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11秋月祭
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やがて、9月29日が近づいてきた。
数日前から、秋月祭実行委員会の人たちは、城下街の中にのぼりをたて、家々の窓に国旗を飾らせた。この国のホテルや旅館は、秋月祭を見るためにやってきた他国の人たちをどんどんと受け入れていた。特に、各国からの王や貴族の参列者たちを迎えるために作られた迎賓館には、遺漏のない出迎えができるように侍従や侍女たちを待機させていたのだ。
ムガール帝国からは例年のようにリカード王子もきてくれた。白い四頭立ての馬車にのり、馬車の前には警備兵の騎士たちが三人、馬車の後ろには二人の騎士がつきそっていた。だが、やがてやってくる戦いで、この騎士たちの誰もが生きていられなくなってしまうことなど、リカードは知る由もないことだった。
リカードが迎賓館にきたとの連絡をうけたシルビアは、すぐに挨拶をしに迎賓館にいった。
シルビアがリカードの部屋を訪ねると、リカードは笑顔で迎えてくれた。いろいろな話をしていたかったのだが、そばについてきたロダンがシルビアの顔を覗き込んできた。ここに泊まっている他の王たちの所にも、挨拶をしてもらわなければと思ったからだ。
「シルビアさま、どうぞ、他の方の所へもいってください」
リカードにも言われてしまったので、シルビアは頭を何度もさげながら、リカードの部屋を後にした。その後、半日もかけて、話好きの王や貴族たちの部屋を訪ね廻ることになった。
お祭りを行う舞台は、城下にある大広場だ。広場の両脇には木枠を組んで段にして観覧席が作られた。そこに多くの人がすわってお祭りを見ることができるからだ。
広場にはすでに花火師たちが準備のために動き廻っていた。
花火師がこの国に集まるのは、山で火薬の原料である硫酸カリウムがとれ、他の国で異端扱いされている火薬作りを認めていたからだ。その上、シルビアは、秋月祭に花火師たちを参加させてくれていた。そのお礼をこめ、女王の功績を称えるために最も大きな花火玉を王女にあげさせていたのだった。
そして、秋月祭をむかえた。
太陽が空の真ん中にくると、花火師たちは大きな花火玉を車の付いた台車で運び、大広間の真ん中に設けられた高台の上に花火玉を運びあげていた。この場所に決められたのは、大広間に噴水のある人工池が作られていたので、もし事故で火があたりに飛んでも、水を使って消せると考えたからだ。
シルビアはロダンやトムとともに馬車にのり大広場にやってきた。馬車は大広場の中まで進み、そこでシルビアが馬車からおりると、国民たちは歓声をあげていた。シルビアは笑顔をふりまきながら左右に顔をむけ、さらに後ろをもむいて見せた。熱狂的に名前を呼んでくれる人にむかっては手をあげふった。
すでに夜のとばりがおり出し、空には星々たちが輝き出していた。
高台の上にいる花火師が手をあげて、合図をしてきた。それを受けて、ロダンは大地に書かれた円の中央にシルビアを案内をした。シルビアは火薬玉の方を見つめて、大きな深呼吸をひとつした。するとロダンは高台の上にいる花火師にむかって手をあげる。すると花火師は花火玉を転がした。杖をあげシルビアは花火玉にむかって念を送る。じ火玉は強い風にふきあがり、空に舞い上がったのだ。
空に飛んだ花火玉は月と同じ大きさになっていく。シルビアは、その月にむかって剣を突きあげ念をいれた。すると剣の先に火柱がうまれ、それがどんどんと伸びていき、花火玉を貫いたのだ。玉の中にある火薬に火がつき、花火玉は大きな音とともに破裂していた。火花は散り広がっていき、夜空に大きな花火が生まれたのだった。空を見あげた人たちは歓声をあげていた。
その花火を見て、一番喜んだのはシルビアだった。にやりと笑うシルビアにロダンは「お見事でございました。これで本物の魔法王女になられましたな」と言っていた。
その後、大広場の真ん中に道化師があらわれ、花火打ち上げの成功を祝って、シルビアに向かって大きく頭をさげた。それが合図だったように、ここに集まった人たちは一斉に拍手をシルビアに送っていた。拍手をしている人たちの中に、リカード皇子がいたのだった。
リカードはゆっくりとした足取りでシルビアの方に近づいてきた。
「今年も、美しい花火も見ることができました」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
「ダランガ国だけでなくわが帝国や近隣の国々も来年の豊作は間違いありませんよ。秋には麦も小金色の穂をつけることでしょう」
「私も、それを願って花火を打ち上げました」
シルビアは笑い声をあげながら、リカードの端正な顔に見とれていた。
楽隊が演奏を始め合唱隊が歌い出すと、それに合わせて大広場の真ん中に人が集まり出し輪を作ってダンスを始めた。まるでその様子は、大広場に花が一斉に咲きほこっているようだった。
「踊っていただけますかな?」と言って、リカードは右手をシルビアに出していた。
「はい、喜んで」
リカードとシルビアは手をとりあって踊りだし、大広場で踊る人たちの中に入っていた。
