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【開始】
はじまり
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「うっひょー! 今日はラッキーだぜー! 俺様最強ゥ!」
街外れにある、どこにでもありそうな森の中、いったい何が幸運なのか燥ぎ回る青年剣士がひとり。
そんな青年剣士と同行しているのは、ローブを纏った魔法使いがふたり。
太めの巨体で、いかつい斧を担ぐ斧戦士がひとり。
「うっす! たまたま出くわしたモンスターが、育っていて良かったっす!」
「うん、うん。今日だけで、経験値五万は稼げたよー!」
「……レアキャラ様さま……です」
一同は青年剣士に尻を叩かれるように、喜びを分かちあう。
レアキャラとは見て聞いて名のごとく、レアなキャラだ。
この世界において、経験値と称されるものが全てであり、レベルのような概念は存在しない。
つまり経験値の多い者が、より強者と言える。
青年剣士プラスαの一同が、本日稼いだ経験値は約五万EXPだが、たかが街外れの森で五万EXPも稼ぐことは稀。仮に、この森で一日中モンスターと戦い続けたとしても、稼げる経験値は一万前後が良いところ。青年剣士がアホ面下げて燥ぐのは当然なのかもしれない。もしくは、ただのおバカさん。
だが、何故五万EXPもの経験値を手に入れることが出来たのか。
ほぼ三人同時に話し始めたため、ばらばら合唱状態により誰が言ったのかを把握できないが、何者かが洩らしたレアキャラという通称にある。
一同がちょっとしたお祭り騒ぎとなっているのは、レアキャラで稼げる経験値の多さ。
例えば同じモンスターを二体倒したとしよう。見た目が同じモンスターでもレアキャラと称される一体と、レアではない一体では何十倍から何百倍も経験値に差が出る。
そのレアキャラに偶然にも出くわし、運よく倒せたからこその五万EXPであり、それは喜んで然るべき感情。
だからこそこの世界で活動する者たちは、レアキャラを愛して止まない。
しかし……、だ。
「でも、運よく倒せて良かったよねー。わたしチョット怖かったなー」
事後のため笑顔ではあるが、火の女性魔法使いはホッとした様子を見せた。
レアキャラは稼げる経験値も多いが、通常のモンスターと比べ遙かに強い。倒すことは苦行であり、場合によっては逃げることすら儘ならない。
火の女性魔法使いが、その豊満な胸を撫で下ろしたのは、苦戦を強いられ全員が無事生還できたからであろう。
そして彼女のように安心する者もいれば、お調子者もいる。
「そっか? あんなん余裕じゃね? 俺たちほら結構強いほうじゃん? まあ……俺様がいるから当然なんだが」
こんな事を軽々しく言う、初っ端からぶっ飛んでいた青年剣士は正にお調子者。
「えー。余裕なんかじゃないよー。それにこの間、この森で凄いレアキャラが出たとか? 超強いらしいよー? えと、名前なんだったかな……?」
「自分の記憶では、ありえないほど長い名だった気がするっす」
「……です」
「うー……だめだー! みんな通称で呼んでるから正式名称が出てこないや。商店街とか歩いてると、必ずと言って良いほど思い出すんだけどー?」
青年剣士以外の三人は、あと少しで思い出せる気が……良くある事とはいえ、思い出せた時にはしがない内容だったりも。
「あ? そんな凄いレアキャラなんぞこの森に出たか? つーか、どんなキャラでも俺様にかかればワンパンだがな」
相変わらず驕りがある口調の青年剣士は、本当に強いのだろうか。
この森自体の難易度は低い。しかしレアキャラを討伐してきた功績を考えると、それなりに強者の集まりであり、その一人である青年剣士も決して弱くはないであろう――多分。
そんな青年剣士の態度に慣れているのか、他の三人はとくに気にする様子もなく会話は続く。
