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一章 同格の管理者
48話 進出
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「ありがとう無月、落ち着いた」
「そっか」
「紫蘭も、怖がらせたな」
俺は雪姫を抱えている皐月の所に向かい、コートを脱いで雪姫に被せる。
これで、このダンジョンは完全に終わった。
俺の中のアイツと無月が戦った影響で、このダンジョンの内部はボロボロだろう。
「何時に成ったら管理室に行ける?」
攻略し、一定時間留まったら心臓部に強制転移される仕組みがある。
管理者としての力を与えた神が違うから、そう言うルールも違うのかもしれない。
そうなると面倒だな。
「金栗、出て来てくれるとありがたいんだけど」
楽だからな。
しかし、返答はなかった。
「無月、分かる?」
「さっき気配をきちんと確認したからな。任せろ!」
無月は空間のさらに向こう、次元を感じ取る事が可能だ。
皐月と魂で繋がっている無月は、それを使ってダンジョンからダンジョンを移動した。次元を通って来たのだろう。
帰ったら無月が突き破った所を修復しないとな。秋がやってるか?
「管理室みっけ。行けるよ?」
「分かった。皐月、動ける?」
「少しなら」
「じゃ、皆を連れてダンジョンに戻って」
「分かったけど、この女はどうする?」
「一応、診てもらって。その後は、申し訳ないけどここの病院のベットにでも寝かせておいて。それと、秋に頼んで非戦闘員のモンスターを複数呼んでくれ。その者達に内部の人達を運び出して、病院で寝かせて。気絶にはスペルカードを作成して使って良いと言っておいて」
「分かった!」
非戦闘員ならいくら出しても問題なし。
非戦闘員と言っても、底力は一般人よりも遥かに上だが。家事などに特化したモンスターじゃない限りは問題なし。
「じゃ、行くか」
「しっかり捕まってね。置いてかれると帰れないから」
「分かってるさ」
無月が虚無エネルギーを使って空間に穴を空けて、次元の狭間を作り、潜り込む。
次元を移動中、俺は気になっていた事を聞く。
「ゼンは怒ってなかった?」
一層のボスである。そこで敵を相手したのなら、きっと迷惑が掛かっている筈だ。
あの子はあそこから基本的に動けない。
「⋯⋯怒ってなかったよ」
「そっか怒ってたか」
次元移動が終わり、外に出るとそこには金栗が頭を抱えていた。
「ありえない。なんだよ。なんなんだよ。こんなの知らないぞ!」
「アビリティで知れる事は少ないよ。自分のアビリティに驕って自信過剰になったお前の末路だ」
金栗は俺達に振り返り、叫んで来る。
「そもそもありえないだろ! なんで神約に反しているのに神が干渉して来ないんだよ! 僕のアビリティは基本的になんでも知る事が出来る! お前の性格も人格も歴史も家庭環境まで!」
プライベート⋯⋯まぁ今はいいや。
「歴史、か? それで、無月の事を知らないって事はそこまで性能は良くないんだろ」
「ふざけるな! ふざけるんじゃない! こんなの、認めないぞ!」
「誰も認めねぇよ。管理者同士の争いは当人同士の責任だ。そこに周りは関係ない。さて、お前が広めたデマを訂正して貰うぞ」
「何がデマだ! お前が居るから、起こったんだ!」
「お前が利用して、結果的に起こった事だろ。俺のせいにするな」
「ふざけるな! あ、あぎゃ」
「マスター様!」
俺の前に出る無月。
金栗の内部から炎が漏れ出る。人体発火現象では無い。
内部に炎が顕現され、内部から燃やされているんだ。
