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22アシュラ砂漠への旅
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ロダンは魔法袋を腰にいつもさげている。だから、ロダンと一緒にいるシルビアは、アシュラ砂漠へ旅に出ても、食べ物や飲み水を持って行く必要はない。それらが欲しい時は、シルビアが魔法袋の中に入り、ダランガ国の食材置き場に戻ればいいからだ。旅立つ前に、シルビアはダランガ国の食材置き場の階段上にパンと燻製肉、チーズと野菜サラダ、それに水を入れた瓶五本をトムに置かせていた。さらに五日後ごとに新たに同じ物を置くようにトムに言ってあるのだ。
武器としては、雷力を発揮できるオーパルの指輪を指にはめてきたし、火の魔法を発動できる短剣も持ってきていた。いつも使っている長剣を持ってこなかったのは、長い距離を飛ぶのに腰にいずさを感じるからだ。万端の準備を整えたと思ったシルビアは、ロダンとともにホウキにのった。すぐに念の力で二人は浮き上がり空を飛んでいた。
半時もすると暑さで焼きつけられた砂漠の上にいた。
「ロダン、方向は間違いないのね」
「羅針盤を見ながら、ご指示申し上げております。間違いなくホウキは南にむかって飛んでおりますぞ」
だが、それまで青空だったのだが二人がむかう先に黒雲が湧き出していた。黒雲はだんだんとシルビアたちに近づいてきて、空をおおい出していた。
「まずい。砂嵐がやってきますぞ」
「風の力で吹き飛ばすことはできないかしら」
「シルビアさま、それは無理ですぞ。この一帯が砂嵐に襲われるのです。自然の大きな力の前では、魔法でも対処できませんな。ともかく少し右の方にむかって飛んでください。そちらの方は雲が薄いように思われます」
そんなことを言っている間に、二人は砂嵐に飲み込まれていった。シルビアは片手をあげて、目、鼻や口をおおった。ロダンはマントの端を手にして顔をおおっていた。こんな中では、シルビアは念をかけることに専念できるわけがない。ホウキは砂嵐にまきこまれ、砂地の上にたたきつけられていった。
その激しさにシルビアは気を失っていた。
どのくらい、時が経ったのだろうか。あまりの寒さにシルビアは目を覚ました。
「気づかれましたかな」
ロダンがシルビアを見守ってくれていたのだ。体にロダンのマントがかけられていた。顔をあげたシルビアは空を見た。嵐は去り、夜空にはたくさんの星が輝いている。
「城に一度戻るわ。そこから暖が取れる物を持ってくるわね」
シルビアがそう言うとロダンは悲しそうに首を左右にふっていた。
「どうかしたの?」
「腰につけていた魔法袋を風に飛ばされらしく失くしてしまったようです。どこかその辺にあるのではないかと思いさがし廻ったのですが、みつからない」
「じゃ、ホウキにのってダランガ国に一度戻って方法を検討しなおしましょう」
「シルビアさま、ホウキもどこにいったのか、見当たらないのですよ」
「えっ、そんな」
シルビアは顔をさげて、砂の上をゆっくりと見廻した。あちらこちらに穴があき、でこぼこになっている。それはロダンがホウキや魔法袋をさがした後だったのだ。シルビアは腰に手をあてて、短剣もなくなっていることに気づいた。
「ここで寝ているのは、寒いわ。目的地につけるように歩きましょう。体を動かしていれば、体が温まってくるわよ」
「そうですな。羅針盤だけは胸ポケットに入れていたので、無くさないですみました」
二人は歩き出した。
やがて、朝がやってきた。今度は強い日差しに二人は悩まされることになった。熱い日差しを受けて喉がかわき出したのだ。
「ロダン、水は持っていないのでしょう?」
「シルビアさまこそ、水の魔法で水を出す事ができる杖をもってきていただければ、よかったのですが」
「このままだと、二人とも干上がってしまうわよ」
「私たちが目指しているのは、オアシスですので、そちらを目指している隊商と出くわすことを願うしかない」
隊商というのは、国から国へ香料や絹、金製品などをラクダに積んで運んでいる商人たちのことだった。彼らが通っているのはアシュラ砂漠だったので、余裕のある水を持ってきているはずであった。彼らから水を分けてもらうしかない。
「水をもらうには、ただというわけにはいかないわよ」
「私の指や腕にも、宝石のついた指輪や腕輪をしておりますので、それを代金としてお渡しするしかないでしょう」
その後、二人は無言で歩き続けた。熱い砂地から立ち昇る揺らぎの中に遠くで黒い点のような物が見え出し、それがだんだんと大きくなり人やラクダに見えてきたのだ。
