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アンデッドの国

部下が欲しい

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 夜限定に出現する魔物はスケルトン系、ゾンビ系のアンデッド類。
 そして“シャドーマン”って言う影の塊が居る。
 普通の魔物は凶暴化したりする。
 ゾンビが「あ゛あ゛」と言いながら歩いている群れを発見する。

 クリスタルドラゴンの龍人の【龍魔化】を使って行動している。
 これが一番目立たいのだ。
 この時に使えるブレスがあるのでゾンビに使う事にする。
 アンデッドは倒して成仏させるのが一番良いって本で見た。本当は浄化魔法とかの方が良いらしい。
 ヒスイと会う前はスキルの練習やら検証やらで使っていた。

 なんやかんやで耐久もあって痛がる感覚とかも無いゾンビは最高の相手やったんだ。
 と、言う訳でブレススキル【ヘルブレス】を使用する。
 口の中に黒い炎が溜まり、それを放つスキルのようだ。

「ばあああああ」

 気の抜けた音を出しながらもそのブレスはゾンビの集団に放ち、一気に呑み込んだ。
 このスキルは大地を簡単に焼き尽くし、かなりの射程を誇っていた。
 呑み込まれたソンビ達は跡形もなく消えていた。

 そもそもこんなスキルできちんと浄化出来るのかは不明だ。
 この姿はいちいち破壊力がえぐいので、そろそろ龍人に戻る事にする。

「うぅ。頭痛い」

 長時間使うと頭が痛くなるデメリットを発見した。
 スキルを使うと魔力量も増えるので、それ以外のデメリットはなかった。
 次にやる事は単純で警棒を使った戦い方の研究だ。
 シャドーマンのスキルで影を操れる力があるのだが、難しいので断念している。

 陰の技術で色々なスキルを手に入れているが、あまり使っては無い。
 正直、今なら龍化系スキルのゴリ押しで陰の奴らにも勝てる気がする。

「それもうただの災害やん」

 龍人の姿から人間の姿になる。
 やっぱりこれが一番落ち着く。その反面にリーシア達の事が頭に過ぎる。
 警棒を取り出して魔物を探す事にした。

 草原を散策すればすぐに見つかり、ケンタウロスを発見した。
 下半身が馬の人間の様な魔物である。
 こいつらは獣人とは違うらしい。

「弓矢を持ったのが二体、剣を持ったのが一体ね。行けるな」

 そのまま足に力を入れて駆ける。
 風の抵抗を強く感じて、ケンタウロス達の群れよりも奥に突き進んだ。
 体を上手く操作出来ずに地面をゴロゴロ転がる。
 それで敵に俺の存在がバレた。

「な、なんだこれ」

 いつもの人間の体ならケンタウロスの一体に先制攻撃が出来るくらいの力だった。
 だと言うのに、普段以上のパワーが出た。
 夜だからって言う理由では無い。今の体は人間だからだ。

「内部的な力が成長しているのかな? ま、良いや」

 放たれた二本の矢を避けながら再び走る。
 少しだけ体に慣れる必要があるな。
 この身体能力は龍人と同様だ。

「ついにスキルだけじゃなくて身体能力まで共通するようになったのか?」

 そんなの不便過ぎるだろ。
 だいたい、今はまだ龍人のパワーだが、いずれ人間の体でドラゴンのパワーが出せるようになるんだろうな。
 そうなると⋯⋯俺はもうただの化け物じゃないか。
 嫌だな。せめて、せめて人間の姿の時は人間でいたいのに。

 それから一時間の回避行動で体の動きをマスターした。
 力の操作が出来るなら正しい戦闘が可能になる。
 警棒を剣を持ったケンタウロスの頭に垂直に振り下ろした。
 骨を砕き、一撃で粉砕した。

「思いっきり振るうんじゃなかった」

 ケンタウロスの体がぐちゃぐちゃで地面もクレーターのように凹む。
 弓矢を持ったケンタウロスはその攻撃で逃げ出した。

「逃がすかよ」

 足に力を込めて一瞬で接近して、横薙ぎで一体の上半身に振るった。
 警棒だが、真横に切り裂いて絶命させた。
 かなりのスピードで振るったら警棒でも肉体を切断出来るようだ。

「⋯⋯身体能力だけじゃないな」

 残った奴が矢を放って来たが、俺の服がそれを弾いた。
 服も皮膚の俺だ。
 この程度なら普通に刺さってもおかしくない。

「体の硬度も上がっているな。なんだよ、意味わかんね」

 変えれるのは外部だけか?

 理解度がマックスなら龍化系スキル限定のスキルですらこの体で使う。
 どんだけ魔力を使って使用するのか怖いので使えないけど。
 さて、確実な力差を見せつけられたケンタウロスはただ暴走してこちらに迫って来た。

「ふむ。俺はなかなかに化け物になったみたいだな」

 警棒を地面に叩き付けて破壊する。
 地面ブロックを作り出して、それを警棒で弾き飛ばす。
 それがケンタウロスの上半身を吹き飛ばして終わった。

「基本的に龍系のスキルが強いよなぁ」

 その分魔力消費が多いけど。
 今の俺は部分的な【龍化】で近接攻撃だ。
 全く色んな魔物のスキルは使っていない。
 だいたい森とかでも色んな魔物の生活を覗いたりしたけど、あまり攻撃的なスキルはなかった。

「⋯⋯違うか」

 その魔物達はきちんとスキルの使い方が出来ていた。
 俺はそれをただ模倣しているだけだから、当然正しい使い方は出来ない。
 あくまで理解しただけで使えるだけで、そのスキルが俺のモノでは無いのだから。
 基本的な戦いは身体能力と技術、攻撃スキルはその補佐だ。

 魔法士も『魔法』と言う技術で戦う。
 スキルはあくまでその補助。

「スキルよりもこだわるは技術かな」

 帰ろうかな。
 なんか意外過ぎる情報が手に入ったので整理したい。

「なんでいきなり身体能力も共通になったんだよ」

 帰って二人が起きるのを待つ。
 それが一番だろうな。

「ケンタウロスの死体は地面に埋めておくか」

 元々俺が森で生活していた時も、殺した魔物を地面に埋めていた。
 もしかしたら、これらもゾンビなどのアンデッドに変わっている可能性は普通にある。

「国の中に墓地あったけど⋯⋯あれって大丈夫なのかな?」

 まぁ、教会的に全部浄化されているだろうから問題ないだろうけど。
 飛んで帰るか。
 だけどそこで再び奴らの事を思い出した。

「陰、か」

 どこの王族も情報機関的なモノは存在していた。
 なんか俺も最近そう言う部下が欲しいとか思い始めている。

「そうだよな。全て一人で解決出来る力があっても、限界がある」

 もしも前の国で言う『陰』やエドの『シノビ』やら。
 このような情報を裏で集めてくれる奴ら。
 もしも俺にもそういう奴らを従えていたら、ヒスイを危険に晒す事はなかったのでは無いか。

「帰るの止めた」

 翼を消す。
 どうしていきなりそんな考えが出て来たのか分からないけど、考えに至ってしまった。
 でも俺にはそれらを集める術は限られている。
 それに完全に信頼がおける人も限られる。

 ヒスイを守るには俺が信頼出来、ある程度の実力がないとダメだ。
 それを行うためには⋯⋯。

「悪魔、召喚するか」
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