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第三章 童貞勇者の嫁取り物語
しまった! 喜ばせてどうする!?
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「召喚士とは召喚魔術で魔物を出現させたり、契約している従魔を使役したりして間接的に目的を達成する特殊な後衛職です」
サード女史は鞭をタイトスカートのホルダーに収めてチョークに持ち替えると黒板にカツカツと小気味よい音を刻んだ。
「召喚士の技能は大雑把に二つに分類できます。一つは魔獣の召喚。もう一つが魔獣の使役です」
書き込まれた『召喚』と『使役』のうち、女史は『召喚』を指した。
「『召喚』とはダンジョンなどで自然発生する知性のないスライムなどの魔獣を召喚して様々な用途に利用する最も単純な技能、」
次に『使役』を指す。
「『使役』とは知性のある魔獣、魔族などの、体内に『魔核』と呼ばれるエネルギー体を持つ生物と『従魔契約』を結んで『従魔化』した彼らを強制的に従わせる技能のことです」
サード女史は次にそれぞれ『利点』『欠点』と書いて罫線を引いて比較しやすいようにした。
『この人、嗜好がアレだけど教えるのは上手なんだよなぁ……』
イーノックは心の内でそう呟いたがもちろん声には出さない。
「『召喚』の利点は召喚士なら誰でも使うことができる簡便さで、対象となる魔獣の召喚呪文を習得すれば初心者でも使えます」
そう言ってサード女史は召喚の『利点』に『簡便さ』『初心者向き』と書き込んだ。
「欠点は召喚で呼び出せるのは知性の無い魔獣なので、召喚者の命令を一切受け付けずに勝手に動き回ることです」
続いて『欠点』に『命令できない』と書き込んだ。
「例えば実際にあった事例ですが、薬草採取の依頼を受けて森に入っていた召喚士がホーンテッドボア(イノシシの魔獣)の襲撃を受けました。召喚士はとっさにキラーマンティス(カマキリの魔獣)を召喚して対抗したのですがキラーマンティスはホーンテッドボアを攻撃せずに横にいた召喚士を襲ったのです。当然ですね、マヌケですね、知性の無い虫魔獣が人の命令に従うはずがありません。彼らの行動原理はいつだって本能なのですから」
これまでずっと初心者用の『召喚』しか使えなかったイーノックは深く頷いた。
命令できない魔獣を呼び出していったい何の役に立つのかと思われがちだが、使い方次第では非常に役に立つのが召喚だ。
例えば、長雨災害の時にイーノックが川沿いの修道院でホワイトスライムをばら撒いた。決壊しそうな堤防を補強するのにホワイトスライムの『水に濡れたら仮死状態になって固まる』という性質が極めて役立った好例だといえる。
もう一つ例を挙げると、他国との戦争で敵陣に対して火攻めを使いたいときは風上で大量の|火妖精(サラマンダー)を放って自由に走り回らせることで目的が達せられる。多大な魔力を必要とする魔術師の広範囲火炎魔法を使用するよりもよほど燃費が良い。
このように召喚はアイディア次第でいくらでも活用できる。
「次にようやくイーノック受講生にも使えるようになった『使役』は――」
サード女史が「ようやく」の部分を強調して言ったのでイーノックが嫌そうに顔を顰めると彼女はとても嬉しそうにブルっと体を震わせた。
『しまった! 喜ばせてどうする!?』
サード女史はニヤニヤとしながら教壇の上からイーノックの困り顔を堪能していたが、イーノックが視線を逸らして感情を抑え込むと「チッ」また舌打ちをして講義を再開した。
「『使役』の利点は従魔に指示を与えることで召喚者の思い通りに使役することができる利便性の高さです」
そう言ってサード女史は使役の『利点』に『利便性の高さ』と書き込んだ。
「欠点は知性の高い魔族や強い従魔はそもそも呼び出すこと自体が困難で、呼び出しても従魔契約が結べないケースが多々あることです」
そして欠点に『契約の難しさ』と書き込んだ。
「知性の低いコボルト(二足歩行する犬型の魔獣)くらいなら比較的容易に従魔契約を結ぶことができますが、人と同等以上の知性を持つ魔族と契約する難しさはそこらの魔獣とは段違いです」
黒板に右肩下がりの大雑把なグラフを描いて横線の値に『能力の高さ』と書き、縦線の値に『契約の成功率』と書いた。
「もちろん優秀な魔族ほど従魔にするのは困難で、運良く従魔にできたとしても契約を結び続ける魔力を維持するのも大変です。そのような理由から一般的な召喚士は維持コストが手頃で知性が高めな鳥タイプや獣タイプの魔獣と契約してしっかり調教することで使役しやすくしています」
召喚と使役の違いを分かりやすく書き込んだサード女史はチョークを置いて振り向いた。
「いろいろと扱いの難しい『使役』ですが召喚と比べると利便性と汎用性が段違いなので自分の従魔を持つことが召喚士として一人前の証だとも言えます。さて、ここまでが召喚士という職能についての復習でしたが、何かわからないところはありましたか?」
当然イーノックは「ありません」と首を振り、サード女史は「よろしい」と言って教壇の上からビシッ! とイーノックの頭を鞭打った。
「痛ってぇー! なんで!?」
「『よし、乗り切ったぞ!』って考えているような顔をしていたのでムカつきました」
「なんですかそれ!? 理不尽すぎる!」
「あら、そうは考えてなかったんですか?」
「考えてましたけど!」
ビシッ! ビシッ! ビシッ!
