14 / 14
最終回
しおりを挟む
アタシは、2014年の12月20日にボストンの港からフェリーに乗って、リスボンへ行った。
そこから、極東ロシアへ帰る予定であった。
しかし…
アタシは、帰らなかった。
時は流れて…
2029年…
36歳のアタシは、ミラノで暮らしていた。
来年には生まれ故郷に帰ろう…
来年がだめでも、再来年に帰ればいい…
アタシは、そう思いながら生きていた。
イタリアに入国したのは、2015年の7月頃だった。
その時、所持金が大きく減少して70セントしかなかった。
再びアタシはバイトして、8500ユーロ稼いだ。
その後、鉄道を乗り継いでモスクワまで行こうとした。
ミラノ北駅(マルペンサ・エクスプレス駅)の窓口で国際列車の切符を買おうとしたけど、買えなかった。
…と言うよりも…
アタシは、生まれ故郷に帰るのがイヤだからやめた。
だから、アタシはミラノで暮らしている。
アタシは、ミラノ市内のセーナト通りにある小さなアパートで暮らしている。
朝は6時から10時までチャオ(セルフサービスレストラン)のチュウボウの皿洗い、昼は1時から夕方5時までグランドホテルエ・デ・ミランにて水回りの清掃のバイトのふたつを掛け持ちで働いている。
もう少しおカネがほしいときは、セリエAの試合がある日にサン・シーロスタジアムへに行って、ジェラートの売り子さんのバイトをしたし、イギリスの男性雑誌のグラビアの素人モデルなどもした。
生まれ故郷から足が遠のいた…
同時に、幸せになるチャンスを逃した。
2029年2月14日のことであった。
(カランカランカラン…)
カフェレストランでのバイトを終えたアタシは、サン・フェデーレ教会の近くの広場にやって来た。
この日、1組のカップルさんの結婚式が行われていた。
挙式のあと、カップルさんがふたりでウェディングベルを鳴らした。
幸せイッパイのカップルさんを見たアタシは、顔が曇った。
アタシは…
どうして、幸せになることができなかったのか…
離婚と再婚を繰り返していたから…
幸せになる機会を逃した…
ドイツにいた時もフランスにいた時も…
ボストンやシカゴにいた時も…
アタシは、幸せになることができなかった。
だから、ダンナなんかいらない…
時は流れて…
2029年3月14日のことであった。
アタシは、セリエAのACミランのホームゲームが開催されているサン・シーロスタジアムのスタンドでジェラートの売り子さんのバイトをしていた。
試合終了後、アタシは日当80ユーロを受け取ってアパートに帰ろうとした。
その時、売り子会社の社長さんが『一緒に晩ごはんを食べに行きませんか?』と言うてアタシを誘った。
アタシは、社長さんと一緒に晩ごはんを食べに行った。
ところ変わって、ミラノ中央駅付近にあるドーリア・グランドホテルにある高級レストランにて…
レストランの予約席のテーブルの上には、3人分の食器が並んでいた。
アタシはこの時、もうひとりどなたが来られるのかな…と思った。
アタシと社長さんがレストランに入ってから20分後であった。
ネイビーのスーツ姿の男性がアタシと社長さんが座っている席にやって来た。
「おじさま、ただいま到着しました。」
「おお、ルガーノ…よく来たな。」
ネイビーのスーツ姿の男性は、社長さんのおいごさんで名前はルガーノさんである。
ルガーノさんは38歳で、今も独身…
『40代が近くなると言うのに、どうして嫁さんがいないのか?』と社長さんが心配していたので、ルガーノさんのお見合い相手にアタシを選んだ。
ルガーノさんは、コモ市内にある社長さんが経営している小さな商社に勤務で、年収は8万ユーロである。
自宅は、コモ湖に面した通りにある。
一緒に同居をしている家族は、お母さまひとりだけである。
ひとめでアタシのことを気に入ったルガーノさんは、アタシに交際を申し込んだ。
アタシは『数日考えさせてほしい…』と社長さんに伝えた。
その翌日に、社長さんからかかって電話がかかってきた。
社長さんは、ルガーノさんと会ってほしいとアタシに言うた。
アタシは、ルガーノさんとお付き合いをすることになった。
お見合いから10日後の3月24日のことであった。
アタシは、気持ちの整理がつかない中でルガーノさんとお付き合いを始めた。
ルガーノさんと会うと社長さんには伝えたが、ダメだったら断るつもりである。
まずは、軽くごはんでも食べながらおしゃべりをすることから始める。
アタシとルガーノさんは、ドゥオーモ広場で待ち合わせをした。
出会った後、レストランへ行く。
ふたりで軽くランチを摂りながら、おしゃべりをして過ごした。
2回目以降のデートは、センピオーネ公園の中にある市立水族館に行ったり、ナヴィリオ運河を通る小さな遊覧船に乗るなど…ミラノデートを楽しんだ。
それから2ヶ月後であった。
12回目のデートは、センピオーネ公園へ行った。
ふたりでベンチに座ってお話をしている時であった。
ルガーノさんは、アタシにプロポーズをした。
ルガーノさんは、給料3ヶ月分のカメリアダイヤモンドのエンゲージリングをアタシの右の薬指につけた。
そして、アタシの手のひらにそっとキスした。
「アリョーナ…ぼくの妻になってほしい…」
ルガーノさんからのプロポーズの言葉を聞いたアタシは、涙をポロポロとこぼした。
2029年6月の第1日曜日に、アタシはルガーノさんとふたりきりでサンタゴスティーノ教会で結婚式を挙げた。
アタシは、再び白いウェディングドレスを着ることができた。
教会のチャペルにて…
アタシは、ルガーノさんとふたりで神父さんの前で結婚のちかいをのべた。
永遠の愛をちかったふたりは、婚礼指輪を交換した。
