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19 騎士問題
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拝謁の間にいる誰もが聞こえるように、総理大臣は「それでは、勇者パーティーの方々とともに宴を開きたいと存じます。皆さま、大広間の方におうつりください」と声をはりあげていた。
「こちらにどうぞ」と、総務省の侍従は、勇者の人たちを案内して拝謁の間から大広間に連れていった。
そこには川の字形にテーブルが並べられていた。その上には、思いつくことができる多種多様な料理がすでにおかれ、ワインや果汁もグラスに入れて並べられていたのだ。
総務大臣が司会役を担い、最初に王の乾杯を願い出た。すぐにジョン王はグラスを手に持って立ちあがり、短めの挨拶の後、杯をあげていた。皆がグラスから口をはなすと、すぐに宴が始まった。最初の二十分くらいは、誰もが食事に専念をしていたのだが、やがて誰もが席を立って、勇者たちの所にきて、ワインを注ぎ出したのだ。王も席を立ちボトルを手に、リックの所にやってきた。
リックのグラスにワインを注ぎながら、「息子よ。苦労をさせてしまったな。だが、不運な状況を乗り越えて男らしい者になってくれるとは思わなかったぞ」と王は言っていた。
「いえ、苦労など感じたことはございません。父が私を預けてくれた森の番人は、良い人で、斧の使い方を丁寧に教えてくれた。そのお陰で、どんな木でも、切り倒すことができるようになった。木から作った薪をトマド領の方々は、よく買いにきてくれましたよ。それで豊かな暮らしができたのです。それにブライアン家の人たちは昼食を持ってきてくれました。その時はユリアも一緒でしたよ」
ユリアが母と一緒に森に弁当を持っていったことなどなかった。それなのにユリアの記憶は変わり出し、それが事実だとユリアも思い出していたのだ。
「この度は、トマド領からゴブリンを退治してくれたこと、感謝に堪えない。そこで、そちらを騎士に命じたいと思う」
「えっ、本当ですか」と、リックは声をあげ、そこにいたパーティ勇者たちは「ありがとうございます」とすぐに言って、ジョンに向かって頭をさげていた。
だが、「王さま、ちょっとお待ちください」と言って,イワクラ公爵が話に入りこんできた。
「何かあるのかね?」
「私が騎士団の団長をしておりますので、騎士にするということは、私の配下になるということですぞ」
「わが国の危機を救ってくれたのだから、これらの者たちを騎士にすることがいいのではないか?」
イワクラは反論できずに口を閉じる。一方、リックは「はい、喜んで」と言って、笑っていた。側に来ていたリチャード王子も笑顔を浮かべていたのだった。
「これで兄弟同士、同じ宮殿に住むことができる。親衛隊長もリックにやってもらいたいな」
するとイワクラ公爵の顔がこわばり、再びイワクラ公爵は話しに割り込んできた。
「リチャードさま、親衛隊は経験のない者にさせるわけにはいきませんぞ。今では、国兵たちにも、指示を与えて動かしていかなければならない立場なのですぞ」
イワクラが、文句を言ったのも無理はない。親衛隊長はイワクラが任命を受けてやっている仕事だった。つまり、仕事をとることになる。
ユリアは、改めて、イワクラ公爵をみつめた。ユリアがトマド領に戻る前には、何度も宮殿に通ってきてはいたが、軍事関係の人たちと関係がある部署にいったこともなく、付き合いもなかったのだ。
高飛車な言い方に、勇者の一人ボブが声をあげた。
「あなたも戦いの経験があるのでしょうが、私も多くの魔物退治に参加し戦ってまいりました。ですから、その中で人を見る目ができていると思っております。私らが親衛隊員となっても問題がないと思いますな」
「ほほう、私も勇者として戦ったことがある。戦った魔物には、ドラゴンやケシトラもいましたぞ。あなたがたよりも、戦いについては、場数をふんでいる。ちなみに、あなたは、足を魔物に食われておるようだ。私はそのようなヘマをしたことがない。それを見ただけでも、その違いは一目明瞭」
「笑止せんばん。それほどの方とはお見受けできないが」と、ボブが声を高める。
「それならば勇者としてお手合わせをお願いできますかな」と、イワクラが鼻先で笑った。
「望むところじゃ」
慌てたユリアは「ボブさま、おやめください」と声をあげた。リチャード王子も、「イワクラさまのプライドに火をつけてしまったようじゃな」と言って顔をしかめていたが、少し考えてから口を開いた。
「それならば、パーティーの方々を相手に、騎士団を代表とする騎士の方と腕比べをしてみてはいかがでござろうか。もちろん、お互いに実力を披露して見せることが主眼ですので、相手を傷つけることはしないということで、どうですか?」
「それで、よろしいですぞ。私どもは、騎士団には簡単になれる者ではないことをお示しできればいい。そして、私らこそが、この国を守る主力であることをご理解いただければいいのですよ」
「そうか、それならば、腕比べを認めないわけにはいかんな」と、ジョンがうなづく。
「さっそく、始めたいのですが」
そう言ったイワクラはすでに剣を抜いて、リックに向かっていこうとしていた。
すぐに「ここではおやめいただきたい。そうですな。中庭にでていただき、そこでおやり願いたい」と、総理大臣が言っていた。
