10 / 75
一章 転生と心
お仕事始めます
しおりを挟む
ヒスイの交渉の元、この豪華な客室には貴族の娘とその両親、ヒスイと俺しか居ない。
ゆっくりとマントを外すと、目の前の三人が驚愕する。
「わ、わたくしです」
「違う。これは俺の娘では無い!」
「落ち着いてください。それは事実です。この人は私の使役獣でございます」
ヒスイが淡々と説明をする。今度出発する馬車のダミーに俺を入れる事を。
「確かに、その方法なら確実性は上がるだろう」
「どうでしょうか? 今回はこちらからお話を持ちかけましたので、予定していた金額寄りも割引させて頂きます」
「うーん。今回も大丈夫、と言う保証もない。保険はある方が良い、か」
父親がそうやって考える素振りをする。もう交渉はヒスイに任せて、俺はこの部屋を見渡した。
凄い豪華だ。大きな鏡まである。
「あの、わたくしの体でうろちょろとしないでくださいませんか?」
「分かりました」
ちなみに彼女の名前はエリスらしい。
交渉は淡々と進み、予定日を決めて俺達は解散した。
報酬はきちんと役目を果たしてから。
「にしても、他国に行く理由が婚約の話だとはな」
「色々あるんですね~」
なんでも、この国にいる同じ公爵家から婚約の話は持ちかけられていた。
だが、元々他国の伯爵家と良い感じで、既に婚約の話も進めていたエリス達は断り続けていた。
しかし、その公爵家は悪名高く、何するのか分からなく、結婚を推し進めようとの事だった。
その諸々の作業の為に行くらしい。
「国際パーティで知り合って純愛結婚、貴族では珍しいパターンですね。初々しいです」
「あのエリスって子。かなり若そうだったぞ」
「エリス様、ね? 確か11歳だった気がします」
「お、おお」
わけぇ。
そして、その日が来たので、俺はエリスの見た目で馬車に乗り込み、揺られている。
そして、冒頭に繋がるのだ。
◆
ヒスイの姿で出た俺を警戒する盗賊共。
殺すのは良くないらしい。
「傭兵か!」
見た目的に傭兵だと思われた俺に向かってクロスボウが放たれる。
高速で放たれたであろう矢もあのうさぎと比べたら遅い。
右腕の皮膚を鱗へと変えて矢を弾いた。
「なにっ!」
驚愕している盗賊の思考を置いて一瞬で肉薄し、顔面に向かって拳を突き出した。
骨を砕く様な感覚を感じながら、吹き飛ばした。
「脆い」
別にイキってる訳では無い。本当に脆いのだ。
日本の成人男性と比べたら硬いのだろうが、あの野生溢れる森と比べたら脆い。
力加減が難しいな。
「と」
「なんだと!」
「殺気が出過ぎ」
ノールックで剣を躱した。
肘で顔面を殴って気絶させた。骨は普通に砕けてるし、鼻血が出ている。地面に倒れた。
思いの外人間が弱いんだが?
「まずいなぁ。これじゃ修行にも成らない」
「バカにすんなよバケモンが! アタシ達はレッドウルフ盗賊団第三軍! 負ける訳がないよの!」
「ちょい待て!」
女が叫び、片手斧を持って走って来る。
「レッドウルフ盗賊団⋯⋯だと?」
「大盗賊の名前でビビったか!」
「名前、ダサくね?」
「死ねっ!」
大きのか。知らんよこの世界の常識なんて。
「なん、だと」
片手斧が首に向かって振るわれたので、首を鱗に変更させた。
すると、簡単に弾けた。金属音が鼓膜を震わせた。
ちょっとうるさいね。
「悪いが、女だからって手加減する常識は備わってないから」
腹を蹴り飛ばし、吹き飛ばして地面を転がせた。
盗賊達が一気に迫って来るが、足をうさぎとリザードンマンを配合させた感じのにして、一気に加速する。
アクション映画顔負けの足技で吹き飛ばし、骨を砕いて気絶させる。
別に殺してもなんとも思わないが、捕らえた方が良いらしいので手加減する。
⋯⋯あれ? 人を殺してもなんとも思わない?
なんでだ?
俺は元人間で、人間を殺すのは『普通』躊躇う。
「普通って、なんだろ」
地面には血の海が出来、赤色の盗賊達が転がっていた。
無意識にそう呟いていた俺は隙だらけ。普通に油断していた。
だから、この不意打ちを受けてしまった。
「油断したなクソ野郎!」
左肩から切断された。左腕が宙を舞う。
「武技、断切だ! 痛いだろ! 仲間が受けた痛みはそれ以上だ!」
「すまん痛くは無い」
舞った左腕を右手で掴み取った。お、感覚的に分かる。
これもきちんと『使える』ようだ。
にしても武技、ね。
相手の目に変えてスキルを確認すると、スキルにはきちんと【断切】が存在した。
現地人に取って、スキルは武技などの認識らしい。
これは良い情報だな。
「は、は?」
「今更驚く事か?」
左腕を刀へと変更させた。きちんと腕を握ってる感覚がする。
意味が分からない。
腕を握ってる感覚だが、刀を掴んでいる感覚もするのだ。
不思議だな。
「良いスキルをありがとな」
俺はさっき見たスキルの動きを模倣して扱う。
理解度が低いせいか、大した力は無いが、刀の特徴とドッペルゲンガーの身体能力で相手の右腕を簡単に切断した。
「あああああああああ!」
血を噴射しながら叫び散らし、地面を転がる。
のたうち回る盗賊を見下ろしながら、塚の部分を切られた部分に押し付ける。
「お、行ける」
そのままくっ付けて左腕を作り直す。
魔力を込めれば完治する。
【自己再生】のスキルの力も利用する。スライムと上級聖水を配合した時に出来た魔物のスキルである。
使用方法は再生させたい部分に魔力を流すだけだ。
それで再生する。
「おいおい。随分派手にやってくれたね~」
大方仕事を終えて一息ついていると、奥からのっそりと歩いて来る男が居た。
筋肉すげぇー。
目を変えてスキルを確認する。
「多いな」
「全員生きてるのか。ま、良いや。お前、殺す」
相手は武術家らしく、武器は素手だ。
鷹の様な鋭い目を俺に向けながら、ジリジリと距離を縮めて来る。
俺も警戒態勢に入る。
地面に転がっている有象無象とは違うただならぬ気配を感じる。
だが、技術を向上させるチャンスでもある。
「にしても、男でポニーテールって初めて見たな」
「ポニーテール?」
「気にするな。来い」
「言われなくても」
警戒して相手をしっかり見ていた。だが、奴は気がついたら目の前に迫っていた。
全く気づかなかった。見ていたのに、接近している事に気づかなかった。
「はっ!」
薄ら笑いを浮かべている男は俺の目の前でバチンと手を合わせた。
一瞬で弾かれた手の振動は俺の鼓膜から脳に一瞬で伝わり、ピリッと来た。
「っ!」
「動かないだろ」
なんと言えばいいのだろうか?
まぁ、簡単に言えば猫騙しである。
体が動かない妙な感覚に陥る。そして、突き出される拳。
その拳には魔力とは違う何かが乗って蒼色のオーラを纏っていた。
ゆっくりとマントを外すと、目の前の三人が驚愕する。
「わ、わたくしです」
「違う。これは俺の娘では無い!」
「落ち着いてください。それは事実です。この人は私の使役獣でございます」
ヒスイが淡々と説明をする。今度出発する馬車のダミーに俺を入れる事を。
「確かに、その方法なら確実性は上がるだろう」
「どうでしょうか? 今回はこちらからお話を持ちかけましたので、予定していた金額寄りも割引させて頂きます」
「うーん。今回も大丈夫、と言う保証もない。保険はある方が良い、か」
父親がそうやって考える素振りをする。もう交渉はヒスイに任せて、俺はこの部屋を見渡した。
凄い豪華だ。大きな鏡まである。
「あの、わたくしの体でうろちょろとしないでくださいませんか?」
「分かりました」
ちなみに彼女の名前はエリスらしい。
交渉は淡々と進み、予定日を決めて俺達は解散した。
報酬はきちんと役目を果たしてから。
「にしても、他国に行く理由が婚約の話だとはな」
「色々あるんですね~」
なんでも、この国にいる同じ公爵家から婚約の話は持ちかけられていた。
だが、元々他国の伯爵家と良い感じで、既に婚約の話も進めていたエリス達は断り続けていた。
しかし、その公爵家は悪名高く、何するのか分からなく、結婚を推し進めようとの事だった。
その諸々の作業の為に行くらしい。
「国際パーティで知り合って純愛結婚、貴族では珍しいパターンですね。初々しいです」
「あのエリスって子。かなり若そうだったぞ」
「エリス様、ね? 確か11歳だった気がします」
「お、おお」
わけぇ。
そして、その日が来たので、俺はエリスの見た目で馬車に乗り込み、揺られている。
そして、冒頭に繋がるのだ。
◆
ヒスイの姿で出た俺を警戒する盗賊共。
殺すのは良くないらしい。
「傭兵か!」
見た目的に傭兵だと思われた俺に向かってクロスボウが放たれる。
高速で放たれたであろう矢もあのうさぎと比べたら遅い。
右腕の皮膚を鱗へと変えて矢を弾いた。
「なにっ!」
驚愕している盗賊の思考を置いて一瞬で肉薄し、顔面に向かって拳を突き出した。
骨を砕く様な感覚を感じながら、吹き飛ばした。
「脆い」
別にイキってる訳では無い。本当に脆いのだ。
日本の成人男性と比べたら硬いのだろうが、あの野生溢れる森と比べたら脆い。
力加減が難しいな。
「と」
「なんだと!」
「殺気が出過ぎ」
ノールックで剣を躱した。
肘で顔面を殴って気絶させた。骨は普通に砕けてるし、鼻血が出ている。地面に倒れた。
思いの外人間が弱いんだが?