「ロダン、人がいるみたいよ」と、シルビアが声をあげた。
「シルビアさま、それは蜃気楼に違いありませんぞ。砂漠では、人は見たい者が見えてしまうことがある」
ロダンはあくまでも懐疑的だった。
それでも 二人は陽炎と思える者たちにむかって歩き続けると、人の声が聞こえてきたのだ。
「間違いないわ。隊商がいるのよ」
「だが、様子がおかしいですぞ」
ロダンの言うように、隊商の者たちは、黒い生き物を相手に戦っていたのだ。
黒い物はサソリだった。
それも、ゾウと変わらない大きさなのだ。やはり魔獣と言ってもいい物だった。大きなハサミをふりあげ、隊商たちの上にふりおろしていた。剣を使える者たちがいて、彼らはハサミを剣ではじきとばしていた。だが、サソリは尾を持っていて、それに毒針がついている。それをふり上げ、戦っている隊商の一人を刺したのだ。刺された者は体に毒が廻り倒れていった。
そんなサソリが二匹もいたのだ。人を相手にしていないサソリはラクダを狙い、二頭のラクダを次々と毒針で刺して砂の上に倒していた。
シルビアは走った。このままでは、隊商の人もラクダもサソリに殺されてしまう。尾をふり上げているサソリの前にシルビアは飛び出ていった。そして、シルビアは左手につけた指輪にむかって念を入れた。その指輪は雷力の魔法をだす物だ。指輪から雷光が発せられ、サソリを襲った。サソリは細かく震えハサミをシルビアの前に投げ出すと大きな音を立てて倒れていった。
次にシルビアはラクダにのしかかっているサソリにむけて左手をあげた。ふたたび、指輪にむかってシルビアは念を入れる。指輪から雷光が発せられ、それをうけたサソリも何度も痙攣を起こして倒れていった。
荒い息をついているシルビアの傍に、隊商の隊長がやってきた。
「ありがとうございます。あなたは冒険者の魔法師ですね。でも、どうしてこんな所におられたのですか?」
少し遅れて、シルビアのそばにやってきたロダンが代わって答えていた。
「オアシスを目当てに旅をしていたのですが、砂嵐にあってしまいましてな。持っていたすべてを砂嵐にとられてしまった。できれば、隊商の方と同行をさせていただきたいと思い、隊商の方を探していたのですよ」
「そうでしたか。あなた方に命を助けていただいている。そのご恩は返したいと思っている所ですよ」
「じゃ、ご一緒に連れいってくださいますか?」と、息が整ったシルビアが尋ねた。
「もちろん、いいですよ。私は隊商の隊長をしているアブト。ともに旅をいたしましょう」
「私はキムト。こちらの連れはロダン。よろしくお願いします」
本当は王女シルビアとなのるべきだったかもしれない。だが、従者はロダンだけで、それに王女の服とは思えない物しか着ていないし、化粧もしてはいない。それを考えると本名など名乗る気分ではなかったのだ。
アブトは、近くいた隊員たちに命じて怪我した者の手当てをさせ、他の隊員たちにはサソリを解体して肉に切り分けさせた。
「サソリは食べられるのですか?」
「そうですよ。サソリは私たちを食べようとしたが、死んでくれれば、今度は私たちがサソリを食べて、私たちの肉にすることができる。今晩は一緒に食事することにいたしましょう。まずは、戦いで喉が乾かれておられるのでしょう?」と言ってアブトは羊の胃袋でつくった袋に入れた水をシルビアに手渡し、水を飲ませてくれた。ロダンもシルビアから手渡された胃袋に口をつけて水を飲ませてもらうと、それをアブトに返した。その後、ロダンはサソリに刺されている隊員のそばに走っていった。そこではすでに隊員がナイフを借りてサソリにさされた隊員の傷口を広げて毒を血とともにたらしていた。ロダンはその傷口に口をつけて、毒を吸い出してやった。
サソリの解体を命ぜられた隊員たちは半月に似た剣を使ってサソリの外骨格をはずし、ピンク色の肉の塊を切り身にしていた。ラクダの背にのせていた木枠をおろして、それに肉塊を紐でつるし砂漠の熱にさらして干し肉にしていたのだ。
その晩、シルビアとロダンは二日ぶりの食事にありつくことができた。それは、隊員たちが二人を夕食に参加させてくれたからだ。サソリの肉は焼かれるとこうばしい香りを放ち、味は鶏肉に近かった。
「紫石花のことをお聞きになったことはございますかな?」ロダンはアブトに尋ねた。
「もちろん、存じておりますよ。アシュラ砂漠を渡る者で、それを知らない者はおりますまい。私たちが目指しているオアシス国家オラタルに、紫石花は咲いているのです。その花は泉のそばに咲いていますよ」
「えっ本当ですか」シルビアの顔に喜びの表情が浮かぶ。