そして…
ルガーノさんは、アタシのウェディングベールを上げて、アタシを抱きしめてキスした。
何度も何度も繰り返してキスをして行くうちに、アタシの身体(からだ)にルガーノさんの優しさがしみた。
「アリョーナ。」
「ルガーノさん。」
「ぼくは…アリョーナだけを愛するよ…」
そして…
(カランカランカラン…)
アタシは、ルガーノさんと一緒にウェディングベルを鳴らした。
やっと…
ソッフィオーネ(の鐘)を鳴らすことができた…
ソッフィオーネは、イタリア語でタンポポである。
タンポポの綿毛に、アタシとルガーノさんの愛情をつめて、たくさんの幸せと慶びを届けたい…
アタシは、36歳でやっと見つけた本当の女の幸せを守って行こうと決めた。
めでたしめでたし…
…で終わらせたいけど、そう言うわけには行かなかった。
アタシとルガーノさんは、結婚したそうそうに早くもギブアップした。
アタシとルガーノさんは、結婚式の翌日からコモ市内にある借家で暮らす予定であった。
しかし、借家の賃貸契約がルガーノさんのお母さまによって解除された。
だから、ルガーノさん…ううん、あいつの母親と同居生活を余儀なくされた。
最初の半月はがまんしたけど、もうイヤになった。
20日目以降、アタシと義母はケンカするようになった。
義母(ルガーノさんのお母さまの表記は義母に変更する)は、アタシとあいつに同居をしてほしいと求めた理由は、アタシに家事全般を押しつける目的であった。
義母はアタシに『家庭のことを全部お願いいたします。』と言うて、家を出て行く。
その間、アタシが家事全般をしていた。
あいつも、仕事が忙しいからと言うて帰りはいつも深夜が多くなっていた。
その間、アタシはひとりぼっち…
そんなことばかりが11ヶ月間も続いたので、アタシは義母と大ゲンカを繰り返すようになった。
同時に、あいつも自分の仕事にほこりがもてなくなった。
あいつの給料が大きく下がったことが原因であった。
年収5万ユーロが月給5000ユーロの安月給になった。
だから、自分の仕事にほこりが持てなくなった。
アタシとあいつは、毎日毎晩大ゲンカをするようになった。
2030年5月6日…
アタシとあいつは、離婚の危機にひんした。
アタシは、義母に代わって家事全般をしてきた。
しかし、義母はアタシのやり方が気に入らないと言うてアタシにいちゃもんつけてくる…
そのたびに大ゲンカを起こした。
この日の夕食の時であった。
この日の夕食のメニューは、リーゾパスタとグリーンサラダである。
義母は『自分が作っているのと違うわ!!』と言うて、アタシを言いがかりをつけた。
だから、アタシはブチ切れた。
「義母(おかあ)さま!!アタシの味付けのどこが気に入らないと言うのですか!?そんなに気に入らないのなら食べないで!!」
「アリョーナさん!!何ですかその言い方は!?」
「義母さまこそなによ!!アタシに家事全般を押しつけて、外でコソコソコソコソコソコソとなにしているのよ!!」
「アリョーナさん!!アタシはアリョーナさんにしっかりしてほしいから言ってるのよ!!」
「やかましいわねナマクラキーッ!!」
アタシと義母が大ゲンカをしている時、あいつがミネラルウォーターが入っているタンブラをアタシと義母に投げたあと、怒鳴り声をあげた。
「ふざけんな!!ぶっ壊してやる!!ワーッ!!」
サクラン状態におちいったあいつは、食卓をひっくり返した。
(ガラガラガラガシャーン!!)
そして、あいつは部屋中がメチャクチャになるまで暴れ回った。
アタシと義母は、あいつを止めることができなかった。
こんなはずではなかった…
アタシ…
また、結婚相手を間違えたわ…
…と言うことで、アタシの結婚生活はまたトンザした。
あいつの家を飛び出したアタシは、マルペンサエクスプレスのノルド線のコモ駅の近くにあるアパートに移った。
アタシは、あいつと離婚をすることを前提に別居生活を始めた。
同時に、かけもちバイトの暮らしを始めた。
列車でミラノ市内に行って、昼はマジェンタ大通りにある病院で水回りの清掃、夜はSヴィットーレ通りにあるスポーツバーとかけもちでバイトをした。
月給は、合わせて700ユーロである。
その中から、家賃と定期代で合わせて360ユーロが引かれる。
残った340ユーロを生活費に充てる。
足りない分は、イギリスの男性雑誌のグラビアの撮影が来る日に素人モデルをして500ユーロのモデル料を稼いだ。
それでもまだ、生活は苦しい…
その一方で、あいつは欠勤と早退を繰り返すようになった。
アタシとあいつの愛は、音を立てて崩れた。
あいつの家を飛び出してから1ヶ月後であった。
勤務態度が悪くなったあいつは、就労意欲が低下した。
会社の経営状況がどうなっているのか知らないけど、あいつは本職を外されたことに不満を抱えていると思う。
欧州経済の低迷で、本業である海外事業の業績不振であると聞いたけど、本当かしら…
アタシがあいつの家を飛び出してから4ヶ月が過ぎた頃であった。
アタシは、自分の品物を全部取り出すために、一度コモ市内のあいつの家へ行った。
アタシは、自分の着替え類やメイク道具を紙袋につめていた。
一階の居間では、あいつと義母が怒鳴り合いの大ゲンカを起こしていた。
会社に行かなくなったあいつを義母がひどく心配していた。
義母は、あいつにもう一度会社に出勤をしてほしいと言うた。
しかし、あいつは会社をやめて転職をしたいと言うて拒否した。
その上に、アタシと離婚すると義母に怒鳴った。
そのあとは、きわめて危険な状態におちいった。
(ガシャーン!!バキバキ!!ドスンドスン!!)