「無月?」
「無理だ。これは能力でも異能でもない。さらに上、神の力だ」
「何故だ! や、止めろおおおお!」
金栗はただの駒、道具って訳ね。
利用されて、負けて、そしてはいポイ捨てってか。
こうなったら俺達にどうする事も出来ないし、神達からの干渉が無い事からも、こいつから得られる情報はほぼ無いのだろう。
「哀れだな。俺達に喧嘩を売らず、一管理者として過ごしていたら、お前──貴方は俺を超えていた」
「だ──で⋯⋯」
「せいぜいあの世に逝ける事を祈ってるよ」
目の前で人が死んでいるのに、心が動かされないのは、なんと言うか、寂しな。
金栗が炎に包まれ、動かなく成ったのと同時に、近くにいたサポーターが半透明に成って行く。
そして、ダンジョンの崩壊が始まる。
激しい揺れ、崩れていく壁に天井。
「帰るか。無月、今から忙しく成るぞ」
「忙しく成るのはマスター様⋯⋯秋ちゃんだな」
「否定しない」
「否定出来ない、でしょ?」
秋、頑張ってくれ。
◆
あれから二週間、俺は純粋悪魔『ルシファー』のルシと純粋天使『ウリエル』のリエと共にとある場所に来ている。
ちなみに二人はとても仲が悪い。元々ルシも天界出身の天使なのだが、神に成り代わろうとしてフルボッコにされ、悪魔に堕ちた。故に、天界出身の純粋天使であるリエはルシを嫌っている。
そんな二人を連れているのは、印象が強いからだ。
日本の人達で魔界云々を信じる、或いは知っている人はどれくらい居るかは知らないが。
黒い服を着込んだ人に案内され、俺達は国会議事堂に足を踏み入れた。
代表となった与党の方々。総理や天皇まで居る。天皇が関わって良いのかと言う疑問は⋯⋯まぁ詳しくないし、良いや。
「政府の皆様、この度閣議を開き、わたくしめを参加させて頂き、感謝致します」
俺は頭を下げる。
後ろに控えているルシとリエも頭を下げる。めっちゃ嫌そうだった。
ルシは合計六枚の堕天使の翼を、リエは天使の翼を同じように持っている。邪魔じゃないだろうか?
と、今の俺は完全武装だ。
紫蘭はスペルカードにしてしまい、防具である服も本来の服装だ。フード付きコートだが、前のとは性能が全然違う。
前のは皐月が回収し忘れ、雪姫が持っている。あの日以来、気まづいけど。
学校でたまたま会っても、目を合わせない。攻略パーティの方も、今は活動中止中だ。
さて、今の俺は認識阻害も発動されているので、俺が俺だとバレる心配はないだろう。
今回ここに来たのは今後の重要な事を、日本と言う国に認めて貰う為だ。
用意された席に座り、二人は後ろに立っている。
「さて、前にもお伝えした通り、今回は『迷宮都市』について、お答えを聞きたい」
「そっか」
「紫蘭も、怖がらせたな」
俺は雪姫を抱えている皐月の所に向かい、コートを脱いで雪姫に被せる。
これで、このダンジョンは完全に終わった。
俺の中のアイツと無月が戦った影響で、このダンジョンの内部はボロボロだろう。
「何時に成ったら管理室に行ける?」
攻略し、一定時間留まったら心臓部に強制転移される仕組みがある。
管理者としての力を与えた神が違うから、そう言うルールも違うのかもしれない。
そうなると面倒だな。
「金栗、出て来てくれるとありがたいんだけど」
楽だからな。
しかし、返答はなかった。
「無月、分かる?」
「さっき気配をきちんと確認したからな。任せろ!」
無月は空間のさらに向こう、次元を感じ取る事が可能だ。
皐月と魂で繋がっている無月は、それを使ってダンジョンからダンジョンを移動した。次元を通って来たのだろう。
帰ったら無月が突き破った所を修復しないとな。秋がやってるか?
