万能ドッペルゲンガーに転生したらしい俺はエルフに拾われる〜エルフと共に旅をしながらドッペルゲンガーとしての仕事を行い、最強へと至る〜

ネリムZ

文字の大きさ
31 / 75
二章 獣王国

ヒスイは天才かもしれない

しおりを挟む
 現在、狼が引っ張る馬車に乗っている。俺達が乗る馬車を囲むように四つの馬車が斜めを走っている。
 リオさんは護衛付きでどこかに隠れているらしい。

 ヒスイはフードを羽織って横に座っている。
 偽装の指輪の言う魔道具を使って、エルフの耳を隠して、うさぎの耳を生やしている。
 後は外交官と騎士団長がこの中心の馬車に乗っている。
 前のところでは密かに取引先に向かう為の影武者だった。
 今回の影武者は身代わりだ。念の為の保険。
 盗賊とかも、ここまでの物量なら攻めて来ないだろうと言う力で解決する感じだった。

 リオさんを置いて来た事にヒスイは少し心配していた。
 片道六日の旅。その間、俺はリオさんとして生活する。
 彼女の心に流されないように、気をつける事にしよう。

 馬車以外にも、狼に直接乗って移動している騎士も数人いる。
 遠くからも目立っている事だろう。

「⋯⋯」

 暇だ。
 特にする事もないから本当に暇だ。
 別に眠くなる訳でも無いので、寝ないのだが。
 変身の配合もだいぶ打ち止めになっているし、魔法の練習も外交官達の前では出来ない。
 本当に、暇だなぁ。追い掛けて来ている奴らでも倒すか?
 いや、敵意ってよりも監視な気がするし、止めておくか。
 気配的に人間だけど。

 夜、夜の番は騎士が交代で行うらしい。
 キャンプでの料理が出来る騎士が皆分を作って配っている。

「リオ様。どうぞ」

「感謝致します」

「そちらの⋯⋯」

「エースとお呼びください」

「エースさんも」

「ありがとうございます」

 ヒスイの設定は獣王が密かに鍛えた裏の騎士団のメンバー。
 今日は直接護衛の為に普段は姿を見せないが、見せた。
 そんな感じの設定だ。
 そんな『陰』みたいな奴らが本当にいるのかと、俺は一度王妃に聞いた事がある。
 獣王達(脳筋達)に隠してはいるが、一応いるらしい。
 それが裏騎士団『シノビ』である。そう、忍者達で構築された秘密組織だ。

 そいつらは近くの山で密かに修行しているらしく、俺も姿を見た事がない。
 ちょっとスキルを拝借したいとか、そんな事は思っていた。
 それに、山での動き方や木々の渡り方、機動力を活かした戦い方。
 様々な事を見たかった。でも、それは許可されなかった。

「豚汁か」

 豆腐とかもきちんとある。そしておにぎりだ。
 箸で食べる。ちょっとヒスイの悔しそうな視線が気になった。

 なんだろ?

「私が使い方を教えたかったです」

 変な嫉妬だな。
 何かを狙っている様子でもない。純粋に仲間として、知った知識を披露したかったのだろう。
 だが残念だな。俺はこの世界で誰からも箸の使い方を教わってない。
 だいたい知っている。と言うか、箸の方が使いやすい程だ。
 日本人だからな。そこは仕方ないと思う。

 テントには俺とヒスイだけで入る。
 そこで偽装の指輪を外して、エルフの姿に戻る。

「お疲れ様です」

「うんおつかれ」

「あ、リンゴを貰ったので食べましょう」

 カバンから取り出して、掌に乗せて差し出して来る。
 俺が切るのかと思ったが、違う様子だった。
 目を閉じて体内の魔力を外に放出する。

 ⋯⋯え? いや待て。これは待て。
 ヒスイは言葉を放ってない。口を動かしてないのだ。
 腹話術? 言葉がないのだ。しかし、魔力の流れをきちんと見える。
 つまり、これは、確定だ。

