そこは夢の詰め合わせ

らい

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あのん

79.運命とは意外と近い

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ある取引先と合同計画の案が御相手から送られてきた。計画案の立案者のところにはこう書かれていた。

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計画案:煤黒あのん
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立案者はまだ新人らしい。しかし、新人とは思えない計画性だった。
私は『あのん』という名前はあまり聞いたことがない。私は『あのん』と言うからには女性の方なのだろうと、そう思っていた。そして私は切り替えて仕事へと戻った。

その次の朝、自分の横を走り抜けて行った子供が転んでしまった様だ。私が駆け寄ろうとしたとき、私の横を男性が走り抜けて行き、すぐに子供の傷にハンカチを使って覆っていた。その男はとてもスラッとしており、高身長と言って良い背丈だった。

「お兄ちゃんありがとう!!」

子供はそうお礼を言うと走って行ってしまった。彼は子供を見送ると近くの禁煙所でタバコを吸っていた。私は驚きを隠せなかった。こんなにも優しい男が、周りに気を配れる男が、まだいたのだ。私はそこを跡にし仕事へと向かった。

合同計画の案についての話し合いが行われる日、会議の前に顔合わせがあったのだが私は驚愕した。相手の会社から来た今回の案の立案者、煤黒あのんという人は男だった。そして子供を助けた優しいあの男だったのだ。

ふたつの会社の計画案はとてもスムーズに進んだ。効率的で合理的、とても良い案だったからだ。次にまた彼と仕事をするのが楽しみとなった。
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