i・セ界

たぬきの尻尾

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第一章 異世界降臨

アクアドレス、アースアーマー

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 今から語るのは、迷宮都市クレバンに行くまでにレフリスの町であった、一週間の出来事……の、一つだ。



 ミーシャの周りをゆっくりと旋回する四つの【水球】。

「だんだん慣れてきたね」
「はい。最初の頃は二つが限界でしたが、今は四つまで操作できるようになりました」

 ちゃんと育っているようで感心だ。

「じゃあ、そろそろ空を飛べそうかな?」
「え……それ、まだやってたんですか?」
「もちろん」

 僕の言葉に元気を失くすミーシャ。【水球】も爆ぜるように散った。

「【水球】をそこまで操作できるなら、自分も浮くことはできるはずだよ。よく考えて」

 僕の中では既に正解が出ている。後はミーシャが気づくかどうかだ。

「…………!」

 しばらく考え込んでいたミーシャの目が開かれる。
 これならいけるのではないか?
 そんな顔だった。

 ミーシャは四つの【水球】を自身の周りに旋回させ、自身の身体に纏わせていく。
 ミーシャは【水球】で服を作り出したのだ。魔法名は【アクアドレス】といったところか。
 ミーシャは【水球】を操作するように自分をコントロールし、宙に浮かぶ。

「や、やった!」
「正解だ」

 感覚を掴み始めたミーシャは好きなように動き始めた。空を飛ぶことさえできればもう大丈夫だ。
 空を飛んだ魔法使いは、魔法使いとしてのレベルが一段跳ね上がる。
 自分でもそのうち明らかな成長を実感するだろう。
 僕はミーシャに魔力切れには気をつけてとだけ言い残して、ルイズの方へ向かった。



 ルイズもミーシャと同じ場所、同じ時間帯に修行を行っている。
 修行場所は草原。つまり、ルイズからもミーシャが空を飛んでいるのが確認できる。

「抜かされた……」

 ルイズも空を飛ぶという課題の元、得意の【土壁】を軸に様々な魔法を編み出した。
 苦手だった攻撃魔法も、最近ではものになってきている。魔力密度を高める修行もしていて、状況次第ではレックスの攻撃力を上回るだろう。

「ルイズ、見て学ぶことは、なにも恥ではないよ」
「わかってる。ただ……やはり悔しいな」

 ルイズは【土壁】を作り出し、それに手を置いた。そして、魔力で【土壁】を操作し、自分の身体に纏わせていく。
 魔法名は【土鎧アースアーマー】といったところか。
 ルイズも【土鎧】の魔力を操作して、自分をゆっくり浮かせていく。
 上出来、上出来。

「じゃあ二人とも最後の仕上げにいこう」
「最後の……」
「仕上げ、ですか? 何するんです?」
「ふふ、僕と空中戦」
「「え……………………」」

 その日、草原の空には悲鳴が轟いた。


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