あいつは、家中を暴れ回った。
アタシは、嵐がおさまるのを待ってから家を出ることにした。
それから60分後…
室内は、ひどく荒れていた。
あいつに殴られた義母は、ましてしくしく泣いていた。
あいつは、ウヰスキーを水で割らずにストレートでのんでいた。
アタシは、冷めた目であいつと義母を見つめた。
そして…
右の薬指から指輪を外して、その場に投げすてた。
指輪をすてたアタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持って家出した。
同時に、コモも捨てた。
2030年6月1日…
再びミラノに逃げ込んだアタシは、セーナト通りにあるアパートに転がり込んだ。
あいつとの間にできた深い溝は、もはや修復不能であった。
ドゥオーモ広場にひとりでやって来たアタシは、途方にくれていた。
そんな時であった。
「アリョーナ…アリョーナ…」
遠くで、アタシを呼ぶ声が聞こえた。
アタシを呼んでいるのは…
誰なの?
アタシが辺りをふりかえった時であった。
15年前に別れてそれっきりになったタメルランが、アタシを探してミラノへやってきた。
「その声は…タメルラン?」
14年ぶりにアタシと再会したタメルランは、グレーのランニングシャツとダボダボのデニムパンツとボサボサの髪の毛とサンダル姿であった。
「アリョーナ…アリョーナ…」
タメルランは、アタシをギュッと抱きしめてキスをした。
アタシの気持ちは、タメルランと再会できた喜びに包まれた。
タメルランは、あの事件のあと不法入国でアメリカ合衆国に8年間入国禁止になった。
その後、フランスのコルシカ島にある刑務所で服役生活を送った。
2年前に刑期を終えたタメルランは、仮出所中にミラノ市内の木工所に再就職して、カタギになった。
2ヶ月前に、晴れて本出所となった。
タメルランは、アタシと再会できたことを喜んだ。
「アリョーナ…会いたかった…ずっとアリョーナに会いたかった…」
「ああ…タメルラン…」
タメルランに抱かれているアタシは、あいつのことをすっかり忘れた。
その日の夜のことであった。
アタシは、タメルランが暮らしているアパートの部屋にいた。
アタシは、タメルランに抱かれた。
「アリョーナ…」
「タメルラン…抱いて…」
タメルランは、アタシの右のうなじにそっとキスした。
「あっ…」
「アリョーナ…」
「タメルラン…」
アタシは、タメルランに抱かれたまま眠った。
そして、翌朝…
アタシは、タメルランの胸の中で目覚めた。
アタシは、タメルランの胸の中で甘えている。
「アリョーナ…」
タメルランは、胸で甘えているアタシを見つめている。
朝食の時であった。
テーブルの上には、朝食を終えた後のブレンドコーヒーが置かれていた。
アタシとタメルランは、食後のコーヒーをのみながら話をした。
「オレは…あの事件のあと、FBIに逮捕されて…不法入国でアメリカ合衆国への入国禁止を受けた…ボストンのパブでの乱闘事件のこともあって…コルシカ島にある刑務所で服役をしていた…2年前に出所をして…2ヶ月前に晴れて本出所となった…」
「どうして…あの時アメリカへ不法入国をしたのよ?」
「アリョーナのことが好きだから…アメリカに不法入国した。」
「タメルラン…」
タメルランは、おもむろな表情でアタシに言うた。
「アリョーナ…もう一度…オレとやり直さないか?」
タメルラン言葉を聞いたアタシは、もう一度タメルランとやり直そうと決意した。
それから2ヶ月後、アタシはコモの市役所に離婚届を出した。
その一方で、あいつは辞表を叩きつけて会社をやめた。
それから2日後のことであった。
義母が、突然大病で倒れてコモ市内にある救急病院に運ばれた。
くも膜下出血で昏睡状態におちいった義母は、ICU室に隔離された。
あいつは、義母が倒れたことと会社をやめたこととアタシに去られた…の三重の苦しみを抱え込んだ。
アタシはその頃、タメルランと一緒に新生活を始める準備を進めた。
なので、あいつとやり直す気は全くない…
アタシとタメルランは、バイト休みを利用して、ミラノ市内にある家具屋さんやブライダルショップへ行って、準備を進めた。
どんな結婚式をあげようか?
