そこは夢の詰め合わせ

めり

128.彩る葉と灯る感情

秋、それは香る季節。美しい紅葉と、美味しい食べ物が出回る季節。彼女にとって初めての秋がゆっくりとやってきた。

彼女が陸に上がった時、それが秋の終わりだった。だからこの時期が終わる時、それは彼女が陸に上がって1年が経つということだろう。

「地上って・・・たのしいね！」

彼女がこの一年で思ったことだった。
たくさんの人間に会った。
たくさんの食べ物にもあった。
海中には無い木漏れ日や木々の穏やかさも。

ずっとは居ない陸の上でも。
静かな木漏れ日の中で。
寿命が人より長くても。

その時それが一番楽しくて、彼女は大きな笑顔を咲かせた。今までで一番の大きな笑顔かもしれない。

紅葉に変わる木々の下で、木漏れ日に当たりながら海を見る彼女は友達を待つ。

ずっと仲良くしてくれて、自分の全てを話してなお友達でいてくれた彼女を。

ずっとずっと。
そう思ってまぶたが重くなる。
紫色の髪が薄い視界の奥にとらえる。
暖かい風と共に声が聞こえる。

「おまたせ！」

懐かしいとさえ思ってしまったその声にふわりと笑顔を返すと彼女はそのまぶたを閉じて静かに意識を落とした。

暖かい木漏れ日が二人を照らしていた。