七千億EXPのレアキャラ ~いらっしゃいませ、どうぞご覧下さいませ~

太陽に弱ぃひと

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【プレイヤー 編】

黄龍の(穴)力

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「嬢ちゃん。このまま最上層へ行くから、しっかり掴まってないと着地の衝撃でどこかに飛ばされちまうぞ?」

「え!? 何ですかぁあっ?」

 塔の最上層より遥か上空へ飛んだふたりは、落下する際の風切り音で、互いの声が聞こえてこない。耳元にあてた両手のひらを、彼へ傾け意思疎通を図るが、聞こえる風切り音はふたりの会話をかき消してしまう。

 そんなふたりを最上層で見上げる巨大な龍の名は『黄龍』又の名を『イエロー・ドラゴン』と呼ぶ……又の名でも何でも無かったことを詫びよう。

「我の眠りを妨げる弱き者よ、さあ降りてくるがよい。最も……汝等が降り立つ前に、ひと飲みにして喰ろうてやるわッ!」

 最上層で眠っていた黄龍は、彼が床と天井を打ち抜いたことにより目を覚ましていた。

 黄龍は、苟且の塔における最終ボス。

 黄金色に輝く身体と鋭い爪、そして人間など一度で軽く一〇人は飲み込むであろう大きな口。この世界において他にも龍は存在するが、神族とされた『青龍・黄龍・赤龍・白龍・黒龍・応龍』の六神龍は別格と言われ、恐れられている。

 未だ、この六神龍を討伐したプレイヤーは存在せず、その強さゆえに知名度も高い。

 視覚、聴覚など全ての感覚に優れた神族。それは例外なく黄龍も優れており、遥か上空のオッサンや米子を目視できるほど視力が良い。
 
 黄龍は大きな口を更に広げ、ふたりが落下してくるのを待つ。

「――ったく。嬢ちゃんが楽しそうにしているところ、悪いが……」

 彼は米子を抱きかかえた腕を離す。
 そして米子と対面し空中で見つめ合うように互いの顔を合わせ、身体の動きのみで意思疎通を図ろうとする。


 先ず自分へ指をさし――『俺』

 次に下方へ指を向け――『下』

 そして手足を交互に動かし――『行く』

 更に両手を広げ前後に二度振り――『待て』

 最後にクルッとターンして、両手の人差し指を米子へ向け――『ッ!?』


 米子は、この一連の動作で『俺が先に下へ行くから、このままの状態で待ってて』と、言っていることがわかった。

「はーいっ!(最後だけ分からなかったけど)」

 両手と両腕をいっぱいに広げ、にこやかに返事を贈る米子をみて、彼は伝わったことを察し一度大きく頷く。

 その後、オッサンは身体を一本の矢のようにぴんと伸ばすと――米子が落下する速度の数倍にも及ぶ速さで降下し始めた。

「ハッハッハッ! 気が狂ったかっ! 自ら喰われにくるとはな。その勇気ある行動に免じて、痛みを与えず喰ろうてやろう!」

 先に伝えておくが、大口を開け今か今かと待ち構える黄龍は、べつに腹が減っているのではない。ハングリーなのだ(同じ)。
 オッサンは全く逃げる様子もなく黄龍一直線に突き進む――やがて互いは接触し、大きく広げた黄龍の口は一噛みもせず、その中年を丸飲みした――――



 ――――まるで、床に隕石でも落ちたかのように鳴り響く轟音が鳴り響く。

 黄龍が丸飲みしたのにも関わらず、円形状の地割れが起こり、周囲は砕かれた床の砂塵に包まれた。
 
「――へっ!?」

 黄龍は小刻みに震えながら自身の後方を凝視すると、そこに見えたのは紛れもなくオッサンの平然とした姿。

「ん? なんか、一瞬目の前が暗くなった気もするけど……とりあえず無事到着だな、うん」

 黄龍は驚愕した。自分の尻とは思えないほど広がってしまった、ドでかい穴が開いている事に。

 この時点で、黄龍はオッサンが口から入って、尻の穴を突き破って出てきたことに気づく……もう食事を取っても消化すら困難だろう、と。

「わ、我……穴でっかくな――――」

 この後、黄龍が何を言いたかったのかは謎、だ。

 黄龍は地響きと共に倒れ――――――
 ――――――――
 ――――



 ――やがて散りばめられた光の結晶となり消えてゆく。
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