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お兄ちゃんの部屋
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「じゃ、運動公園でサッカーやってくるから」と、お兄ちゃんは出かけていきました。
お母さんは居間にいてテレビで韓国ドラマを見ています。これだけは、絶対に見ると決めているようで、この時間はテレビの前からお母さんは動こうとはしません。
ルミがお兄ちゃんの部屋に入りこむには、絶好のチャンスです。
そして、お兄ちゃんの部屋は二階にありました。
ルミは、ふふふと笑った後、階段をのぼりました。でも、お兄ちゃんの部屋の前でたちどまってしまいました。
部屋のドアに、B5判の大きさの白い紙がはってあり、それには、次のようなことが書かれていたからです。
ぼくの部屋にだれも入るな。
とくに、ルミは絶対に入るな。
お兄ちゃんより
ルミは小学校の一年生です。国語の成績が良くて、ひらがなも漢字もよく読めます。板に書いてあった文を読んだ後、ルミはにやりと笑いました。
「漢字、まだ読めないわ」
そう言ってから、お兄ちゃんの部屋のドアを、ルミは音をたてないように静かに開けました。
開けたとたん、ルミは「わあ、すごい」と大声をあげました。
部屋の真ん中にダンボールでつくったお城があったからです。
本箱の上には鎧や兜がおかれ、壁には剣、盾、槍、斧がつるされていました。本物のように見えますが、どれもダンボールでつくられ、色をぬった物でした。
「お兄ちゃんだけで、遊ぶ気でいたんだ」と言って、ルミはほほをふくらませました。
ルミがそんな顔をするのも無理はありません。お兄ちゃんに余っているダンボールはないかと言われた時に、協力して、ルミのおもちゃを入れていた大きなダンボ―ルをお兄ちゃんにあげていたからです。
ルミはすぐに本箱にかけよりました。
そこにあった鎧をきて、兜をかぶり、壁につるさげられていた剣と盾をとると、左手に盾を、右手に剣を持ちました。
ルミはもう勇者です。
押し入れのふすまにお兄ちゃんがかいた竜の絵がはってあります。その絵にむかって、ルミは叫びました。
「竜王、ゆるさんぞ。王女さまを返せ」
お兄ちゃんのかいた竜はルミをにらんできて、王女さまを返そうとはしません。
その上、竜は絵から出てきて、口から火を噴きだしたのです。
「負けるものか」とルミは盾をあげて、竜の火をふせぎます。
竜は長い爪のついた手でルミをおそってきます。それに対してルミは剣をふり続けました。でも、竜は王女さまを返してはくれません。
ルミは、王女さま役ができる人形を自分の部屋から持ってくればよかったと、思いだしました。
そんな時に、王女さまが現れました。
猫のシロです。部屋のドアが少し開いていて、ルミが大声で騒いだので、やってきたのでしょう。
シロは名前のとおり、真っ白な猫でしたので、王女さま役にはぴったりの猫です。でも、雄猫でした。
「王女さま、逃げ出してこられましたか」と、ルミが声をかけますと、シロは「にゃ~」とこたえてくれました。ダンボールの城を見つけると、シロは城をめさじて歩きだし、その中に飛び込んでいきました。
「王女さまが、城にもどられたぞ。私たちも退却だ」
そう言ったルミも城の中に飛び込みました。
シロは少し迷惑そうな顔をしていましたが、すぐに体を丸めて眠り出しました。
ルミもかなり動きまわったので、少し疲れていました。
「少し休憩だわ」と言って、ルミはシロをだき、その温かさでいつの間にか眠ってしまいました。
どのくらい、時間がたったでしょうか?
「おい、ルミ、ルミ」
ルミを呼ぶ声が聞こえてきました。|目《《め》を開けると、大きな顔が、ルミをみつめています。
竜でしょうか?