新居には、こんな家具があったらいいね…
などと、楽しくおしゃべりをしながら進めた。
アタシとタメルランは、生活の拠点を地中海に浮かぶマルタ島のヴァレッタ市へ移すことを決めた。
年が明けて、2031年1月7日のことであった。
アタシとタメルランは、再婚後の暮らしの準備のためにミラノとマルタ島を往復して、新生活を始める準備を進めた。
タメルランは、ヴァレッタ市内にある木工所に再就職することが決まった。
アタシは、ココパッツオ(シーフードレストラン)のチュウボウにて皿洗いの仕事とフェニシアホテルマルタでアメニティの仕事をかけもちですることが決まった。
新居は、ヴァレッタ市内にある小さなアパートに決まった。
マルタで生活を始める予定日を、現地の祝日・3月31日の自由の日の前日と決めて準備を完了させることにした。
時は流れて…
2031年3月24日のことであった。
アタシとタメルランは、アパートの大家さんに旅立ちのごあいさつをして、ミラノ中央駅に向かう予定であった。
(ジリリリリリン…ジリリリリリン)
この時、大家さんの部屋の黒電話がけたたましく鳴り響いた。
大家さんはアタシに『あら、電話が鳴っているみたいだわ…アリョーナさん、ちょっとだけ待ってね。』と言うて電話に出た。
早くミラノ中央駅に行きたい…
マルタへ行きたい…
アタシの気持ちは、すごくあせった。
大家さんは、電話の受話器を上げて話した。
「はい…もしもし…○△荘はうちでございますが、どちら様でしょうか…ああ、コモ市内の…どうもご無沙汰しています…アリョーナさんですか?代わりましょうか?」
大家さんは、アタシに電話に出てと言うた。
しかし、アタシは拒否した。
「イヤ!!」
「どうして拒否するのよ?ルガーノさんのおじさまがアリョーナさんのことを心配してかけて下さったのよ…ひと言ごあいさつしたら?」
アタシは、仕方なく電話に出た。
受話器の向こう側で、あいつがメソメソ泣いてる声が聞こえた。
あいつのおじが、沈痛な声でアタシに言うた。
「アリョーナさん…アリョーナさん聞こえるかな…ルガーノの母親が…今朝8時前に…神様のもとへ旅立った…」
(ガチャーン!!)
アタシは、怒って電話を切った。
「アリョーナ、アリョーナ、どうしたのだよ。」
タメルランが、心配そうな表情でアタシに呼び掛けた。
アタシは、タメルランにミラノ中央駅に行こうと言うた。
出発しようとしたふたりに、大家さんはこのままでいいのかと言うた。
アタシは、大家さんに言うた。
「もういいのです…行かせてください。」
アタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持って、タメルランと一緒にミラノ中央駅へ向かった。
ミラノ中央駅についたアタシとタメルランは、ジェノヴァ行きの列車を待っていた。
このままマルタに行くか…
それともコモへ行くか…
アタシは、ひどく悩んでいた。
コモに行けば、あいつとまた顔を合わすことになる…
あいつには会いたくない…
ゼッタイにイヤ…
その時であった。
タメルランがアタシに『オレがコモへ行ってくる。』と言うて、どこかへ行った。
それからアタシは、待ちぼうけを食らった。
まさか…
タメルランは、コモへ行って…
あいつと…
そんな…
やめて!!タメルラン!!
早く帰ってきて!!
アタシは、サクラン状態におちいった。
その頃であった。
タメルランは、コモへ行ってあいつと大ゲンカを起こした。
あいつは、タメルランに殴りかかったあげくに刃物をふりまわした。
この時、あいつのおじがふたりを止めに入った。
その際に、タメルランがあいつとおじを刃物で刺した。
あいつとおじが亡くなった。
タメルランは、殺人容疑で警察に逮捕された。
時は流れて…
2031年4月3日のことであった。
ひとりぼっちのアタシは、ドゥオーモ広場でタメルランを待ったが、アタシの元に帰らなかった。
もういいわ…
やっぱり、男いらない…
女ひとりで生きて行くわ。
それから数日後のことであった。
場所は、ジェノヴァの港にて…
アタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持ってフェリーに乗り込んだ。
アタシは、再び旅に出ることにした。
19歳の時から始まった幸せ探しの旅は、残念ながら終着駅にたどり着くことができなかった。
また、ふりだしからやり直しね…
いっぱい傷ついて、いっぱい泣いて、いっぱい苦しんで…
女の幸せを探し続けていたけど、アタシがほしい幸せはどこにもなかった。
でも…
アタシは…
あきらめない…
また、ふりだしにもどってやり直せばいいわ…
アタシは…
自分の足で、しっかりと歩くのよ…
アタシは、船室の窓から見える青く澄んだジェノヴァ湾を見つめながら何度も何度も言い聞かせた。
(ボーッ!!ボーッ!!)