それと同時に花火師たちは大広場の周りに仕掛けていた花火を打ち上げ出したのだ。それは、大広場を昼間のように明るくしようとしているかのようだった。
数日前から、秋月祭実行委員会の人たちは、城下街の中にのぼりをたて、家々の窓に国旗を飾らせた。この国のホテルや旅館は、秋月祭を見るためにやってきた他国の人たちをどんどんと受け入れていた。特に、各国からの王や貴族の参列者たちを迎えるために作られた迎賓館には、遺漏のない出迎えができるように侍従や侍女たちを待機させていたのだ。
ムガール帝国からは例年のようにリカード王子もきてくれた。白い四頭立ての馬車にのり、馬車の前には警備兵の騎士たちが三人、馬車の後ろには二人の騎士がつきそっていた。だが、やがてやってくる戦いで、この騎士たちの誰もが生きていられなくなってしまうことなど、リカードは知る由もないことだった。
リカードが迎賓館にきたとの連絡をうけたシルビアは、すぐに挨拶をしに迎賓館にいった。
シルビアがリカードの部屋を訪ねると、リカードは笑顔で迎えてくれた。いろいろな話をしていたかったのだが、そばについてきたロダンがシルビアの顔を覗き込んできた。ここに泊まっている他の王たちの所にも、挨拶をしてもらわなければと思ったからだ。
「シルビアさま、どうぞ、他の方の所へもいってください」
リカードにも言われてしまったので、シルビアは頭を何度もさげながら、リカードの部屋を後にした。その後、半日もかけて、話好きの王や貴族たちの部屋を訪ね廻ることになった。
お祭りを行う舞台は、城下にある大広場だ。広場の両脇には木枠を組んで段にして観覧席が作られた。そこに多くの人がすわってお祭りを見ることができるからだ。
広場にはすでに花火師たちが準備のために動き廻っていた。
花火師がこの国に集まるのは、山で火薬の原料である硫酸カリウムがとれ、他の国で異端扱いされている火薬作りを認めていたからだ。その上、シルビアは、秋月祭に花火師たちを参加させてくれていた。そのお礼をこめ、女王の功績を称えるために最も大きな花火玉を王女にあげさせていたのだった。
そして、秋月祭をむかえた。
太陽が空の真ん中にくると、花火師たちは大きな花火玉を車の付いた台車で運び、大広間の真ん中に設けられた高台の上に花火玉を運びあげていた。この場所に決められたのは、大広間に噴水のある人工池が作られていたので、もし事故で火があたりに飛んでも、水を使って消せると考えたからだ。
シルビアはロダンやトムとともに馬車にのり大広場にやってきた。馬車は大広場の中まで進み、そこでシルビアが馬車からおりると、国民たちは歓声をあげていた。シルビアは笑顔をふりまきながら左右に顔をむけ、さらに後ろをもむいて見せた。熱狂的に名前を呼んでくれる人にむかっては手をあげふった。
すでに夜のとばりがおり出し、空には星々たちが輝き出していた。
高台の上にいる花火師が手をあげて、合図をしてきた。それを受けて、ロダンは大地に書かれた円の中央にシルビアを案内をした。シルビアは火薬玉の方を見つめて、大きな深呼吸をひとつした。するとロダンは高台の上にいる花火師にむかって手をあげる。すると花火師は花火玉を転がした。杖をあげシルビアは花火玉にむかって念を送る。じ火玉は強い風にふきあがり、空に舞い上がったのだ。
空に飛んだ花火玉は月と同じ大きさになっていく。シルビアは、その月にむかって剣を突きあげ念をいれた。すると剣の先に火柱がうまれ、それがどんどんと伸びていき、花火玉を貫いたのだ。玉の中にある火薬に火がつき、花火玉は大きな音とともに破裂していた。火花は散り広がっていき、夜空に大きな花火が生まれたのだった。空を見あげた人たちは歓声をあげていた。
その花火を見て、一番喜んだのはシルビアだった。にやりと笑うシルビアにロダンは「お見事でございました。これで本物の魔法王女になられましたな」と言っていた。
その後、大広場の真ん中に道化師があらわれ、花火打ち上げの成功を祝って、シルビアに向かって大きく頭をさげた。それが合図だったように、ここに集まった人たちは一斉に拍手をシルビアに送っていた。拍手をしている人たちの中に、リカード皇子がいたのだった。
リカードはゆっくりとした足取りでシルビアの方に近づいてきた。
「今年も、美しい花火も見ることができました」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
「ダランガ国だけでなくわが帝国や近隣の国々も来年の豊作は間違いありませんよ。秋には麦も小金色の穂をつけることでしょう」
「私も、それを願って花火を打ち上げました」
シルビアは笑い声をあげながら、リカードの端正な顔に見とれていた。
楽隊が演奏を始め合唱隊が歌い出すと、それに合わせて大広場の真ん中に人が集まり出し輪を作ってダンスを始めた。まるでその様子は、大広場に花が一斉に咲きほこっているようだった。
「踊っていただけますかな?」と言って、リカードは右手をシルビアに出していた。
「はい、喜んで」
リカードとシルビアは手をとりあって踊りだし、大広場で踊る人たちの中に入っていた。
それと同時に花火師たちは大広場の周りに仕掛けていた花火を打ち上げ出したのだ。それは、大広場を昼間のように明るくしようとしているかのようだった。
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