乙女ゲーに転生!?ある日公爵令嬢になった私の物語

ゆーかり

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本編

25 グレン視点

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苦しそうに眉を顰めるアンジェリカを宥めるように、俺は頭を撫でた。触れる頭皮からも熱の高さが伝わってくる。

アンジェリカの兄ウィルフレッドから報せを受け、取るものもとりあえずヴァルク家を訪れた。少し様子を見て帰るつもりだったのだが……

意識がボンヤリしているせいか、今日のアンジェリカはやけに素直で甘えられている感が堪らない。しかも止めとばかりに抱きついてきた。なんだこれ、反則だろ?
あのアンジェリカが死ぬほど可愛いとか……全くどうかしてる。

だがこんなアンジェリカをあの敵意剥き出しのイケ好かない魔族には見せられないな。俺は速攻で魔族避けの結界を張る。これであいつは暫くここへは来れないだろう。ざまぁ見ろ。

悶々としながら頭を撫でているうちにアンジェリカは寝入ってしまった。

意識はないはずなのに、アンジェリカの手は俺のシャツを掴んで離さない。
ここはベッドで、俺たちは婚約者で、例え間違いを犯したとて咎める者などいない。

そんな俺に無邪気に抱きついて甘えるとか普段のこいつなら絶対あり得ないな。
俺は帰るのを諦めてアンジェリカの隣に身を横たえると、燃えるように熱い体を抱き寄せた。

細いな。力を込めれば折れてしまいそうだ。だが、出るところはしっかり出ているし、男どもが密かにそういう目でアンジェリカを見ていることも知っている。
途端に苛立ちがこみ上げる。
全くおかしなものだ。あんなに嫌っていたアンジェリカにこんなにも振り回されるとは。

記憶を失った今のお前は、本当に前のお前と同じ存在なのか?
赤みを帯びた熱い頬に手の甲で触れる。

「アンジェリカ」

不思議で堪らない。前は名を呼ぶことすら忌まわしかったというのに、今は──

「アンジェリカ」

俺が素を曝け出せるのも、本音を語れるのもお前だけだ。

「お前は……誰なんだ?」

どうしても同一人物とは思えなかった。だってそうだろ?この俺が気付けば自然と足を運んでいるんだ。顔が見たくて、声が聞きたくて──

本当に、らしくもない。

「グレン……」

呼ばれたのかと顔を覗き込めばスヤスヤと寝入ったまま。薬が効いてきたのか表情は穏やかだ。安堵と共に吸い寄せられるよう額に口付けると、アンジェリカの眉間にシワが寄る。唇から溢れた言葉は

「……バカ」

お前意識ないよな?全く寝ても覚めてもブレない女だ。
俺は苦笑しながらアンジェリカを抱きしめた。ふわりと鼻腔をくすぐる甘い香りと薄衣越しに感じる熱い体。一向に俺を離す気配のないアンジェリカに俺は深い溜息をつく。生殺しだ……

俺は今宵男としては正に地獄のような一夜を経験するのだった──
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