「まずいなぁ。これじゃ修行にも成らない」
「バカにすんなよバケモンが! アタシ達はレッドウルフ盗賊団第三軍! 負ける訳がないよの!」
「ちょい待て!」
女が叫び、片手斧を持って走って来る。
「レッドウルフ盗賊団⋯⋯だと?」
「大盗賊の名前でビビったか!」
「名前、ダサくね?」
「死ねっ!」
大きのか。知らんよこの世界の常識なんて。
「なん、だと」
片手斧が首に向かって振るわれたので、首を鱗に変更させた。
すると、簡単に弾けた。金属音が鼓膜を震わせた。
ちょっとうるさいね。
「悪いが、女だからって手加減する常識は備わってないから」
腹を蹴り飛ばし、吹き飛ばして地面を転がせた。
盗賊達が一気に迫って来るが、足をうさぎとリザードンマンを配合させた感じのにして、一気に加速する。
アクション映画顔負けの足技で吹き飛ばし、骨を砕いて気絶させる。
別に殺してもなんとも思わないが、捕らえた方が良いらしいので手加減する。
⋯⋯あれ? 人を殺してもなんとも思わない?
なんでだ?
俺は元人間で、人間を殺すのは『普通』躊躇う。
「普通って、なんだろ」
地面には血の海が出来、赤色の盗賊達が転がっていた。
無意識にそう呟いていた俺は隙だらけ。普通に油断していた。
だから、この不意打ちを受けてしまった。
「油断したなクソ野郎!」
左肩から切断された。左腕が宙を舞う。
「武技、断切だ! 痛いだろ! 仲間が受けた痛みはそれ以上だ!」
「すまん痛くは無い」
舞った左腕を右手で掴み取った。お、感覚的に分かる。
これもきちんと『使える』ようだ。
にしても武技、ね。
相手の目に変えてスキルを確認すると、スキルにはきちんと【断切】が存在した。
現地人に取って、スキルは武技などの認識らしい。
これは良い情報だな。
「は、は?」
「今更驚く事か?」
左腕を刀へと変更させた。きちんと腕を握ってる感覚がする。
意味が分からない。
腕を握ってる感覚だが、刀を掴んでいる感覚もするのだ。
不思議だな。
「良いスキルをありがとな」
俺はさっき見たスキルの動きを模倣して扱う。
理解度が低いせいか、大した力は無いが、刀の特徴とドッペルゲンガーの身体能力で相手の右腕を簡単に切断した。
「あああああああああ!」
血を噴射しながら叫び散らし、地面を転がる。
のたうち回る盗賊を見下ろしながら、塚の部分を切られた部分に押し付ける。
「お、行ける」
そのままくっ付けて左腕を作り直す。
魔力を込めれば完治する。
【自己再生】のスキルの力も利用する。スライムと上級聖水を配合した時に出来た魔物のスキルである。
使用方法は再生させたい部分に魔力を流すだけだ。
それで再生する。
「おいおい。随分派手にやってくれたね~」
大方仕事を終えて一息ついていると、奥からのっそりと歩いて来る男が居た。
筋肉すげぇー。
目を変えてスキルを確認する。
「多いな」
「全員生きてるのか。ま、良いや。お前、殺す」
相手は武術家らしく、武器は素手だ。
鷹の様な鋭い目を俺に向けながら、ジリジリと距離を縮めて来る。
俺も警戒態勢に入る。
地面に転がっている有象無象とは違うただならぬ気配を感じる。
だが、技術を向上させるチャンスでもある。
「にしても、男でポニーテールって初めて見たな」
「ポニーテール?」
「気にするな。来い」
「言われなくても」
警戒して相手をしっかり見ていた。だが、奴は気がついたら目の前に迫っていた。
全く気づかなかった。見ていたのに、接近している事に気づかなかった。
「はっ!」
薄ら笑いを浮かべている男は俺の目の前でバチンと手を合わせた。
一瞬で弾かれた手の振動は俺の鼓膜から脳に一瞬で伝わり、ピリッと来た。
「っ!」
「動かないだろ」
なんと言えばいいのだろうか?
まぁ、簡単に言えば猫騙しである。
体が動かない妙な感覚に陥る。そして、突き出される拳。
その拳には魔力とは違う何かが乗って蒼色のオーラを纏っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
73
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる