魔法王女に転生した私は必ず勝ちますわ!

矢野 零時

文字の大きさ
24 / 33

24オアシス都市オラタル国

しおりを挟む
 地平線に光っている物がシルビアにも見え出した。そこだけ何かの力で覆われているようだった。
「魔獣がいるのかしら?」
「いえ、違います。キムト。あそこがオアシス都市オラタル国のある場所ですよ」と、アブトが教えてくれた。   
 隊商がだんだんとオラタル国に近づいていくと 国の周りにはたくさんの木々があって、そこから突き出したように塔が見えていたのだ。塔は日を受けてきらきらと光るクリスタルでできていた。
「あれがオラタル国なのね。でも、こんな砂漠の中にどうして国なんかできたのかしら?」 
「理由は二つあると思いますよ。一つはあそこには、地質のおかげか、水が溜まっている場所だからです。遠くに高い山が見えているでしょう。周りに比較するものがないから判らないかもしれませんが山脈にある山々よりも高い山なのですよ。だから、あの山の上には、一年中雪が降っている。ふった雪は解けて地下水になり、地中に潜ってしまう。その地下水がオラタル国のくぼ地に噴き出して池を作っているのですよ。そこに鳥たちがやってきて植物の種を運び、いつの間にか木々が育ってしまった。もう一つは、アシュラ砂漠を横断して商品を運ぶ商人たちがいたことですよ。商人たちは隊商を組んで砂漠を越えていこうとした。だが人には水が必要です。隊商たちは必ずここに寄り出すようになり、ここで商品の取引をすれば、砂漠を越えて行かなくてもいいことが分かり出し、ここで取引をする人たちが市場を作ってしまった。それに付随するホテル、商店ができてくると、都市を管理する国もできあがったということですよ」
 アブトが話をしていると、アブトの隊商とは別の隊商がオラタル国にむかっているのが見えた。その隊商の後を追うようにアブトの隊商も木々の中に入っていった。

 木々で囲まれた場所は広く。まるでスーパーマーケットの駐車場のような敷地を柵で囲んだ所がいくつもあったのだ。駐車場との違いは、下は芝生のある地面にラクダたちが置かれテントも張られていることだ。そのテントの周りには隊商の人たちがたたずんでいる。
 柵で囲まれた出入口には、小屋が建てられていた。小屋に窓があって、そこから番人だと思える男が顔を出していた。その小屋の一つにアブトは近づいていった。男としばらくの間、話をして、その後、男に五枚の銅貨を渡していた。それで借りる約束ができたのだろう。アブトは自分の隊員たちにむかって手をあげた。隊員たちは、柵の中にラクダをひいていき、ラクダの背に積んでいた荷物をおろしていた。その後、テントを張り出したのだ。
 アブトがシルビアたちに近づいてきた。
「あなた方はどうされるかな? もし、私たちと同じでよければテントの一画をお貸ししますが」
 ロダンは、シルビアの方に顔をむけた。これまで、砂埃をあび、汗をかいても、そのままにし続けてきている。さすがに、シルビアは思いっきり水につかり体を洗いたくなっていたのだ。だから、顔をしかめてみせた。
「ここで、ゆっくりと、個室に泊まれるホテルはございませんかな?」
 ロダンはアブトに尋ねた。
「ありますよ。だが、ここよりは高いお代を要求されますが」
「かまいませんぞ」
「そうですか」
 そう言ったアブトは、手をあげて街の方を指さした。
 クリスタルの塔を持つ城の前に家並みができていたのだ。その中にアブトに指さされた二階建てと思える建物があった。
「それでは、そちらの方に行ってみますよ」
 ロダンはそう言って、アブトに頭をさげた。アブトがシルビアたちの懐具合まで心配をしてくれたことに感謝をしてシルビアも頭をさげていた。柵そばの小屋を離れてアブトたちが見えなくなると、「ホテルに泊まれるほどのお金を持っているの?」とシルビアは改めてロダンに聞いていた。
「そうですな。懐に財布を入れていたのですが、砂嵐の時に、財布は風に奪われてしまいましたよ」と言って、ロダンは笑い声をたてた。
「じゃ、どうするの?」
 すると、ロダンはシルビアに手を見せた。指にダイヤのついた指輪をはめていたのだ。さらに袖をめくると腕に腕輪をつけていて、そこにたくさんのダイヤが升目状にはめられていた。
「これらを代金がわりに置いてくるつもりですよ。ダイヤは一つだけでもおそらく一月は宿泊できるはずですが」
「さすが、ロダン。その手があったわね」
 思わず、シルビアは微笑んでいた。
 二人は街に近づき並んでいる店の中を歩いていると砂漠の中にいると思えなくなる。やがてレンガで作られた赤茶色のホテルが見えてきた。レンガがあるということは、この辺りには水を通さない粘土がとれて、それを焼いて作ったのに相違なかった。
「ここですな。アブトが指差していたホテルは」
 二人はホテルの中に入った。受付カウンターが右に見え、左は小さなレストランになっていて、四つほどのテーブルが置かれていた。
 シルビアたちがカウンターに近づくと、「いらっしゃいませ」と言ってマスターが不機嫌そうに二人をみつめてきた。
「一泊ですか?」
「当分の間、泊まりたいと思っているのだが」
「当分? ともかくお代は前金として先に頂くことになっておりますよ」
「これで、どうですかな?」

 ロダンは指からダイヤのついた指輪をはずしてカウンターの上においた。マスターは指輪を手にすると目を細めダイヤをしばらくの間、見つめていた。やがて笑いながら顔をあげた。
「いい品物ですな。これで半月分の宿泊代として受け取らせていただきます。それに三食もその料金の中に入れておきますので、好きな物を好きな時に頼んでいただいてけっこうですよ」
「それでいいのね?」とシルビアが訊ねていた。
「もちろん、食事は、私どものサービスですよ。こう見えても、私は宝石の鑑定に自信がある。あなた方と同じに宿泊代として宝石を出すお客さまは結構おられますのでね」
「それでだが、部屋は別々に泊まれるように二部屋お願いしたい。それから、できればバスつきにして貰いたいのだが」と、ロダンが注文を出した。
「ええ、いいですよ。ここはオアシス。水は十分にある所ですから、どの部屋にもバスつきになっていますよ」
 その後、マスターは壁にかかっていた鍵を二つとり、それぞれ一つずつシルビアとロダンに渡していた。
「鍵につけられた木ふだに書かれた番号があなた方の部屋番号になっている。そこの階段をあがって、その番号の部屋に入ってください」
 言われた通り、二人は階段をあがってそれぞれの番号の部屋に入った。すぐにシルビアはバスタブに水をため、そこに入り体を洗い一年分の汚れを落とした気分になることができた。服はよごれたままだが、しかたがない。新しい服を買うことができたら、ホテルに洗濯を頼もうと思っていた。
 そんな時にドアがノックされた。
「シルビアさま、夕食の時間ですぞ。まず食事をとることにいたしましょう」
 ロダンに言われて、昼も食べていないことに気がついた。部屋のドアを開けるとロダンが部屋の前で待っていた。ロダンの後について、階段をおりた。ホテルについているレストランに行き、テーブルを前に開いている席にすわった。
 女の給仕がやってきた。
「なんにしますか?」
「どんなのがあるのかしら?」と、シルビアは首をかしげる。
「お任せにしてもらえば、ありがたいわ。手に入れた良い材料を出すことができますよ」
「お任せにすると、出てくる物は肉料理ばかりだよ」と、近くのテーブルにすわっていた男が声をかけてきた。
「肉だけですか?」と言って、シルビアは男のほうに顔をむけた。
「ラクダ、羊、豚だね」
「ちゃんと、野菜もつけていますよ。それにスープもある」と言って、給仕は怒った目を男にむけていた。
「悪い、悪い。じゃまをするきはなかったんだが。美しい女性には美容にいい食べ物を食べて貰いたいと思ってしまってね」
 そう言った男は挨拶がわりに赤ワインを入れたグラスをあげていた。
 シルビアは羊、ロダンはラクダの肉を頼み、当然のように野菜添えを頼んだ。運ばれた料理を食べるシルビアたちを面白そうに見ていた男は二人が食事を終えると、話しかけてきた。
「老人と若い女性の冒険者は珍しい組み合わせだね。それに、ここには冒険者が退治するような魔獣はいないはずだが」
「あなたは剣士。あなたこそ、冒険者ではないのですか?」
「そうですよ。だが、いまはどのパーティーにも属してはいない。私はシーザー。ここには紫石花を分けてもらいにきたのだが、国王にいくら頼んでも紫石花を分けてはくれない」
「えっ」とシルビアは声をあげた。シルビアと同じ目的でここにきていたからだ。
「それは、国王が欲しいだけのお金をあげないからではないですか?」
「いや、そうではないね。国王が望んでいる物がなんなのか分からず、探しているところなのですよ」
 その話が聞こえたのか、給仕の顔が強張り出していた。カウンターにいるマスターも顔色が青くなっていた。このホテルにくる者たちの中には紫石花を手にいれたくてきた者がかなりいたのだ。だが、その目的で泊まったお客でホテルに戻ってきた者はほとんどいなかった。その時のシルビアたちは、そのことをまだ知らない。だが、違和感だけは感じ出していた。
「シルビアさま、その話はこの辺でやめておきましょう。私どもはこの国のことはまだ知らなすぎる。ここにいる人たちに私らの目的を知られないほうがいいのかもしれませんよ」
 ロダンにそう言われたので、シルビアはその話を続けるのをやめることにした。その代わり、シルビアは新しい服を買うにどうすればいいのか、話を始めた。マスターの話から、服を売る店がどこにあるか知ることができた。さらに、宝石をコインに変えてくれる店があることも分ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...