上 下
65 / 86
二章 能力専門学校

15話 赤グループトップ

しおりを挟む
「これで俺らの株も上がったな!」

「だな!」

 俺は二人の前に立つ。黄雅は回収して近くに寝かせている。

「なんだ、お前? その、仮面」

「変な仮面の奴だ! 最近野良狩りを行っている!」

「変な仮面言うなよ。ねぇ君達。魔道具なんて何処で手に入れたの。正直に答えてよ」

「はぁ? 言う訳ねぇよ」

「仮面の奴だ。本気で行くぞ!」

 十本の指に全て指輪を嵌める。それぞれ色が違う所を見ると、だいたい予想は出来る。

 だが、あの洗脳のような外見的特徴が全く出ない魔道具は使って無いようだ。

「死ね! オールショット!」

 様々な魔法が俺を殺す勢いで襲って来る。

 殺す勢い、と言っても世間一般的な目線での話しだが。

「ふざけんなよ。全く、スペルカード発動!」

 俺が使ったスペルカードは『吸収の盾』である。

 魔力を吸収しながら防ぐ魔法的な盾であり、魔法に対してはかなり有効な盾だ。

 魔法を防いだのと同時に俺は地を蹴って二人に接近する。

「おらよ!」

 手前の奴が回し蹴りを放って来るので、掌で受け止めて捕まえ⋯⋯れなかった。

「速いな」

 突然の加速。アビリティを使ったような前兆はないので、これも魔道具か。

「くらえ! ダイヤモンドパーンチ!」

「今時のダイヤはそこまで高価でも硬くもねぇよ!」

 敵の相棒の拳を蹴りで打ち返す。

 地に着いている足を使って前方に出て、蹴った後の足を引いて、再び放つ。

「ぐっ」

 相手は防御するが、骨が折れる音を響かせて遠くに吹き飛ぶ。

「なっ!」

「防御系の魔道具も使ってたか? さーて、次はお前だな。正直に話したら、手加減してやるよ」

 勿論、手加減をさらに加えると言う意味だがな。

 俺が本気で一般人を相手する訳ない。

「言う訳ないだろ! 死ね!」

 魔法を放って来るが、盾を再び出現させて防ぐ。

「なんなんだよ、お前!」

「ただ平和を目指す人⋯⋯!」

 俺は大きく跳躍して屋上まで跳んだ。

「おい! そこで何を⋯⋯誰も、居ない?」

 教師連中が来たからだ。

 黄雅は影に潜んでいた、犯人を捕えれなかったシャドウキャットが俺の影に運んでいる。

 あの不良二人は普通に居るのに、教師連中は見えてないようだった。

「あの先生達はウチのか。⋯⋯アビリティは、持ってない人達だったな」

 透明化か認識阻害などの、相手から認識されなくなる系統のアビリティが使える魔道具も持っているようだ。

「魔道具なんでもありかよ! 俺のアイデンティティを奪うなよ!」

 能力の多様さは俺の特権だろ!

