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009.ゲーム脳の変態は、過保護の母に、プチ切れる!

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ウォーーーーーン!



狼の鳴き声が、渓谷けいこく木霊こだまする。狼の群れが、熊を包囲ほういしながら、的確てきかくに傷を付け弱らせていく。

統率とうそつされた狼の群れは五匹。の内の一匹の背に乗る上半身じょうはんしんはだかの若い男。

熊は身体中から、赤いエフェクトをらし、ついに倒された。



<<個体名【カルマ】の個体レベルが上がりました!>>



「良し、ったな!」



スノーベアを倒した!

エフェクトが立ちのぼしかばね脳裏情報マインドインフォメーションで、スノーベアの生命力が【0】ポイントになったのを確認してから、ゲームシステムの収納しゅうのうれを瞬時しゅんじ回収かいしゅうした。



「アイン!」



の言葉だけで、五匹は次の獲物えものを目指すのだった。

狼の背にられながら、五匹ながらも群れを統率とうそつするカルマ。

白い雪原を疾走しっそうする狼の群れは、迷いのない動きで、スノーディアにおそかった。





あの日、母さんと家族となってから十八年がった。俺もようや成人せいじんだ。の世界、アルグリア大陸の成人せいじんは十八歳。成人せいじんしたら此処ここから旅立つ計画に変わりはない。



身体は百七十五センチくらいひとみの色は、かあちゃんと同じようにあおく、髪はとうちゃんと同じく金髪きんぱつだ。きたえ上げられた上半身じょうはんしんには、一切いっさい贅肉ぜいにくもなくはがねごとくしなやかだった。

母親は生粋きっすいのエルフで、父親はエルフとヒューマンのハーフ。カルマは見た目はヒューマンだが、エルフとヒューマンのクォーターだった。



ただ、身体が大きくなって、個体レベルが上がっても、状態表示の能力値は【1】ポイントで固定こていだ。いつか、封印ふういんくか、れとも【1】ポイントのなにかをつかむか、と期待の想いで胸が高鳴たかなっていた。



カルマ自身はうに気付いる。の可能性が、圧倒的に低い数値である事を。



そして、の圧倒的に低い数値がカルマのトキメキを爆上ばくあげさせていたのだった。

なに鬼畜きちく仕様しようだ、のシナリオは、かみシナリオ! かみゲー(かみごとき高評価のゲーム)じゃないか!

現在までの総死亡|(ゲームオーバー)回数は、千五百十九回。

アルグリア大陸の一年は、一ヶ月が三十日で十二ヶ月の三百六十日。プレイヤーネーム【カルマ】の【創造神の試練】での総プレイ時間は、【一万千九百二十八年三百九日七時間三十二分三秒】におよんでいた。

だが、現実時間では【約三時間十九分】しかっていない。まさしく悠久ゆうきゅうの歴史をきざむゲームであった。



生肉なまにくも食べれるようになった。【ダイブアウト】して、ミリィの作る料理が美味うまぎて、涙を流した事も記憶に新しい。



ただし、一切いっさいの武器が持てなかった。筋力値【1】ポイントは伊達だてではなかった。耐久値【1】ポイントは、かみ装甲そうこうを超える弱さで、日々生命力(HP)を上げ続けていなければ、最悪の状況に追い込まれていただろう。

カルマは、かみシナリオ【創造神の試練】の楽しさに、面白さに、やり込みに歓喜かんきしたのだった。



「良し! ゼイン!」



大きく強靱きょうじんな身体を持つスノーディアは、氷の枝分かれした角で、狼をぎ払おうとした一瞬いっしゅんすきを付いて、他の狼がみぎうしあしみ付き負傷ふしょうさせた。拍子ひょうしに、身体のバランスがくずれ、地面に右後ろからくずれ落ちる。すきを他の狼はのがさず、一気に首元へ牙を立てた。赤いエフェクトが、首元、足元かられ出しスノーディアはの動きを止めたのだった。

簡単に倒せた、予想外の収穫しゅうかくだった。

そうか、足元か、バランスをくずせば大物おおものでも簡単に狩れるな。



お、もう一匹いるな。良し作戦会議ブリーフィングだ!