サード女史は鞭をタイトスカートのホルダーに収めてチョークに持ち替えると黒板にカツカツと小気味よい音を刻んだ。
「召喚士の技能は大雑把に二つに分類できます。一つは魔獣の召喚。もう一つが魔獣の使役です」
書き込まれた『召喚』と『使役』のうち、女史は『召喚』を指した。
「『召喚』とはダンジョンなどで自然発生する知性のないスライムなどの魔獣を召喚して様々な用途に利用する最も単純な技能、」
次に『使役』を指す。
「『使役』とは知性のある魔獣、魔族などの、体内に『魔核』と呼ばれるエネルギー体を持つ生物と『従魔契約』を結んで『従魔化』した彼らを強制的に従わせる技能のことです」
サード女史は次にそれぞれ『利点』『欠点』と書いて罫線を引いて比較しやすいようにした。
『この人、嗜好がアレだけど教えるのは上手なんだよなぁ……』
イーノックは心の内でそう呟いたがもちろん声には出さない。
「『召喚』の利点は召喚士なら誰でも使うことができる簡便さで、対象となる魔獣の召喚呪文を習得すれば初心者でも使えます」
そう言ってサード女史は召喚の『利点』に『簡便さ』『初心者向き』と書き込んだ。
「欠点は召喚で呼び出せるのは知性の無い魔獣なので、召喚者の命令を一切受け付けずに勝手に動き回ることです」
続いて『欠点』に『命令できない』と書き込んだ。
「例えば実際にあった事例ですが、薬草採取の依頼を受けて森に入っていた召喚士がホーンテッドボア(イノシシの魔獣)の襲撃を受けました。召喚士はとっさにキラーマンティス(カマキリの魔獣)を召喚して対抗したのですがキラーマンティスはホーンテッドボアを攻撃せずに横にいた召喚士を襲ったのです。当然ですね、マヌケですね、知性の無い虫魔獣が人の命令に従うはずがありません。彼らの行動原理はいつだって本能なのですから」
これまでずっと初心者用の『召喚』しか使えなかったイーノックは深く頷いた。
命令できない魔獣を呼び出していったい何の役に立つのかと思われがちだが、使い方次第では非常に役に立つのが召喚だ。
例えば、長雨災害の時にイーノックが川沿いの修道院でホワイトスライムをばら撒いた。決壊しそうな堤防を補強するのにホワイトスライムの『水に濡れたら仮死状態になって固まる』という性質が極めて役立った好例だといえる。
もう一つ例を挙げると、他国との戦争で敵陣に対して火攻めを使いたいときは風上で大量の|火妖精(サラマンダー)を放って自由に走り回らせることで目的が達せられる。多大な魔力を必要とする魔術師の広範囲火炎魔法を使用するよりもよほど燃費が良い。
このように召喚はアイディア次第でいくらでも活用できる。
「次にようやくイーノック受講生にも使えるようになった『使役』は――」
サード女史が「ようやく」の部分を強調して言ったのでイーノックが嫌そうに顔を顰めると彼女はとても嬉しそうにブルっと体を震わせた。
『しまった! 喜ばせてどうする!?』
サード女史はニヤニヤとしながら教壇の上からイーノックの困り顔を堪能していたが、イーノックが視線を逸らして感情を抑え込むと「チッ」また舌打ちをして講義を再開した。
「『使役』の利点は従魔に指示を与えることで召喚者の思い通りに使役することができる利便性の高さです」
そう言ってサード女史は使役の『利点』に『利便性の高さ』と書き込んだ。
「欠点は知性の高い魔族や強い従魔はそもそも呼び出すこと自体が困難で、呼び出しても従魔契約が結べないケースが多々あることです」
そして欠点に『契約の難しさ』と書き込んだ。
「知性の低いコボルト(二足歩行する犬型の魔獣)くらいなら比較的容易に従魔契約を結ぶことができますが、人と同等以上の知性を持つ魔族と契約する難しさはそこらの魔獣とは段違いです」
黒板に右肩下がりの大雑把なグラフを描いて横線の値に『能力の高さ』と書き、縦線の値に『契約の成功率』と書いた。
「もちろん優秀な魔族ほど従魔にするのは困難で、運良く従魔にできたとしても契約を結び続ける魔力を維持するのも大変です。そのような理由から一般的な召喚士は維持コストが手頃で知性が高めな鳥タイプや獣タイプの魔獣と契約してしっかり調教することで使役しやすくしています」
召喚と使役の違いを分かりやすく書き込んだサード女史はチョークを置いて振り向いた。
「いろいろと扱いの難しい『使役』ですが召喚と比べると利便性と汎用性が段違いなので自分の従魔を持つことが召喚士として一人前の証だとも言えます。さて、ここまでが召喚士という職能についての復習でしたが、何かわからないところはありましたか?」
当然イーノックは「ありません」と首を振り、サード女史は「よろしい」と言って教壇の上からビシッ! とイーノックの頭を鞭打った。
「痛ってぇー! なんで!?」
「『よし、乗り切ったぞ!』って考えているような顔をしていたのでムカつきました」
「なんですかそれ!? 理不尽すぎる!」
「あら、そうは考えてなかったんですか?」
「考えてましたけど!」
ビシッ! ビシッ! ビシッ!
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