支持をだされたので、大広間についていたガラス戸を開けて、二人は中庭にでていった。その場にいた者たちは、すぐに後に続いて中庭にでていっていた。
「こちらにどうぞ」と、総務省の侍従は、勇者の人たちを案内して拝謁の間から大広間に連れていった。
そこには川の字形にテーブルが並べられていた。その上には、思いつくことができる多種多様な料理がすでにおかれ、ワインや果汁もグラスに入れて並べられていたのだ。
総務大臣が司会役を担い、最初に王の乾杯を願い出た。すぐにジョン王はグラスを手に持って立ちあがり、短めの挨拶の後、杯をあげていた。皆がグラスから口をはなすと、すぐに宴が始まった。最初の二十分くらいは、誰もが食事に専念をしていたのだが、やがて誰もが席を立って、勇者たちの所にきて、ワインを注ぎ出したのだ。王も席を立ちボトルを手に、リックの所にやってきた。
リックのグラスにワインを注ぎながら、「息子よ。苦労をさせてしまったな。だが、不運な状況を乗り越えて男らしい者になってくれるとは思わなかったぞ」と王は言っていた。
「いえ、苦労など感じたことはございません。父が私を預けてくれた森の番人は、良い人で、斧の使い方を丁寧に教えてくれた。そのお陰で、どんな木でも、切り倒すことができるようになった。木から作った薪をトマド領の方々は、よく買いにきてくれましたよ。それで豊かな暮らしができたのです。それにブライアン家の人たちは昼食を持ってきてくれました。その時はユリアも一緒でしたよ」
ユリアが母と一緒に森に弁当を持っていったことなどなかった。それなのにユリアの記憶は変わり出し、それが事実だとユリアも思い出していたのだ。
「この度は、トマド領からゴブリンを退治してくれたこと、感謝に堪えない。そこで、そちらを騎士に命じたいと思う」
「えっ、本当ですか」と、リックは声をあげ、そこにいたパーティ勇者たちは「ありがとうございます」とすぐに言って、ジョンに向かって頭をさげていた。
だが、「王さま、ちょっとお待ちください」と言って,イワクラ公爵が話に入りこんできた。
「何かあるのかね?」
「私が騎士団の団長をしておりますので、騎士にするということは、私の配下になるということですぞ」
「わが国の危機を救ってくれたのだから、これらの者たちを騎士にすることがいいのではないか?」
イワクラは反論できずに口を閉じる。一方、リックは「はい、喜んで」と言って、笑っていた。側に来ていたリチャード王子も笑顔を浮かべていたのだった。
「これで兄弟同士、同じ宮殿に住むことができる。親衛隊長もリックにやってもらいたいな」
するとイワクラ公爵の顔がこわばり、再びイワクラ公爵は話しに割り込んできた。
「リチャードさま、親衛隊は経験のない者にさせるわけにはいきませんぞ。今では、国兵たちにも、指示を与えて動かしていかなければならない立場なのですぞ」
イワクラが、文句を言ったのも無理はない。親衛隊長はイワクラが任命を受けてやっている仕事だった。つまり、仕事をとることになる。
ユリアは、改めて、イワクラ公爵をみつめた。ユリアがトマド領に戻る前には、何度も宮殿に通ってきてはいたが、軍事関係の人たちと関係がある部署にいったこともなく、付き合いもなかったのだ。
高飛車な言い方に、勇者の一人ボブが声をあげた。
「あなたも戦いの経験があるのでしょうが、私も多くの魔物退治に参加し戦ってまいりました。ですから、その中で人を見る目ができていると思っております。私らが親衛隊員となっても問題がないと思いますな」
「ほほう、私も勇者として戦ったことがある。戦った魔物には、ドラゴンやケシトラもいましたぞ。あなたがたよりも、戦いについては、場数をふんでいる。ちなみに、あなたは、足を魔物に食われておるようだ。私はそのようなヘマをしたことがない。それを見ただけでも、その違いは一目明瞭」
「笑止せんばん。それほどの方とはお見受けできないが」と、ボブが声を高める。
「それならば勇者としてお手合わせをお願いできますかな」と、イワクラが鼻先で笑った。
「望むところじゃ」
慌てたユリアは「ボブさま、おやめください」と声をあげた。リチャード王子も、「イワクラさまのプライドに火をつけてしまったようじゃな」と言って顔をしかめていたが、少し考えてから口を開いた。
「それならば、パーティーの方々を相手に、騎士団を代表とする騎士の方と腕比べをしてみてはいかがでござろうか。もちろん、お互いに実力を披露して見せることが主眼ですので、相手を傷つけることはしないということで、どうですか?」
「それで、よろしいですぞ。私どもは、騎士団には簡単になれる者ではないことをお示しできればいい。そして、私らこそが、この国を守る主力であることをご理解いただければいいのですよ」
「そうか、それならば、腕比べを認めないわけにはいかんな」と、ジョンがうなづく。
「さっそく、始めたいのですが」
そう言ったイワクラはすでに剣を抜いて、リックに向かっていこうとしていた。
すぐに「ここではおやめいただきたい。そうですな。中庭にでていただき、そこでおやり願いたい」と、総理大臣が言っていた。
支持をだされたので、大広間についていたガラス戸を開けて、二人は中庭にでていった。その場にいた者たちは、すぐに後に続いて中庭にでていっていた。
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