はじまり

天鳥そら

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はじまり42

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~印象~ 


『シキという人物の印象はどうでしたか?』 

クローディアがキールに告白したその夜、三人は密談を始めました。 
あなたの印象でかまわないというキールに、ソウは靴屋の主人を 
思い浮かべます。 

『なかなか、骨のある方と見受けられました。』 

快活な表情の中に、吸い込まれそうなほど黒い瞳が輝いていた 
ことを思い出します。 

『思慮深く、誠実です』 

ふむと顎をなでて、ずばりと切り出しました。 

『クローディア姫と、二人でいた時の雰囲気を教えてください』 

単刀直入に問われて、ソウは一瞬息を詰め、困ったように 
微笑みました。 

『お似合いだと感じました』 

ただの感ですが、とつけたしたソウに、苦笑します。 

気を遣わなくていいよとの言葉に、ソウもヨウメイも 
困ったように顔を見合わせました。 

それだけ聞くと、しばらく視線をさ迷わせて考えを 
巡らせているようです。 
部屋の暖炉の炎がぱちりと音がして、キール王子が 
口を開きました。 

『直接会ってみたい』 

その言葉に、ヨウメイがやれやれとため息をつきながら 
地図を広げ、ソウがすみませんと言いながら、 
町と王宮内の詳細な資料を広げ始めました。 

この密談は、毎晩のように行われましたが、 
国王となるキール王子と王妃となるクローディアのための 
打ち合わせだと思われていましたので、特に不審に思われることは 
なかったのでした。 


つづく 

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