そうして、俺は仲間と意思いし疎通そつうはかるのだった。念話ねんわスキルがつかえれば簡単だが、無いものは仕方がない。俺は身振みぶ手振てぶりで、仲間の狼達に狩りの仕方と合図あいずを教えていく。



最初の群れの始まりは、一匹からだった。

俺が乗っている【アイン】は、最初は親とハグれた雪狼|(スノーウルフ)の子狼ころうだった。

最初はおびえて、ふるえていたアインを介抱かいほうして、育てたのは俺だ。

勿論もちろん、アインと名付なづけたのも俺で、アインがもう一人の家族になるのにそう時間は掛からなかった。



「良し、ゼイン!」



もう一匹のスノーディアも、ゼインがとどめをし、なんなく倒した俺達は、母さんの待つねぐらに帰るのだった。



「ハウス!(家へ戻るぞ!)」



俺は群れに号令ごうれいけ、アインにしがみ付く。アイン達は、ゼイン以外は全員【シルバーウルフ】に進化した個体達だった。

今回の狩りは、ホワイトウルフから【ゼイン】を、シルバーウルフへと進化させるためのものだったが、進化にはあとわずかに経験値が足りない。

だが、無理は禁物きんもつ。アイン以外は、死んでしまっても再度復活するダンジョンモンスターだが、死んでしまうと俺の部隊ぶたい編成へんせいからはずれ、初期配置設定でのリスポーンとなる。

リスポーンされたダンジョンモンスターは、記憶も経験値も全て初期値に戻ってしまう。

死にはしないが、俺と経験した記憶が消えた個体は、再度さいど部隊ぶたい編成へんせいで組み込んで育成しても、前回と同じ個体には育たない。

能力数値や、スキルが同じでも、全く別の個体となる。

れは想いが、共にした経験が違うからだった。俺の仲間は、えのく物じゃない。俺の手腕しゅわんひとつで、アッサリ全滅ぜんめつもありる。細心さいしんの注意と、大胆だいたんな行動のバランスを取りながら、ダンジョン【ハルベルト山脈】を今日もける。



後もう少しで、【華水晶はなすいしょう】がある洞窟どうくつ辿たどり着くと言う時、脳裏地図マインドマップでアイスタイガーを発見した。



「アテンション!(警戒けいかい!)」



俺の号令ごうれいで、警戒けいかい陣形じんけい瞬時しゅんじ移行いこうするも、の走りは止まらない。

何故なぜなら、俺の部隊に編成へんせいしている仲間とは、言葉は交わせないが、脳裏情報マインドインフォメーション共有きょうゆうする事は出来る。仲間は文字は読めないが、周辺しゅうへん地図ちずと俺の号令ごうれい瞬時しゅんじ部隊ぶたい行動こうどう移行いこう出来できるのだった。



距離は遠くはなく、意識でクリック確定かくていした俺の脳裏マインド地図マップからは、獲物えもののがれられない。

俺の部隊は、認識にんしき共有きゅうゆうしている脳裏地図マインドマップ脳裏情報マインドインフォメーションの絵文字で、部隊指令をはっする。アイスタイガーは、直ぐ近くにるので、声がげられない。黄色の印イエローマークは、パッシブモンスターを表す。此方こちら認識にんしきすれば、点滅てんめつする。点滅てんめつしていないのは、風下かざしもから近付ちかづ認識にんしきされていないからだ。

【アルグリア戦記】では、においもなにもかもが、現実げんじつ同様どうように感じられる。唯一ゆいいつちがところは、血が流れないで、エフェクトが流れこぼれる事だけだった。血の鉄臭てつくさにおいも、れればなんて事はない。


人間のれって結構けっこうすごい。順応じゅんのうしないと生き残れない本能ほんのうなのだろうか。



かく、アイスタイガーは強敵きょうてきだ。此処ここのダンジョンにはリポップされないモンスター。つまり、ダンジョンモンスターではないフィールドモンスターだ。



迷い込んだか? れが一匹以上なら、母さんがだまっていない。何故なぜなら、のダンジョンであるハルベルト山脈は、母さんの縄張りテリトリーだ。母さんのでは、複数の進入を許さないからだった。



獲物えものとの距離が、二百メートルを切った。



なんとか気付かれずに、布陣ふじんく事が出来そうだ!



俺は一息ひといきを付き、部隊全員に脳裏情報マインドインフォメーションで、ある絵文字を共有きょうゆうする。

良く見ると最高さいこうの形だった。絶好ぜっこうの場所で、絶好ぜっこうのタイミングで、俺は脳裏情報マインドインフォメーション骨付ほねつき肉の絵文字を十から順番じゅんばんに減らしていき、攻撃のタイミングをに伝える。



五秒! 四秒! 三秒! 二秒! 一秒! ゴー!



アイスタイガーの十時じゅうじの方向から、シルバーウルフをリーダーとするホワイトウルフのベータ部隊が注意を引き付け、四時よじの方向から俺のアルファ部隊がソッとしのひそむ。れにともな九時くじの方向からガンマ部隊が陽動ようどうを行う。アイスタイガーは、狼の群れに威嚇いかく雄叫おたけびをげた。



もうぐだ。一時いちじの方向からデルタ部隊が到着とうちゃくし、再々度さいさいど陽動ようどうける。さあ、仕上しあげだ。



三方向さんほうこう威嚇いかくうなりをげたアイスタイガーは、ようやく自分の不利ふりさと逃亡とうぼうこころみる。だが遅かった。すで盤面ばんめんではチェックメイトだった。



アイスタイガーの逃走とうそうルート上で、雪の中に、しげみに気配けはいかくしたアルファ部隊の牙がアイスタイガーの四肢ししらいく。一方的な狩りだった。アイスタイガーは反撃はんげきすら行えずに、赤いエフェクトをらしながら絶命ぜつめいした。



<<個体名【ゼノン】の個体レベルが上がりました!>>

<<個体レベル【20】に達したので、【進化】が可能になりました!>>

<<進化先は【シルバーウルフ】・【シャドウウルフ】から選択可能!>>



ゼノンの個体情報を、脳裏情報マインドインフォメーションの画面で確認する。





----------



【情報表示】:▼

氏名NAME:【ゼノン】

個体LV:【20】

備考:▼

年齢:【23歳】

種族:【白狼精霊人ホワイトウルフ

身分:【カルマ遊撃ゆうげき部隊ぶたい隊員たいいん

職業:【戦士】

称号:【プレイヤーの眷属けんぞく】▼

   【プレイヤーの眷属けんぞく】:ゲームシステムの一部を共有きょうゆう可能かのう

才能スキル:▼
   【身体強化LV6】【寒冷耐性LV5】【牙撃LV6】【爪撃LV4】
   【疾走LV4】

説明:▼
【ハルベルト山脈を縄張りとするホワイトウルフ。プレイヤーの眷属けんぞく。】

【状態表示】:▼

生命力HP:【78/78】 

魔力MP :【67/81】  

精神力MSP:【54/58】

持久力EP:【73/75】 

満腹度FP:【31/100】

【能力表示】:▼

筋力STR   :【67】

耐久力VIT  :【48】

知力INT   :【36】

敏捷AGI   :【93】

器用DEX   :【27】

魅力CHA   :【34】


【部隊編成表示】:▽



----------



ゼノンの種族に意識を集中させると、三角さんかくの表示が表れる。れをポチッと意識いしきで押す。



----------



種族:【銀狼精霊人シルバーウルフ】▼

   【銀狼精霊人シルバーウルフ】:雪狼精霊人スノーウルフの上位種族。
             寒冷地帯では、能力上昇(大)効果発生。



種族:【影狼精霊人シャドウウルフ】▼

   【影狼精霊人シャドウウルフ】:森狼精霊人フォレストウルフの上位亜種族。
             スキル【影魔法】が使用可能。



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俺は迷いなく、シルバーウルフを選択せんたくした。

まぶしい光のエフェクトにゼノンはつつまれ、分解ぶんかいされ、さい構築こうちくされていく。



<<個体名【ゼノン】は【シルバーウルフ】に進化しました!>>



「良し、ハウス!(帰還する!)」



俺の号令ごうれいを聞いた部隊リーダーが、一吠ひとほえをして、群れを統率とうそつする。

 

周囲しゅういにはスノーラット一匹いない。次にリポップされるまでの時間は、スノーラット・スノーラビットの下位アンダー魔物モンスターで三十分! スノーフォックス・スノーバードの中位ミドル魔物モンスターで六十分! スノーディア・スノーベアの上位ハイ魔物モンスターで六時間! スノーレオンの特殊スペシャル魔物モンスターが二十四時間だった!



