乳房星(たらちねぼし)−1・0

佐伯達男

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第14話・飾りじゃないのよ涙は

【今さらジロー】

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時は、日本時間2月14日の夕方4時頃であった。

この時、くだらないもめ事があらたに2件発生した。

またところ変わって、福也《さちや》さんの実家にて…

大広間に章弘《あきひろ》と福也《さちや》さんの姉《おねえ》の江越久里子《えごしくりこ》(53歳)とふたりのおおきい子ども・美亜《みあ》(長女・24歳)と章介《しょうすけ》(長男・21歳)がいた。

美亜《みあ》と章介《しょうすけ》は大学生であるが、わけあって休学中である。

久里子《くりこ》は、章弘《あきひろ》に対して『ダンナとの夫婦関係を卒業してこっちへ戻るから…』と一方的に言うたあと口を閉ざした。

言われた章弘《あきひろ》は、ものすごく困った表情を浮かべた。

久里子《くりこ》は、章弘《あきひろ》にこの家に戻ると決めた…

章弘《あきひろ》は、久里子《くりこ》に対して『もう一度、ダンナと話し合いをしたらどうか?』と言うた…

双方の主張が食い違ったことが原因で話し合いができなくなった。

ところ変わって、となりの居間にて…

日菜《ひな》は、濃いネイビーのサックスバーの特大スーツケースに自分の着替えを詰めていた。

日菜《ひな》は、ものすごい血相で怒り狂っていた。

和利《かずとし》が名古屋栄《さかえ》のキャバで働いている女《ホステス》とサイコンすることをゼンテイにドーセー生活を始めたので、日菜《ひな》は用済みだと言うた。

そのまた上に、久里子《くりこ》にブジョクされた…

そのまた上に、実家の母親からの電話で『おじいちゃんがトケツしたから大急ぎで帰って来なさい!!』と言われた…

…ので、急きょ小浜市《おばま》へ帰ることを訣《き》めた。

この時であった。

一恵《かずえ》が部屋に入った。

一恵《かずえ》は、荷造りをしている日菜《ひな》に対しておどろいた声で言うた。

「日菜《ひな》さん!!日菜《ひな》さん!!なにしてるのよ!?」
「なにしてるのよって…うちは、実家へ帰る準備をしているのです!!」
「なんで実家へ帰るのよ!?」
「おじいちゃんがトケツしたのです!!」
「トケツしたって!?」
「ええ!!」
「日菜《ひな》さん…」
「なんですか義母《おかあ》さま!!うちはものすごくあせっているのよ!!」
「気持ちは分かるけど、なんでそんなにあせるのよ?」
「実家の母親《はは》が焦れと言うたのよ!!」
「ここから小浜《おばま》までどうやって行くのよ?」
「キシャで行きます!!…最終のオーシャンアロー号に乗って京都まで行きます…」
「京都から乗り継ぎ列車はあるの?」
「敦賀までサンダーバードに乗ります…敦賀駅で次兄《おにい》と合流したあと…実家へ帰ります!!」
「分かったわ…話し変わるけど…日菜《ひな》さんのおじいさまは、いつ頃から具合が悪くなったのよ?」
「去年の9月11日よ!!…おじいちゃんは…その日の夜、大量にトケツしたのよ…その時は、上の血圧値《けつあつ》が一時50台になったのよ…」
「そんな…」
「それからも、くり返しトケツが起こったのよ…きょうの夕方頃、また大量トケツが起こったのよ…おじいちゃんの体力が弱りだしたの…もう長くないと思うわ!!」
「それだったらなおさらね…それで、いつ頃こっちに帰るのよ?」

日菜《ひな》は、ものすごくいらついた声で一恵《かずえ》に言うた。

「いつ頃帰るのかと聞かれても答えることができません!!」
「それじゃあ困るわよ~」
「ほんとうに帰ることができないのです!!」

日菜《ひな》は、ものすごくつらい声で言うた。

「実家は病人をふたり抱えているのです…おじいちゃんはステージ4の腺がんで長くない…その上に、長兄《いちばんうえのあに》の妻が子宮ケイツイガンで入退院をくり返しているので、長兄《あに》の子ども(小1)の食事をつくる人がいないのです!!」
「困ったわね~」
「長兄《あに》の子は、うちを頼っているのです…次兄《じけい》は(長兄の子)のそばにいてくれと言うてるのです…嫂《あね》は、明日また入院するのです…」
「それじゃあ仕方がないわね~」

日菜《ひな》は、荷造りができたあと大急ぎで家から出発した。

この日を最後に、日菜《ひな》は家から遠のいた。

同時に、和利《かずとし》とリコンした。

そのまた同じ頃であった。

新《あらた》の実家でも、娘が子どもを連れて出戻った事件が発生した。

またところ変わって、新《あらた》の実家の大広間にて…

大広間のテーブルに晃代《てるよ》と新《あらた》の姉《おねえ》・源田《げんだ》きぬ代(53歳)とふたりの息子・伊織《いおり》(中2)と塁《るい》(5歳)がいた。

きぬ代は、ものすごく泣きそうな声で晃代《てるよ》に言うた。

「おかーさん!!うちはダンナからどぎつい暴力をふるわれたのよ!!このままではあぶないから伊織《いおり》と塁《るい》を連れて逃げ出したのよ!!」

晃代《てるよ》は、ものすごく困った声できぬ代に言うた。

「きぬ代、もう一度ダンナさまと話し合うことはできないの?」

きぬ代は、ものすごくいらついた声で言うた。

「ダンナは話が分からない男だからなに言うてもアカンのよ!!」
「だけど、ダンナさまは話せば分かる人よ…」
「信用できない!!…ダンナの親きょうだいも親類たちも話ができない人ばかりよ…だからダンナとリコンするわよ…ダンナ方の家ともリエンするわよ!!」
「分かったわよ…そんなにイヤならリコンしたらどう?」

晃代《てるよ》は、あきらめ顔できぬ代に言うたあと大きくため息をついた。

困ったわ…

どうすればいいのよ…

助けて…

新《あらた》の実家では、耕史《こうじ》が静岡のキャバの女《ホステス》と駆け落ちをしたあと行方不明になった事件が発生した。

耕史《こうじ》が女《ホステス》に子をはらませるなど…次々とあやまちをおかした。

それを聞いたゆらさんは、怒って家出した。

家出したゆらさんは、和歌山で暮らしているゆきさんたち5人が暮らしている家に転がり込んだ。

おいおい…

一体、どうなってんねん…
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