勇者として召喚されましたが、魔王になります。

雪蟻

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序幕

トラックに轢かれて転生よりはいいかな

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いつもの様に、私(瀧村愛菜たきむらあいな)は教室へと入り、席にたどり着く。
私は、さほど早く来るタイプでは無いので、程なくして全員が揃った。
そんないつもの一時は、眩い光とともに終わりを告げた。
目を開けた時に広がったのは、王宮、それも謁見の間とでも言うべき場所だった。
クラスメイトを見回すと、スキルがどうのだの、これが異世界転生かなどと言う声が上がっているが、何故かワクワクとしている者が大多数だった。
怪訝な顔をしているものや、パニックを起こしているものはおらず、納得しているか興奮しているものしかいない。
私ですら、どこか冷めた感覚というパニックとは程遠い心境だった。
だからこそ、スキルなどという意味の分からないものをすぐに発動できたのだろう。

ー誤認ー
ありとあらゆる生物に違う認識を与える
対象がスキルによる補正を超え、違和感を覚えた瞬間に解けてしまう。
与えた誤認に違和感を覚えないよう、それぞれに1番しっくりと来るように勝手に補正して思考させることが出来る。

ご丁寧に、スキルの説明が脳裏に浮かんだ。
気色の悪いシステムである。
ステータスのようなものはなかったので、RPGのような分かりやすい判断基準は無いらしい。
即座に私は発動し、ここにいないものとした。
これにより、認識への補正がかかり、クラスメイト達は、私が転移に巻き込まれていないと思い込み、これをしたこの世界のもの達は、私がいたように見えたが気の所為だったのだろうと納得する。
後はひっそりと壁に移動していればいい。
なかなかにチートなスキルだ。
こちらから、接触しない限り、勝手に勘違いしてくれるのだから素晴らしい。
私が静かに感動していると、この国の公女様だろうか、気品ある少女が声を上げた。
「皆様、突然にこのようなことが起き、困惑されているとは思いますがわたくしの言葉を聞いてくださいますか」
我関せずなんてやってるから思うのかもしれないけれど、普通パニックだろうから、困惑なんてレベルじゃないと思う。
まぁ、日本人なら、パニックで騒ぐ方が恥ずかしいなんて心理が働くかもしれないけど。
それでも、1人もいないなんてことはない。
何か仕掛けているはず。
「では、その魔王を倒せば僕達は元の世界に?」
そんな中クラスの代表とも言える、えーと名前は、そうそう、国枝透くにえだとおるだ。
それが、何やら質問している。
冷静に考える頭があれば、分かるはずだ。
この世界に来ることで私たちにチートなスキルが手に入るとしても、大した思想も覚悟もないそんな甘い子供に国の命運を託すなどありえないと。
王族とは民のためにあるのだから。
そんなことを私が考えている間に、魔王を倒すためにもスキルを鍛え上げ、戦えるように訓練をなどと具体的な方針が決まっていった。
どうやら、浮かれてるバカしかいないらしい。
私は巻き込まれないようにしながら、情報を集めようと思う。
訓練の時はしれっと混ざるけど。
強くなれるものなら強くなっていた方がいいだろうから。
さぁ、頑張ろう。
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