「管理室みっけ。行けるよ?」
「分かった。皐月、動ける?」
「少しなら」
「じゃ、皆を連れてダンジョンに戻って」
「分かったけど、この女はどうする?」
「一応、診てもらって。その後は、申し訳ないけどここの病院のベットにでも寝かせておいて。それと、秋に頼んで非戦闘員のモンスターを複数呼んでくれ。その者達に内部の人達を運び出して、病院で寝かせて。気絶にはスペルカードを作成して使って良いと言っておいて」
「分かった!」
非戦闘員ならいくら出しても問題なし。
非戦闘員と言っても、底力は一般人よりも遥かに上だが。家事などに特化したモンスターじゃない限りは問題なし。
「じゃ、行くか」
「しっかり捕まってね。置いてかれると帰れないから」
「分かってるさ」
無月が虚無エネルギーを使って空間に穴を空けて、次元の狭間を作り、潜り込む。
次元を移動中、俺は気になっていた事を聞く。
「ゼンは怒ってなかった?」
一層のボスである。そこで敵を相手したのなら、きっと迷惑が掛かっている筈だ。
あの子はあそこから基本的に動けない。
「⋯⋯怒ってなかったよ」
「そっか怒ってたか」
次元移動が終わり、外に出るとそこには金栗が頭を抱えていた。
「ありえない。なんだよ。なんなんだよ。こんなの知らないぞ!」
「アビリティで知れる事は少ないよ。自分のアビリティに驕って自信過剰になったお前の末路だ」
金栗は俺達に振り返り、叫んで来る。
「そもそもありえないだろ! なんで神約に反しているのに神が干渉して来ないんだよ! 僕のアビリティは基本的になんでも知る事が出来る! お前の性格も人格も歴史も家庭環境まで!」
プライベート⋯⋯まぁ今はいいや。
「歴史、か? それで、無月の事を知らないって事はそこまで性能は良くないんだろ」
「ふざけるな! ふざけるんじゃない! こんなの、認めないぞ!」
「誰も認めねぇよ。管理者同士の争いは当人同士の責任だ。そこに周りは関係ない。さて、お前が広めたデマを訂正して貰うぞ」
「何がデマだ! お前が居るから、起こったんだ!」
「お前が利用して、結果的に起こった事だろ。俺のせいにするな」
「ふざけるな! あ、あぎゃ」
「マスター様!」
俺の前に出る無月。
金栗の内部から炎が漏れ出る。人体発火現象では無い。
内部に炎が顕現され、内部から燃やされているんだ。
「無月?」
「無理だ。これは能力でも異能でもない。さらに上、神の力だ」
「何故だ! や、止めろおおおお!」
金栗はただの駒、道具って訳ね。
利用されて、負けて、そしてはいポイ捨てってか。
こうなったら俺達にどうする事も出来ないし、神達からの干渉が無い事からも、こいつから得られる情報はほぼ無いのだろう。
「哀れだな。俺達に喧嘩を売らず、一管理者として過ごしていたら、お前──貴方は俺を超えていた」
「だ──で⋯⋯」
「せいぜいあの世に逝ける事を祈ってるよ」
目の前で人が死んでいるのに、心が動かされないのは、なんと言うか、寂しな。
金栗が炎に包まれ、動かなく成ったのと同時に、近くにいたサポーターが半透明に成って行く。
そして、ダンジョンの崩壊が始まる。
激しい揺れ、崩れていく壁に天井。
「帰るか。無月、今から忙しく成るぞ」
「忙しく成るのはマスター様⋯⋯秋ちゃんだな」
「否定しない」
「否定出来ない、でしょ?」
秋、頑張ってくれ。
◆
あれから二週間、俺は純粋悪魔『ルシファー』のルシと純粋天使『ウリエル』のリエと共にとある場所に来ている。
ちなみに二人はとても仲が悪い。元々ルシも天界出身の天使なのだが、神に成り代わろうとしてフルボッコにされ、悪魔に堕ちた。故に、天界出身の純粋天使であるリエはルシを嫌っている。
そんな二人を連れているのは、印象が強いからだ。
日本の人達で魔界云々を信じる、或いは知っている人はどれくらい居るかは知らないが。
黒い服を着込んだ人に案内され、俺達は国会議事堂に足を踏み入れた。
代表となった与党の方々。総理や天皇まで居る。天皇が関わって良いのかと言う疑問は⋯⋯まぁ詳しくないし、良いや。
「政府の皆様、この度閣議を開き、わたくしめを参加させて頂き、感謝致します」
俺は頭を下げる。
後ろに控えているルシとリエも頭を下げる。めっちゃ嫌そうだった。
ルシは合計六枚の堕天使の翼を、リエは天使の翼を同じように持っている。邪魔じゃないだろうか?
と、今の俺は完全武装だ。
紫蘭はスペルカードにしてしまい、防具である服も本来の服装だ。フード付きコートだが、前のとは性能が全然違う。
前のは皐月が回収し忘れ、雪姫が持っている。あの日以来、気まづいけど。
学校でたまたま会っても、目を合わせない。攻略パーティの方も、今は活動中止中だ。
さて、今の俺は認識阻害も発動されているので、俺が俺だとバレる心配はないだろう。
今回ここに来たのは今後の重要な事を、日本と言う国に認めて貰う為だ。
用意された席に座り、二人は後ろに立っている。
「さて、前にもお伝えした通り、今回は『迷宮都市』について、お答えを聞きたい」
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