4 / 10
4被害者
しおりを挟む
生田弁護士事務所は中央区の官庁街に建てられている店舗ビルの七階にあった。このビルの近くに法務省支部庁舎や地方裁判所の建物が建っていた。
いつものように佐川たちは、このビルの管理事務所に顔を出して、覆面パトカーを駐車場におかしてもらった。その後、エレベターにのり七階でおりた。佐川たちは、通路を歩いて左右にある部屋のドアを見て歩いた。ドアには入っている事務所の名前が書かれている。入っているのは司法書士や税理事務所など、法令関係者の事務所が多かった。
やがて、生田弁護士事務所と書かれたドアを前にした。
佐川は、軽いノックをしてからドアを開け中に入った。
「生田さんはおられますか?」
「いま、出かけておりますが、予約をとられておられますか?」
ドアの出入口近くに置かれたデスクを前にすわっていた女性が立ち上がってきた。
「いや、とっておりませんが」と言いながら、佐川は警察手帳を掲げて見せた。背後で、近藤も警察手帳を出して見せていた。
窓際に二つの机が並べられていた。その一つにすわっていた男が立ってきた。
「何か、ごようでしょうか?」
「あなたは?」
「生田弁護士の補佐をしている岸本保志ですが」
「そうですか。この写真を見ていただけますか?」
佐川は胸ポケットから先程鑑識課が写した遺体の写真を出して岸本に見せた。写真を手に取り、しばらくの間、岸本は写真をじっと見ていた。
「これは所長だ。これは本当の写真ですか?」
「ええ、本当の写真ですよ」
「どうして、また?」
「何者かに射殺されたようです。本通りへ向かう道路の交差点近くで殺された。生田さんはどこへ行こうとしていたんですか?」
「わかりません。電話が来て出かけて行ったのですが、何も聞いてはいない」
「しかし、生田さんは動きまわっていた。いま、なんの事件をあつかっていたのですか?」
「井上光弘が起こした交通事故をご存じでしょう。ニュースで流されていた。その刑事事件を担当していたんですよ。経済未来研究所の顧問弁護士をやっておりましたので、なんとしてでも、無罪をとるように言われていたようです」
「そうでしたか。まず生田さんの遺体を正式に本人確認をしていただけませんか?」
岸本は無言でうなずいていた。
「ちょっと、失礼をしますよ」
佐川が警察専用携帯を出して、署の刑事課に連絡をとっていた。
「中の島警察署の霊安室に遺体を置かれることになりましたので、まことにすいませんが午後四時以降には運ばれていますので。署を訪ねて確認をお願いしたい。その頃までには、私らも署に戻るつもりでおりますので」
「分かりました。本人であるかどうかの確認は肉親の了解をもらう必要があります。その時には、生田の奥さん佳代子さんを連れて行きます」
岸本のその言葉を聞いた佐川は、再び署に電話をして、岸本と生田の妻、佳代子が遺体確認に行くことを伝えてから、生田弁護士事務所を後にした。
いつものように佐川たちは、このビルの管理事務所に顔を出して、覆面パトカーを駐車場におかしてもらった。その後、エレベターにのり七階でおりた。佐川たちは、通路を歩いて左右にある部屋のドアを見て歩いた。ドアには入っている事務所の名前が書かれている。入っているのは司法書士や税理事務所など、法令関係者の事務所が多かった。
やがて、生田弁護士事務所と書かれたドアを前にした。
佐川は、軽いノックをしてからドアを開け中に入った。
「生田さんはおられますか?」
「いま、出かけておりますが、予約をとられておられますか?」
ドアの出入口近くに置かれたデスクを前にすわっていた女性が立ち上がってきた。
「いや、とっておりませんが」と言いながら、佐川は警察手帳を掲げて見せた。背後で、近藤も警察手帳を出して見せていた。
窓際に二つの机が並べられていた。その一つにすわっていた男が立ってきた。
「何か、ごようでしょうか?」
「あなたは?」
「生田弁護士の補佐をしている岸本保志ですが」
「そうですか。この写真を見ていただけますか?」
佐川は胸ポケットから先程鑑識課が写した遺体の写真を出して岸本に見せた。写真を手に取り、しばらくの間、岸本は写真をじっと見ていた。
「これは所長だ。これは本当の写真ですか?」
「ええ、本当の写真ですよ」
「どうして、また?」
「何者かに射殺されたようです。本通りへ向かう道路の交差点近くで殺された。生田さんはどこへ行こうとしていたんですか?」
「わかりません。電話が来て出かけて行ったのですが、何も聞いてはいない」
「しかし、生田さんは動きまわっていた。いま、なんの事件をあつかっていたのですか?」
「井上光弘が起こした交通事故をご存じでしょう。ニュースで流されていた。その刑事事件を担当していたんですよ。経済未来研究所の顧問弁護士をやっておりましたので、なんとしてでも、無罪をとるように言われていたようです」
「そうでしたか。まず生田さんの遺体を正式に本人確認をしていただけませんか?」
岸本は無言でうなずいていた。
「ちょっと、失礼をしますよ」
佐川が警察専用携帯を出して、署の刑事課に連絡をとっていた。
「中の島警察署の霊安室に遺体を置かれることになりましたので、まことにすいませんが午後四時以降には運ばれていますので。署を訪ねて確認をお願いしたい。その頃までには、私らも署に戻るつもりでおりますので」
「分かりました。本人であるかどうかの確認は肉親の了解をもらう必要があります。その時には、生田の奥さん佳代子さんを連れて行きます」
岸本のその言葉を聞いた佐川は、再び署に電話をして、岸本と生田の妻、佳代子が遺体確認に行くことを伝えてから、生田弁護士事務所を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる