桃源郷シリーズ

天鳥そら

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【閑話休題】オークション品:春の女神のリボン

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春の女神の持ち物だというリボン。色はピンク、ふちにはレースがついています。このリボンをどこかに結ぶだけで春風が吹く仕様となっております。極寒の北極、空気のない宇宙、真っ暗な深海、太陽が照り付ける砂漠でも。指に結ぶ、鞄に結ぶ、髪に結ぶ、それだけであたたかな春の風が吹きわたります。

かわいいお嬢さんが頭につければ、やわらかな風がそよぎ、ふわりと髪をなびかせること間違いなし。何百年も前につくられたものですが、一向に古びた様子は見せません。このリボンは名のある職人が、春の女神の息吹を織り込むことに成功した品物です。春の女神は職人の気質と腕を気に入り、特別に協力して作らせたのだとか。

春の風は人の心をやわらかくする効果があります。喧嘩した人と仲直りしたい。ギスギスした集まりの場に、リボンを結び穏やかな解決法を模索したい方にもお勧めです。ただ、あまりにのんびりした空気に流されて、後悔することがないよう、重大な決断をする際は避けて下さい。

それでは、春の女神のリボン、どなたが落札するのでしょうか。

高額と思われた春の女神のリボンは、思ったほど値が上がらずにすみました。最初の予算で落札できたことに、赤髪の少女はほっとします。自ら落札してみると豪語した手前、負けるわけにはいきません。父と兄という後ろ盾がある少女は、最初に大金を提示してまわりを圧倒し、さっさと落札してしまいました。競り合いを楽しみにしていた観客からは、不服そうなため息がもれましたが気にすることはありません。

闇オークションの品々をすべて回収できれば、さらに多くの額が少女にも転がり込んできます。

(これは投資よ)

銀髪の少女と隣に立っていたボディーガード、さらに二人の男のことを思い浮かべてにんまり笑います。

「面白そうな人たちじゃないの」

兄のジェイから話に聞くだけでしたが、俄然、興味がわきました。個人的に仲良くなっても良いと思っています。

「タカダ、次は何を盗れば良いのかしら」

タカダと呼ばれた男がごほんと咳ばらいをします。

「次は料理包丁の落札です」

自分が泥棒めいたことを口走ったことに気がつき、小さく舌を出しました。
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