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第二章 ついに二学期(ゲーム)スタート!!⑥
六
(あぶねぇ、あぶねぇ……。)
明人は心の中で流れた冷や汗を心の中で拭っていた。
もちろん、表面上はいつもの冷徹な表情を崩すことはない。水嶋シュウという男は、殆ど表情筋を動かすことはないし、動かし方すら覚えてないのではないかと思うほど、いつも顔色を変えることはない。時々、動かす時があるとすれば、皮肉げに笑う時だけである。
二学期の始業式が終わり、今は昼食の時間。
明人は会長のスオウと共に、校舎内にある学食へとやって来ていた。
いつもの日替わり定食を頼み、さして味に不満があるわけでもないが満足しているわけでもない表情で食べ始める。もちろん、明人的にはとても美味しい昼食である。それが水嶋シュウの顔を使って表現できないだけである。
「聞いてるか?シュウ。」
「……ああ。」
席に着いてまもなく、スオウは今朝あった出来事を話し始めた。
その話の内容に、明人は一人で気づかれることなく冷や汗をかいていたのである。
「編入なんて、聞いたことねぇだろ?珍しいこともあるもんだよな?」
「……そうだな。」
スオウが話しているのは、今朝出会った一人の生徒の話だ。
明人はさして興味もなさそうな声のトーンで相槌を打っていたが、本当は聞き耳を立てて聴くくらいには興味津々だった。ただし、興味があるのは、その生徒にではなく、その生徒とスオウの関係やその生徒に対してのスオウの感情にである。
「そいつ、大慌てでよ。初日から遅刻なんて、あんまりにも度胸が据わってるだろ?」
「遅刻だったのか?」
「いや?まあ、ギリギリってとこかな?」
大雑把なスオウがこう言うならば、時間に対してきっちりとした他のメンバーなら遅刻だったということだ。まあ、今日の当番がスオウだったことで、その生徒はラッキーだったということになる。
「でもな、よくよく話を聞いてみたらよ。ちょっと、不憫な奴でな。朝から迷子に遭遇するわ、道に迷うわ、その上ばあさんを助けるわで、大活躍だったらしい。」
道に迷うのは活躍とは言えないが、明人は細かいことは指摘しないことにした。
その生徒との初対面はスオウの中では上々だったらしく、さっきからその生徒の話題は止まらない。
明人は内心でよしよしとガッツポーズを決めていた。
「一年の鈴木ハルトって名前だ。お前も会ったら面白れぇぞ。」
一年の編入生・鈴木ハルト。
それは、この異世界の元になっているBLアドベンチャーゲーム『学園ハーレム』における主人公である。
素直で健気。巻き込まれ体質。頑張り屋。一癖も二癖もある数々の攻略キャラ達のハートを悉く射止める総受けの男である。
今朝、明人が何も気づかずに閉門作業の当番へとうかうかと出かけて行ったのならば、主人公に出会っていたのは水嶋シュウであったに違いない。
そうなれば、きっと水嶋シュウなら走ってやって来た主人公・鈴木ハルトの目の前で門を閉め、門を挟んで遅刻を冷たく言い渡した挙句、主人公の言い分も聞かずにその場に置き去りにしたに違いない。
本来ならば、そんな最悪な出会い方をすれば、二度と近づきたくないと思い、恋愛関係になどならないが、何せ水嶋シュウというのはド級のサディストで鬼畜である上、主人公は場合によってはその対応にめげないド級のマゾヒストと呼んでも過言ではない性癖を開花させる可能性を秘めているのだ。
何が切っ掛けになるか分からない以上、出来るだけ近づかない方が身のためであるし、何なら他の人間とのルートで幸せになってもらうために積極的に主人公の元に派遣していった方が建設的だ。
嬉しそうに今朝会った編入生の話をしているスオウを見詰めながら、明人は自分のこれからの未来のためにも親友の幸せのためにも、要注意人物である主人公・鈴木ハルトと出来るだけ遭遇せず関わらずに学園生活を送ろうと心に固く誓っていたのだった。