出船の汽笛が鳴り響いた。
同時に、船はゆっくりと岸壁から離れた。
船は、地中海からジブラルタル海峡を経由して大海原へ出た。
アタシのことを心底から愛してくれる人が見つかって、プロポーズをされて、結婚が決まって…
もう一度、ウェディングベルを鳴らす日が来るまで…
旅は、続く…
【終】
そこから、極東ロシアへ帰る予定であった。
しかし…
アタシは、帰らなかった。
時は流れて…
2029年…
36歳のアタシは、ミラノで暮らしていた。
来年には生まれ故郷に帰ろう…
来年がだめでも、再来年に帰ればいい…
アタシは、そう思いながら生きていた。
イタリアに入国したのは、2015年の7月頃だった。
その時、所持金が大きく減少して70セントしかなかった。
再びアタシはバイトして、8500ユーロ稼いだ。
その後、鉄道を乗り継いでモスクワまで行こうとした。
ミラノ北駅(マルペンサ・エクスプレス駅)の窓口で国際列車の切符を買おうとしたけど、買えなかった。
…と言うよりも…
アタシは、生まれ故郷に帰るのがイヤだからやめた。
だから、アタシはミラノで暮らしている。
アタシは、ミラノ市内のセーナト通りにある小さなアパートで暮らしている。
朝は6時から10時までチャオ(セルフサービスレストラン)のチュウボウの皿洗い、昼は1時から夕方5時までグランドホテルエ・デ・ミランにて水回りの清掃のバイトのふたつを掛け持ちで働いている。
もう少しおカネがほしいときは、セリエAの試合がある日にサン・シーロスタジアムへに行って、ジェラートの売り子さんのバイトをしたし、イギリスの男性雑誌のグラビアの素人モデルなどもした。
生まれ故郷から足が遠のいた…
同時に、幸せになるチャンスを逃した。
2029年2月14日のことであった。
(カランカランカラン…)
カフェレストランでのバイトを終えたアタシは、サン・フェデーレ教会の近くの広場にやって来た。
この日、1組のカップルさんの結婚式が行われていた。
挙式のあと、カップルさんがふたりでウェディングベルを鳴らした。
幸せイッパイのカップルさんを見たアタシは、顔が曇った。
アタシは…
どうして、幸せになることができなかったのか…
離婚と再婚を繰り返していたから…
幸せになる機会を逃した…
ドイツにいた時もフランスにいた時も…
ボストンやシカゴにいた時も…
アタシは、幸せになることができなかった。
だから、ダンナなんかいらない…
時は流れて…
2029年3月14日のことであった。
アタシは、セリエAのACミランのホームゲームが開催されているサン・シーロスタジアムのスタンドでジェラートの売り子さんのバイトをしていた。
試合終了後、アタシは日当80ユーロを受け取ってアパートに帰ろうとした。
その時、売り子会社の社長さんが『一緒に晩ごはんを食べに行きませんか?』と言うてアタシを誘った。
アタシは、社長さんと一緒に晩ごはんを食べに行った。
ところ変わって、ミラノ中央駅付近にあるドーリア・グランドホテルにある高級レストランにて…
レストランの予約席のテーブルの上には、3人分の食器が並んでいた。
アタシはこの時、もうひとりどなたが来られるのかな…と思った。
アタシと社長さんがレストランに入ってから20分後であった。
ネイビーのスーツ姿の男性がアタシと社長さんが座っている席にやって来た。
「おじさま、ただいま到着しました。」
「おお、ルガーノ…よく来たな。」
ネイビーのスーツ姿の男性は、社長さんのおいごさんで名前はルガーノさんである。
ルガーノさんは38歳で、今も独身…
『40代が近くなると言うのに、どうして嫁さんがいないのか?』と社長さんが心配していたので、ルガーノさんのお見合い相手にアタシを選んだ。
ルガーノさんは、コモ市内にある社長さんが経営している小さな商社に勤務で、年収は8万ユーロである。
自宅は、コモ湖に面した通りにある。
一緒に同居をしている家族は、お母さまひとりだけである。
ひとめでアタシのことを気に入ったルガーノさんは、アタシに交際を申し込んだ。
アタシは『数日考えさせてほしい…』と社長さんに伝えた。
その翌日に、社長さんからかかって電話がかかってきた。
社長さんは、ルガーノさんと会ってほしいとアタシに言うた。
アタシは、ルガーノさんとお付き合いをすることになった。
お見合いから10日後の3月24日のことであった。
アタシは、気持ちの整理がつかない中でルガーノさんとお付き合いを始めた。
ルガーノさんと会うと社長さんには伝えたが、ダメだったら断るつもりである。
まずは、軽くごはんでも食べながらおしゃべりをすることから始める。
アタシとルガーノさんは、ドゥオーモ広場で待ち合わせをした。
出会った後、レストランへ行く。
ふたりで軽くランチを摂りながら、おしゃべりをして過ごした。
2回目以降のデートは、センピオーネ公園の中にある市立水族館に行ったり、ナヴィリオ運河を通る小さな遊覧船に乗るなど…ミラノデートを楽しんだ。
それから2ヶ月後であった。
12回目のデートは、センピオーネ公園へ行った。
ふたりでベンチに座ってお話をしている時であった。
ルガーノさんは、アタシにプロポーズをした。
ルガーノさんは、給料3ヶ月分のカメリアダイヤモンドのエンゲージリングをアタシの右の薬指につけた。
そして、アタシの手のひらにそっとキスした。
「アリョーナ…ぼくの妻になってほしい…」
ルガーノさんからのプロポーズの言葉を聞いたアタシは、涙をポロポロとこぼした。
2029年6月の第1日曜日に、アタシはルガーノさんとふたりきりでサンタゴスティーノ教会で結婚式を挙げた。
アタシは、再び白いウェディングドレスを着ることができた。
教会のチャペルにて…
