ざまぁされたはずの悪役令嬢が戻ってきた!?  しかも、今度は復讐のため、溺愛ルートを目指すようです。 ~えっ、ちょ

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4 高橋由里,4

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     四

 最悪の形で終わりを迎えた由里の初恋。
 それを一番近くで見つめてきた親友は、大きくため息を吐いた。
「……多分だけど、さ。アンタの妹も、由里の気持ちに気付いてたと思うよ?」
「……。」
 紗枝に指摘されるまでもない。由里も何となくそう思っていた。
 妹の咲良は、姉の由里に殊更見せつけるように結婚式の準備に励んでいたし、その前の付き合っている時もそれとなく母と恋バナをしている態で由里に聞かせていたような気がする。きっと、妹は自慢と優越感と自分のモノだと誇示するようで素敵な恋人を見せびらかすような気持ちで、姉の報われぬ初恋を上から見下ろしていたのだ。
 それが分かっていても由里に出来ることなどなかった。敗者に出来たのは、ただ下唇を噛み締めじっと耐えることくらいだ。
「……でも、咲良を選んだのは陽介君だから……。」
「はぁ……、由里。お人好しにも程があるよ。」
 親友はそう由里のことを評価してくれるが、由里自身は自分のことをお人好しなどと思ったことはない。『選んだのは、彼。』それは、自分を無理矢理納得させるための方便で、心の中に渦巻く嫉妬や羨望を誤魔化すためでしかないのだ。
 本当に性格がよくお人好しの人間は、こんなどす黒い感情を屁理屈で誤魔化す必要などないだろう。
「……。」
 自己嫌悪に陥り、俯く由里。
 室内には重苦しい空気が満ちていく。
 そんな空気を払拭しようと、紗枝は立ち上がる。
 そして、そっと部屋の隅に置かれた本棚の中から一つの本を引き出した。
 休憩室は待機場所としても使われるため、時間を潰すように適当な本が用意されており、紗枝が引き出したのもそんな本の中の一冊だと思われる。
 ぱらぱらと中を確認した後、由里にその本を差し出す。
「由里はさ、もっとずる賢くなっていいと思う。」
 紗枝の差し出した本のピンク色の表紙には、キラキラとした文字で『愛され女子になる方法』と書かれていた。いわゆる恋愛ハウツー本の類だろう。結婚式場に何故こんな本があるのかと由里は不思議に思って眺めた。
「あざといくらいじゃないと、今の時代、幸せなんか掴めないよ?」
 紗枝はあざと女子と呼ばれる者たちとは一線を画す竹を割ったような性格だが、そんなふうに感じているとは思ってもみなかった。由里とは違い、人の目を引く華やかな美貌を持つ紗枝にも、紗枝なりの悩みがあるのだろうか?
「男って、こういうのにすぐ引っかかるんだから。」
 苦々しい響きでぼやき、紗枝はピンクの表紙を睨みつけていた。
 どうやら、何かイロイロと思うことがありそうだ。
 ここは結婚式場とはいえ、参加者の中には勝ち組の人間ばかりが揃うわけではない。この本がここにあるのも、もしかしたら需要があってのことかもしれないと由里は少しだけ安堵していた。幸せを掴もうとしてもがき苦しんでいるのは、自分だけではないのだろう。
「くだらないテクニックかもしれないし、使えるかも分かんないけど……。読んでみたら?暇つぶしにはなるかも?」
「ふふふ。」
 本に対して仇のようにどこか憎々しげに語る紗枝に、由里は思わず笑ってしまう。
 ようやく由里が笑ったことに安心して、紗枝は歩き出す。
「ちょっと待ってて。二人で何か飲みながら、その本でもこき下ろそうよ。」
「こき下ろすの?」
「あったりまえでしょ?」
 紗枝は指を慣らすように両の拳を勢いよく握り合わせると、弾む足取りで部屋を出ていった。
 親友の姿を見送った後、由里はそっとその本に手を伸ばす。
「愛され女子か……。」
 初恋の男にすら愛されなかった自分が、果たして誰かに愛されることなどあるのだろうか?
 あまり自信はなかったが、それでも暇つぶしとしてこの本を肴に紗枝と盛り上がるのは悪くない。芸達者な紗枝の事だから、本に書いてあるテクニックを滑稽なくらい大袈裟に再現してくれることだろう。
 この会場に来て、初めて由里の心が軽くなっていた。
 だが、その直後、室内に異変が起きる。
「へっ?」
 訳が分からず間抜けな声を出す由里。
 突然、室内に光が溢れたと思ったら、発光しているのはどうも由里らしい。
 どうしていいか分からず、慌てふためく由里。
 だが、そんな状況でも光は収まるどころか、だんだん強くなっていく。
 あまりに強くなっていく光に目が開けていられず、目を閉じる由里。
 瞼の裏すら白くなり、強烈な光に包まれていく。
 雲一つない空に雷鳴が響き渡り、室内の光が一瞬で消失する。
 光が消えた室内からは、由里の姿が完全に消えていた。
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