そこは夢の詰め合わせ

らい

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狐谷

146.愛してるが悲しくて

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「ねぇ・・・もう僕、ダメなのかな・・・」

白い部屋、白いベッドの上で明るい紫色の髪をした彼女が横たわる。衰弱しており、不安定な心拍数。そんな彼女が

が見えるのはごく一部の人達のみ。彼女もその一部だった。

「あぁもう小生でさえ届かない場所に言ってしまうだろう。もうすぐに・・・ッ」

見えないそれが強く手を握る。
爪が肉にくい込み鮮血が白い部屋に落ちる。

それは自分が、彼女に対して何も出来ない事について悔やんでいる事をすぐに彼女は察した。

「自分の身体を傷つけないで・・・?貴女が傷つくのは僕が悲しいんだ・・・」

震えた手で何も無いはずの場所に何か物があるように掴む。大きくて、細い何かをしっかりと。握力の少ない手で力強く。

「しかし、小生にもっとできることがあれば・・・」

透明なそれは自分を罵り、自分を悪く言う。
彼女はそれを優しく強い目で真っ直ぐに見る。悲しく今にも泣きそうな目を優しい目がそっと包み込む。

「ごめんね・・・頑張ったけどもうすぐ死んじゃうよ僕・・・」

心拍数が著しく落ちる。
一桁のみとなった心拍数をハッと見た透明なそれは彼女の傍に寄る。手を少し動かし、彼女の顔を撫でる。優しく壊さないように。

「ごめんねこたちゃん・・・もうダメみたい・・・今までありがとうね」

「あぁ・・・またね。ねぇやん・・・」

は貴女を愛してるよ」

「小生もさ・・・」

初めて彼女が『私』と言った。
ずっと僕と言っていたのに。
透明なそれはそっとその場から消えると一人、悲しく涙を流した。

また一人、大妖怪を知る人が消えた。
そして彼女を覚えている人が一人増えた。
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