アタシは、ルガーノさんとふたりで神父さんの前で結婚のちかいをのべた。
永遠の愛をちかったふたりは、婚礼指輪を交換した。
そして…
ルガーノさんは、アタシのウェディングベールを上げて、アタシを抱きしめてキスした。
何度も何度も繰り返してキスをして行くうちに、アタシの身体(からだ)にルガーノさんの優しさがしみた。
「アリョーナ。」
「ルガーノさん。」
「ぼくは…アリョーナだけを愛するよ…」
そして…
(カランカランカラン…)
アタシは、ルガーノさんと一緒にウェディングベルを鳴らした。
やっと…
ソッフィオーネ(の鐘)を鳴らすことができた…
ソッフィオーネは、イタリア語でタンポポである。
タンポポの綿毛に、アタシとルガーノさんの愛情をつめて、たくさんの幸せと慶びを届けたい…
アタシは、36歳でやっと見つけた本当の女の幸せを守って行こうと決めた。
めでたしめでたし…
…で終わらせたいけど、そう言うわけには行かなかった。
アタシとルガーノさんは、結婚したそうそうに早くもギブアップした。
アタシとルガーノさんは、結婚式の翌日からコモ市内にある借家で暮らす予定であった。
しかし、借家の賃貸契約がルガーノさんのお母さまによって解除された。
だから、ルガーノさん…ううん、あいつの母親と同居生活を余儀なくされた。
最初の半月はがまんしたけど、もうイヤになった。
20日目以降、アタシと義母はケンカするようになった。
義母(ルガーノさんのお母さまの表記は義母に変更する)は、アタシとあいつに同居をしてほしいと求めた理由は、アタシに家事全般を押しつける目的であった。
義母はアタシに『家庭のことを全部お願いいたします。』と言うて、家を出て行く。
その間、アタシが家事全般をしていた。
あいつも、仕事が忙しいからと言うて帰りはいつも深夜が多くなっていた。
その間、アタシはひとりぼっち…
そんなことばかりが11ヶ月間も続いたので、アタシは義母と大ゲンカを繰り返すようになった。
同時に、あいつも自分の仕事にほこりがもてなくなった。
あいつの給料が大きく下がったことが原因であった。
年収5万ユーロが月給5000ユーロの安月給になった。
だから、自分の仕事にほこりが持てなくなった。
アタシとあいつは、毎日毎晩大ゲンカをするようになった。
2030年5月6日…
アタシとあいつは、離婚の危機にひんした。
アタシは、義母に代わって家事全般をしてきた。
しかし、義母はアタシのやり方が気に入らないと言うてアタシにいちゃもんつけてくる…
そのたびに大ゲンカを起こした。
この日の夕食の時であった。
この日の夕食のメニューは、リーゾパスタとグリーンサラダである。
義母は『自分が作っているのと違うわ!!』と言うて、アタシを言いがかりをつけた。
だから、アタシはブチ切れた。
「義母(おかあ)さま!!アタシの味付けのどこが気に入らないと言うのですか!?そんなに気に入らないのなら食べないで!!」
「アリョーナさん!!何ですかその言い方は!?」
「義母さまこそなによ!!アタシに家事全般を押しつけて、外でコソコソコソコソコソコソとなにしているのよ!!」
「アリョーナさん!!アタシはアリョーナさんにしっかりしてほしいから言ってるのよ!!」
「やかましいわねナマクラキーッ!!」
アタシと義母が大ゲンカをしている時、あいつがミネラルウォーターが入っているタンブラをアタシと義母に投げたあと、怒鳴り声をあげた。
「ふざけんな!!ぶっ壊してやる!!ワーッ!!」
サクラン状態におちいったあいつは、食卓をひっくり返した。
(ガラガラガラガシャーン!!)
そして、あいつは部屋中がメチャクチャになるまで暴れ回った。
アタシと義母は、あいつを止めることができなかった。
こんなはずではなかった…
アタシ…
また、結婚相手を間違えたわ…
…と言うことで、アタシの結婚生活はまたトンザした。
あいつの家を飛び出したアタシは、マルペンサエクスプレスのノルド線のコモ駅の近くにあるアパートに移った。
アタシは、あいつと離婚をすることを前提に別居生活を始めた。
同時に、かけもちバイトの暮らしを始めた。
列車でミラノ市内に行って、昼はマジェンタ大通りにある病院で水回りの清掃、夜はSヴィットーレ通りにあるスポーツバーとかけもちでバイトをした。
月給は、合わせて700ユーロである。
その中から、家賃と定期代で合わせて360ユーロが引かれる。
残った340ユーロを生活費に充てる。
足りない分は、イギリスの男性雑誌のグラビアの撮影が来る日に素人モデルをして500ユーロのモデル料を稼いだ。
それでもまだ、生活は苦しい…
その一方で、あいつは欠勤と早退を繰り返すようになった。
アタシとあいつの愛は、音を立てて崩れた。
あいつの家を飛び出してから1ヶ月後であった。
勤務態度が悪くなったあいつは、就労意欲が低下した。
会社の経営状況がどうなっているのか知らないけど、あいつは本職を外されたことに不満を抱えていると思う。
欧州経済の低迷で、本業である海外事業の業績不振であると聞いたけど、本当かしら…
アタシがあいつの家を飛び出してから4ヶ月が過ぎた頃であった。
アタシは、自分の品物を全部取り出すために、一度コモ市内のあいつの家へ行った。
アタシは、自分の着替え類やメイク道具を紙袋につめていた。
一階の居間では、あいつと義母が怒鳴り合いの大ゲンカを起こしていた。
会社に行かなくなったあいつを義母がひどく心配していた。
義母は、あいつにもう一度会社に出勤をしてほしいと言うた。
しかし、あいつは会社をやめて転職をしたいと言うて拒否した。
その上に、アタシと離婚すると義母に怒鳴った。
そのあとは、きわめて危険な状態におちいった。
(ガシャーン!!バキバキ!!ドスンドスン!!)
