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第二幕
なうろーでぃんぐ
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脱がされた。
貞操の危機かと思ったら違った。
どうも、直接侵食するような形で契約の段階を踏んでいくので、人工物と相性が悪い分、服ですら邪魔になるらしい。
『安心なさい。ここには、わたくしとあなた以外入って来れないし、見ることも叶わないから』
「変質したら服着れないパターンですかね?」
『素材が人工物じゃないなら着れるはずよ』
良かった。
常に全裸とか変質者だよ。
変質だけに。
だけに。
『この中に入って、わたくしと深く繋がればいいだけよ』
「意味深」
『変なことはしないわよ!』
ふざけてないで魔法陣の中に入る。
そして、私は光に包まれた。
転移した時こんな感じだったなーと、かつてのクラス一斉転移を思い出していた。
「何も無いですね」
『必要ないからよ。さて、後はあなた次第。わたくしという存在を正しく理解し、受け入れなさい。それが最初で最後の試練よ』
このポンコツを理解というのはなかなか難しい課題である。
とか、この時は思っていたんだけどね。
後で知ったんだけど、なんの説明もなしに、そんな無茶苦茶なことしたら、せっかく全ての条件を満たした器をイタズラに破壊することになるから、そんな馬鹿なことする精霊王は普通いないらしい。
それは置いといて。
たぶん、属性は森に関する複合属性。
そんな精霊がいるかは知らないけど、いると仮定していいと思う。
精霊王だし。
となると、森とはどんな属性があるかを紐解いた方がいいと思う。
まず、間違いなさそうなのは土かな。
森を作るのは、土。
樹? それは、黒姉さんの領域だから省く。
ドリアードは正確には精霊ではないから。
その流れで考えると、後は水。
ただ、これだけじゃない気がする。
森、それはひとつの世界。
森には命のサイクルがそこで成立するぐらいには、世界としての要素がある。
つまり、森は命を育み、そして終わる場所でもある。
となれば、その属性は──
『早かったわね』
「ここは? あの森ではないようですけど」
目が覚めたら見知らぬ森にいた。
『あっさりと課題をクリアしたわね。でも、まずは服が欲しいんじゃないかと思って、わたくしだけの森に連れてきたわ。たぶん、自分で作らないと、文字通り肌に合わないと思う』
確かに、真っ先にやるべきだとは思ったんだけど、ここで気になることが出来た。
「変質って終わったの?」
『見て分かると思うけど?』
うん、できれば寝ぼけてるか、まだ不思議空間にいる影響だと思いたかった。
「なんで幼女になってるんですか!」
『え? だって、あなたの実年齢から換算したらそうなるんだもの』
私が変質したことにより、なってしまった種族は森人の原種に近いもの。
便宜上、古代森人となるのかもしれない。
化石感半端ない。
エンシェントエルフと名乗ろう。
ダサい? 知らん。
『いや、ちゃんと種族名はあるわよ。あなたは女性だから、精霊姫になるわ』
「精霊姫? 森人でも精霊でもなく?」
どうやら、私は死後精霊の仲間入りするらしい。
それも、王に近いレベルの。
だから、姫。
もし男なら、彦になるのだろう。
王子じゃないよ、そしたら私が王女になっちゃうから。
「で、精霊姫の寿命で換算すると、実年齢18歳くらいだと幼女であると」
『だって、500年は軽く生きるわよ? 人族と同じように成長してたら、寿命の大半を老人として過ごさないといけないじゃない』
それは確かに困る。
「ところで、下着つけるだけで肌に合わないんですけど」
「そりゃそうでしょ。森人が薄着なのはそういうことよ?」
あー、あれ開放的な気分になりたくてやってるんじゃなくて、そもそも着れないのか。
えー、元人族としては恥ずかしいんだけど。
いや、見た目幼女だしそんな目で見てくるやつも少ないか。
そんな私の見た目は。
銀のサラサラなストレートの身長より長い髪に、左眼が瑠璃色って言うのかな、でもって右眼が白。
そう、白。
魔力を込めてみたら七色に色が着いたから、右眼はなにかしらの魔眼だと思う。
体型は、幼女だとするなら心配になるぐらい細い。
このまま成長するなら、スレンダーなモデル体型になるかも。
うん、顔は美人系だね。
将来が楽しみな顔だよ。