すると、さほど問題ではないキャラ名に思い悩む一同の進む先にチラリと人影が。
「あそこ、誰か……寝てる?」
水の女性魔法使いが指差す先に見えたのは、木陰で横になった人影であった。
一同は一斉に、その人影に注目する。
「NPC……いや、モンスターか? 天の才たる俺様でも見たこともない奴だな」
「ありゃりゃ? なんか寝てるみたいねー。だってここまでイビキ聞こえるもーん。超ウケるんですけど」
木陰でゴロリと横になり、大きなイビキをかく何者かが。
「全員、魔法とスキルの準備はしておけよ。モンスターだったら、すぐにでも攻撃できるように!」
青年剣士は偉そうに指示を与え、戦士はスキル魔法使いはそれぞれ火と氷の魔法を準備。
警戒しながら熟睡する人影にじりじりと近づいていく。
歩みを進めると、だんだんと人影の正体が判明。人ということはわかるが、戦士や魔法使い、況してや村人などにも見えない。
「あ、あいつもしかして、例のレアキャラっすかね? なんか人間ぽい容姿らしいっす」
「かな? あんな格好のキャラ見たことないもんねー」
「可能性大……です」
「うっひょー! やっぱ、今日の俺様てば最高だわ! こいつ倒せば勇者も夢じゃねーな」
更に近づくと、明らかに人に類似したキャラクターとまではわかる。一同がキャラクターと認識できるのは、この世界の理により”それ”と認識できる印があるからだ。
「でも、本当に噂のレアキャラなら……やばくないかなー? やめようよ」
恐ろしく強いレアキャラと聞いているのだから、当然の反応をする火の女性魔法使い。身の危険を考えれば、相手にせず素通りしたほうが正しいと言えよう。
「は? 何いっちゃってんの? こいつ寝てんじゃんか。ふたりの最強呪文と俺たちの最強スキルをぶっぱすれば、防御もできないこいつが生きてるわけねーだろ? それに裸同然で、攻撃耐えるモンスターとかないわ」
青年剣士は未だ偉そうではあるが、彼の言い分は間違ってはいない。
それは――『熟睡する謎キャラの姿が、おパンツ一丁』だから。
街外れにある、どこにでもありそうな森の中、いったい何が幸運なのか燥ぎ回る青年剣士がひとり。
そんな青年剣士と同行しているのは、ローブを纏った魔法使いがふたり。
太めの巨体で、いかつい斧を担ぐ斧戦士がひとり。
「うっす! たまたま出くわしたモンスターが、育っていて良かったっす!」
「うん、うん。今日だけで、経験値五万は稼げたよー!」
「……レアキャラ様さま……です」
一同は青年剣士に尻を叩かれるように、喜びを分かちあう。
レアキャラとは見て聞いて名のごとく、レアなキャラだ。
この世界において、経験値と称されるものが全てであり、レベルのような概念は存在しない。
つまり経験値の多い者が、より強者と言える。
青年剣士プラスαの一同が、本日稼いだ経験値は約五万EXPだが、たかが街外れの森で五万EXPも稼ぐことは稀。仮に、この森で一日中モンスターと戦い続けたとしても、稼げる経験値は一万前後が良いところ。青年剣士がアホ面下げて燥ぐのは当然なのかもしれない。もしくは、ただのおバカさん。
だが、何故五万EXPもの経験値を手に入れることが出来たのか。
ほぼ三人同時に話し始めたため、ばらばら合唱状態により誰が言ったのかを把握できないが、何者かが洩らしたレアキャラという通称にある。
一同がちょっとしたお祭り騒ぎとなっているのは、レアキャラで稼げる経験値の多さ。
例えば同じモンスターを二体倒したとしよう。見た目が同じモンスターでもレアキャラと称される一体と、レアではない一体では何十倍から何百倍も経験値に差が出る。
そのレアキャラに偶然にも出くわし、運よく倒せたからこその五万EXPであり、それは喜んで然るべき感情。
だからこそこの世界で活動する者たちは、レアキャラを愛して止まない。
しかし……、だ。
「でも、運よく倒せて良かったよねー。わたしチョット怖かったなー」
