52 / 77
本編
50
しおりを挟む
「私に何か話したいことでも?」
「ええ、あなたにグレンシュフォンティエル殿下を諦めて頂きたくて……」
え!?私がグレンを諦める!?待て待て……好きだったのは元アンジェリカさんですよ!って言っても通じないんだよなぁ。でもやっぱそういう系の話か。
「私とグレンシュフォンティエル殿下の婚約は政治ですから、そんな簡単に破棄など出来ませんよ。王太子様の婚約者ならあなたにだって分かるでしょう」
私にしては珍しい正論だ!ふ、ぐうの音も出まい。
「……忌々しい方」
マチルダちゃんの吐き捨てるような物言いと笑顔にゾッとする。
「グレンシュフォンティエル殿下の婚約者には元々私が決まっていたのに……碌な資質もないあなたなどの一言で全てが覆るなんて、理不尽にも程があるわ」
激しい憎悪を隠しもしないで、マチルダちゃんは一歩一歩と私に近付いてくる。恐怖に呑まれた私は後ずさるしかない。
「仮に私がグレンと婚約破棄したとしても、彼があなたを選ぶとは限らないわ」
「アニエステ妃の口添えがあれば陛下も拒めないでしょう。でもそれよりもっと簡単な方法があるわ。ねえアンジェリカ様、お願いだから消えて頂戴……」
ドンっと胸を押されて私後ろによろけて尻餅ついた。
「……ったぁ」
そこは広間の中央で、何故か周りには人っこ一人居なかった。いつの間にホールには私とマチルダちゃんだけ!?私が軽くパニックになってると、ガタンっておっきな音がした。ハッとして上を見上げると、あのでっかいシャンデリアが傾いていた。
え、まさか!?
マチルダちゃんの方を見ると、少し離れたところで腕組んで悪女スマイル。真っ赤な唇が三日月みたいだ。ああ、全部仕組まれてたのか……
ガタガタって凄い音がして、オペラ座の怪人のオープニングさながらにシャンデリアが落ちてきた。私一人を目掛けて──
もう条件反射だった。アズに攻撃された時みたいに、私はとっさにでっかい火の玉をシャンデリアにぶつけてた。同時に身の回りに防御の結界も張ってたなんて流石だ私!特訓の甲斐あったな!そのお陰でシャンデリアの破片で傷付くこともなかった。
あたりを見渡すと、真っ黒焦げになったシャンデリアの残骸があちこちに散らばってた。あんな巨大な塊一瞬で細切れにするとは……アンジェリカの魔力恐るべし。
「……ぅ……」
呻き声みたいなのが聞こえてきて、私ぱっと振り返った。あ!忘れてたマチルダちゃん!床に倒れてて気を失ってるのかな?近寄っても反応はない。
ドレスをちょっと失礼してまくってみると、ガラスの破片が飛んだのかストッキング破れてるし剥き出しの腕も傷だらけだった。
女の子の体なのに……私必死で治癒魔法かけた。殺されかけたことなんてふっとんでたよ。ただ助けなきゃって必死だった。
「早く誰かきて!」
広いホールに私の声がビンビン響く。早く誰か……助けてよグレン!
「アンリ!」
特大の心の声に応えるようにグレンがホールに飛び込んできた。グレンを追いかけるようにアーサーとメレディスさんも。
「グレン!早くマチルダさんを病院に!」
「なんだこれは……お前怪我はないのか!?」
グレンが私の肩を掴んで顔を覗き込んできた。その顔見てほっと力が抜けてしまう。
「私は大丈夫だから!早く病院、に……」
急激な目眩に目の前が真っ暗になる。魔力ちょっと使い過ぎたかな……火の玉より治癒魔法のが消耗激しいんだよね。必死だったから加減も出来なかった。でも今倒れるわけにはいかないのに!