元の顔からは想像つかないぐらい綺麗になってて驚きである。
ただ、変に大人びて見えなくもないので、不審な男には気をつけよう。
ただ、今気にすべきはこの、ながーい髪かな。
切るか。
「バッサリバッサリ、スパッとな♪」
『うわー、勿体ないからダメー!』
仕方ないので、ロングツインテールってやったんだけど、多過ぎる。
そもそも、地面にズルズルさせるのが嫌だから切ろうとしたのだ、結んだぐらいじゃ足りない。
下から上に上げて垂らしてまた下から上に上げて垂らして、よし。
うん、やめた。
「長過ぎる!」
『可愛いから切るのダメ!』
めんどくさいな。
魔力で髪の毛操作しながら、編み込みしまくる。
ロングツインテール編み込み仕立て。
これ手入れするのめんどくさいんだけど。
「バッサリとな」
『あああああああああああああ』
地面にたどり着かない程度に切り落としました。
あー、頭重かった。
切った髪の毛? 魔力に変換されました。
不思議ー。
「ところで、下着つけれないけど、トイレとか困る」
『排泄しないから大丈夫でしょ?』
「はい?」
どうやら、この身体、食べたものを全部魔力として吸収してしまうらしい。
余すことなく。
そして、私の身体無限に魔力を取りこめるようだ。
つまり、食べども食べども魔力に変わるから太らない。
やったね。
「体型が変わらないってことは、私このまま怖いぐらい細いの?」
『今のそれは、枯渇に近いだけだから、もうちょっと健康的になるはず』
てことは、まず食べよう。
幸い、この森は食べるものが多い。
お陰様で病的に細いから、あーこの子細いわねー。
ぐらいになった。
まだ食べないと良くないとは思うけど、それどころでは無い。
「忘れてましたけど、どのぐらい時間経ちました?」
『向こうで1ヶ月は経過してると思うわ』
やばいかもしれない。
既に開戦している可能性が高い。
何せ、私たちが休戦をした相手は勇者であり、国ではない。
下手をすると、屁理屈でいきなり攻めてくることもある。
「今すぐ戻りましょう」
『無理よ、あなたの身体が耐えられない。もう少し、魔力を溜めないと』
厄介な。
結局私が元の場所に戻る頃には、2ヶ月経過してしまっていた。
そして、戻った私たちが見たのは、1本の大きな樹と焦土とかしたかつて森であったはずのものだった。
貞操の危機かと思ったら違った。
どうも、直接侵食するような形で契約の段階を踏んでいくので、人工物と相性が悪い分、服ですら邪魔になるらしい。
『安心なさい。ここには、わたくしとあなた以外入って来れないし、見ることも叶わないから』
「変質したら服着れないパターンですかね?」
『素材が人工物じゃないなら着れるはずよ』
良かった。
常に全裸とか変質者だよ。
変質だけに。
だけに。
『この中に入って、わたくしと深く繋がればいいだけよ』
「意味深」
『変なことはしないわよ!』
ふざけてないで魔法陣の中に入る。
そして、私は光に包まれた。
転移した時こんな感じだったなーと、かつてのクラス一斉転移を思い出していた。
「何も無いですね」
『必要ないからよ。さて、後はあなた次第。わたくしという存在を正しく理解し、受け入れなさい。それが最初で最後の試練よ』
このポンコツを理解というのはなかなか難しい課題である。
とか、この時は思っていたんだけどね。
後で知ったんだけど、なんの説明もなしに、そんな無茶苦茶なことしたら、せっかく全ての条件を満たした器をイタズラに破壊することになるから、そんな馬鹿なことする精霊王は普通いないらしい。
それは置いといて。
たぶん、属性は森に関する複合属性。
そんな精霊がいるかは知らないけど、いると仮定していいと思う。
精霊王だし。
となると、森とはどんな属性があるかを紐解いた方がいいと思う。
まず、間違いなさそうなのは土かな。
森を作るのは、土。
樹? それは、黒姉さんの領域だから省く。
ドリアードは正確には精霊ではないから。
その流れで考えると、後は水。
ただ、これだけじゃない気がする。
森、それはひとつの世界。
森には命のサイクルがそこで成立するぐらいには、世界としての要素がある。
つまり、森は命を育み、そして終わる場所でもある。
となれば、その属性は──
『早かったわね』
「ここは? あの森ではないようですけど」
目が覚めたら見知らぬ森にいた。
『あっさりと課題をクリアしたわね。でも、まずは服が欲しいんじゃないかと思って、わたくしだけの森に連れてきたわ。たぶん、自分で作らないと、文字通り肌に合わないと思う』
