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はじまり73
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~秘密~
「それでは、クローディアは生きているのですね?」
興奮のあまり頬を高潮させ、瞳を煌かせる王妃に
落ち着くよう諭します。
国を出たわけやその後のことをごく簡単に話しました。
「だから、クローディアはキールじゃないと申し上げましたのよ」
シキという王族の一派でありながら、今では忘れ去られてしまった
一族の跡取りと出会い、キールに協力してもらって
国をでました。
国外の情報をキールに伝えるものの、クローディアの捜索の
目が厳しくて思うように動けなかったことを語ります。
不思議な友人との細かい内容を語るのは避け、とあるやんどころのない
方々の支援を受けて三人は世を去ったことにしました。
「わかりました」
先ほどまでの気落ちぶりはどこへやら、王妃は以前のように
しゃきっと背筋を伸ばして、王宮に立つ王妃の口ぶりへと
変化しました。
「私に、できることはありますか」
簡潔に問いかけるクリスティーヌに、ソウが話はじめます。
まずは、王の気をできるだけこの国に引き止めて欲しいこと、
キールとアカネの後ろ盾となり、それとなく支援してほしいこと。
国外で得た有益な情報をキールに渡すから、王妃が良いと感じたら
率先してキールとアカネの味方をしてほしいことを頼みました。
「あと、くれぐれも王には気をつけてください」
ソウに苦笑してうなづきます。
クローディアの訃報を聞いてもなかなか諦めず、
その子供たちをひきとって育てたいと、王妃に語っていたからです。
「頃合を見計らって、王妃から話して頂いてかまいません」
お任せしますと微笑んで、一杯のお茶を王妃にすすめます。
体に良いと聞いたものをお土産に持ってきました。
淡い桃色のお茶を王妃にすすめます。
甘くさわやかな香りに目を細め、美味しいと呟きました。
「ありがとう」
王妃は久々に穏やかな時間を過ごせたことが嬉しく、
思わず呟きました。
「お前たちは、私の自慢の子ですよ」
王宮で、このような素直な言葉を、王妃の口から一度も
聞いたことがありませんでした。
ソウは微笑んで、立ち上がり、別れを告げて王妃の部屋を
出て行きます。
ソウが扉の取っ手に手をかけたところで、王妃が声をかけました。
「ソウ、マリーには話してもいいかしら?」
「あなたが良いと感じたのなら」
振り返って微笑むと、そのまま、部屋を出て行きました。
その言葉にどうしようかと、王妃は思い悩みます。
でも、しばらくは自分だけの秘密にしておこうと思いました。
キールとアカネが落ち着いたら、とひとりごこち、
もう一度ティーカップに口をつけました。
マリーは、私の子を育ててくれましたからね
呟きともとれぬ小さな胸の中の声が、
カップの湯気にとけて消えていきました。
つづく
「それでは、クローディアは生きているのですね?」
興奮のあまり頬を高潮させ、瞳を煌かせる王妃に
落ち着くよう諭します。
国を出たわけやその後のことをごく簡単に話しました。
「だから、クローディアはキールじゃないと申し上げましたのよ」
シキという王族の一派でありながら、今では忘れ去られてしまった
一族の跡取りと出会い、キールに協力してもらって
国をでました。
国外の情報をキールに伝えるものの、クローディアの捜索の
目が厳しくて思うように動けなかったことを語ります。
不思議な友人との細かい内容を語るのは避け、とあるやんどころのない
方々の支援を受けて三人は世を去ったことにしました。
「わかりました」
先ほどまでの気落ちぶりはどこへやら、王妃は以前のように
しゃきっと背筋を伸ばして、王宮に立つ王妃の口ぶりへと
変化しました。
「私に、できることはありますか」
簡潔に問いかけるクリスティーヌに、ソウが話はじめます。
まずは、王の気をできるだけこの国に引き止めて欲しいこと、
キールとアカネの後ろ盾となり、それとなく支援してほしいこと。
国外で得た有益な情報をキールに渡すから、王妃が良いと感じたら
率先してキールとアカネの味方をしてほしいことを頼みました。
「あと、くれぐれも王には気をつけてください」
ソウに苦笑してうなづきます。
クローディアの訃報を聞いてもなかなか諦めず、
その子供たちをひきとって育てたいと、王妃に語っていたからです。
「頃合を見計らって、王妃から話して頂いてかまいません」
お任せしますと微笑んで、一杯のお茶を王妃にすすめます。
体に良いと聞いたものをお土産に持ってきました。
淡い桃色のお茶を王妃にすすめます。
甘くさわやかな香りに目を細め、美味しいと呟きました。
「ありがとう」
王妃は久々に穏やかな時間を過ごせたことが嬉しく、
思わず呟きました。
「お前たちは、私の自慢の子ですよ」
王宮で、このような素直な言葉を、王妃の口から一度も
聞いたことがありませんでした。
ソウは微笑んで、立ち上がり、別れを告げて王妃の部屋を
出て行きます。
ソウが扉の取っ手に手をかけたところで、王妃が声をかけました。
「ソウ、マリーには話してもいいかしら?」
「あなたが良いと感じたのなら」
振り返って微笑むと、そのまま、部屋を出て行きました。
その言葉にどうしようかと、王妃は思い悩みます。
でも、しばらくは自分だけの秘密にしておこうと思いました。
キールとアカネが落ち着いたら、とひとりごこち、
もう一度ティーカップに口をつけました。
マリーは、私の子を育ててくれましたからね
呟きともとれぬ小さな胸の中の声が、
カップの湯気にとけて消えていきました。
つづく
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