万能ドッペルゲンガーに転生したらしい俺はエルフに拾われる〜エルフと共に旅をしながらドッペルゲンガーとしての仕事を行い、最強へと至る〜

ネリムZ

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二章 獣王国

影武者緊急依頼

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 二日目はなんの問題もなく終わり、そして三日目と突入した。
 最後の会談が行われていた。
 ヒスイは部屋で待っていると、ベッドの下に密かに刻まれていた魔法陣が作動した。
 無色無臭の煙が部屋に充満する。

「う、な、なんか、目眩が」

 エルフの状態でその場に倒れ込む。
 ゆっくりと魔法陣から光が消えて煙がなくなっていく。
 そして、ドアがゆらりと開く。

「エルフ? まぁ良いでしょう。エースさん。申し訳ございません」

 そしてヒスイを抱えて、この部屋から消えて居なくなった。

 ◆

「戻ったぞヒスイ」

 問題なく同盟の話はまとまった。
 翌日はそのまま帰る事になるだろう。

「ヒスイ?」

 ヒスイの気配が、ない?
 あいつはまだ気配を消す練習をしてないし、していたとしても俺が感じない訳がない。
 どこかに出ているとしても、何かしらの置き手紙がある。

「嫌な感じがする」

 っと、危ない。
 一気に殺意が湧いてきた。
 俺とした事が。

「⋯⋯リオさんに成り続けているせいかな? 凄く、心が引っ張られる」

 獣王国の為に何をすれば良いのか、そればかりが頭を埋め尽くす。
 その中にヒスイへの思いが存在する。
 初めての対等な友達。そんな彼女に危害が加えられたと考えるだけで、怒りが心の奥底から滾って来る。

「よろしいでしょうか」

「アイシアさん? どうなさいましたか?」

「はい。実はこの国の、国王直近の騎士が暴走しまして、エース殿が⋯⋯」

 真っ直ぐな瞳で俺を見て来る。
 決意の強い真っ直ぐな目。まるで真実を話しているかのような目。
 だけど、そんな事よりも、ヒスイの情報を知っていると言う事が重要だ。

「案内してください」

「こっちです!」

 本当なら騎士を呼ぶべきなのだろうが、今の俺にそこまでの考えはなかった。
 どうせ自分でなんとかなると、そう思っていたから。
 リオさんの思いが俺の心を侵食して、ヒスイへの依存を大きくしていた。
 その事に気づかないまま、俺は地下牢へと足を運んだ。

「ここです」

 重たい鉄の扉を開けて中に入るように案内して来る。
 気配的にヒスイはいない。そこで俺はようやく冷静さを取り戻した。

 最初から彼女が嘘を付いている事はなんとなく分かっていた。
 彼女の癖、嘘を付く時は人の目を真っ直ぐ見ると言う目。
 だけど、ヒスイがどんな目にあっているのか想像すると深く考える事が出来なかった。

「エース、そこにいるの?」

 俺は中に入った。
 瞬間、アイシアさんが「ごめんなさい」と言う声と共に扉を閉めた。
 だが、完全に閉まる前に棒状の物がそれを阻止する。
 そのまま俺はムカデの姿へと変わって脱出して再びリオさんの姿になる。

「残念だよ」

「くっ」

 拳を突き出すが、流石は副団長、直ぐにバックステップで避けられた。

「どうやって出て来たんですか」

「残念だ。非常に残念だ」

 俺は棒状の物を抜き取った。
 折り畳み式特殊警棒である。
 ドラゴンの素材と他の素材を使った特別性。オーダーメイドだ。
 硬度、重さ、魔力を流せば電気が流れる、俺的に完璧な武器だ。
 畳めるので、どんな姿になっても懐に隠しやすく担ぎやすい。
 ま、流石に限度は存在するけどね。専用のケースである程度のサイズ差なら問題ない。
 収縮自在のケースだ。

「聞いて良い? 君は本当にこの国が嫌いなんだろ?」

「ええそうですよ。この国がだっい嫌いですよ! ですけどね。家族が囮に使われているんです! 従わない訳にはいかないでしょ! だから、許してくださいね」

 鞘から剣を抜いた。
 剣を構えて、表情から一切の余裕が消える。

「憎んでくれても構いません」

「大丈夫。君じゃ勝てない」

 一瞬時間が停止したような感覚に陥り、同士に地を蹴った。
 特殊警棒と剣が衝突して甲高い金属音を鳴り響かせる。

「盗賊に接触したのも君か?」

「本当はそれぞれ違う騎士なんですけどね。自分が担当した人にピンポイントに話しかけて⋯⋯」

「そうか」

 その後は高速の連撃で打ち合う。
 しかし、腕力も速度も俺の方が上だった。さらに、この場所は地下。
 狭いこの空間では長剣は不利だ。

「君がこの国を嫌いなのは分かった。だから、安心して」

「ごふッ!」

 連撃の隙間を塗って腹に向かって棒を突き刺した。
 ドンッと鈍い音を響かせて、鎧を砕いて吹き飛ばした。
 壁にめり込み、前のめりに倒れ込む。

「ごぶつ」

 逆流した血が大量に口から出て来る。
 力量の差は明らかだと言うのに、剣を杖にして立ち上がろうとして来る。
 それ程までにこの国に囚われているのだろう。
 家族の為に嫌でも戦わないといけないらしい。

「王女様なのに、こんなにお強いとは、はは、はぁ」

「もう寝てな。かなりの打撃は与えた。立つのでもやっとだろ」

「⋯⋯リオ様、こんな人の願いは、聞きたくないでしょうが」

 ゆっくりと歩いて行き、近づいていた俺の体に乗っかって来る。
 俺はそれを片腕で支える。
 さっきの一撃は心臓を一瞬潰して停止させた。肺もだ。
 人間の体には大ダメージとなる。
 死にはしないが、意識は朦朧としているだろう。

「家族を、助けてください。戦いたくない、人は沢山、居ます。この国は腐ってる、どうか、どうか!」

「ああ。わかった」

「エルフの子は、王室に⋯⋯」

「そうか、分かった」

 意識が途切れたアイシアさんをゆっくりと冷たい床に下ろした。
 この場所には俺達しかいないようだ。

「最後に反抗した態度をありがとうございます。お陰で、俺の気持ちが固まりました。家族を助け、嫌がる騎士も助ける。そしてこの国を潰す。その依頼、ゼラニウムの名に掛けて、全うします」

 俺にとって名前は大切だ。
 それ掛けたのだ。失敗は許されないだろう。
 アイシアさん、君の思いも受け取って行くよ。

 剣を借りて、俺はアイシアさんの姿へと変わる。
 ヒスイが危険だ。急いで行こう。
 俺は地下牢から出た。

 ◆

 ゼラニウム、貴方は一体何者なのですか。
 王女様かと思いきや、いきなりわたくしに姿を変えて。
 わたくしは愚かだったようですね。
 大切な妹が、唯一の家族が愚王に捕まった。
 妹の身に何もしない事を条件にわたくしは王の奴隷となっている。

 奴隷は奴隷紋を刻まれる。
 主の命令には絶対服従の烙印だ。命令に背けば激しい痛みを体が襲う。
 意識が朦朧としている場合は反抗的な発言をしても大丈夫らしいけど。

 ゼラニウム様、貴方ならこの国を変えられる。
 頼みます。
 このだっい嫌いでクソったれなこの国を、ぶち壊せる。

「かひゅっ」

 ゼラニウム様、頼みます。
 わたくし達の願いを叶えてください。貴方の別次元のような強さなら、大丈夫⋯⋯です。
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