 はぁ。めぼしい情報は手に入らなかったな。

「また、日を改めるか、それとも今日中に闇討ちするか、どっちにするか」

 ま、まずは昼食を食べようか。

 ◆

「雪っちの卵焼き美味しそうだね!」

「そうですか? お一つどうぞ」

「良いの! ありがとう!」

 大和は遠慮し、結局千秋は雪姫と二人で弁当を食べている。

 場所は教室ではなく、外のベンチだ。

 他の生徒もちらほら居る。

 学校内でも美人、今では尚更癒しとなっている二人はとても目立っていた。

「あーん! ん~甘い! あ、じゃあこっちは春巻き! どうぞ」

「では、頂きます」

 互いに弁当の中身を与える。

 そんな中に一人の赤い髪をした人が二人に話しかけた。

「ねぇねぇ君達」

「はい? ⋯⋯」

 千秋は一瞬で目を細め、警戒した。

 制服が加藤並と言う事で警戒していたのである。

 教室の生徒が減って行く以外に被害がなかった雪姫は目立った警戒はしていなかった。

 または、アドベンチャーラーとしての経験故か。

「いや、ちょっと雨宮君の事に付いて聞きたくてね」

「なんで、天音を?」

「ん~ちょっと気になってね」

「どうして?」

「それは、これ」

 一枚のスペルカードを千秋に示す。千秋は小さく「スペルカード」と呟いた。

 その呟きには驚愕が含まれていた。

 そのスペルカードは青界のパンチから千秋を守った時のフェイクで使った物だった。

「これって、ただの物じゃないよね? 気になってね」

「さ、さぁ。私には分かりませんね」

「千秋さんの意見に同意します」

「そっか~。君ら仲良いと思ったけど、そうでも無いようだね」

「何を根拠に」

 少しムスッとする千秋。千秋と天音は子供の頃からずっと一緒の幼馴染だ。

 助け助けられの関係、仲が良くないと言われるのは心外だった。

「まぁ、色々と知らないようだからね。じゃあね。邪魔した」

 ◆

 今日の帰りは一人である。

 帰りに寄りたい場所があるので、一人で帰る事にした。

 千秋の方にはきちんと護衛を隠している。

「さーて、行きますか」

「あのあの。雨宮君」

「はい。どちら様⋯⋯」

 振り返ると、そこには赤髪の男が立っていた。

 すぐにバックステップして距離をとる。

 その目立った赤髪、赤グループのボス、赤谷せきや

「何用ですか?」

「ん~そうだね。単刀直入に言うね。死んでよ、迷宮都市の管理者さん!」

「お前もかああああ!」

 なんでこうも秘密ってのは知られているのかね!

「てか、お前中立じゃないのか!」

「上からの命令なのでね」

 赤谷はビー玉を二つ取り出して、俺に向かってゴミを投げるように、ひらりと手を開いて投げた。

 そのビー玉の動きは投げ方からは考えられない速度で俺に接近した。

 手で受け止めようとしたが、何かとてつもなく嫌な感じがして、回避行動を取った。

 だが、判断が遅く、少し頬を掠め、切れた。

 そう、切れた。

「は?」

 浅く、血も少しか出ない。今の装備はただの制服。なんの効果も無い制服。

 だが、俺の肉体はモンスターと同等に扱われても問題ない感じだ。

 それを適当に放ったビー玉で切られるか?

 ビー玉は赤谷の手の中に戻って行く。

「はは。驚いているようだね」

「お前が、一番魔道具の事に付いて詳しそうだな」

「どうだろうね?」

 俺は一枚のスペルカードを取り出した。

「悪いけど、ここじゃ戦えない」

 付いて来るならこい!

「発動!」

 転移のスペルカードを使って、俺は河川敷に移動する。

 ここなら被害も最小限で抑えられて足場も安定している。

「はぁ。予想通りと言うかなんと言うか、転移系の魔道具も持っているのか」

「見た目には出てないけどね」

「だから厄介なんだよ」

 何を持っているのかも分からない。ビー玉も魔道具かもしれない。

 何も分からないが、流石に刀を出す訳にもいかない。

 相手のように何かカモフラージュ出来る武器をこれから持っておけば良かった。

「まぁ良いや。スペルカードあるし」

「ああ、そうそう。これ、返すね」

 赤谷が飛ばすのは、前に青界に奪われたスペルカードだった。

「ちょ、なんで!」

 なんで腐って爆発してないのさ!

 普通なら既に腐って周囲に魔力を放出している筈だ。

 なのに、なんで腐ってないんだよ。

「ほんと、金栗二号だな。黒幕さんはよ!」

 俺はスペルカードを炎を飛ばすスペルカードで処分した。

 流石にあれを受け取るのは怖い。

 さて、きちんと情報を貰おうか。
しおりを挟む

処理中です...