確かに、真っ先にやるべきだとは思ったんだけど、ここで気になることが出来た。
「変質って終わったの?」
『見て分かると思うけど?』
うん、できれば寝ぼけてるか、まだ不思議空間にいる影響だと思いたかった。
「なんで幼女になってるんですか!」
『え? だって、あなたの実年齢から換算したらそうなるんだもの』
私が変質したことにより、なってしまった種族は森人の原種に近いもの。
便宜上、古代森人となるのかもしれない。
化石感半端ない。
エンシェントエルフと名乗ろう。
ダサい? 知らん。
『いや、ちゃんと種族名はあるわよ。あなたは女性だから、精霊姫になるわ』
「精霊姫? 森人でも精霊でもなく?」
どうやら、私は死後精霊の仲間入りするらしい。
それも、王に近いレベルの。
だから、姫。
もし男なら、彦になるのだろう。
王子じゃないよ、そしたら私が王女になっちゃうから。
「で、精霊姫の寿命で換算すると、実年齢18歳くらいだと幼女であると」
『だって、500年は軽く生きるわよ? 人族と同じように成長してたら、寿命の大半を老人として過ごさないといけないじゃない』
それは確かに困る。
「ところで、下着つけるだけで肌に合わないんですけど」
「そりゃそうでしょ。森人が薄着なのはそういうことよ?」
あー、あれ開放的な気分になりたくてやってるんじゃなくて、そもそも着れないのか。
えー、元人族としては恥ずかしいんだけど。
いや、見た目幼女だしそんな目で見てくるやつも少ないか。
そんな私の見た目は。
銀のサラサラなストレートの身長より長い髪に、左眼が瑠璃色って言うのかな、でもって右眼が白。
そう、白。
魔力を込めてみたら七色に色が着いたから、右眼はなにかしらの魔眼だと思う。
体型は、幼女だとするなら心配になるぐらい細い。
このまま成長するなら、スレンダーなモデル体型になるかも。
うん、顔は美人系だね。
将来が楽しみな顔だよ。
元の顔からは想像つかないぐらい綺麗になってて驚きである。
ただ、変に大人びて見えなくもないので、不審な男には気をつけよう。
ただ、今気にすべきはこの、ながーい髪かな。
切るか。
「バッサリバッサリ、スパッとな♪」
『うわー、勿体ないからダメー!』
仕方ないので、ロングツインテールってやったんだけど、多過ぎる。
そもそも、地面にズルズルさせるのが嫌だから切ろうとしたのだ、結んだぐらいじゃ足りない。
下から上に上げて垂らしてまた下から上に上げて垂らして、よし。
うん、やめた。
「長過ぎる!」
『可愛いから切るのダメ!』
めんどくさいな。
魔力で髪の毛操作しながら、編み込みしまくる。
ロングツインテール編み込み仕立て。
これ手入れするのめんどくさいんだけど。
「バッサリとな」
『あああああああああああああ』
地面にたどり着かない程度に切り落としました。
あー、頭重かった。
切った髪の毛? 魔力に変換されました。
不思議ー。
「ところで、下着つけれないけど、トイレとか困る」
『排泄しないから大丈夫でしょ?』
「はい?」
どうやら、この身体、食べたものを全部魔力として吸収してしまうらしい。
余すことなく。
そして、私の身体無限に魔力を取りこめるようだ。
つまり、食べども食べども魔力に変わるから太らない。
やったね。
「体型が変わらないってことは、私このまま怖いぐらい細いの?」
『今のそれは、枯渇に近いだけだから、もうちょっと健康的になるはず』
てことは、まず食べよう。
幸い、この森は食べるものが多い。
お陰様で病的に細いから、あーこの子細いわねー。
ぐらいになった。
まだ食べないと良くないとは思うけど、それどころでは無い。
「忘れてましたけど、どのぐらい時間経ちました?」
『向こうで1ヶ月は経過してると思うわ』
やばいかもしれない。
既に開戦している可能性が高い。
何せ、私たちが休戦をした相手は勇者であり、国ではない。
下手をすると、屁理屈でいきなり攻めてくることもある。
「今すぐ戻りましょう」
『無理よ、あなたの身体が耐えられない。もう少し、魔力を溜めないと』
厄介な。
結局私が元の場所に戻る頃には、2ヶ月経過してしまっていた。
そして、戻った私たちが見たのは、1本の大きな樹と焦土とかしたかつて森であったはずのものだった。
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