「しかし、その花はオラタル国の花。誰も持ち出すことはできないはずですよ」
「それならば、国のお偉方に必死にお願いをするしかないですね」と、シルビアは顔を暗くしていた。
「ともかく、私たちの旅は間違いなく目標にむかっておりますぞ。よかった、よかった」
ロダンは、自分を納得させるようにうなずいていた。
武器としては、雷力を発揮できるオーパルの指輪を指にはめてきたし、火の魔法を発動できる短剣も持ってきていた。いつも使っている長剣を持ってこなかったのは、長い距離を飛ぶのに腰にいずさを感じるからだ。万端の準備を整えたと思ったシルビアは、ロダンとともにホウキにのった。すぐに念の力で二人は浮き上がり空を飛んでいた。
半時もすると暑さで焼きつけられた砂漠の上にいた。
「ロダン、方向は間違いないのね」
「羅針盤を見ながら、ご指示申し上げております。間違いなくホウキは南にむかって飛んでおりますぞ」
だが、それまで青空だったのだが二人がむかう先に黒雲が湧き出していた。黒雲はだんだんとシルビアたちに近づいてきて、空をおおい出していた。
「まずい。砂嵐がやってきますぞ」
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「シルビアさま、それは無理ですぞ。この一帯が砂嵐に襲われるのです。自然の大きな力の前では、魔法でも対処できませんな。ともかく少し右の方にむかって飛んでください。そちらの方は雲が薄いように思われます」
そんなことを言っている間に、二人は砂嵐に飲み込まれていった。シルビアは片手をあげて、目、鼻や口をおおった。ロダンはマントの端を手にして顔をおおっていた。こんな中では、シルビアは念をかけることに専念できるわけがない。ホウキは砂嵐にまきこまれ、砂地の上にたたきつけられていった。
その激しさにシルビアは気を失っていた。
どのくらい、時が経ったのだろうか。あまりの寒さにシルビアは目を覚ました。
「気づかれましたかな」
ロダンがシルビアを見守ってくれていたのだ。体にロダンのマントがかけられていた。顔をあげたシルビアは空を見た。嵐は去り、夜空にはたくさんの星が輝いている。
「城に一度戻るわ。そこから暖が取れる物を持ってくるわね」
シルビアがそう言うとロダンは悲しそうに首を左右にふっていた。
「どうかしたの?」
「腰につけていた魔法袋を風に飛ばされらしく失くしてしまったようです。どこかその辺にあるのではないかと思いさがし廻ったのですが、みつからない」
「じゃ、ホウキにのってダランガ国に一度戻って方法を検討しなおしましょう」
「シルビアさま、ホウキもどこにいったのか、見当たらないのですよ」
「えっ、そんな」
シルビアは顔をさげて、砂の上をゆっくりと見廻した。あちらこちらに穴があき、でこぼこになっている。それはロダンがホウキや魔法袋をさがした後だったのだ。シルビアは腰に手をあてて、短剣もなくなっていることに気づいた。
「ここで寝ているのは、寒いわ。目的地につけるように歩きましょう。体を動かしていれば、体が温まってくるわよ」
「そうですな。羅針盤だけは胸ポケットに入れていたので、無くさないですみました」
二人は歩き出した。
やがて、朝がやってきた。今度は強い日差しに二人は悩まされることになった。熱い日差しを受けて喉がかわき出したのだ。
「ロダン、水は持っていないのでしょう?」
「シルビアさまこそ、水の魔法で水を出す事ができる杖をもってきていただければ、よかったのですが」
「このままだと、二人とも干上がってしまうわよ」
「私たちが目指しているのは、オアシスですので、そちらを目指している隊商と出くわすことを願うしかない」
隊商というのは、国から国へ香料や絹、金製品などをラクダに積んで運んでいる商人たちのことだった。彼らが通っているのはアシュラ砂漠だったので、余裕のある水を持ってきているはずであった。彼らから水を分けてもらうしかない。
「水をもらうには、ただというわけにはいかないわよ」
「私の指や腕にも、宝石のついた指輪や腕輪をしておりますので、それを代金としてお渡しするしかないでしょう」
その後、二人は無言で歩き続けた。熱い砂地から立ち昇る揺らぎの中に遠くで黒い点のような物が見え出し、それがだんだんと大きくなり人やラクダに見えてきたのだ。
「ロダン、人がいるみたいよ」と、シルビアが声をあげた。
「シルビアさま、それは蜃気楼に違いありませんぞ。砂漠では、人は見たい者が見えてしまうことがある」
ロダンはあくまでも懐疑的だった。
それでも 二人は陽炎と思える者たちにむかって歩き続けると、人の声が聞こえてきたのだ。