「アンリ!?」
私グレンにもたれるように意識を失ってしまった──
「ええ、あなたにグレンシュフォンティエル殿下を諦めて頂きたくて……」
え!?私がグレンを諦める!?待て待て……好きだったのは元アンジェリカさんですよ!って言っても通じないんだよなぁ。でもやっぱそういう系の話か。
「私とグレンシュフォンティエル殿下の婚約は政治ですから、そんな簡単に破棄など出来ませんよ。王太子様の婚約者ならあなたにだって分かるでしょう」
私にしては珍しい正論だ!ふ、ぐうの音も出まい。
「……忌々しい方」
マチルダちゃんの吐き捨てるような物言いと笑顔にゾッとする。
「グレンシュフォンティエル殿下の婚約者には元々私が決まっていたのに……碌な資質もないあなたなどの一言で全てが覆るなんて、理不尽にも程があるわ」
激しい憎悪を隠しもしないで、マチルダちゃんは一歩一歩と私に近付いてくる。恐怖に呑まれた私は後ずさるしかない。
「仮に私がグレンと婚約破棄したとしても、彼があなたを選ぶとは限らないわ」
「アニエステ妃の口添えがあれば陛下も拒めないでしょう。でもそれよりもっと簡単な方法があるわ。ねえアンジェリカ様、お願いだから消えて頂戴……」
ドンっと胸を押されて私後ろによろけて尻餅ついた。
「……ったぁ」
そこは広間の中央で、何故か周りには人っこ一人居なかった。いつの間にホールには私とマチルダちゃんだけ!?私が軽くパニックになってると、ガタンっておっきな音がした。ハッとして上を見上げると、あのでっかいシャンデリアが傾いていた。
え、まさか!?
マチルダちゃんの方を見ると、少し離れたところで腕組んで悪女スマイル。真っ赤な唇が三日月みたいだ。ああ、全部仕組まれてたのか……
ガタガタって凄い音がして、オペラ座の怪人のオープニングさながらにシャンデリアが落ちてきた。私一人を目掛けて──
もう条件反射だった。アズに攻撃された時みたいに、私はとっさにでっかい火の玉をシャンデリアにぶつけてた。同時に身の回りに防御の結界も張ってたなんて流石だ私!特訓の甲斐あったな!そのお陰でシャンデリアの破片で傷付くこともなかった。
あたりを見渡すと、真っ黒焦げになったシャンデリアの残骸があちこちに散らばってた。あんな巨大な塊一瞬で細切れにするとは……アンジェリカの魔力恐るべし。
「……ぅ……」
呻き声みたいなのが聞こえてきて、私ぱっと振り返った。あ!忘れてたマチルダちゃん!床に倒れてて気を失ってるのかな?近寄っても反応はない。
ドレスをちょっと失礼してまくってみると、ガラスの破片が飛んだのかストッキング破れてるし剥き出しの腕も傷だらけだった。
女の子の体なのに……私必死で治癒魔法かけた。殺されかけたことなんてふっとんでたよ。ただ助けなきゃって必死だった。
「早く誰かきて!」
広いホールに私の声がビンビン響く。早く誰か……助けてよグレン!
「アンリ!」
特大の心の声に応えるようにグレンがホールに飛び込んできた。グレンを追いかけるようにアーサーとメレディスさんも。
「グレン!早くマチルダさんを病院に!」
「なんだこれは……お前怪我はないのか!?」
グレンが私の肩を掴んで顔を覗き込んできた。その顔見てほっと力が抜けてしまう。
「私は大丈夫だから!早く病院、に……」
急激な目眩に目の前が真っ暗になる。魔力ちょっと使い過ぎたかな……火の玉より治癒魔法のが消耗激しいんだよね。必死だったから加減も出来なかった。でも今倒れるわけにはいかないのに!
「アンリ!?」
私グレンにもたれるように意識を失ってしまった──
0
あなたにおすすめの小説
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
婚約破棄までの七日間
たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!
※少しだけ内容を変更いたしました!!
※他サイト様でも掲載始めました!
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さくら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱
鍋
恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。
婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。
前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。
だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。
私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。
傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。
王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。
ハッピーエンドは確実です。
※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる