【2章開始!】元最強執事の迷宮攻略記〈ダンジョン・ノート〉〜転職したら悠々自適な冒険者ライフを……送れなかった!?〜

美原風香

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1章 迷宮攻略はじめます

15. 元執事、名前をつける

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「フィルナ、なんか疲れてたな……」

 ギルドを出た俺はホテルに向かって歩いていた。ちなみにコアの代金は金貨一枚に。
 それを受け取った時のフィルナの顔には

「こいつまたやりやがった」

 とはっきり書いていた。

「二階層の攻略、だいぶ時間かかったと思うんだけどな……」
「ワンッ! ワフッ」

 神狼がわかっているのかわかっていないのか、同意するように吠えた。

「そういえば、お前に名前つけないとな……」
「ワフッ?」
「いつまでもお前とか呼ぶわけにいかないからな」
「ワンッ!」

 神狼が嬉しそうに吠えた。
 神狼のもふもふな毛並みを撫でながら考える。

「うーん、フェン、リル、シロ……は単純すぎるな。ハク。あ、ハクなんてどうだ?」
「ワンッ!」
「お、気に入ったか?」
「ワフッ!」

 ハクいう名前が気に入ったのか尻尾をブンブン振る。
 毛が顔にかすめて痒い。

「わかったわかった、落ち着けって」
「クゥン」

 俺の言葉にシュンとする。怒ってないのに、上目遣いで俺のことを伺うハクに可愛いしか出てこない。

「ほんとかわいいなぁ……今日からよろしくな、ハク」
「ワンッ!」

 俺の言葉に機嫌良くなるハク。コロコロ変わる表情に笑みが浮かぶ。

「とりあえず、ホテル戻ったらミホとリュウイさんに聞かないとだな……」
「ワフッ?」
「ダメって言われたらどっか違う場所に移るしかないよなぁ……てかそろそろホテル変えないとか。ずっと払ってもらうわけにはいかないからな」
「ワンッ!」

 ハクと連れ立って街中を歩くと人目をひく。

「あの子犬可愛いわね……」
「ころころしてて触り心地良さそう」
「お母さん、あの子欲しい!」

 いやあげないよ? 
 小さな女の子の言葉に内心で反射的に返しながら歩くこと数分。俺たちはホテルに着いた。

「フェール様おかえりなさいませ」
「ただいま、ミホ。子犬を面倒見たいんだけど……」
「わぁ、可愛いですね!」

 俺の言葉が終わる前に、ミホの目がハクに釘付けになる。
 あ、ここにも子犬好きが……

「あ、すみません、話を遮ってしまって」
「いや、大丈夫だ。気持ちはわかる」

 笑顔を浮かべると、ミホはほっと息をついた。

「えーっと、この子を部屋でお世話したい、ということであっていますか?」
「あぁ、やっぱりダメか……?」
「うーん……」

 ミホが考え込む。なぜか緊張しながらジャッジを待つ。
 そして……

「二つ、守っていただければ問題ないです」
「二つ?」
「はい、一つ目は部屋から出たら絶対抱っこして歩くこと。二つ目はレストランには入れないことです」
「なるほど」
「この二点さえ守っていただければ問題ありません」
「全く問題ない」

 むしろ当たり前だろう。本当にそれだけでいいのだろうか。
 俺の表情から何を言いたいか読み取ったのか、ミホが笑顔を浮かべる。

「お客様の要望にお応えするのが当ホテルの売りですから!」
「助かる。ありがとう」

 俺はミホと別れると部屋に向かった。と。

「ホテルの宣伝にもなるものね……」

 ミホのつぶやきを拾い、思わず苦笑する。
 確かにハクがいれば宣伝になるだろう、完全予約制な時点で宣伝する必要があるのかわからないが。

「ハク、あんまり大きな声で吠えないようにな。他の客の迷惑になってしまうから」
「わふ」
「いい子だな」

 小さい声で鳴くハクの頭を撫でる。

「俺たちの部屋はここだ。〈浄化〉」

 ハクの体を綺麗にしてから床に下ろす。キョロキョロしている様子にとっても癒される。

「とりあえず、明日からの計画を立てなきゃな」
「わん?」
「早めにあの迷宮を攻略したいんだが、二階層で手こずっているようではこの先心配だなと思ってな」
「わん」

 納得したように小さく鳴くと、椅子に座った俺の膝にジャンプして飛び乗ってくる。

「あーあったかい……」

 抱っこして抱きしめるとハクの体温がダイレクトに伝わってくる。

「あ、待って、寝そう……」

 ハクの暖かな体温と触り心地の良い毛並みに眠気を誘われて、俺は眠ってしまったのだった。


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