(あぶねぇ、あぶねぇ……。)
明人は心の中で流れた冷や汗を心の中で拭っていた。
もちろん、表面上はいつもの冷徹な表情を崩すことはない。水嶋シュウという男は、殆ど表情筋を動かすことはないし、動かし方すら覚えてないのではないかと思うほど、いつも顔色を変えることはない。時々、動かす時があるとすれば、皮肉げに笑う時だけである。
二学期の始業式が終わり、今は昼食の時間。
明人は会長のスオウと共に、校舎内にある学食へとやって来ていた。
いつもの日替わり定食を頼み、さして味に不満があるわけでもないが満足しているわけでもない表情で食べ始める。もちろん、明人的にはとても美味しい昼食である。それが水嶋シュウの顔を使って表現できないだけである。
「聞いてるか?シュウ。」
「……ああ。」
席に着いてまもなく、スオウは今朝あった出来事を話し始めた。
その話の内容に、明人は一人で気づかれることなく冷や汗をかいていたのである。
「編入なんて、聞いたことねぇだろ?珍しいこともあるもんだよな?」
「……そうだな。」
スオウが話しているのは、今朝出会った一人の生徒の話だ。
明人はさして興味もなさそうな声のトーンで相槌を打っていたが、本当は聞き耳を立てて聴くくらいには興味津々だった。ただし、興味があるのは、その生徒にではなく、その生徒とスオウの関係やその生徒に対してのスオウの感情にである。
「そいつ、大慌てでよ。初日から遅刻なんて、あんまりにも度胸が据わってるだろ?」
「遅刻だったのか?」
「いや?まあ、ギリギリってとこかな?」
大雑把なスオウがこう言うならば、時間に対してきっちりとした他のメンバーなら遅刻だったということだ。まあ、今日の当番がスオウだったことで、その生徒はラッキーだったということになる。
「でもな、よくよく話を聞いてみたらよ。ちょっと、不憫な奴でな。朝から迷子に遭遇するわ、道に迷うわ、その上ばあさんを助けるわで、大活躍だったらしい。」
道に迷うのは活躍とは言えないが、明人は細かいことは指摘しないことにした。
その生徒との初対面はスオウの中では上々だったらしく、さっきからその生徒の話題は止まらない。
明人は内心でよしよしとガッツポーズを決めていた。
「一年の鈴木ハルトって名前だ。お前も会ったら面白れぇぞ。」
一年の編入生・鈴木ハルト。
それは、この異世界の元になっているBLアドベンチャーゲーム『学園ハーレム』における主人公である。
素直で健気。巻き込まれ体質。頑張り屋。一癖も二癖もある数々の攻略キャラ達のハートを悉く射止める総受けの男である。
今朝、明人が何も気づかずに閉門作業の当番へとうかうかと出かけて行ったのならば、主人公に出会っていたのは水嶋シュウであったに違いない。
そうなれば、きっと水嶋シュウなら走ってやって来た主人公・鈴木ハルトの目の前で門を閉め、門を挟んで遅刻を冷たく言い渡した挙句、主人公の言い分も聞かずにその場に置き去りにしたに違いない。
本来ならば、そんな最悪な出会い方をすれば、二度と近づきたくないと思い、恋愛関係になどならないが、何せ水嶋シュウというのはド級のサディストで鬼畜である上、主人公は場合によってはその対応にめげないド級のマゾヒストと呼んでも過言ではない性癖を開花させる可能性を秘めているのだ。
何が切っ掛けになるか分からない以上、出来るだけ近づかない方が身のためであるし、何なら他の人間とのルートで幸せになってもらうために積極的に主人公の元に派遣していった方が建設的だ。
嬉しそうに今朝会った編入生の話をしているスオウを見詰めながら、明人は自分のこれからの未来のためにも親友の幸せのためにも、要注意人物である主人公・鈴木ハルトと出来るだけ遭遇せず関わらずに学園生活を送ろうと心に固く誓っていたのだった。
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