あいつは、家中を暴れ回った。
アタシは、嵐がおさまるのを待ってから家を出ることにした。
それから60分後…
室内は、ひどく荒れていた。
あいつに殴られた義母は、ましてしくしく泣いていた。
あいつは、ウヰスキーを水で割らずにストレートでのんでいた。
アタシは、冷めた目であいつと義母を見つめた。
そして…
右の薬指から指輪を外して、その場に投げすてた。
指輪をすてたアタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持って家出した。
同時に、コモも捨てた。
2030年6月1日…
再びミラノに逃げ込んだアタシは、セーナト通りにあるアパートに転がり込んだ。
あいつとの間にできた深い溝は、もはや修復不能であった。
ドゥオーモ広場にひとりでやって来たアタシは、途方にくれていた。
そんな時であった。
「アリョーナ…アリョーナ…」
遠くで、アタシを呼ぶ声が聞こえた。
アタシを呼んでいるのは…
誰なの?
アタシが辺りをふりかえった時であった。
15年前に別れてそれっきりになったタメルランが、アタシを探してミラノへやってきた。
「その声は…タメルラン?」
14年ぶりにアタシと再会したタメルランは、グレーのランニングシャツとダボダボのデニムパンツとボサボサの髪の毛とサンダル姿であった。
「アリョーナ…アリョーナ…」
タメルランは、アタシをギュッと抱きしめてキスをした。
アタシの気持ちは、タメルランと再会できた喜びに包まれた。
タメルランは、あの事件のあと不法入国でアメリカ合衆国に8年間入国禁止になった。
その後、フランスのコルシカ島にある刑務所で服役生活を送った。
2年前に刑期を終えたタメルランは、仮出所中にミラノ市内の木工所に再就職して、カタギになった。
2ヶ月前に、晴れて本出所となった。
タメルランは、アタシと再会できたことを喜んだ。
「アリョーナ…会いたかった…ずっとアリョーナに会いたかった…」
「ああ…タメルラン…」
タメルランに抱かれているアタシは、あいつのことをすっかり忘れた。
その日の夜のことであった。
アタシは、タメルランが暮らしているアパートの部屋にいた。
アタシは、タメルランに抱かれた。
「アリョーナ…」
「タメルラン…抱いて…」
タメルランは、アタシの右のうなじにそっとキスした。
「あっ…」
「アリョーナ…」
「タメルラン…」
アタシは、タメルランに抱かれたまま眠った。
そして、翌朝…
アタシは、タメルランの胸の中で目覚めた。
アタシは、タメルランの胸の中で甘えている。
「アリョーナ…」
タメルランは、胸で甘えているアタシを見つめている。
朝食の時であった。
テーブルの上には、朝食を終えた後のブレンドコーヒーが置かれていた。
アタシとタメルランは、食後のコーヒーをのみながら話をした。
「オレは…あの事件のあと、FBIに逮捕されて…不法入国でアメリカ合衆国への入国禁止を受けた…ボストンのパブでの乱闘事件のこともあって…コルシカ島にある刑務所で服役をしていた…2年前に出所をして…2ヶ月前に晴れて本出所となった…」
「どうして…あの時アメリカへ不法入国をしたのよ?」
「アリョーナのことが好きだから…アメリカに不法入国した。」
「タメルラン…」
タメルランは、おもむろな表情でアタシに言うた。
「アリョーナ…もう一度…オレとやり直さないか?」
タメルラン言葉を聞いたアタシは、もう一度タメルランとやり直そうと決意した。
それから2ヶ月後、アタシはコモの市役所に離婚届を出した。
その一方で、あいつは辞表を叩きつけて会社をやめた。
それから2日後のことであった。
義母が、突然大病で倒れてコモ市内にある救急病院に運ばれた。
くも膜下出血で昏睡状態におちいった義母は、ICU室に隔離された。
あいつは、義母が倒れたことと会社をやめたこととアタシに去られた…の三重の苦しみを抱え込んだ。
アタシはその頃、タメルランと一緒に新生活を始める準備を進めた。
なので、あいつとやり直す気は全くない…
アタシとタメルランは、バイト休みを利用して、ミラノ市内にある家具屋さんやブライダルショップへ行って、準備を進めた。
どんな結婚式をあげようか?
