ざまぁされたはずの悪役令嬢が戻ってきた!?  しかも、今度は復讐のため、溺愛ルートを目指すようです。 ~えっ、ちょ

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59 ミハイル・アイゼンバッハ,17

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      五十九

 近衛騎士団長ミハイル・アイゼンバッハは緊迫した事態を前に、それでも何とか冷静さを維持しながら城内を急いでいた。
(……こんな時に、何故リリィは見つからんのだ。どこに行った?)
 城内を急ぎ、先程からリリィの姿を探してはいるが一向に見つかる気配はない。
 既に、メイド長の報告にあった倉庫まではやって来ていたのだが、その途中でも倉庫にもリリィの姿は見当たらなかった。
 時間が経つにつれ、ミハイルの嫌な予感は緊迫感を伴い増していく。
 だが、どれだけミハイルが左右に視線を彷徨わせても、視界に入るメイドの中にリリィは存在しなかった。
 そんな時だ。足早に城内を急ぐミハイルの耳に、遠くから悲鳴のような声が聞こえてきたのは。
 ミハイルはハッと立ち止まり、悲鳴が聞こえてきた方角を確かめた。
(あちらは牢の方か?)
 悲鳴が発せられた場所まではまだ距離があるため、その悲鳴が誰の物か判別は出来なかった。
 ただ、女性の物であることは察せられた。
 牢には今、女性の囚人はいない。
 ということは、あの辺りで何か変事が起きたということに他ならない。
 ミハイルは一瞬で判断を下し、悲鳴の聞こえてきた牢の方角へと足を向けることにした。
(……何が起きたかは分からぬが、確認しておいた方がいいな。)
 先程、部下から齎されたのはリリィを狙う刺客が城内に侵入・潜伏しているという報告だ。
 あの悲鳴がリリィの物かは分からぬが、刺客関連の物である可能性もある。
 確認をしつつ、リリィの姿を探すことにして、ミハイルは止めていた足を即座に動かし始めた。
(既にリリィがメイド長の元に戻っていればよいが……。万が一ということもある。)
 もしもあの悲鳴が、ミハイルが想定していたような変事ではなかったのなら、確認の後、また改めて別の場所に向かえばいい。
 即断即決、臨機応変が騎士団長には常に求められていた。
 悲鳴の元に駆けつけようとしているミハイルだが、冷静さを残した脳内の隅では別の可能性も考えていた。
 果たして、何か変事が起きたとして、リリィというあの悪女が悲鳴など上げるものだろうか?
 もしかすると、これら全てがあの悪女の計画の一部なのではないのか?
 ただ、そこまで考えては見たが、それ以上はミハイルにも分からなかった。
 あのリリィ・マクラクランはこの城に戻ってからというもの、その全てが理解不能なのだ。修道院に追放するまでの方が、まだ分かりやすかった。
 その時、ミハイルの脳内に、剣を向けられて怯えていたリリィ・マクラクランの姿が浮かぶ。
(……いったい、何なのだ!?あの女は。)
 リリィに惑わされそうな気分になり、ミハイルは気持ちを切り替えるために頭を振った。そうして脳内からリリィの残像を消し去ると、ミハイルはしっかりと前だけを見据えた。
 何が起きていたとしても、この目でしっかりと現実を見極めればいい。
 そう自分を信じて、剣の柄に手を掛ける。
 ミハイルは騎士だ。
 どんな時も、その心に宿る騎士道精神の元、行動すればいいだけだ。
 悲鳴が聞こえてきた方角に走り続けるミハイルの耳に、更に悲鳴が届く。
 悲鳴は先程よりも近い位置から聞こえてきた。
 どうやら変事は続いているようで、ミハイルはその場所に近づいているようだ。
 ミハイルが走っているのは、草木が茂り、木々が乱立するせいで先が見通せない場所である。
 何が起きているかはまだ距離があるここからでは全く確認できない。
 断続的に聞こえてくる悲鳴を頼りに、ミハイルは変事の中心に急いでいた。
 だが、次の瞬間、ミハイルは異変を感じて立ち止まる。
 ミハイルの視線のすぐ先の草むらが、音を立てた。
「っ!?」
 
 ガサガサ

 ミハイルが警戒するのも束の間、草むらからは白い影が姿を見せた。
「っ!!」
 立ち止まったミハイルの足元を一目散に走り抜けていったのは、見覚えのある白い子猫であった。


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