚約…!?
話が飛躍し過ぎていてーーーーーーーって、今、聞き捨てならない事を言ってなかった?
「二度と傷つけない…?」
これは…どういう意味…?
「うん、ずっと優しくすると誓うよ」
「っ…!!??」
ず、ずっと…優しく…?
え…じゃあ、もう意地悪してくれないの…?暴言も…?
「…そ、そんな…」
「…っ…やはりそうだよね…俺と婚約なんて…」
「いえ、あの、婚約はいいのですが…」
「…え?」
「もうっ、私に意地悪してくれないのですかっ!?」
「……………………は…?」
私は焦って、フラン様の隣に移動して詰め寄った。
フラン様の片手を両手でギュッと握り、懇願する様に胸元まで寄せた。
「っ!?レ、レティ…!?手が、む、胸に…!」
「私、フラン様から傷つけられた事なんて一度もありませんっ…だから、そんな事言わないでぇ…」
「そ、そんな事…?」
「ずっと優しくするなんてっ…!私の事は、もっと雑に、乱暴に扱って下さい…!」
「雑?ら、乱暴…!?」
「はいっ…♡あ、あの…私に…レティに、何か、命令してくだしゃい…♡」
「ええっ!?そんな事出来ないよ…!」
「っ!?…何で…?レティ、フラン様に何かしちゃいましたか…?だから意地悪してくれないの…?」
「ちょっと待って…!レティ、落ち着いて!」
「だから、命令してくれないの…?」
「ああっ…!泣かないで…!」
どうやら、私は知らない内に粗相をしてしまっていたらしい。
どうしよう…私をドMに覚醒させてくれた、他でもないフラン様から意地悪してもらえないなんて…!
「フ、フランさまぁ…レティ、悪い事しちゃったなら、お仕置きしてください…!」
「お、お仕置きっ!?ーーーって、ええええ!?」
私はフラン様にお尻を差し出した。
「お尻を、レティのお尻をっ…ペンペンしてくだしゃい…」
「レ、レティ…!これは、これは、ダメだって…!」
「え、だめ…?」
お仕置きなのに、何がダメなの…?
あっ…そ、そっか…スカート越しじゃなくて、ちゃんとお尻を見せないとお仕置きにならないよね…!
「わ、わかりましたぁ…!」
「!良かっ………」
「お尻、ちゃんと出します…!」
「良くないっ…!待って…!」
私は両わきからスカートの中に手を入れると、スッと白いおぱんつを下げた。
そして転ばない様に、ゆっくり足をくぐらせて脱いだのだった。
だけど、そこで気づいた。
私っ…すごいことやっちゃってる…♡
「ぬ、脱げましたぁ…♡」
「…う、うそっ…」
「後はっ…♡捲るだけです…♡」
あっ…フラン様のお顔が真っ赤になっちゃった。
これは…私を性的に見てくれているって事…?
う、嬉しいっ……じゃあ、お仕置きをして許してもらえたらっ…こ、今度はっ…性的な意地悪をしてもらえるって事だよね…?
「強く…おもいっきり強く、叩いてくだしゃい…♡」
「ーーーーーーーっ!?」
私は、スカートを捲ると、フラン様の手を自分のお尻に引き寄せた。
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