ちなみに、スノーウルフは中位ミドル、ホワイトウルフは上位ハイ、シルバーウルフは最上位ハイオーバーのモンスターに分類ぶんるいされる。



疾走しっそうする狼の群れの数は、二十匹。の内の一匹の背にまたがる若い半裸はんらの男。

彼らが、ねぐらに向かって走っていると、続々ぞくぞくと狼の群れが集まって来る。

狼の群れは、雪崩なだれごとさかさまに雪山を登っていく。の数は、百数匹にたっしていたのだった。







ああ、見えた。あ、あれ? かあさんが洞窟どうくつの前で、仁王におうちしている。



見るからに機嫌きげんが悪い。あれ、おれなにかしたっけ? 

全くなに心当こころあたりがない。はて、なんだろうか?



「ストップ!(止まれ!)」



俺の号令ごうれい脳裏情報マインドインフォメーションとで、総数百二十匹の群れが行動を停止ていしする。 



カルマの強化された感覚かんかくが、強く激しく母親の機嫌きげんが最悪だとげる。



いや、変な先入観せんにゅうかんは善くない。



かあさんは、なにも言わないが、無言むごん威圧いあつがハンパない。

俺の仲間(眷属けんぞく)達も萎縮いしゅくして、五体ごたい投地とうちする者、腹を見せて降参こうさん服従ふくじゅうれいをする者もいる始末しまつだ。

勘弁かんべんしてくれよ、かあさん。俺は嘆息たんそくを心の中できながら、かあさんに挨拶あいさつをする。



かあさん、只今ただいま! 如何どうしたのめずらしく洞窟どうくつから出てきて? なにかあったの?」



俺の言葉に、かあさんは重い口を開けた。



『カルマ、お前も成人せいじんだ! 大人になったお前に、伝えなければいけない事がある! 実はわれは【十の災厄アンタッチャブル】と呼ばれるじゅう盟約めいやくけもの一柱いっちゅうなのだ!』



「・・・・・・・・・・・・」



『全く驚かないんだな、カルマ?』



かあさんは、不満そうに俺を見つめながら、鼻を鳴らす! 驚くもなにも、ずっと知っていたから仕方ないと、僕は心の中で毒突どくづいた。 



「えっ!いや驚いた、・・・・・・よ? れが如何どうかしたの、かあさん?」



俺の言葉に、何故なぜかあさんは、一瞬いっしゅんかなしそうな表情を見せた。



『【十の災厄アンタッチャブル】はわれだけではない! われほかにもアルグリア大陸には九柱きゅうちゅう存在そんざいする! 今のお前では、死ににいくようなものだ! 其処そこでだ、お前には試練しれんを受けて貰う!』



試練しれん?(なんだれ、クエストかイベントかな?)」



此処ここを旅立ちたければ、われを倒して行け! れがお前にせられた試練しれんだ!』
 


ドォーン! 



プチッ!



俺はれを聞いて、堪忍袋かんにんぶくろが切れた。



かあさん、おこるよ! れはただかあさんが俺と離れたくないだけだよね?」



明らかに俺の言葉に動揺どうようするかあさんが、静かにつぶやく。



『カルマ、かあさんをてる気なのか? われはお前をそんな子に、育てた覚えはないぞ?』



そうつぶやかあさんのひとみには、大粒おおつぶの涙がまりウルウルとしている。

なにかくそう【十の災厄アンタッチャブル】とおそれられる俺のかあさんは、最初にったあの日からデレデレにデレて、【親バカモンスターペアレント】にバージョンアップしたのだった。














【アルグリア戦記】には、セーブ機能きのうは存在しない。全て最初からのスタートとる。で、セーブなどは出来るはずもない。此処ここは【アルグリア世界】、もう一つの現実の世界。現実の一秒が、三千百十万四千秒に相当そうとうする仮想の現実世界。現実の一時間が、百二十九万六千日(三千五百五十年と二百五十日)に相当そうとうする【悠久ゆうきゅう歴史れきしを|刻(きざ)む世界せかい】。



たして、【アルグリア世界】は、仮想の現実世界なのだろうか? れとも、実はもう一つの現実世界【異世界いせかい】なのだろうか? の答えは【プレイヤー】だけが知っている。







To be続きは  continuedまた次回で! ・・・・・・
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