いえ、違います。お兄ちゃんでした。
「なに、やっているんだ!」
「シロを追ってきたら、ここに入ったので、いっしょに寝てただけだよ」
「鎧と兜をつけてか」
ルミは城から出ると、鎧と兜をぬいで、お兄ちゃんに返しました。
「ごめんだろ。ごめん」
「ごめんなさい」
「ちょっと、まて」
そう言ったお兄ちゃんは、サインペンで、ルミの額に何か書いていました。
「さあ、おやつの時間だって、お母さんが言っているぞ」
お兄ちゃんは部屋から出ると下におりていきました。
あわてて、お兄ちゃんの後についてルミも下におりました。
ルミはおやつの前に手を洗うことにしていますので、洗面台に行きました。洗面台の鏡を見ると自分の額に×と書かれていました。手を洗った後、顔も洗ってみましたが、油性のサインペンで書かれていたので、洗ってもおちません。
居間に行くと、お兄ちゃんはすでにおやつのプリンを食べ出していました。
「お兄ちゃん、額の×はなに?」
「決まっているだろう。てんばつだよ」
「てんばつ?」
ルミは首をかしげました。
終
お母さんは居間にいてテレビで韓国ドラマを見ています。これだけは、絶対に見ると決めているようで、この時間はテレビの前からお母さんは動こうとはしません。
ルミがお兄ちゃんの部屋に入りこむには、絶好のチャンスです。
そして、お兄ちゃんの部屋は二階にありました。
ルミは、ふふふと笑った後、階段をのぼりました。でも、お兄ちゃんの部屋の前でたちどまってしまいました。
部屋のドアに、B5判の大きさの白い紙がはってあり、それには、次のようなことが書かれていたからです。
ぼくの部屋にだれも入るな。
とくに、ルミは絶対に入るな。
お兄ちゃんより
ルミは小学校の一年生です。国語の成績が良くて、ひらがなも漢字もよく読めます。板に書いてあった文を読んだ後、ルミはにやりと笑いました。
「漢字、まだ読めないわ」
そう言ってから、お兄ちゃんの部屋のドアを、ルミは音をたてないように静かに開けました。
開けたとたん、ルミは「わあ、すごい」と大声をあげました。
部屋の真ん中にダンボールでつくったお城があったからです。
本箱の上には鎧や兜がおかれ、壁には剣、盾、槍、斧がつるされていました。本物のように見えますが、どれもダンボールでつくられ、色をぬった物でした。
「お兄ちゃんだけで、遊ぶ気でいたんだ」と言って、ルミはほほをふくらませました。
ルミがそんな顔をするのも無理はありません。お兄ちゃんに余っているダンボールはないかと言われた時に、協力して、ルミのおもちゃを入れていた大きなダンボ―ルをお兄ちゃんにあげていたからです。
ルミはすぐに本箱にかけよりました。
そこにあった鎧をきて、兜をかぶり、壁につるさげられていた剣と盾をとると、左手に盾を、右手に剣を持ちました。
ルミはもう勇者です。
押し入れのふすまにお兄ちゃんがかいた竜の絵がはってあります。その絵にむかって、ルミは叫びました。
「竜王、ゆるさんぞ。王女さまを返せ」
お兄ちゃんのかいた竜はルミをにらんできて、王女さまを返そうとはしません。
その上、竜は絵から出てきて、口から火を噴きだしたのです。
「負けるものか」とルミは盾をあげて、竜の火をふせぎます。
竜は長い爪のついた手でルミをおそってきます。それに対してルミは剣をふり続けました。でも、竜は王女さまを返してはくれません。
ルミは、王女さま役ができる人形を自分の部屋から持ってくればよかったと、思いだしました。
そんな時に、王女さまが現れました。
猫のシロです。部屋のドアが少し開いていて、ルミが大声で騒いだので、やってきたのでしょう。
シロは名前のとおり、真っ白な猫でしたので、王女さま役にはぴったりの猫です。でも、雄猫でした。
「王女さま、逃げ出してこられましたか」と、ルミが声をかけますと、シロは「にゃ~」とこたえてくれました。ダンボールの城を見つけると、シロは城をめさじて歩きだし、その中に飛び込んでいきました。
「王女さまが、城にもどられたぞ。私たちも退却だ」
そう言ったルミも城の中に飛び込みました。
シロは少し迷惑そうな顔をしていましたが、すぐに体を丸めて眠り出しました。
ルミもかなり動きまわったので、少し疲れていました。
「少し休憩だわ」と言って、ルミはシロをだき、その温かさでいつの間にか眠ってしまいました。
どのくらい、時間がたったでしょうか?
「おい、ルミ、ルミ」
ルミを呼ぶ声が聞こえてきました。|目《《め》を開けると、大きな顔が、ルミをみつめています。
竜でしょうか?
いえ、違います。お兄ちゃんでした。
「なに、やっているんだ!」
「シロを追ってきたら、ここに入ったので、いっしょに寝てただけだよ」
「鎧と兜をつけてか」
ルミは城から出ると、鎧と兜をぬいで、お兄ちゃんに返しました。
「ごめんだろ。ごめん」
「ごめんなさい」
「ちょっと、まて」
そう言ったお兄ちゃんは、サインペンで、ルミの額に何か書いていました。
「さあ、おやつの時間だって、お母さんが言っているぞ」
お兄ちゃんは部屋から出ると下におりていきました。
あわてて、お兄ちゃんの後についてルミも下におりました。
ルミはおやつの前に手を洗うことにしていますので、洗面台に行きました。洗面台の鏡を見ると自分の額に×と書かれていました。手を洗った後、顔も洗ってみましたが、油性のサインペンで書かれていたので、洗ってもおちません。
居間に行くと、お兄ちゃんはすでにおやつのプリンを食べ出していました。
「お兄ちゃん、額の×はなに?」
「決まっているだろう。てんばつだよ」
「てんばつ?」
ルミは首をかしげました。
終
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