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【初級者 編】
救い(2)
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――――――
同日の昼時。
店のテーブルから窓硝子に至るまで、見るも無残な様子となった店内で、ぽつりと椅子へ座り込むゲンの姿があった。
プレイヤーが死滅した際、蘇生は最も近い転送陣で行われる。ゲンは一度死滅し、サーパスの転送陣にて復活を遂げたが、急ぎ店へ帰るも店内はもぬけの殻であった。
ゲンは、妻と娘の居場所も分からず途方に暮れる。
居場所さえ分かればすぐにでも助けに行きたい。
しかし助け出せるほどの力も持ち合わせてはいない。
そして――
自分には、もうこの世界で活動できる時間が残されてはいないのだと……。
ゲンは肩を落とし、何も出来ず只悩み続ける。
その時、ひとりの男が店へ立ち入ってきた。
「あれ? ゴメンナサイ氏に、この店って聞いてたんだけどな……」
「き、君は?」
店へ来たのはタケシである。
先日チキンから連絡を受け、この場へ赴いたのだが、時間軸の改変を知った頃には遅すぎたようだ。
「あ、俺はタケシって言います。マイコ氏? という人に会うつもりだったんですけど、この店ってなんかあったんですか?」
歳上には敬語を使う。
それがタケシの日常。
現実世界では約午前九時半となり、その時間からログインするタケシとは……。
「ああ。君はマイコちゃんの知り合いかい? すまないね……もう旅立ってしまったよ、昨日ね。この店の有様は、暴れまわったプレイヤーたちによるものだよ」
「へ? 昨日? あ、アップデートの件か! 完全に遅刻、ですな。――ってか、プレイヤーが暴れて店がこうなったんですか?」
タケシは先ほどログインしたばかり。
その後お知らせを確認してはいたが、現実世界との時差を計算してはいなかった。その時差に漸く気付けた様子をみせる。
「そうだよ。街のNPCが少ないことには気付いているだろう? みんな捕まってしまった、または逃げ出した……と、いうことだよ」
ゲンは今までの経緯をタケシへ伝える。
妻と娘がいることや、ふたりがNPCであること。
そしてどの様なプレイヤーたちが荒らし回っていたか、なども。
「そういうことだったんですね。俺もその悪いプレイヤーと変わらないって言うか、そんな人間だったんで何とも言えないところですけど」
「いや、私も昔はいろいろ悪業を行ったものだよ。妻のおかげで改心出来たが……そのツケが回ってきたんだろうね」
タケシは改心したと言うよりも、ゲンの恋愛に対する考え方に共感した。
NPCとの恋愛に偏見を持ってはいなかったからこそ、ゲンへ共感出来たのであろう。
だからこそ、タケシはゲンの手助けとなりたい気持ちに駆られる。
「そんな事は無いです! 俺もそんな嫁欲しいです! 奥さんと娘さんを助けに行きましょう!」
この言葉の真意は正義感とは異なるものであったが、それが逆に嫌味のない口調となりゲンは嬉しかった。
「へえ。タケシ君は、私を変人扱いしないんだね。そう言ってくれると私も嬉しいよ。だけど……私には居場所も分からなければ、救い出す力も無いんだ」
こう言って肩を落とすゲン。
現状では何も動く事は出来ず、それは何も変わらないのだと。
しかし、タケシの考えは全く違うようだ。
「あー、その居場所なら、たぶん分かりますよ。襲ってきた奴らにも心当たりがありますし。それにゴメンナサイ氏ならきっと助けてくれる、と思います」
「えっ!? き、君には妻と娘の居場所が分かるのかい?」
同日の昼時。
店のテーブルから窓硝子に至るまで、見るも無残な様子となった店内で、ぽつりと椅子へ座り込むゲンの姿があった。
プレイヤーが死滅した際、蘇生は最も近い転送陣で行われる。ゲンは一度死滅し、サーパスの転送陣にて復活を遂げたが、急ぎ店へ帰るも店内はもぬけの殻であった。
ゲンは、妻と娘の居場所も分からず途方に暮れる。
居場所さえ分かればすぐにでも助けに行きたい。
しかし助け出せるほどの力も持ち合わせてはいない。
そして――
自分には、もうこの世界で活動できる時間が残されてはいないのだと……。
ゲンは肩を落とし、何も出来ず只悩み続ける。
その時、ひとりの男が店へ立ち入ってきた。
「あれ? ゴメンナサイ氏に、この店って聞いてたんだけどな……」
「き、君は?」
店へ来たのはタケシである。
先日チキンから連絡を受け、この場へ赴いたのだが、時間軸の改変を知った頃には遅すぎたようだ。
「あ、俺はタケシって言います。マイコ氏? という人に会うつもりだったんですけど、この店ってなんかあったんですか?」
歳上には敬語を使う。
それがタケシの日常。
現実世界では約午前九時半となり、その時間からログインするタケシとは……。
「ああ。君はマイコちゃんの知り合いかい? すまないね……もう旅立ってしまったよ、昨日ね。この店の有様は、暴れまわったプレイヤーたちによるものだよ」
「へ? 昨日? あ、アップデートの件か! 完全に遅刻、ですな。――ってか、プレイヤーが暴れて店がこうなったんですか?」
タケシは先ほどログインしたばかり。
その後お知らせを確認してはいたが、現実世界との時差を計算してはいなかった。その時差に漸く気付けた様子をみせる。
「そうだよ。街のNPCが少ないことには気付いているだろう? みんな捕まってしまった、または逃げ出した……と、いうことだよ」
ゲンは今までの経緯をタケシへ伝える。
妻と娘がいることや、ふたりがNPCであること。
そしてどの様なプレイヤーたちが荒らし回っていたか、なども。
「そういうことだったんですね。俺もその悪いプレイヤーと変わらないって言うか、そんな人間だったんで何とも言えないところですけど」
「いや、私も昔はいろいろ悪業を行ったものだよ。妻のおかげで改心出来たが……そのツケが回ってきたんだろうね」
タケシは改心したと言うよりも、ゲンの恋愛に対する考え方に共感した。
NPCとの恋愛に偏見を持ってはいなかったからこそ、ゲンへ共感出来たのであろう。
だからこそ、タケシはゲンの手助けとなりたい気持ちに駆られる。
「そんな事は無いです! 俺もそんな嫁欲しいです! 奥さんと娘さんを助けに行きましょう!」
この言葉の真意は正義感とは異なるものであったが、それが逆に嫌味のない口調となりゲンは嬉しかった。
「へえ。タケシ君は、私を変人扱いしないんだね。そう言ってくれると私も嬉しいよ。だけど……私には居場所も分からなければ、救い出す力も無いんだ」
こう言って肩を落とすゲン。
現状では何も動く事は出来ず、それは何も変わらないのだと。
しかし、タケシの考えは全く違うようだ。
「あー、その居場所なら、たぶん分かりますよ。襲ってきた奴らにも心当たりがありますし。それにゴメンナサイ氏ならきっと助けてくれる、と思います」
「えっ!? き、君には妻と娘の居場所が分かるのかい?」
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