勇者として召喚されましたが、魔王になります。

雪蟻

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第三幕

死の精霊王

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連れて来いと言われたので、たたき落とした後にゆっくり向かおうと思っていたのに、無理やりまた落とされた私である。
「で、なんの用です? フィーちゃんの王様」
「なんだその呼び方は、無礼な」
いきなり、よその精霊姫を誘拐するような王様に無礼も何もないと思う。
「おい、死の精霊王が俺に何の用だ。俺はこの世界の人間ではないぞ」
「アリオス様、落ち着いてください。命を握られているのは私達です」
あれ? 意外と冷静だね。
短絡的に私に喧嘩売ったとは思えな──
あー、私が弱そうだからか納得。
「ふん、それがどうした。理由もなく殺せるわけではなかろう」
「アリオス様!」
苦労してそうだね。
「確かに、理由もなく殺しはできん。だが、それは理由がなければだ、アリオスと言ったか? 貴様、我が領域を1部とは言え、好き放題利用しているようだな」
「鍵を開けているだけだが?」
うん、それが問題。
フィーちゃんが激おこ。
「ねぇ、フィーちゃんの王様、役割変えてあげたら? それとフィーちゃんチェンジしたらいいじゃん、期間限定で」
「森の精霊姫、次許可なく喋れば殺す」
怖い怖い。
でも、引けない。
「喋らせてもらいます。フィーちゃんもとい、貴方の精霊姫より依頼を受け、これを引きずり落としました。私に話があるとの事ですが、私を縛るほどの急用であれば今すぐお話くださいませ、勇者如き後回しで良いでしょう」
「死にたいらしいな、喋るなと言ったはずだ」
正確に私の胸を貫く何か。
速すぎて見えなかった。
多分剣かな。
うん、痛い。
「暫し寝ておれ、邪魔だ」
呼びつけといてそれはないよねー。
ご丁寧に再生を阻害してるから、文句が言えない。
まぁ、ただで寝てたりしないけどね。
「して、アリオス。貴様の都合でこちらにまだ死んでおらぬ者を幾度となく落としてきたことの落とし前をつけねばならん」
「この俺を殺せるとでも?」
すごい自信だー。
君の彼女が青ざめてるのに気づいてあげないと、そろそろ倒れるんじゃないかな。
なんで、この勇者こんなに自信過剰なんだろ。
「お前に与えるのは死ではなく、労働だ。お前の持つ鍵が導く先にて、意味あるものの死を身をもって体感するがいい」
「そんなことを俺が聞くとでも? バカバカしい、消え失せろ雑魚精霊が」
へー、知らない魔法だ。
腐っても勇者だね。
あれは私でも当たるとやばいかも。
「戯け、神滅魔法が効くとでも思うたか」
軽々と跳ね返して、私の方に飛んでくる神滅魔法とやらである。
「殺す気ですか!」
倒れたまま障壁でやり過ごす私。
やってられないので、空間中に張り巡らせた魔力を解放する。
マーリンがぎょっとしていたのは、仮にも魔法に精通しているからだろう。
私の非常識さを知るといい。
「聖域 微睡みの森」
戦闘の意志をもつ者全てを眠らせる私の安寧空間である。
「む、これは」
「いい加減にしてくれますか2人とも。 私はやるべき事を終えました。そこなゴミはさっさと言われた通りに仕事をなさい。よもや、こんな雑魚魔法でどうにかなるなどと思い上がってなどおりませんね?」
「なぜ勇者であるこの俺が」
さっさとフィーちゃんのいる領域に飛ばす。
「そこな彼女さん? 彼氏と一緒にいたいなら同じところに送りますが、ここから出たいならカリーナ様の所へ送りますよ」
「待て、勝手なことは」
「うるさい、まどろっこしいことしてるから面倒事か増えるんですよ、黙っててください」
「あの、アリオス様の所へお願いします。それと先程はとんだ失礼をあの子には悪いことをしてしまいました。重ねて謝罪をさせてください。申し訳ございませんでした」
素直に頭を下げてきたので、許さないけどこの件については何もしないことにする。
「さて、死の精霊王。貴方の姫ではないにも関わらず、私を呼んだ理由をお聞かせ願いましょうか?」
やっと本番である。


「お前はどこまで知り得た」
なるほど、その話ですか。
「全てを」
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