新居には、こんな家具があったらいいね…
などと、楽しくおしゃべりをしながら進めた。
アタシとタメルランは、生活の拠点を地中海に浮かぶマルタ島のヴァレッタ市へ移すことを決めた。
年が明けて、2031年1月7日のことであった。
アタシとタメルランは、再婚後の暮らしの準備のためにミラノとマルタ島を往復して、新生活を始める準備を進めた。
タメルランは、ヴァレッタ市内にある木工所に再就職することが決まった。
アタシは、ココパッツオ(シーフードレストラン)のチュウボウにて皿洗いの仕事とフェニシアホテルマルタでアメニティの仕事をかけもちですることが決まった。
新居は、ヴァレッタ市内にある小さなアパートに決まった。
マルタで生活を始める予定日を、現地の祝日・3月31日の自由の日の前日と決めて準備を完了させることにした。
時は流れて…
2031年3月24日のことであった。
アタシとタメルランは、アパートの大家さんに旅立ちのごあいさつをして、ミラノ中央駅に向かう予定であった。
(ジリリリリリン…ジリリリリリン)
この時、大家さんの部屋の黒電話がけたたましく鳴り響いた。
大家さんはアタシに『あら、電話が鳴っているみたいだわ…アリョーナさん、ちょっとだけ待ってね。』と言うて電話に出た。
早くミラノ中央駅に行きたい…
マルタへ行きたい…
アタシの気持ちは、すごくあせった。
大家さんは、電話の受話器を上げて話した。
「はい…もしもし…○△荘はうちでございますが、どちら様でしょうか…ああ、コモ市内の…どうもご無沙汰しています…アリョーナさんですか?代わりましょうか?」
大家さんは、アタシに電話に出てと言うた。
しかし、アタシは拒否した。
「イヤ!!」
「どうして拒否するのよ?ルガーノさんのおじさまがアリョーナさんのことを心配してかけて下さったのよ…ひと言ごあいさつしたら?」
アタシは、仕方なく電話に出た。
受話器の向こう側で、あいつがメソメソ泣いてる声が聞こえた。
あいつのおじが、沈痛な声でアタシに言うた。
「アリョーナさん…アリョーナさん聞こえるかな…ルガーノの母親が…今朝8時前に…神様のもとへ旅立った…」
(ガチャーン!!)
アタシは、怒って電話を切った。
「アリョーナ、アリョーナ、どうしたのだよ。」
タメルランが、心配そうな表情でアタシに呼び掛けた。
アタシは、タメルランにミラノ中央駅に行こうと言うた。
出発しようとしたふたりに、大家さんはこのままでいいのかと言うた。
アタシは、大家さんに言うた。
「もういいのです…行かせてください。」
アタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持って、タメルランと一緒にミラノ中央駅へ向かった。
ミラノ中央駅についたアタシとタメルランは、ジェノヴァ行きの列車を待っていた。
このままマルタに行くか…
それともコモへ行くか…
アタシは、ひどく悩んでいた。
コモに行けば、あいつとまた顔を合わすことになる…
あいつには会いたくない…
ゼッタイにイヤ…
その時であった。
タメルランがアタシに『オレがコモへ行ってくる。』と言うて、どこかへ行った。
それからアタシは、待ちぼうけを食らった。
まさか…
タメルランは、コモへ行って…
あいつと…
そんな…
やめて!!タメルラン!!
早く帰ってきて!!
アタシは、サクラン状態におちいった。
その頃であった。
タメルランは、コモへ行ってあいつと大ゲンカを起こした。
あいつは、タメルランに殴りかかったあげくに刃物をふりまわした。
この時、あいつのおじがふたりを止めに入った。
その際に、タメルランがあいつとおじを刃物で刺した。
あいつとおじが亡くなった。
タメルランは、殺人容疑で警察に逮捕された。
時は流れて…
2031年4月3日のことであった。
ひとりぼっちのアタシは、ドゥオーモ広場でタメルランを待ったが、アタシの元に帰らなかった。
もういいわ…
やっぱり、男いらない…
女ひとりで生きて行くわ。
それから数日後のことであった。
場所は、ジェノヴァの港にて…
アタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持ってフェリーに乗り込んだ。
アタシは、再び旅に出ることにした。
19歳の時から始まった幸せ探しの旅は、残念ながら終着駅にたどり着くことができなかった。
また、ふりだしからやり直しね…
いっぱい傷ついて、いっぱい泣いて、いっぱい苦しんで…
女の幸せを探し続けていたけど、アタシがほしい幸せはどこにもなかった。
でも…
アタシは…
あきらめない…
また、ふりだしにもどってやり直せばいいわ…
アタシは…
自分の足で、しっかりと歩くのよ…
アタシは、船室の窓から見える青く澄んだジェノヴァ湾を見つめながら何度も何度も言い聞かせた。
(ボーッ!!ボーッ!!)
出船の汽笛が鳴り響いた。
同時に、船はゆっくりと岸壁から離れた。
船は、地中海からジブラルタル海峡を経由して大海原へ出た。
アタシのことを心底から愛してくれる人が見つかって、プロポーズをされて、結婚が決まって…
もう一度、ウェディングベルを鳴らす日が来るまで…
旅は、続く…
【終】
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる