【完結】千年ぶりの魔法をあなたに〜生贄にされた王女と処刑された護衛〜

美原風香

文字の大きさ
6 / 9

6. まさかの提案

しおりを挟む
「これで大丈夫か?」

 完全に魔力暴走が治まった時、真っ先に視界に入ったのはさっきから聞こえていた声の主であろう、金髪の青年だった。

「あ、あなたは……?」
「その前に、体は大丈夫か? 相当な量の魔力が暴走していたが……」
「だ、大丈夫です。あなたが暴走を抑えてくれたのですか?」
「あぁ。あのままだったら死んでいただろうからな」

 さらっと言われて背筋が凍る。危ないところだった。
 慌てて着ていたドレスの裾を持って頭を下げる。

「助けてくださりありがとうございます。お名前を伺っても……?」
「あぁ、俺の名はヴァール。君はティアラ王女であっているかい?」
「は、はい」

 名前を知られていることに驚く。同時に私は警戒する。助けてくれたわけだし良い人なのだろうが、名前を知られていること、それにそもそもこんな時間に訪ねてくるーー窓が開いているし窓から入ってきたのだろうーーことを不審に思わないわけがない。

 そのことに気づいてか、ヴァールは苦笑した。

「そんなに警戒しないでくれ。俺はただ、君を助けに来ただけだ」
「助けに?」
「さっきの様子だと、儀式の生贄になること、知ってしまったんだろう?」

 思わず黙る。私の魔力が暴走したのは彼の人生を壊してしまったことを知って絶望したから。だが、生贄になることを知ったのも間違いではない。

 しかし、そもそもなぜヴァールがそのことを知っているのか。

「俺は、隣国クワロン王国の者だ。我が国の間者から報告が上がってな。近々儀式が行われ、それの生贄にティアラ王女がなる、と」
「……そんなこと、私に言ってもよろしいのですか?」
「問題ないだろう? 知ったところで君にどうこうできるものではないのだから」

 睨むが、ヴァールは飄々とした態度を崩さない。悔しいことに図星だった。
 これ以上その件を追求してもしょうがない。私は気になっていることを聞くことにした。

「それで、助けにとは具体的にどういうことですか?」
「災いを治めるため、と言ってこの国は数十年に一回、ひどい時は数年に一回、儀式を行ってきた。そして今回、君を生贄として行おうとしている」
「……はい」
「だが、災いを治めるために儀式は必要ない。これは国王が力を手に入れるために行なっているということを我が国は突き止めた」
「っ!」

 驚くことしかできない。そこまで突き止めているとは、クワロン王国は相当諜報に長けているということだ。

「だから、君に一個提案があるんだ」
「……なんでしょう?」

 にこりと笑みを浮かべるヴァールに悪い予感がする。だが、私が助かるためにはその提案を聞くしかない。儀式に連れて行かれる前に逃げ出すことは可能だが、一生逃亡生活だろう。そうなるわけにはいかない。

「我が国はすでにこの国に攻め入る準備ができている」
「っ!?」
「国王を始め王宮が儀式に気を取られている間に我が国はこの国に攻め入り儀式を阻止、同時に儀式の本当の意味を民衆に知らしめ、二度とこのような儀式が起きないようにする」

 ーー手伝ってくれないか?

 思わずその力強い瞳に見入る。星空を背景に立つ彼は神秘的な美しさをまとっていた。なぜだろう、一瞬、ヴァールが彼に見えた、愛しいあの人に。

 だからだろうか、私が頷いてしまったのは。この、無謀な計画に同意してしまったのは。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

処理中です...