事後のため笑顔ではあるが、火の女性魔法使いはホッとした様子を見せた。
レアキャラは稼げる経験値も多いが、通常のモンスターと比べ遙かに強い。倒すことは苦行であり、場合によっては逃げることすら儘ならない。
火の女性魔法使いが、その豊満な胸を撫で下ろしたのは、苦戦を強いられ全員が無事生還できたからであろう。
そして彼女のように安心する者もいれば、お調子者もいる。
「そっか? あんなん余裕じゃね? 俺たちほら結構強いほうじゃん? まあ……俺様がいるから当然なんだが」
こんな事を軽々しく言う、初っ端からぶっ飛んでいた青年剣士は正にお調子者。
「えー。余裕なんかじゃないよー。それにこの間、この森で凄いレアキャラが出たとか? 超強いらしいよー? えと、名前なんだったかな……?」
「自分の記憶では、ありえないほど長い名だった気がするっす」
「……です」
「うー……だめだー! みんな通称で呼んでるから正式名称が出てこないや。商店街とか歩いてると、必ずと言って良いほど思い出すんだけどー?」
青年剣士以外の三人は、あと少しで思い出せる気が……良くある事とはいえ、思い出せた時にはしがない内容だったりも。
「あ? そんな凄いレアキャラなんぞこの森に出たか? つーか、どんなキャラでも俺様にかかればワンパンだがな」
相変わらず驕りがある口調の青年剣士は、本当に強いのだろうか。
この森自体の難易度は低い。しかしレアキャラを討伐してきた功績を考えると、それなりに強者の集まりであり、その一人である青年剣士も決して弱くはないであろう――多分。
そんな青年剣士の態度に慣れているのか、他の三人はとくに気にする様子もなく会話は続く。
すると、さほど問題ではないキャラ名に思い悩む一同の進む先にチラリと人影が。
「あそこ、誰か……寝てる?」
水の女性魔法使いが指差す先に見えたのは、木陰で横になった人影であった。
一同は一斉に、その人影に注目する。
「NPC……いや、モンスターか? 天の才たる俺様でも見たこともない奴だな」
「ありゃりゃ? なんか寝てるみたいねー。だってここまでイビキ聞こえるもーん。超ウケるんですけど」
木陰でゴロリと横になり、大きなイビキをかく何者かが。
「全員、魔法とスキルの準備はしておけよ。モンスターだったら、すぐにでも攻撃できるように!」
青年剣士は偉そうに指示を与え、戦士はスキル魔法使いはそれぞれ火と氷の魔法を準備。
警戒しながら熟睡する人影にじりじりと近づいていく。
歩みを進めると、だんだんと人影の正体が判明。人ということはわかるが、戦士や魔法使い、況してや村人などにも見えない。
「あ、あいつもしかして、例のレアキャラっすかね? なんか人間ぽい容姿らしいっす」
「かな? あんな格好のキャラ見たことないもんねー」
「可能性大……です」
「うっひょー! やっぱ、今日の俺様てば最高だわ! こいつ倒せば勇者も夢じゃねーな」
更に近づくと、明らかに人に類似したキャラクターとまではわかる。一同がキャラクターと認識できるのは、この世界の理により”それ”と認識できる印があるからだ。
「でも、本当に噂のレアキャラなら……やばくないかなー? やめようよ」
恐ろしく強いレアキャラと聞いているのだから、当然の反応をする火の女性魔法使い。身の危険を考えれば、相手にせず素通りしたほうが正しいと言えよう。
「は? 何いっちゃってんの? こいつ寝てんじゃんか。ふたりの最強呪文と俺たちの最強スキルをぶっぱすれば、防御もできないこいつが生きてるわけねーだろ? それに裸同然で、攻撃耐えるモンスターとかないわ」
青年剣士は未だ偉そうではあるが、彼の言い分は間違ってはいない。
それは――『熟睡する謎キャラの姿が、おパンツ一丁』だから。
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