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第5話 隠し事
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年上の男たちを相手にした日から七日間がたっていた。
その日の朝。顔を洗ってから、鏡を見るとあごのヒゲが三本伸びていた。まずいと思ったぼくはシャッツのそでをあげて、腕をみた。腕には、長い毛が五本ほどはりついていたのだ。困ったなと思っていると、いつの間にか父さんがきて、のぞいていた。
「やはり、その時期がきたか」
「なんなのさ。その時期って?」
「今日、おまえが帰ってきたら、ちゃんと話をしてやるよ」
朝食は、卵の目玉焼きにナスのみそいため。味噌汁はわかめとあぶらげが入っていた。やはり、塩辛をだしてもらったので、ぼくはご叛をおかわりをした。こんなに食べたのは、なんとなく感じた不安を消したかったからだ。
でも、何が不安だったのだろう? 考えてもわからない。
学校の授業が終わると、ぼくはすぐに家に帰った。
午後2時を少しすぎたころだったので、仕事の手もすいていたのだろう。父さんがぼくの部屋にやってきた。それも、大黒様のように、背中に袋をかついでいた。
「どうやら、話をしていただける時期がきたんですね」と、ぼくは言った。
父さんは袋を足元に置くとあぐらをかいている。
「実はな。私ら大谷家には秘密があるんじゃ」
「秘密?」
「そのうちに、たけしも、やたらに体中に毛が生えてくるようになる。いつもしっかり手入れをしないと、だめだぞ」
たしかに、父さんは、一日二回は髭をそっているし、寝る前に手足に脱毛クリームもぬっている。
「分かった。多毛症の血筋なんだ。ぼくも手入れに心がけるよ」
「推理力はあるようだが、少し違うな」
「父さん、隠さないで、ちゃんと教えて」
「いよいよ、本当のことを言わないとならんな」
「うん、早く言ってよ」
「わしら、大谷家の者は人狼(じんろう)なんだよ」
「じんろうって、なに?」
「オオカミ人間だと言うことだ」
「えっ、父さんはオオカミ男だったんだ」
「そのとおり、わしはオオカミ男。そして、良枝はオオカミ女と言うことだよ。たけしもオオカミ人間から生まれたのだから、オオカミ少年と言うことになる」
「ぼくが他の人よりも体力がある理由がわかりましたよ」
「いまはうめたてられているが、前はこのあたりは大きな谷で、そこにわれらの先祖が住んでいた。ここらあたりにも人がどんどんと住みだしたので、人の中に入って暮らすことをえらんだのさ」
「そうなんだ」
「人間だって、肌の色が違ったり、背が高い人や低い人もいる。オオカミ人間であることも個性の一つでしかないと思うんだよ」
「個性ね」
「たいせつなことは、オオカミだと気づかれずに、人とも仲良く暮らしていくことだ」
ぼくはうなずいていた。
「そうなると、問題は体に生えてくる毛をちゃんと処理しなければならない。もちろん、きずかれないようにするためだが」
そう言った父さんは、床においていた袋から、電気機器等をだしていた。髭剃り用具、脱毛器、安全かみそり、脱毛クリームをだしていた。
「これらは、全部、たけし専用だ。ちゃんと机の引き出しにでもしまっておくように」
ぼくは改めてうなずいていた。
その日の朝。顔を洗ってから、鏡を見るとあごのヒゲが三本伸びていた。まずいと思ったぼくはシャッツのそでをあげて、腕をみた。腕には、長い毛が五本ほどはりついていたのだ。困ったなと思っていると、いつの間にか父さんがきて、のぞいていた。
「やはり、その時期がきたか」
「なんなのさ。その時期って?」
「今日、おまえが帰ってきたら、ちゃんと話をしてやるよ」
朝食は、卵の目玉焼きにナスのみそいため。味噌汁はわかめとあぶらげが入っていた。やはり、塩辛をだしてもらったので、ぼくはご叛をおかわりをした。こんなに食べたのは、なんとなく感じた不安を消したかったからだ。
でも、何が不安だったのだろう? 考えてもわからない。
学校の授業が終わると、ぼくはすぐに家に帰った。
午後2時を少しすぎたころだったので、仕事の手もすいていたのだろう。父さんがぼくの部屋にやってきた。それも、大黒様のように、背中に袋をかついでいた。
「どうやら、話をしていただける時期がきたんですね」と、ぼくは言った。
父さんは袋を足元に置くとあぐらをかいている。
「実はな。私ら大谷家には秘密があるんじゃ」
「秘密?」
「そのうちに、たけしも、やたらに体中に毛が生えてくるようになる。いつもしっかり手入れをしないと、だめだぞ」
たしかに、父さんは、一日二回は髭をそっているし、寝る前に手足に脱毛クリームもぬっている。
「分かった。多毛症の血筋なんだ。ぼくも手入れに心がけるよ」
「推理力はあるようだが、少し違うな」
「父さん、隠さないで、ちゃんと教えて」
「いよいよ、本当のことを言わないとならんな」
「うん、早く言ってよ」
「わしら、大谷家の者は人狼(じんろう)なんだよ」
「じんろうって、なに?」
「オオカミ人間だと言うことだ」
「えっ、父さんはオオカミ男だったんだ」
「そのとおり、わしはオオカミ男。そして、良枝はオオカミ女と言うことだよ。たけしもオオカミ人間から生まれたのだから、オオカミ少年と言うことになる」
「ぼくが他の人よりも体力がある理由がわかりましたよ」
「いまはうめたてられているが、前はこのあたりは大きな谷で、そこにわれらの先祖が住んでいた。ここらあたりにも人がどんどんと住みだしたので、人の中に入って暮らすことをえらんだのさ」
「そうなんだ」
「人間だって、肌の色が違ったり、背が高い人や低い人もいる。オオカミ人間であることも個性の一つでしかないと思うんだよ」
「個性ね」
「たいせつなことは、オオカミだと気づかれずに、人とも仲良く暮らしていくことだ」
ぼくはうなずいていた。
「そうなると、問題は体に生えてくる毛をちゃんと処理しなければならない。もちろん、きずかれないようにするためだが」
そう言った父さんは、床においていた袋から、電気機器等をだしていた。髭剃り用具、脱毛器、安全かみそり、脱毛クリームをだしていた。
「これらは、全部、たけし専用だ。ちゃんと机の引き出しにでもしまっておくように」
ぼくは改めてうなずいていた。
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