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第一章
物語の終わりへと
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「お姉さま、似合いますでしょうか」
「ええ、とてもよく似合っているわ」
あの衝撃的な実技試験から、わたくしと聖女は姉妹となった。
これは、かつても通った道。
聖女の身元を保証する最適解。
わたくしの妹として、我が二ーダリア家に迎え入れる。
通常なら、こんな無茶は通らないだろう。
しかし、それをアメリアの能力が押し通す。
加減したとは言え、わたくしの攻撃魔法を難なく防いだのだ。
であれば、その才能を確保する必要が出てくる。
平民のままでは、かなり危険なのだ。
確実に、人攫いにあうだろう。
強大な力を持ってはいるが、無力化は可能なのだ。
だが、公爵家の一員となればそうはいかない。
下手に手を出せば、国が敵に回るのだから。
ただ、この流れでもわたくしは破滅したりする。
わたくしは何回死ねば気が済むのだと思うほど、救われない人間のようだ。
救いようのないの間違いかもしれないが。
「いよいよですね、お姉さま」
「ええ、わたくしが妃殿下になるだなんて、全く実感が湧きませんけれど」
そう、かなり色々とあったが、わたくしは無事に破滅を回避していた。
聖女と良好な関係を築き、殿下に嫌われることなく今日を迎える。
婚約破棄を言い渡されることも無い。
貶めるような罠もない。
実に晴れやかな日である。
わたくしたちは、王宮へと向かう。
まずは、殿下と共に、陛下へと挨拶する必要があるのだ。
殿下と合流したわたくしたちは、謁見の間へと入る。
「この日を待っていたよ」
その一言が謁見の間にて小さく響く。
陛下へと挨拶するため、わたくしと殿下が聖女から充分に離れた時。
周りには、歴戦をくぐりぬけた戦士たちがいるがその全てが間に合わないそんなタイミング。
間違いなくこのままでは、アメリアは殺される。
何度も何度も回避し続け、全ての危険は排除したはずだった。
こんな状況は、わたくしの知る記憶にはない。
でも、迷いはなかった。
奥の手、攻撃魔法しか使えないと思われていたからこそ、この時、間に合わないという結果をねじ曲げる。
魔力で道を作り、その上を滑るように、わたくしを高速で移動させる。
擬似的な瞬間移動。
体を保護するため魔力だけで鎧として纏う。
本来なら、そのまま攻撃に移るのだが、それだけの猶予はなかった。
「お姉さま!」
間に合ったとは言えないだろう、この後どうするのだとも思う。
だけれど、どうせ死ぬのなら、わたくしは──
この子を守るために死にたい。
肩から斜めに切られたわたくしは、返しの魔法で、敵の頭を潰した。
相討ちに持ち込めたかの確認はできない。
もうその時のわたくしの意識は薄れ消えていく。
これが、わたくしの長い戦いの始まりであり、最初の終わりである。
「ええ、とてもよく似合っているわ」
あの衝撃的な実技試験から、わたくしと聖女は姉妹となった。
これは、かつても通った道。
聖女の身元を保証する最適解。
わたくしの妹として、我が二ーダリア家に迎え入れる。
通常なら、こんな無茶は通らないだろう。
しかし、それをアメリアの能力が押し通す。
加減したとは言え、わたくしの攻撃魔法を難なく防いだのだ。
であれば、その才能を確保する必要が出てくる。
平民のままでは、かなり危険なのだ。
確実に、人攫いにあうだろう。
強大な力を持ってはいるが、無力化は可能なのだ。
だが、公爵家の一員となればそうはいかない。
下手に手を出せば、国が敵に回るのだから。
ただ、この流れでもわたくしは破滅したりする。
わたくしは何回死ねば気が済むのだと思うほど、救われない人間のようだ。
救いようのないの間違いかもしれないが。
「いよいよですね、お姉さま」
「ええ、わたくしが妃殿下になるだなんて、全く実感が湧きませんけれど」
そう、かなり色々とあったが、わたくしは無事に破滅を回避していた。
聖女と良好な関係を築き、殿下に嫌われることなく今日を迎える。
婚約破棄を言い渡されることも無い。
貶めるような罠もない。
実に晴れやかな日である。
わたくしたちは、王宮へと向かう。
まずは、殿下と共に、陛下へと挨拶する必要があるのだ。
殿下と合流したわたくしたちは、謁見の間へと入る。
「この日を待っていたよ」
その一言が謁見の間にて小さく響く。
陛下へと挨拶するため、わたくしと殿下が聖女から充分に離れた時。
周りには、歴戦をくぐりぬけた戦士たちがいるがその全てが間に合わないそんなタイミング。
間違いなくこのままでは、アメリアは殺される。
何度も何度も回避し続け、全ての危険は排除したはずだった。
こんな状況は、わたくしの知る記憶にはない。
でも、迷いはなかった。
奥の手、攻撃魔法しか使えないと思われていたからこそ、この時、間に合わないという結果をねじ曲げる。
魔力で道を作り、その上を滑るように、わたくしを高速で移動させる。
擬似的な瞬間移動。
体を保護するため魔力だけで鎧として纏う。
本来なら、そのまま攻撃に移るのだが、それだけの猶予はなかった。
「お姉さま!」
間に合ったとは言えないだろう、この後どうするのだとも思う。
だけれど、どうせ死ぬのなら、わたくしは──
この子を守るために死にたい。
肩から斜めに切られたわたくしは、返しの魔法で、敵の頭を潰した。
相討ちに持ち込めたかの確認はできない。
もうその時のわたくしの意識は薄れ消えていく。
これが、わたくしの長い戦いの始まりであり、最初の終わりである。
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