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ドール6
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6再会
弘子は早足で歩いていた。
悪夢のような岸本の家から、いやこの地から早く立ち去りたかった。だが、いくら歩いても降りてきたバス停が見えない。そのバス停の反対側に弘子がのることになるバス停があるはずなのだ。
おかしい、こんなはずはない?
暗くなってきた。そう思って見上げた空は、忘れることができない血の色をした夕日が見えていた。後ろからヒタッヒタッという音が聞こえてきた。弘子は振り返った。犬がいたのだ。その犬はまるで赤いペンキを頭からかぶったように真っ赤だった。そして、背中の毛がさかだち、炎を思い出させた。
沸き立つ恐怖に、弘子は走り出していた。自分の心音が打たれたリズムのように感じ出し、走って、走って、走り続けた。だが、もう走ることができない。足がもつれ弘子は地面の上にたおれこんでいった。体じゅうから汗を噴き出させながら、後ろを見た。
赤い犬の姿はなくなっていた。その代わり女の子が近づいてくるのが見えた。だが、暗さのためか、眼をこらしても顔がまるで見えないのだ。女の子は人形を抱きながら歩いてくる。
「弘ちゃん、待ってよ」
忘れもしない。ナナの舌足らずな声であった。だが、声は人形から聞こえてきた。弘子は、思わず人形をみつめた。人形の顔はナナの顔に変わっていたのだ。はにかんだように人形になったナナは笑っていた。
「ママ、お腹すいた!」
弘子は、すぐに女の子の顔をみつめた。その声は女の子から聞こえてきたからだ。
やがて、暗さから脱け出し、女の子の顔が見え出した。その顔は、溶けて焼けただれ眼だけが浮き上っていた。
「ママ、だいて!」
弘子は空を切りさくような悲鳴をあげていた。
弘子は早足で歩いていた。
悪夢のような岸本の家から、いやこの地から早く立ち去りたかった。だが、いくら歩いても降りてきたバス停が見えない。そのバス停の反対側に弘子がのることになるバス停があるはずなのだ。
おかしい、こんなはずはない?
暗くなってきた。そう思って見上げた空は、忘れることができない血の色をした夕日が見えていた。後ろからヒタッヒタッという音が聞こえてきた。弘子は振り返った。犬がいたのだ。その犬はまるで赤いペンキを頭からかぶったように真っ赤だった。そして、背中の毛がさかだち、炎を思い出させた。
沸き立つ恐怖に、弘子は走り出していた。自分の心音が打たれたリズムのように感じ出し、走って、走って、走り続けた。だが、もう走ることができない。足がもつれ弘子は地面の上にたおれこんでいった。体じゅうから汗を噴き出させながら、後ろを見た。
赤い犬の姿はなくなっていた。その代わり女の子が近づいてくるのが見えた。だが、暗さのためか、眼をこらしても顔がまるで見えないのだ。女の子は人形を抱きながら歩いてくる。
「弘ちゃん、待ってよ」
忘れもしない。ナナの舌足らずな声であった。だが、声は人形から聞こえてきた。弘子は、思わず人形をみつめた。人形の顔はナナの顔に変わっていたのだ。はにかんだように人形になったナナは笑っていた。
「ママ、お腹すいた!」
弘子は、すぐに女の子の顔をみつめた。その声は女の子から聞こえてきたからだ。
やがて、暗さから脱け出し、女の子の顔が見え出した。その顔は、溶けて焼けただれ眼だけが浮き上っていた。
「ママ、だいて!」
弘子は空を切りさくような悲鳴をあげていた。
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