乳房星(たらちねぼし)−1・0

佐伯達男

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第13話・愛が止まらない

【ヤマトナデシコ七変化】

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時は、夜10時半を過ぎた頃であった。

またところ変わって、大阪市中央区城見《おおさかちゅうおうくしろみ》にあるテレビ局にて…

この時、スタジオでは大量収録が行われていた。

A班のメンバーたちとドナ姐《ねえ》はんは、楽屋でお仕事を続けていた。

そんな中であった。

ゆかさんは、ゆきさんのケータイに電話をかけていた。

しかし…

(プルルルルルルルルルルルルルルルルルル…)

ゆきさんのケータイは着信音が鳴りっぱなしの状態が続いた。

(ピッ…)

しかたがないので、ゆかさんはいったん電話を切った。

ゆかさんは、ものすごくうんざり顔で言うた。

「あの子、どこでなにしてんねん…ゆきはどこのどこまでメーワクをかけてんねん!!」

近くにいたゆりさんがゆかさんに言うた。

「ゆき、電話に出なかったの?」
「うん…検査が終わったらいったんこっちに帰って来なさいと言うたのに…ホンマにアカン子ね!!」

ゆかさんは、もう一度ゆきさんのケータイに電話をかけた。

そしたら…

楽屋のどこかで、電話の着信音で小泉今日子さんが歌っていた『ヤマトナデシコ七変化』のサビの部分が聞こえた。

着うたを聞いたゆかさんは、おどろいた声で言うた。

「あれ、どこで着うたが聞こえているのよ?」

この時、福也《さちや》さんがNECの二つ折りを持ってゆかさんのもとにやって来た。

「ゆかさん…ゆかさん。」
「なんやねん~」
「あの…もしかしたら…これでしょうか?」

ゆかさんは、福也《さちや》さんからNECの二つ折りを受け取った。

二つ折りを受け取ったゆかさんは、おどろいた声で言うた。

「おねーちゃん大変よ!!」
「どないしたん?」
「あの子、ケータイを置いて出たみたいよ!!」
「えっ?」
「困った子ねもう!!」

ゆかさんは、近くで雑用をしていた風香《フー》ちゃんに声をかけた。

「風香《フー》ちゃん!!」
「はい。」
「ゆきからお仕事を引き継いだ際に受け取ったお仕事道具をもう一回確認してちょうだい!!」
「分かりました。」

風香《フー》ちゃんは、ゆきさんからお仕事を引き継いだ際に受け取ったお仕事道具の確認を始めた。

確認したところ、問題はなかった。

ゆかさんは、ゆいさんに声をかけた。

「ゆい。」
「なあにゆかねーちゃん。」
「ゆきは、ここから出た時に持っていったものを覚えているかな?」
「あの子、ルイ・ヴィトンのハンドバッグだけを持って行ったわよ。」
「ルイ・ヴィトンのハンドバッグだけね…分かったわ。」
「ゆかねーちゃん。」
「何よぅ~」
「ゆきは、どこの病院に検査に行ったの?」
「たしか…鴫野《しぎの》にある中型病院とは聞いたけど。」
「もしかしたらゆき…お医者さんから酷なことを告げられたのかもしれへん…」
「あの子は、ちいちゃいときから身体のあちらこちらが弱かったのよ…ゆいもあの時見ていたから分かるでしょ…」
「うん…ゆきが生まれた直後に…保育機に入れられていた…そうよね。」

ゆりさんは、深刻な表情で言うた。

「ゆきが未熟児で生まれたことが原因で…人生が大きく狂ってしまったわ…あの子…しょっちゅう忘れものばかりをしていたわ…そのたびに、おかーちゃんはゆきにガミガミといよった…他にも…学校の授業中や幼稚園のおユウギの時間の時…教室から抜け出してあちらこちらをうろついていた…」

ゆいさんは、ゆりさんが言うた言葉に対してこう答えた。

「うち、ゆきがそのようになった原因を知ってるわよ…ゆきがそのようになった原因を作ったのはオジキよ!!にへんめのおかーちゃんのオジキは女がらみの揉め事をよく起こしていたのよ…オジキが遥輝《はるき》の実母《はは》をレイプして妊娠させた事件がなかったら…遥輝《はるき》がうちに来なかったら…ゆきはこななことにはならへんかったのよ!!…それなのに…」

ゆかさんは、ゆいさんに対してこう言うた。

「もうそなな辛気《しんき》くさい話はやめにしょ…きりがあらへん…」

ゆかさんは、このあと自分の持ち場に戻った。

そうこうして行くうちに朝になった。

ゆきさんがテレビ局から出て24時間が経過したが、なんの連絡もなかった。

ゆきさんは、一体どこに行ったのだろうか?
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