「えい!」

 虚空から水が出現し、それが水流の刃となって皮を切った。
 そのまま半分に切って、種などの処理を行った。
 その半分を渡してくれる。

「え、え? な、なんで」

「ゼラさんって、魔法の練習する時独り言でブツブツ言ってるんですよ」

「まじか」

「まじです。良く分からなかったんですけど、割りとそれっぽい理解はしてたんですよ。そして、密かに試して、出来た訳です」

「ど、どうやって」

「冷気の流れを魔力で操作して、空気中の水分を固めて水に変えます。そしてその水に思考を固めます。そしたらそれを操るイメージをするんですよ。そしたら出来ました」

「なっ!」

 そうか。そうなのか。
 俺は生み出すまでの過程を一つのイメージ魔法だと思っていた。
 例えばマッチの火だ。マッチで火を付けると言う過程で火を出現させる。後は酸素とか付け加えて大きくする。
 しかし、それ以降の行動が出来なかった。どうすれば良いのか分からなかったからだ。
 だが、ヒスイのやり方はその後が明確にあった。

 例えば火。
 マッチで火を付ける。その後は全体や過程に意識を向けるので無く、出現した火だけに意識を向けて固定するのだ。
 すると、きちんと生み出した火を魔法として再現出来る。後は火の形をイメージに沿って変えるだけ。
 全体ではなく、一つ一つの順番でイメージする事でイメージ魔法は完成する。

 マッチなどを知らないからヒスイは水なのだろう。
 ⋯⋯と言うか、俺の独り言でそこまで完成させるとは⋯⋯天才か?

「どうしましたか?」

「あ、いや」

 渡されている半分のリンゴを受け取り、口に運ぶ。
 俺は食べながらもイメージ魔法の練習をする事にした。
 彫刻で土の塊を生成する。
 これならきちんと魔法として可能だ。その後はそれを動かす。

「あ、壊れた」

 ヒスイが呟く。
 無理矢理動かそうとすると、バラバラに崩れて魔力となって空気に散る。
 プラモデルのような形で動けるような見た目で生成する。丸っこい奴と設置部分。
 すると、動かせる。

「おお」

「ま、小さいからなんにも役に立たないけど」

 このやり方なら色々なイメージ魔法が出来る。
 広がるぞ。やる事が広がるぞ。

「ちょ、ゼラさん顔顔」

「あ、すまん」

 楽しみ故か笑みが零れていたようだ。
 反省反省。

「ゼラさんの笑顔でちょっとだけ気持ち悪いんですよね。おやすみなさい」

「⋯⋯気をつけるね」

 俺はヒスイが寝たのを見守り、ネズミとなってテントから密かに出る。
 見張りの騎士達に見つからないように動いて、離れた場所で人間の姿になる。
 そして目を瞑りイメージをする。

 まずはマッチで火を作る。その火にガスなどを適量入れる。
 青い炎がボンッと目の前で出現する。
 しかし、重要なのはそこじゃない。
 火の一番外側に見える層、光だ。
 その光に意識を向けて固定し分離させる。目の前の火が消えて光だけが残る。
 それを広げて、懐中電灯のようにイメージをする。

「出来た」

 懐中電灯のような光が地面を照らす。
 これを応用したら他の魔法も出来るだろう。これなら、実戦でも使える。
 ある程度楽しむ基検証してから戻る事に決めた。
 騎士達に気づかれないように気をつけないとな。
 近くの魔物を窓にしよう。夜行性の魔物は凶暴だからな。馬車に乗っていると、魔物が来ても騎士が倒す。
 故に俺が倒す機会はない。当たり前だが。
 なので、思う存分戦うぞ。さぁ、戦うか魔物達! きちんと騎士達にバレないように気をつける。

 ◆

 一方騎士達。

「なんかあそこチカチカ光ってないか?」

「冒険者とか、商人とかが野宿の準備でもしてるんじゃないか?」

「こんな時間に?」

「それもそうだな。見に行く必要は無いけど、警戒はしておくか。魔物かもしれない」

「夜行性の魔物は強力なの多いからやだなぁ」

「あぁ。リオ様を危険に晒してしまう」

 皆の言うリオは魔法の練習をしていた。近くに居た魔物に向かって。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...