「間違いないわ。隊商がいるのよ」
「だが、様子がおかしいですぞ」
ロダンの言うように、隊商の者たちは、黒い生き物を相手に戦っていたのだ。
黒い物はサソリだった。
それも、ゾウと変わらない大きさなのだ。やはり魔獣と言ってもいい物だった。大きなハサミをふりあげ、隊商たちの上にふりおろしていた。剣を使える者たちがいて、彼らはハサミを剣ではじきとばしていた。だが、サソリは尾を持っていて、それに毒針がついている。それをふり上げ、戦っている隊商の一人を刺したのだ。刺された者は体に毒が廻り倒れていった。
そんなサソリが二匹もいたのだ。人を相手にしていないサソリはラクダを狙い、二頭のラクダを次々と毒針で刺して砂の上に倒していた。
シルビアは走った。このままでは、隊商の人もラクダもサソリに殺されてしまう。尾をふり上げているサソリの前にシルビアは飛び出ていった。そして、シルビアは左手につけた指輪にむかって念を入れた。その指輪は雷力の魔法をだす物だ。指輪から雷光が発せられ、サソリを襲った。サソリは細かく震えハサミをシルビアの前に投げ出すと大きな音を立てて倒れていった。
次にシルビアはラクダにのしかかっているサソリにむけて左手をあげた。ふたたび、指輪にむかってシルビアは念を入れる。指輪から雷光が発せられ、それをうけたサソリも何度も痙攣を起こして倒れていった。
荒い息をついているシルビアの傍に、隊商の隊長がやってきた。
「ありがとうございます。あなたは冒険者の魔法師ですね。でも、どうしてこんな所におられたのですか?」
少し遅れて、シルビアのそばにやってきたロダンが代わって答えていた。
「オアシスを目当てに旅をしていたのですが、砂嵐にあってしまいましてな。持っていたすべてを砂嵐にとられてしまった。できれば、隊商の方と同行をさせていただきたいと思い、隊商の方を探していたのですよ」
「そうでしたか。あなた方に命を助けていただいている。そのご恩は返したいと思っている所ですよ」
「じゃ、ご一緒に連れいってくださいますか?」と、息が整ったシルビアが尋ねた。
「もちろん、いいですよ。私は隊商の隊長をしているアブト。ともに旅をいたしましょう」
「私はキムト。こちらの連れはロダン。よろしくお願いします」
本当は王女シルビアとなのるべきだったかもしれない。だが、従者はロダンだけで、それに王女の服とは思えない物しか着ていないし、化粧もしてはいない。それを考えると本名など名乗る気分ではなかったのだ。
アブトは、近くいた隊員たちに命じて怪我した者の手当てをさせ、他の隊員たちにはサソリを解体して肉に切り分けさせた。
「サソリは食べられるのですか?」
「そうですよ。サソリは私たちを食べようとしたが、死んでくれれば、今度は私たちがサソリを食べて、私たちの肉にすることができる。今晩は一緒に食事することにいたしましょう。まずは、戦いで喉が乾かれておられるのでしょう?」と言ってアブトは羊の胃袋でつくった袋に入れた水をシルビアに手渡し、水を飲ませてくれた。ロダンもシルビアから手渡された胃袋に口をつけて水を飲ませてもらうと、それをアブトに返した。その後、ロダンはサソリに刺されている隊員のそばに走っていった。そこではすでに隊員がナイフを借りてサソリにさされた隊員の傷口を広げて毒を血とともにたらしていた。ロダンはその傷口に口をつけて、毒を吸い出してやった。
サソリの解体を命ぜられた隊員たちは半月に似た剣を使ってサソリの外骨格をはずし、ピンク色の肉の塊を切り身にしていた。ラクダの背にのせていた木枠をおろして、それに肉塊を紐でつるし砂漠の熱にさらして干し肉にしていたのだ。
その晩、シルビアとロダンは二日ぶりの食事にありつくことができた。それは、隊員たちが二人を夕食に参加させてくれたからだ。サソリの肉は焼かれるとこうばしい香りを放ち、味は鶏肉に近かった。
「紫石花のことをお聞きになったことはございますかな?」ロダンはアブトに尋ねた。
「もちろん、存じておりますよ。アシュラ砂漠を渡る者で、それを知らない者はおりますまい。私たちが目指しているオアシス国家オラタルに、紫石花は咲いているのです。その花は泉のそばに咲いていますよ」
「えっ本当ですか」シルビアの顔に喜びの表情が浮かぶ。
「しかし、その花はオラタル国の花。誰も持ち出すことはできないはずですよ」
「それならば、国のお偉方に必死にお願いをするしかないですね」と、シルビアは顔を暗くしていた。
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