カオル、白魔女になります!

矢野 零時

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竜人をさがして!

2正人の依頼

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 タクシーは、田畑の見える道路を走り、一度お店が立ち並ぶ街にはいりましたが、すぐに木々がたちならぶ場所にでて、そこを抜けると白い五階建ての建物が見えてきました。
 
 タクシーは病院のエントランスでとまり、二人がおりました。一階は待合室で並べられ椅子にすわっている人たちがいて、支払いをしたり薬を受け取ったりしていました。玲子は何度も来ているので、兄の病室がどこにあるかわかっています。先に立って歩き、エレベーターの昇降口の前に行きました。そこでエレベーターを待ち、カオルとともにのると、五階でおりました。
 通路を歩き、ナースステショーンに行き、見舞客受付簿に名前を書くと、そのまま兄のいる病室に向かったのです。
 玲子が連れて行った病室は個室で一人の男の子が寝ていました。
「お兄ちゃん、カオルちゃん、連れてきたよ」
 男の子はすぐに上半身を起こし、嬉しそうしています。
「カオルちゃん。お兄ちゃんの正人まさと
「ありがとう。本当に来てくれたんだね」
 カオルはうなずいて見せました。
「ぼくはね。白血病なんだ。骨髄にガンができて血液がちゃんと作れなくなっているらしい。お医者さんは簡単になおる病気ではないと言っているよ。ぼくのおばあちゃんが、竜神を祭っている七坂神社にぼくの病気を治してくれるように願をかけてくれたんだ。そしたら、社から竜人と思える男の子がでてきて、ぼくを治すことができる薬をくれると言って、社の中に戻っていったそうなんだ。それなのに、おばあちゃんがいくら待っても、竜人は出てこなかった。だから、ぼくの病気が治るためには、竜人のところに行って薬をもらってきて欲しいんだ。ぼくの願いを聞いて、玲子は七坂神社に行ってくれたのだけど、竜神を見つけることも、竜の国に行くこともできなかったんだよ」
 そばで正人の話を聞いていた玲子は、悲し気に顔をさげていました。
「新聞で、カオルちゃんが、行方不明になったクラスメートたちを見つけ出したことがのっていた。警察でも、見つけることができなかった別荘にいたんだってね。カオルちゃんは、捜査能力のある名探偵だと思うんだ。だから、竜の国に行って、薬をくれると言った竜人をさがして、薬をもらってきて欲しいんだ」

 女神ハッピーのおかげで、カオルは推理力で名探偵のようにクラスメートたちを見つけたことになっています。本当は、魔人グールと戦う魔法戦争があり、魔法学校の校長でもあるおばあさん、サラたちの力を借りて倒すことができたのでした。でも、それは秘密のことです。まだ、カオルたちの世界では、魔法の力をいかがわしい物と思っている人たちがいるからです。

「竜の国に行けたとしても、どんな竜が正人くんに声をかけていたのか、わからなわ」と言って、カオルは腕をくみました。
「そう言われると思っていた。この前、おばあちゃんが病院に来た時、おばあちゃんにその話をしたら、おばあちゃんが会った男の子の顔を絵に描いてくれたんだ。見てくれる?」
 カオルは、うなずきました。
 すぐに正人はベッドと壁の間にはさむように置かれていたスケッチブックをひきだし、開いてカオルに絵を見せたのでした。
「こんな顔をしていたらしい。別の絵には、鹿のような角が生えて見えた時のもあるよ」
 ページをめくり、次の絵をカオルはみつめました。
「この絵は、やはり、竜らしいわね」
「竜人を捜してもらえないかな?」
 正人は顔をゆがめていました。ことわったら、泣き出してしまうに違いありません。
 こんな時、頼みを断ることができますか?
 カオルはできませんでした。
「まず男の子がどこにいるか。ともかく探してみるわ」
 正人は顔に明るい光が差したように、笑顔になっていました。

 私にこの笑顔に応えることができるだろうか?
 やらなければ…。
 
 「じゃ、七坂神社には、いつ行けばいいのかな?」
 「祝日が来るわね。次の休みの日は、どうかしら?」と言った玲子は嬉しそうでした。
  カオルが引き受けてくれたからです。
 「いいわよ。どこで、待ち合わせをする?」
 「街にあるコンビニではどうかしら?」
 「いいわよ。それで、待ち合わせ時間は?」と、カオルは首を傾げてみせました。
 
 
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